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[会社の解散・清算の流れは?法人が解散する場合の手続きを解説](https://atomfirm.com/manda/18052): 会社解散とは、営んでいた事業活動をやめ、法人格を消滅させる手続きに入ることです。会社清算とは、債権債務を整理し、残余財産を株主または出資者に分配することです。 - [個人事業主の廃業のデメリットは?廃業手続きと廃業以外の選択肢まとめ](https://atomfirm.com/manda/17715): 個人事業主の廃業のデメリットは?廃業手続きは?廃業のタイミングは?廃業費用はいくら?個人事業は売却できる?この記事では個人事業主の廃業手続きについて、解説しています。現在廃業をご検討中の個人事業主の方は、是非ご覧ください。 - [M&Aで退職金はどうなる?事業譲渡や株式譲渡の役員退職金も解説](https://atomfirm.com/manda/17365): M&Aで退職金はどうなる?事業譲渡の退職金は?株式譲渡なら役員退職金スキームが税金対策になる?この記事では、M&Aにともない退職金を誰が支払うのか、役員退職金を使ったお得な節税スキームについて解説しています。中小企業の経営者の方で、M&Aをご検討中の方など、是非最後までご覧ください。 - [親族内承継とは何か?子や孫に事業を承継する方法と流れを解説](https://atomfirm.com/manda/17005): 親族内承継とは、経営者が自身の親族に事業を承継させることです。子や孫への事業承継を希望する経営者の方は、後継者が安心して事業を継続できるよう、入念な準備を行いましょう。 - [M&Aのデューデリジェンスとは?調査や費用は?事業譲渡のDDは?](https://atomfirm.com/manda/17028): M&Aのデューデリジェンスとは?費用は約50万~300万円?調査内容は?この記事ではM&Aのデューデリジェンス(DD・買収監査)について解説しています。中小企業のM&Aをご検討中の方は是非ご覧ください。 - [M&Aにおける注意点とは?会社売却側・買収側のリスクや確認事項を解説](https://atomfirm.com/manda/16328): M&Aや会社売却を進めるためには、専門的な知識が必要です。売り手側、買い手側ともに、注意点を踏まえて手続きを行いましょう。 - [M&AのPMIとは?PMIの手順は?売り手が協力すべきことは?](https://atomfirm.com/manda/16708): M&AのPMIとは?PMIの目的は?手順は?売り手にも関係する?この記事では、M&AのPMIの意義や流れなどを紹介しています。売り手目線のPMIのポイントについても触れているので、今後、M&Aによる会社売却をご検討中の経営者の方も、是非ご覧ください。 - [自社株評価とは?簡易計算できる?自社株評価の3ステップ](https://atomfirm.com/manda/16447): 自社株評価とは?簡易計算できる?自社株評価の3ステップ!この記事は、事業承継をご検討中の中小企業の経営者の方に向けて、自社株評価について解説しています。自社株評価を下げる要因、高める方法についても言及しているので、是非参考になさってください。 - [事業売却・事業売買の方法とは?手続きの流れやメリットを解説](https://atomfirm.com/manda/16172): 事業売却を行う場合、事業価値評価や買い手候補との交渉に加えて、トリマ利益会や株主総会での決議が必要になるケースがあります。手続きが複雑な会社売却の方法の一つなので、専門家に相談して進めるのがおすすめです。 - [事業承継・引継ぎ補助金のすべて|M&Aで活用できるお得な補助金とは…](https://atomfirm.com/manda/16147): 事業承継にかかる費用負担を減らしたい... 事業承継・引継ぎ補助金について徹底解説!この記事では、補助金の種類、要件、注意点などを解説しています。中小企業の事業承継をご検討中の方は、ぜひご一読ください! - [株価算定方法とは?非上場企業の株式価値の計算方法を紹介](https://atomfirm.com/manda/15931): 自社の株価がいくらに算定されるのか気になる場合には、株価算定が必要です。株価算定を行う場合には、純資産法や年倍法、DCF法など複数の計算方法を組み合わせて価値評価を行いましょう。 - [後継者不足の場合は廃業?倒産を防ぐ方法・解決策とは](https://atomfirm.com/manda/15916): 身近に後継者がいない問題は、事業承継における大きな課題です。もう廃業するしかないかと思う経営者も多いかもしれませんが、会社売却による第三者承継を行うことで、後継者不足を解決できる可能性が残っています。 - [M&Aの売り手市場はいつまで?売り手のメリットは?事業承継の動向は](https://atomfirm.com/manda/15697): M&Aは売り手市場?売り手市場のメリットは?そもそもM&Aによる事業承継のメリットは?今後も売り手市場は続くの?この記事では中小企業のM&Aによる事業承継をご検討中の方等に向けて、M&A市場の動向について解説しています。 - [株式譲渡による事業承継とは?手続きの流れとポイントを解説](https://atomfirm.com/manda/15662): 株式譲渡は、事業承継の選択肢の一つであり、事業の継続性と円滑な経営権移行を実現できる手段です。株式譲渡による事業承継を希望する場合には、M&A仲介会社などの専門業者に相談しましょう。 - [M&Aの事例を紹介!会社売却(事業譲渡・株式譲渡)の成功事例とは](https://atomfirm.com/manda/15644): M&Aは、大企業が不採算事業を整理するために事業譲渡したり、開発費や経営資源の獲得のために株式譲渡したりするなど、目的に応じて事例の形態はさまざまです。 - [M&A業界の動向を解説!業界ごとのM&A傾向とは](https://atomfirm.com/manda/15612): 後継者不足に悩む経営者の解決策の一つとして、M&Aが選択されるケースが増えてきています。 - [M&Aのシナジー効果とは?シナジーの種類と分析まとめ](https://atomfirm.com/manda/15400): M&Aのシナジー効果とは?分析の方法とは?M&Aのシナジー効果が高く評価されれば、売り手側がもらえる対価も高額になります。この記事では、M&Aのシナジー効果の種類、分析方法、M&A価格への反映方法などについて解説しているので、是非ご参考になさってください。 - [M&Aの流れ・手順を解説!会社を売るためのステップとは?](https://atomfirm.com/manda/15005): M&Aの流れは、「検討・準備」段階、「交渉」段階、「クロージング」段階の3つに大きく分けられます。M&A・会社売却を希望する場合、なるべく早い段階から専門業者に相談することをおすすめします。 - [事業承継型M&Aの磨き上げとは?磨き上げの目的や対象を解説!](https://atomfirm.com/manda/15065): 事業承継型M&Aの磨き上げとは?磨き上げの目的や対象は?時期は?手順は?方法は?この記事では、事業承継をご検討中の経営者の方に向けて、M&Aの「磨き上げ」について徹底解説しています。是非ご覧ください。 - [創業者利益とは…IPOやM&Aで獲得できる?仕組みや税金を解説!](https://atomfirm.com/manda/14779): 創業者利益とは?IPOやM&Aで創業者利益を獲得できる?仕組みや税金を解説!創業者利益とは、創業者が会社売却をおこない、得られる売却益のことです。この記事では、IPOとM&Aを比較しながら、創業者利益の金額、獲得方法、税金などについて解説しています。 - [第三者承継の方法は?メリットは?3つの注意点も解説!](https://atomfirm.com/manda/14488): 第三者承継とは?方法・メリット・注意点について解説しています!中小企業の経営者で事業承継をご検討中の方など、是非ご参考になさってください。第三者承継には後継者問題を解決し、さらに譲渡益を得られるというメリットがあります... ... - [事業譲渡契約を解説!契約書を作る際のポイントとは?](https://atomfirm.com/manda/14482): 事業譲渡契約は、基本合意後に、デューデリジェンスを実施してから締結するのが一般的です。事業譲渡契約を締結することにより、譲渡側と譲受側の権利・義務が明確になり、後のトラブルを防止することができます。 - [会社の身売り(M&Aによる会社売却)のメリットは?注意点は3つ!](https://atomfirm.com/manda/14238): 会社の身売り(M&Aによる会社売却)のメリットは?5つの注意点とは... この記事では、中小企業の経営者の方等に向けて、会社の身売りのメリット・注意点、身売りの方法などについて解説します。 - [会社売却のタイミングは?会社を売る最適な時期を逃さない方法は?](https://atomfirm.com/manda/14047): 会社売却は、経営者の年齢や体調、事業環境の変化など、様々な理由で検討されます。 一般的には、企業価値が高く、買い手企業を見つけやすい時期が、会社売却のタイミングとして最適とされます。 この記事では、会社売却のタイミングを判断する際の4つのポイントや、会社売却に最適な時期を逃さないための方法について解説します。 会社売却のタイミングでお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。 目次会社売却の最適なタイミングは?会社売却を決断するタイミング4つ①業績が好調な時期②業界再編が活発な時期③経営者の年齢や体調の変化④事業環境の変化があった時期会社売却のタイミングを逃す原因後継者問題を先送りにする会社売却にネガティブなイメージ会社を手放すのが惜しいと感じる会社売却のタイミングを逃さない方法会社売却のメリットを意識する企業価値向上に努めてタイミングをうかがう早い段階で会社売却の情報・流れをつかむまとめ 会社売却の最適なタイミングは? 会社売却を決断するタイミング4つ 会社売却を決断するタイミングとして、以下の4つの時期があげられます。 会社売却のタイミング(一例) ①業績が好調な時期 会社の業績が好調な時期は、会社売却にとって絶好のタイミングです。 会社の業績が好調な時期は、買い手にとって、会社が魅力的に映ります。売却価格が多少高額であっても、買い手企業が積極的に買収を検討してくれる可能性が高いでしょう。 業績が好調な時期(一例) ②業界再編が活発な時期 業界再編が活発な時期も、会社売却にとって最適なタイミングのひとつです。 業界再編が活発な時期は、競合企業が買収を検討している可能性が高く、売却先を見つけやすい環境と言えます。 業界再編の波に乗ることで、自社の事業をより高く評価してもらえる可能性があります。また、競合企業に買収されることで、事業の存続や成長を図ることもできます。 業界再編が活発な時期(一例) ③経営者の年齢や体調の変化 経営者の年齢や体調の変化も、会社売却を考えるタイミングになります。... - [事業承継の方法は?手続きの流れは?現経営者が踏むべき5つの手順とは](https://atomfirm.com/manda/13670): 事業承継の方法は?手続きの流れは?事業承継で踏むべき5つの手順とは?この記事では中小企業の事業承継の方法について解説しています。次の世代へ会社を譲ることをお考えの経営者の方など、是非ご参考になさってください。 - [事業承継の費用・手数料の相場は?承継方法別に解説](https://atomfirm.com/manda/12974): 事業承継を行う際には、弁護士費用、税理士費用、M&A仲介会社などへの報酬などが発生します。 - [M&Aの売却価格・買取価格を算定する方法は?M&Aの値段について解説](https://atomfirm.com/manda/8686): M&Aの価格とは、売り手側と買い手側の交渉により決定された会社売却・会社買取の価格です。算定方法はどれも複雑で、いくつかの手法を組み合わせることもあります。不安があれば専門家に相談しましょう。 - [M&Aの課題とは?会社売却側の抱える問題点を解説](https://atomfirm.com/manda/12826): M&Aにおける売り手の最大の課題は、適切な売却価格の設定や、取引先・従業員への対応などです。M&A・会社売却は、専門知識や経験が必要となるため、M&Aアドバイザーや弁護士などの専門家を積極的に活用することが重要です。 - [従業員承継とは?会社を譲る方法・メリット・デメリットまとめ](https://atomfirm.com/manda/12266): 従業員承継とは?従業員に会社を譲る方法は?メリット・デメリットは?この記事では、中小企業で役員・従業員に事業承継をご検討中の経営者の方に向けて、従業員承継の方法・特長・活用できる制度について解説しています。 - [株式譲渡の手続き・流れを徹底解説!会社の株式譲渡で必要な書類と注意点とは](https://atomfirm.com/manda/12327): 株式譲渡によって会社売却をしようと考える場合、上記のようなお悩みを抱えているかもしれません。 株式譲渡は会社売却の手法の中でも、手続きが簡単な方法ですが、会社法に則った手続きを進める必要があります。 また、株式譲渡によって会社売却をしても、会社名や資産、従業員の雇用などは引き継がれます。株式譲渡は、他のM&A手続きと比べると簡単に進めることができるのです。 この記事では、中小企業で多く活用される株式譲渡の手続き・流れを説明します。 正しい方法で会社売却を進めたい方はぜひ参考にしてください。 目次株式譲渡とは株式譲渡の概要株式の譲渡制限とは株式譲渡の手続き・流れ譲渡承認請求取締役会・株主総会での承認決定内容の通知(株式譲渡承認通知)株式譲渡契約の締結株主名簿の書き換えM&Aの株式譲渡で必要な書類譲渡承認請求書株式譲渡契約書株式譲渡の注意点譲渡制限株式の注意点譲渡価格の算出方法税金の注意点まとめ 株式譲渡とは 株式譲渡とは、会社の株主が保有する株式を、他の者に譲渡することです。 株式譲渡により、譲渡人は株式を譲受人に引き渡し、譲受人は譲渡人に対して譲渡対価を支払います。 株式譲渡の概要 株式譲渡は、会社売却をする際の手法の一つです。 譲渡対象会社の株主が保有するそれらの発行済み株式を、譲受会社または個人(譲受人)に譲渡することで、経営権を移動させます。 株式譲渡による事業承継を行ったとしても、株主が代わるだけで会社はそのまま存続します。株式の保有者が変更されますが、会社が吸収されてなくなるわけではありません。 そのため、会社名や会社の資産、債権・債務、取引先との契約関係、従業員との雇用関係等はそのまま引き継がれます。 「会社売却をしたいが、会社自体は存続させたい」「会社売却後も従業員を雇用したままにしたい」などの希望がある場合には、株式譲渡がおすすめです。 株式譲渡を行う株主・オーナー側のメリット 株式の譲渡制限とは 株式譲渡には、主に「譲渡制限のない株式譲渡」と「譲渡制限のある株式譲渡」の二種類に分かれます。 「譲渡制限のない株式譲渡」は、多くの場合、上場企業の株式譲渡を意味します。 上場している会社の場合は株式に譲渡制限をつけることができないため、自由に譲渡・売買することができます。... - [M&Aの完全成功報酬はお得?相場・メリット・デメリットなどを解説](https://atomfirm.com/manda/12018): 完全成功報酬とは?完全成功報酬の相場・メリット・デメリット・向いている場合は?この記事では中小企業のM&Aをご検討中の経営者の方に、M&A仲介会社の完全成功報酬という料金体系について解説していきます。是非ご参考になさってください。 - [M&Aの着手金とは?無料になる?相場や支払いの注意点まとめ](https://atomfirm.com/manda/11871): M&Aの着手金は?無料のケースも?相場や支払いの注意点まとめ!この記事では、中小企業の経営者のM&Aをご検討中の方などを対象に、M&Aの着手金について徹底解説しています。ぜひ最後までご覧ください。 - [M&Aの価格相場は?いくらで売れる?価格の決定要因と目安について](https://atomfirm.com/manda/11504): M&Aの価格相場は?いくらで売れる?価格決定の要因は?この記事では、M&Aの価格相場、計算方法、売り手が高額でM&Aをおこなうための対策などについて、紹介しています。現在、M&Aをご検討中の中小企業の経営者の方など、是非ご参考になさってください。 - [会社をたたむときの費用はいくらかかる?廃業かM&Aか迷ったら専門家に相談を](https://atomfirm.com/manda/11601): 会社をたたむとは、会社を解散し、清算手続きを経て廃業することです。M&A・会社売却を活用することにより、廃業を回避して企業や事業を継承できるかもしれません。 - [会社を作って売りたい!ベンチャー起業でイグジットを成功させるために](https://atomfirm.com/manda/11581): 会社を起業して、企業価値を高めてから売却することをイグジット(EXIT)といいます。立ち上げた会社を成長させ、高く評価されている段階で売却すれば、高額な売却益を手に入れることができます。 - [事業譲渡ののれんとは?営業権譲渡の流れや売却価格の評価方法は?](https://atomfirm.com/manda/11312): 事業譲渡とは?のれんとは?のれん・営業権の評価方法は?この記事では、事業譲渡におけるのれんの評価について、徹底解説しています。のれん代についてより高額の評価が得られれば、売却価格もより高額になります。現在、事業譲渡などをご検討中の中小企業の経営者の方など、是非ご覧ください。 - [株式譲渡の費用とは?手数料はいくら?株式譲渡の税金も解説](https://atomfirm.com/manda/11100): 株式譲渡の費用とは?手数料はいくら?株式譲渡の税金はどうなる?この記事では、株式譲渡をご検討中の方に向けて、株式譲渡にかかる費用、手数料の解説をしています。譲渡益にかかる税金についてもケース別に解説しているので、是非ご覧ください。 - [M&Aの目的とは何か?売り手買い手別のM&Aの狙いと重要性を解説](https://atomfirm.com/manda/11189): M&Aを行う目的や狙いは、会社の売り手と買い手でそれぞれ異なります。M&Aを成功させるためには、相手方の目的や狙いを把握し、効率よく手続きを進めていきましょう。 - [スモールM&Aで事業承継できるのか?中小企業を売却する方法とは](https://atomfirm.com/manda/11180): スモールM&Aは、近年注目を集めている中小企業向けの事業承継方法です。大規模なM&Aとは異なり、年間売上高1億円~10億円程度の小規模な企業同士の買収・売却を指します。 - [会社を売る方法は?会社売却の方法・メリット・デメリットを解説](https://atomfirm.com/manda/8833): 会社を売る方法は?会社売却のメリットは?デメリットはある?株式譲渡と事業譲渡の違いは?この記事では、会社売却をご検討中の方に向けて会社売却の方法について徹底解説しています。 - [どんな会社売却や事業売却が儲かる?相場やメリット徹底解説](https://atomfirm.com/manda/8691): どんな会社売却・事業売却が儲かる?相場やメリットは?会社売却をご検討中の方必見!儲かるのは市場の需要... などの要因が影響します。儲かる以外のメリットもあれば、注意点もあります。会社売却・事業売却には良きパートナーが必要です。 - [事業承継問題とは?課題は後継者不在?解決策はM&A?](https://atomfirm.com/manda/10162): 事業承継問題とは?課題は深刻?解決策は?相談先は?この記事では事業承継問題の実態と解決策をまとめています。頼りになる相談先の一覧や、事業承継問題チェックシートもあるので、是非ご活用ください。 - [会社売却の流れを解説!手続きや手順の注意点は?](https://atomfirm.com/manda/8866): 会社売却の流れとは?会社売却で注意すべき手続きや手順は?買い手探しはどうすればいい?会社売却をご検討中の経営者の方へ。この記事では、会社売却の手続きの流れを徹底解説しています。ご参考になさってください。 - [企業価値・事業価値・株式価値とは?それぞれの違いと関係性を解説!](https://atomfirm.com/manda/9683): 企業価値とは、事業の持つ価値と事業以外の資産などを合わせた企業全体の価値のことです。株式価値は企業価値から有利子負債を差し引いた価値となります。 - [M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは?](https://atomfirm.com/manda/9724): M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは?この記事ではM&Aの交渉のコツを伝授します!ハイボールやアンカリングなど売り手が注意すべきポイントについても丁寧に説明していきます。是非ご参考になさってください。 - [企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点](https://atomfirm.com/manda/9942): 企業価値向上とは?M&Aの成功とどんな関係があるの?企業価値を高める5つの視点とは?この記事では会社売却をご検討中の方に向けて、高額売却を目指すために企業価値を向上させる5つの視点を解説していきます。是非ご覧ください。 - [M&Aの契約書の種類や内容は?契約の流れに沿って解説!](https://atomfirm.com/manda/9777): M&Aの契約書はどんなもの?契約の流れは?この記事ではM&Aで必要になる秘密保持契約書、基本合意書、査収契約書などの契約書の内容、サンプル、注意点を流れに沿って解説しています。会社売却などをご検討中の方は、是非お読みください。 - [後継者不足の解決策はM&A?後継者問題の実態は…](https://atomfirm.com/manda/10006): 後継者不足の解決策は?M&Aで後継者不足を解決した事例はある?後継者問題の実態は?この記事では、親族承継、社内承継、M&A(第三者承継)のメリット・デメリットの比較、解決事例を紹介しています。現在、後継者不足でお悩みの中小企業の経営者の方は是非ご覧ください。 - [M&Aで会社を高く売る方法とは?買い手へのアピールポイントを解説](https://atomfirm.com/manda/10224): 会社を高く売るためには、自社の強みや優位性を明確にし、買い手候補の企業に効果的にアピールして交渉していく必要があります。会社を高く売りたい場合は、M&Aの成約実績が豊富な仲介会社などの専門家を活用しましょう。 - 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[相続した非上場株式の評価額は?相続税は高い?売却できる?](https://atomfirm.com/manda/9306): 相続した非上場株式の評価額は?税金のことも考えると生前の株式売却が良い?相続で取得した非上場株式はいくらで売れる?この記事では、相続した非上場株式の評価について解説しています。お悩みの方は是非さいごまでお読みください。 - [企業価値の計算方法・求め方を解説!会社の価値の算定方法とは](https://atomfirm.com/manda/9092): 非上場企業の企業価値は、該当する市場が拡大しているのか、営業権(のれん)がどの程度評価されるのかなど、数多くの要素が複雑に組み合わさって算定されます。計算方法は複雑で、専門的な知識が必要です。 - [会社はいくらで売れる?会社売却価格の計算方法、相場を解説](https://atomfirm.com/manda/8682): 会社はいくらで売れる?会社売却価格の計算方法、相場は?【会社売却をお考えの経営者必見!】企業価値の3つの評価方法、相場に影響する要素、ポイント、成功事例などを紹介! --- # # Detailed Content ## Pages ### AI Sitemap (LLMs.txt) - Published: 2025-04-09 - Modified: 2025-04-09 - URL: https://atomfirm.com/manda/ai-sitemap What is LLMs. txt? LLMs. txt is a simple text-based sitemap for Large Language Models like ChatGPT, Perplexity, Claude, and others. It helps AI systems understand and index your public content more effectively. This is the beginning of a new kind of visibility on the web — one that works not just for search engines, but for AI-powered agents and assistants. You can view your AI sitemap at: https://atomfirm. com/manda/llms. txt Why it's important Helps your content get discovered by AI tools Works alongside traditional SEO plugins Updates automatically as your content grows --- ### M&A・会社売却の記事一覧 > M&A・会社売却に関するお悩み解決情報をまとめています。「自社の企業価値を計算したい」、「会社売却の手続きを知りたい」などのお悩み別に詳しく解説しています。 - Published: 2024-06-04 - Modified: 2024-06-04 - URL: https://atomfirm.com/manda/column --- ### アトムのM&A相談共有フォーム - Published: 2024-03-04 - Modified: 2024-03-07 - URL: https://atomfirm.com/manda/cform --- ### 会社売却おすすめ方法診断 > は、会社の基本情報を入力するだけで、自社に適した会社売却の方法を確認できるツールです。 - Published: 2024-01-29 - Modified: 2024-03-13 - URL: https://atomfirm.com/manda/simulator_transfer_method --- ### 企業価値算定シミュレーター > 企業価値算定シミュレーターは、前年の利益などの簡単な事項を入力するだけで、自社の企業価値を確認できるツールです。 - Published: 2024-01-24 - Modified: 2024-03-13 - URL: https://atomfirm.com/manda/simulator_company_value --- ### M&A会社売却解決ナビ > は、企業価値の計算・会社売却の流れと手続き・会社売却後の税金など、会社売却をしたい方のお悩みを解決するメディアです。当サイトの解説記事を読めば、あなたのお悩みの解決方法が見つかります。 - Published: 2023-12-18 - Modified: 2024-03-13 - URL: https://atomfirm.com/manda/ --- ## Posts ### 株式譲渡の相談先はどこ?相談できる専門家ごとの特徴とメリットを紹介 - Published: 2024-03-28 - Modified: 2024-04-02 - URL: https://atomfirm.com/manda/18075 - Categories: 株式譲渡, 相談・仲介 株式譲渡を相談したい場合には、民間のM&A仲介会社やアドバイザリー、事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関を利用することができます。売却額の見込みや過去の実績など、初回相談の際に総合的に比較しておきましょう。 株式譲渡で会社売却したいけど、何から進めればいいのだろう・・・ 株式譲渡の相談先は民間会社なのか弁護士・税理士なのか分からない・・・ 株式譲渡による事業承継・会社売却をお考えの方は、今後の手続きの進め方について不安を抱えていることでしょう。 買い手の見つけ方や企業価値・株式価値の評価の仕方など、株式譲渡を行う際には専門的な知識が求められます。 他にも、費用・手数料がどれだけかかるのか、納税しなければならないのかなど、注意しなければならないポイントは多岐にわたります。 この記事では、株式譲渡についての相談先を紹介し、相談時に確認すべき点をまとめています。ぜひ最後までご確認ください。 株式譲渡の概要 株式譲渡とは 株式譲渡とは、売り手側企業の株主や経営者などが、保有株式を譲渡・売却することで、会社の経営権を継承する取引のことです。 譲渡内容や条件などに双方が合意したら株式譲渡契約を締結し、売り手側は株式譲渡の対価として企業価値に見合った金銭を受け取ります。 株式譲渡は、会社の経営権や所有権を丸ごと承継させたい場合に活用される会社売却の手法の一つということができるでしょう。 株式譲渡のメリット 取引先や従業員、債権者からの同意が不要など、手続きが簡易的 株の所有者が変更されるだけで、従業員の雇用を継続できる 廃業にかかる費用を支払う必要がなくなる 非上場企業の株式譲渡の場合、譲渡制限について注意が必要です。 譲渡制限とは、株主総会の決議がなければ、現在の株主から株式を移転させることができないというルールのことです。 ほとんどの非上場企業では、この譲渡制限がかけられていることが多いです。 そのため、買い手側と交渉を進めて契約書を交わす段階に進んだとしても、株主総会の承認決議がなければ、譲渡できないことを覚えておきましょう。 なお、譲渡制限付きの株式を相続した場合には、例外的に譲渡承認を受ける必要はありません。 株式譲渡のデメリット 全ての株主の同意が必要 不採算事業があると評価額が下がる 譲渡対象外にしたい資産は特別な措置が必要 譲渡する側が株式の100%を保有していない場合、他の株主から同意を得る必要があります。 M&Aの手続きを進めてから他の株主に報告するのではなく、定期的に進捗を報告するなど信頼関係を損なわないように注意した方がいいでしょう。 株式譲渡は事業や資産、負債など全てを一括して譲渡する方式です。 不採算事業を抱えていると、買い手側から会社売却価格の減額を交渉される可能性があります。 また、売り手側としては譲渡したくない資産がある場合には、事前に資産を手元に残す措置をとったり、譲渡後に買い戻したりしなければなりません。 株式譲渡と事業譲渡の違い 会社売却のもう一つの形式である事業譲渡は、会社全体ではなく事業単位で売買を行うことが可能です。 事業譲渡であれば、注力したい事業だけを手元に残し、それ以外を売却することで、「選択と集中」を実行できるでしょう。 他にも、従業員の移籍についての違いや、必要となる株主総会決議についての違いなどがあります。 株式譲渡事業譲渡譲渡対象の範囲会社全体事業の一部または全部譲渡対価株主が受け取る会社が受け取る負債の承継承継する承継しない従業員原則そのまま転籍に同意が必要税金所得税・住民税法人税・消費税 関連記事 事業譲渡と株式譲渡の違いは?目的・メリット・デメリットなど解説 株式譲渡の相談先5選 M&A仲介会社 M&A仲介会社は、株式譲渡を行う際の相談先として、最も多く使われている専門業者の一つでしょう。 M&A仲介会社に株式譲渡を相談すると、自社内で把握している買い手情報からマッチングしそうな候補企業を選びます。 M&A仲介会社同士のネットワークを持っている業者もあるため、自身で買い手を探すよりも効率的に交渉相手を見つけることができるでしょう。 また、M&A仲介会社を利用する場合、アドバイザーが売り手と買い手の両方を担当します。仲介会社を利用する場合は、互いの希望や条件を調整しやすく、M&A成約までのスピードが速い特徴があります。 M&A仲介会社を利用する際には、サービスの範囲や費用・手数料の体系が業者ごとに異なっていることに注意しましょう。 株式譲渡の相談先としてM&A仲介会社を選択する場合には、初回の無料相談などを活用し、複数の会社を比較することをおすすめします。 M&Aアドバイザリー M&Aアドバイザリーは、M&A仲介会社とは異なり、買い手側あるいは売り手側の片方と契約を結び、どちらかの利益を最大化するためのサポートを行う専門業者です。 財務アドバイザー(Financial Advisor;FA)と呼ばれる専門家が、M&Aアドバイザリーとしては一般的です。 FAは企業の財務面を含めたM&A全般の相談に対応します。 ファイナンシャルアドバイザー(FA) FAはM&Aの手続き・プロセス全体の進行をサポートします。 サポートの内容としては、企業価値の評価や、価格条件交渉、契約書作成、デューデリジェンスなどがあります。 FAは売り手か買い手どちらかの利益の最大化を目的とするため、希望する条件に最も近い内容でのM&Aを実現する為のサポートをしてもらえるメリットがあります。 ですが、M&A仲介会社と比べると、成約までのスピードに時間がかかるといえます。 弁護士・税理士など 弁護士や税理士などの士業も、M&Aの相談先として活用することができます。 弁護士であれば、M&Aの各契約書に法的な不備がないかどうか相談することが多いでしょう。 税理士であれば、M&A成約後の税金や節税対策について相談することが可能です。 知人や友人などに株式譲渡するようなケースで、買い手探しや交渉などが不要な場合には、弁護士や税理士への相談も検討してみてください。 成功報酬を設定していない事務所が一般的なため、M&A仲介会社などの専門業者と比較すると、費用をおさえることができるかもしれません。 事業承継・引継ぎ支援センター 事業承継についての相談先として、公的機関である事業承継・引継ぎ支援センターを活用することもできます。 株式譲渡の相談に特化しているわけではないですが、親族内承継、社内承継、第三者承継のいずれの形式の事業承継についても広く相談を受け付けています。 後継者不足の解決を目的として設置されているため、会社や事業を後世に残すために株式譲渡を検討しているような場合には、一度利用してみてはいかがでしょうか。 事業承継・引継ぎ支援センターの相談窓口は各都道府県に設置されています。 関連記事 事業承継の相談窓口は?事業承継成功の秘訣は専門家への無料相談? 取引のある金融機関 取引をしている銀行などの金融機関も、株式譲渡の相談先として挙げられます。 金融機関は取引先を多く抱えているため、会社買収を希望している企業の情報などが豊富です。 そのため、買い手候補となる企業を効率よく紹介してもらえる可能性が高いです。企業としての信用度も高いことがほとんどなので、安心してM&Aの手続きに入ることができるでしょう。 ただし、大規模な企業でなければM&A業務に対応しない方針の金融機関もあるため、必ず相談に乗ってもらえるとは限りません。 株式譲渡の相談での確認事項 自社の株式価値 株式譲渡の相談では、自分の会社の株価がいくらで評価されるのか確認しておきましょう。 上場企業の株式と異なり、非上場企業の株式譲渡の場合には、株価がいくらなのか算定するために、特殊な計算を行わなければなりません。 株価算定の手法としては、純資産法、類似会社比準法、DCF法などを用いて企業価値を求め、発行済み株式総数で割ることで1株あたりの価値を計算します。 しかし、企業価値評価の手法はどれも複雑かつ専門的なプロセスとなります。自身で大雑把に計算した上で、専門家に妥当な企業価値や株式価値を確認するべきといえるでしょう。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! 株価算定方法とは?非上場企業の株式価値の計算方法を紹介 自社株評価とは?簡易計算できる?自社株評価の3ステップ 費用・仲介手数料 株式譲渡の相談では、実際にサービスを利用した際にどの程度の費用が掛かるのか、仲介手数料はいくらになるのか、確認しておくことも必要です。 株式譲渡をはじめとした会社売却で仲介会社などの専門業者を利用すると、着手金、中間報酬、成功報酬などが発生するケースが多いです。 サービス内容の範囲や費用・手数料などを初回相談の際にしっかりと確認し、複数の業者を比較してみてください。 関連記事 株式譲渡の費用とは?手数料はいくら?株式譲渡の税金も解説 株式譲渡の実績が豊富な業者かどうか 株式譲渡の相談をする以上、過去に株式譲渡を成約させており、専門知識やノウハウを十分に持っている業者に話を聞いてもらうべきです。 大手のM&A仲介会社などであれば、一般的にはどの形式の会社売却も豊富な実績があるため、初回相談の際にどのくらいの実績があるか聞いてみてもいいかもしれません。 小規模な仲介会社や公的な相談窓口などでは、株式譲渡の実績が豊富とはいえないケースもあるため、相談先を選ぶ段階で注意しておきましょう。 買い手候補の紹介数 多くの買い手候補を紹介できるかどうかも、株式譲渡の相談先を選ぶ際のポイントです。 買い手候補が多ければ多いほど、希望条件がマッチする可能性が高まります。 M&A仲介会社などの専門業者であれば、他社と連携しながら、最適な買い手候補を見つけてもらえるケースもあります。 初回相談の際には、紹介可能な企業数を大まかに挙げてもらい、最終的に契約するかどうかの判断を行いましょう。 業界事情に詳しいかどうか 売り手側企業の業種・業界に詳しいかどうかも、株式譲渡の相談の際に確認しておくべきポイントといえます。 売り手側企業に今後も業績を伸ばしていける力があるのか、売り手側が求める条件が妥当な内容なのかなど、業界の事情や状況などを知らなければ判断することが難しいでしょう。 初回相談の際に、自社と同じ業種・業界の実績があるのか、同程度の規模のM&Aで成約した金額と必要になった期間などを確認してみてください。 担当者との相性 M&A仲介会社などの専門業者の担当者との相性も、相談先を選ぶ際には重要です。 M&Aの手続きは半年で終わるケースもあれば、数年以上にわたって継続するケースもあります。長期間のやり取りができて信頼できそうな担当者かどうか、初回相談の際に確かめておく必要があるでしょう。 相性の良い担当者とタッグを組んでM&Aの手続きを進めることで、スピード感があり納得のできる株式譲渡となる可能性が高くなります。 --- ### 廃業よりもM&A会社売却の方が利益になるのか?後継者がいない場合はどちらを選択すべき? - Published: 2024-03-28 - Modified: 2024-04-02 - URL: https://atomfirm.com/manda/18068 - Categories: 廃業, 事業承継 廃業を選択するよりも、会社売却の方が利益になるケースがあります。経営が困難な場合や事業承継が難しい場合でも、まずはM&A仲介会社などの専門家まで相談してみましょう。 廃業と会社売却について 廃業とは 廃業とは、会社が自発的な意思で事業・経営をやめることを意味します。 全ての事業を中止し、会社自体を消滅させるためには、解散と清算という2つの手続きを進める必要があります。 株主総会による解散決議があった場合や、定款の解散要件を満たした場合などに、会社は解散されます。 解散した会社は残っている債権・債務を整理し、残余財産を分配すると清算が完了し、法人格が消滅します。 法定の手続きを進めるだけで経営や事業承継の悩みから解放される一方、従業員が無職になってしまったり、取引先への対応が必要になったりするなど、デメリットも多いことに注意しなければなりません。 関連記事 会社の解散・清算の流れは?法人が解散する場合の手続きを解説 会社をたたむときの費用はいくらかかる?廃業かM&Aか迷ったら専門家に相談を 会社売却とは 会社売却とは、会社や事業を第三者に売り渡す形式の事業承継の方法です。 会社そのものを売却する場合には株式譲渡、事業だけを切り離して売却する場合には事業譲渡を行うことになります。 会社売却の場合には、一般的には従業員はそのまま雇用されるため仕事を失う心配はありません。また、取引先にかける迷惑を最小限で留められるでしょう。 しかし、会社売却を行う際には、まず買い手候補を見つけ、企業価値を評価した上で売却価格を交渉し、契約手続きを行うなど、複雑かつ専門的なステップを進めなければなりません。 関連記事 事業売却・事業売買の方法とは?手続きの流れやメリットを解説 事業譲渡と株式譲渡の違いは?目的・メリット・デメリットなど解説 会社はいくらで売れる?会社売却価格の計算方法、相場を解説 廃業よりも会社売却の方が利益になる? 会社売却なら売却益を得られる 会社売却が成立すれば、企業価値に見合った価格の売却益を得ることができます。 経営者を引退した後の生活資金にすることも、新たに投資を行うことも可能となるため、廃業するよりも金銭的なメリットは大きいといえるでしょう。 近年では、M&A市場は買い手の需要に対して売り手候補となる企業が不足している状況です。 業績に不安がある場合でも、M&A仲介会社などの専門家に相談すると、想像以上の評価を受けることができるかもしれません。 関連記事 M&Aで会社を高く売る方法とは?買い手へのアピールポイントを解説 個人事業主の廃業のデメリットは?廃業手続きと廃業以外の選択肢まとめ 会社売却なら債務を返済できる可能性もある 会社を廃業してしまうと、債務がある場合には返済が必要になり、状況次第では相当額の出費となる場合があります。 会社売却が成立すれば、売却益を使って借金を返すことも可能になるケースがあるでしょう。 ただし、事業譲渡の場合には、事業を切り離して売買することができるため、買い手としては債務を抱えている事業を買収しようと考えないこともありえます。 廃業と会社売却の比較 廃業会社売却事業の存続なし可能従業員の雇用解雇の可能性が高い維持できる可能性が高い手続き比較的シンプル複雑費用比較的少ない場合によっては高額時間短期間で完了数ヶ月〜数年精神的な負担大きい比較的少ない事業の価値消失場合によっては高く売却できる M&A会社売却は専門家に相談を 会社の廃業は、速やかに経営難や事業承継の問題から解放されることが多いですが、金銭的なメリットはほとんど期待することができません。 一方、会社売却であれば、M&A成約によって売却益を手にすることができ、引退後の生活資金に充てたり債務を返済したりすることが可能となるでしょう。 M&A仲介会社などの専門業者の中には、初回無料相談を実施している会社も多くあります。 経営や事業承継が難しいからといって廃業の手続きを進めてしまうのではなく、まずは会社売却できないか検討してみてください。 --- ### 会社の解散・清算の流れは?法人が解散する場合の手続きを解説 - Published: 2024-03-28 - Modified: 2024-04-02 - URL: https://atomfirm.com/manda/18052 - Categories: 事業承継, 廃業 会社解散とは、営んでいた事業活動をやめ、法人格を消滅させる手続きに入ることです。会社清算とは、債権債務を整理し、残余財産を株主または出資者に分配することです。 会社の事業をやめて廃業する場合、解散と清算という手続きが必要になります。 会社法で定める要件を満たした場合に会社は解散され、債権債務の整理や残余財産の分配などを行って清算していく流れになります。 廃業を経験したことがない場合、どのように手続きを進めればいいのか不安になることでしょう。 この記事では会社の解散・清算について詳しく説明しています。 これから法人を解散させようとしている経営者の方は、最後までご覧ください。 会社解散・清算とは? 会社解散の定義 会社解散とは、営んでいた事業活動をやめ、法人格を消滅させる手続きに入ることを指します。 経営者が解散を選択するケースとしては、業績悪化により事業継続が困難になった場合や、後継者不在により事業承継ができない場合などがあるでしょう。 会社解散は株主総会による決議によって決定される場合が多いですが、定款で定める期間満了や、特別な事由の発生など、会社法には解散の要件が他にも定められています。 株式会社は、次に掲げる事由によって解散する。 一 定款で定めた存続期間の満了 二 定款で定めた解散の事由の発生 三 株主総会の決議 四 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。) 五 破産手続開始の決定 六 第八百二十四条第一項又は第八百三十三条第一項の規定による解散を命ずる裁判 会社法471条 しかし、会社解散をしたからといって即座に法人格が消滅するわけではありません。 会社の法人格を消滅させるためには、次に説明する清算を行う必要があります。 会社清算の定義 会社清算とは、解散した会社が所有する財産を換価し、債権者への弁済を行った後に、残余財産を株主または出資者に分配する手続きのことを指します。 解散を行った株式会社は、清算しなければならないと会社法に定められています。 株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない。 一 解散した場合(第四百七十一条第四号に掲げる事由によって解散した場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。) 二 設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合 三 株式移転の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合 会社法475条 清算段階に入った会社は清算株式会社と呼ばれ、清算人を置かなければなりません(会社法477条)。通常、定款で定められている者や、株主総会決議によって選任された者などが清算人となります(会社法478条)。 清算人による現務の結了、残債権の取り立て、残債務の返済、残余財産の分配が完了し、清算手続きが終了することにより、会社の法人格は消滅します。 会社清算は、会社の残務整理を完了し、法的に会社を消滅させるために必要な手続きと言い換えることができるでしょう。 会社解散・清算の必要性とメリット 事業の継続が困難になってしまった場合に、解散・清算を行わないでいると、休業状態となるでしょう。 事業活動をしておらず休業していたとしても、会社の法人格が存続している以上、納税や登記など、法的に必要な手続きは継続しなければなりません。 しかし、法律に則って会社解散・清算を行うことで、税負担の解消や登記・決算申告の必要性がなくなるなどのメリットがあります。 税金の負担を解消できる 事業活動の有無にかかわらず、会社が存続する以上は法人税を支払わなければなりません。 しかし、会社解散・清算をすることで、税金がかかることはなくなります。 会社解散に際して専門家に手続きを依頼した場合には、最低でも数十万程度の費用が発生するでしょう。しかし、休業状態で法人税を支払い続けるよりは低コストで終了する場合もあります。 役員重任登記が不要になる 会社が事業活動を行っていなかったとしても、役員の任期が終了した場合には重任登記を行わなければなりません。 この手続きを行わないままだと、代表者は100万円以下の過料に処される可能性があります。過料はあくまで行政上の制裁であり、刑罰ではありませんが、会社解散・清算の手続きを完了させることで、過料を徴収されるリスクを回避することができるでしょう。 決算申告が不要になる 株式会社は事業を行っていなかったとしても、存続している限り、決算申告を行わなければなりません。 収益がゼロの場合はその旨を申告しなければなりませんが、会社を解散・清算することで、このような申告の手間もなくなります。 会社解散・清算の手順 株主総会による解散決議 経営者自身の意思で会社を解散しようとする場合には、株主総会による特別決議を得る必要があります。 特別決議とは、会社の根幹に関わるような重要な事項を決める際の決議方法です。 特別決議は、株主総会で行使できる議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の三分の二以上による多数の賛成によって成立します。 次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(略)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(略)以上に当たる多数をもって行わなければならない。 ・・・略。 十一 第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会 会社法309条2項 会社解散の要件となる株主総会決議について定めた会社法471条は、「第八章」に規定されています。 すなわち、上記規定の適用対象となるため、特別決議が必要なのです。 解散登記・清算人選任登記 解散決議が可決されたら、清算人を選任する必要があります。 清算人は予め定款に記載されているケースや、株主総会の決議によって選任されることが多いです。いずれの方法でも清算人が決まらない場合には、取締役が清算人となります。 解散決議と清算人選任が完了したら、解散が決まった日から二週間以内に、解散登記と清算人選任登記を行わなければなりません(会社法915条)。 解散、清算人選任登記を行う場合には、「株式会社解散及び清算人選任登記申請書」を本店所在地を管轄する法務局に提出します。 登記事由や登記すべき事項などを記載し、定款や株主総会議事録などを添付します。 登記費用についても同じタイミングで支払います。 法務局が公開している申請書のサンプルを参考にしてください。 解散の届け出 会社を解散した場合、法務局への解散・清算人選任登記だけではなく、税務署や各都道府県の税事務所に解散の届け出を提出する必要があります。 税務署には「異動届出書」、「給与支払事務所等廃止届」、「履歴事項全部証明書」などを提出します。 「異動届出書」の提出期限は定められていませんが、解散後、遅滞なく行わなければなりません(法人税法施行令第18条)。 他にも、社会保険や雇用保険、労働保険などに関連する書類の提出が必要な場合もあります。これらは原則として提出期限が定められているため、自分の会社で提出しなければならないのか、きちんと確認しておきましょう。 解散時に提出が必要な主な書類 社会保険雇用保険労働保険書類名健康保険厚生年金保険適用事業所全喪届雇用保険適用事業所廃止届労働保険確定保険料申告書提出先日本年金機構管轄ハローワーク労働基準監督署期限事業所を廃止した日から5日以内事業所を廃止した日の翌日から10日以内事業所を廃止した日の翌日から50日以内 官報公告・個別催告 公的機関への届け出を終えたら、官報で解散の事実を公告します。 官報公告は、債権者に対して会社の解散を通知する目的があります。 債権者が判明している場合には、個別催告も必要です。 官報公告を行ってから2ヶ月が経過しなければ、清算手続きに進むことはできません。 財産目録・貸借対照表の作成 会社の解散が決まると、清算人は会社の財産目録と賃貸対照表を作成しなければなりません(会社法492条1項)。 財産目録を作成する際には、会社が所有する全ての資産(土地、建物、機械など)をリストアップし、その詳細を記録します。一方、賃貸対照表には、会社が負っている債務や未清算の請求などの負債を示します。 これらの文書は、解散後の清算手続きを円滑に進めるために不可欠です。 債務の弁済・残余財産の分配 財産目録・貸借対照表を作成したら、清算人は残っている債務を返済していきます。清算手続きでは、会社が所有している財産を売却し、その収益を使って債務を返済するケースが一般的でしょう。 債務の返済が完了し、残余財産が確定した場合、その後は残余財産を企業の株主に分配する必要があります。 残余財産とは、すべての債務が返済された後に企業に残る資産を指します。残余財産を株主に分配する際には、通常、これらの資産を現金化します。 非上場株式や固定資産が多い場合など、資産を現金化するまでに時間がかかる可能性があるため、計画的な処理が必要です。 残余財産を適切に処理するためには、司法書士や弁護士などの専門家に相談し、適切な助言を受けることが重要です。 確定申告 会社が解散・清算した場合、「解散事業年度確定申告」と「清算事業年度確定申告」の2種類の確定申告を行わなければなりません。 事業年度開始の日から解散日までを解散事業年度と呼びます。作成した財産目録と貸借対照表を基にして、解散の翌日から2ヶ月以内に、清算人は解散事業年度に関する確定申告を行います。 解散後は、その日から1年間が清算事業年度となり、毎年事業年度が終わるごとに、清算中の所得を申告しなければなりません。確定申告書は、各事業年度の終了後2カ月以内に税務署に提出します。 清算結了登記 清算事務が完了した後は、精算株式会社は遅滞なく決算報告の作成を行う必要があります(会社法507条1項)。 また清算人は、この決算報告を株主総会に提出し、承認を受けなければなりません(会社法507条2項)。 清算の承認を受けた場合、2週間以内に、法務局に清算結了登記を申請し、清算手続きは終了します。 会社解散・清算にかかる費用 会社を解散する場合、各種登記のための費用や、従業員への退職金の支払い、税金納付などの負担がかかる可能性があります。 登記費用 会社を解散・清算した場合の登記にかかる費用は以下の通りです。 会社解散・清算の登記でかかる費用 解散登記費用:3万円 清算人選任登記:9千円 清算結了登記費用: 2千円 従業員への退職金 会社が解散する前に、従業員に退職金を支給します。 従業員の勤続年数や給与に応じて、退職金の額が変わります。 税金 会社を解散する際には、不動産や在庫などの有形資産を売却して収益を得ることがあります。この際、売却によって得られた収益には法人税がかかります。 また、清算期間中の収益には消費税が課税されることがあります。たとえば、土地の売却は非課税とされますが、建物の売却益は課税されます。不動産の売買が行われる場合には、消費税の支払いも考慮する必要があります。 残余財産が確定した後、資本金を超える部分を株主に分配する場合、これはみなし配当と見なされ、所得税が課税されます。上場株式の場合は源泉徴収税率が15. 315%であり、非上場株式や大口株主の場合は20. 42%になります。 関連記事 会社をたたむときの費用はいくらかかる?廃業かM&Aか迷ったら専門家に相談を 官報公告費用 解散を公告する官報へ掲載するため、広告料を支払う必要があります。 この掲載費用は、1行ごとに値段が定められており、一般的には10行で依頼して約3万5,000円必要となります。 会社をたたむ手続きは複雑なため、司法書士や弁護士などに依頼する場合もあります。専門家に依頼すると、数十万円程度の費用が発生するでしょう。 M&A・会社売却で会社解散を回避できる? 経営状況の悪化によって会社解散を余儀なくされる場合や、親族内承継や社内承継が困難で、仕方なく解散・清算手続きを進めて廃業する場合などでも、M&A・会社売却の可能性が残っているかもしれません。 経営難で赤字状態であっても、業種や業界、事業を展開している地域などによっては、買い手候補が見つかる可能性があります。 事業の継承を諦めて、会社解散・清算手続きを進める前に、M&A・会社売却を検討してみてはいかがでしょうか。 初回無料相談を行うM&A仲介会社やアドバイザリー会社なども近年増えてきています。 会社や事業を後世に残したいという意思があるなら、専門業者に相談してみましょう。 --- ### 個人事業主の廃業のデメリットは?廃業手続きと廃業以外の選択肢まとめ - Published: 2024-03-26 - Modified: 2024-04-02 - URL: https://atomfirm.com/manda/17715 - Categories: 事業承継, 廃業 個人事業主の廃業のデメリットは?廃業手続きは?廃業のタイミングは?廃業費用はいくら?個人事業は売却できる?この記事では個人事業主の廃業手続きについて、解説しています。現在廃業をご検討中の個人事業主の方は、是非ご覧ください。 個人事業主の廃業のデメリットは? 個人事業主の廃業手続きとは? 廃業手続き以外の個人事業主の選択肢は? 個人事業の後継者がいないまま、高齢化により、廃業するケースは多いものです。しかし、せっかく今まで続けてきた個人事業を、自分の代で廃業するのは惜しいものですよね。 この記事では、個人事業主の廃業のデメリット、廃業のタイミング、廃業手続き、廃業以外の選択肢などについて解説しています。 現在、廃業手続きをするかご検討中の個人事業主の方など、是非さいごまでご覧ください。 個人事業主の廃業とは? 個人事業主の廃業とは? 個人事業主の廃業とは、税務署に廃業届などを出して、個人事業を終了することをいいます。 高齢となり後継者もいないことから自主的に個人事業をやめる場合や、事業が立ち行かなくなり破産して廃業せざるを得ない場合もあるでしょう。 個人事業主の廃業の理由 経営者の高齢化・後継者の不在 経営不振 法人成りetc. 個人事業主の場合、会社をたたむためのいわゆる「解散」や「清算」といった手続きではなく、一定の方法で廃業手続きをおこなう必要があります。 個人事業主の廃業のタイミング 個人事業主の廃業のタイミングについては、特に急ぐ必要性がない場合、年末を目安にするとよいでしょう。 個人事業主の場合、毎年1月1日~12月31日までの1年間に生じた所得税や消費税の確定申告をおこないますが、廃業する年は1月1日~廃業日までとなります。 設備や在庫の処分などの廃業費用を経費として計上し、所得を圧縮して節税を狙うには、それらに対処できるだけの十分な時間を確保することがマストです。 仮に9月1日に廃業した後、9月30日に廃業費用が発生しても、基本的には経費として計上できません。 場合によっては、例外的に「事業を廃止した場合の必要経費の特例」により、廃業後の必要経費を計上できるケースもあります。しかし、税務署によって見解が異なり必要経費として認められないおそれがあります。また、更生の請求という特別な手続きをおこなう必要が生じます。 そのため、廃業日はできる限り12月31日に近づけて、確定申告とともに廃業手続きを進めるのが無難といえるでしょう。 個人事業の廃業費用の相場は? 個人事業主が、廃業のために税務署などへ届出を提出する場合、費用は発生しません。 設備・在庫の処分、店舗・工場の現状回復、廃業にともなう転居、違約金や解約金、金融機関への返済などに、費用がかかります。 廃業の費用総額についてのある調査では、廃業した個人事業主のうち、100万円以上の廃業費用が掛かったと回答した割合は全体の18. 4%にのぼりました。 廃業の費用総額 廃業費用割合0円31. 0%1円~50万円未満35. 8%50万円~100万円未満14. 7%100万円~500万円未満13. 6%500万円~1000万円未満2. 9%1000万円~1. 9% みずほ情報総研(株)「中小企業・小規模事業者の次世代への承継及び経営者の引退に関する調査」(2018 年 12 月)のリサーチ資料をもとに、中小企業庁編「2019年版小規模企業白書」72ページに掲載されている「第2-1-42図」を参考に作成しました。 廃業するにもある程度費用がかかります。個人の資産でまかなうリスクがあることを肝に銘じて、廃業手続きを進める必要があります。 廃業費用の負担を軽減するためにも、たんに個人事業をたたむのではなく、個人事業を売却するという方法を検討してみてもよいでしょう。 個人事業主の廃業... 3つのデメリットとは? デメリット①個人事業を続けられない 個人事業主が廃業する場合、廃業以後、個人事業を続けられないというデメリットがあります。 たしかに、個人事業を廃業することで、いままで感じていた事業運営の責任から解放されるメリットはあります。 しかし、愛着のある事業をたたむことで、寂しさを感じることでしょう。いままで築いてきた事業がなくなってしまうのは、非常につらいものです。 あとから再開したいと思っても、廃業にともない事業に必要な許認可などは返納してしまうので、再開するには、あらためて許認可をとることが必要です。また、設備や備品の準備も一から始めなければなりません。 また、将来性のある事業や地域貢献できる事業など、価値のある事業の廃業は、社会にとっても大きな損失となります。 ほかにも、個人事業を廃業することで、取引先にも影響を与える可能性もあります。従業員がいる場合は、従業員の今後の食い扶持をどうするかという問題も浮上します。 デメリット②資産を高額売却できない 廃業にともない、必要なくなった在庫や設備、不動産については売却や廃棄することになります。 処分費用がかかるよりは、売却できたほうがよいという考えて、資産の売却にのぞむ個人事業主は多いものです。その場合、足元を見られ、安値で資産を買いたたかれてしまうことがあります。 一方、個人事業そのものを、第三者に売却する(事業承継をおこなう)という方法であれば、資産価値を適切に評価してもらえることも多いものです。 たんなる廃業ではなく、事業承継という選択を検討してみる価値はあるでしょう。 デメリット③廃業後の生活資金の不安 廃業後の生活資金の確保は、多くの個人事業主にとって大きな不安といえます。 廃業すれば、事業収入が途絶えてしまいます。ですが、廃業後も、ご自身の生活費、借入金返済、ご家族の養育費など、当然お金が必要です。 老後資金といえば、貯金のほかにも、小規模企業共済や年金に頼るという方法が考えられますが、それだけではこのご時世、不安を解消することはできないでしょう。 この点、たんなる廃業ではなく、個人事業を第三者に会社売却することができれば、売却益を手にすることができ、老後の生活資金の不安の解消につながります。 関連記事 廃業よりもM&A会社売却の方が利益になるのか?後継者がいない場合はどちらを選択すべき? 個人事業主の廃業手続き①税務関係の届出 税務関係の提出書類・期限・提出先 個人事業主が廃業する場合、税務、雇用保険、社会保険、労働保険、許認可などについて届出をする必要があります。 ここでは、税務関係で問題になる提出書類について確認します。 個人事業主が廃業する場合、税務関係については、以下のような届出が必要になります。 以下の表は、届出の種類と、提出期限をまとめたものです。 書類期限個人事業の廃業等届出書事業廃止から1か月以内事業廃止届出書(個人事業税)事業廃止から10日以内事業廃止届出書(消費税)事業廃止後すみやかに所得税の青色申告の取りやめ届出書青色申告をやめる年の翌年3月15日まで給与支払事務所等の廃止届出書事業廃止から1か月以内所得税の予定納税額の減額申請書第1期分は7/15まで第2期分は11/15まで 2024年3月26日現在の情報です。最新の情報については、ご自身でご確認ください。 廃業等届出書 個人事業主が廃業する場合、個人事業の廃業等届出書(正式名称「個人事業の開業・廃業等届出書」)を、所轄税務署に提出して、所得税の納税義務がなくなったことを国に通知する必要があります。 記入内容については、後ほど解説します。 個人事業の廃業等届出書の提出期限は、事業廃止から1か月以内です。 事業廃止届出書(個人事業税) 個人事業主が廃業する場合、都道府県税事務所にも、個人事業税の納税義務がなくなったことを通知するために、廃業の届出が必要です。 届出書の名称としては、都道府県で若干異なり「個人の事業の開始等の報告書」、「事業開始等申告書(個人事業税)」など呼ばれています。 都道府県によって書式が異なりますが、事業所の所在地、屋号、事業の種類、氏名、廃止の年月日、廃止の理由などを記入することになるでしょう。 個人事業税に関する事業廃止届出書の提出期限は、事業廃止から10日以内です。 所得税の青色申告の取りやめ届出書 個人事業主が、廃業のため青色申告を取りやめる場合は、「青色申告の取りやめ届出書」も提出する必要があります。 記入内容 青色申告書を取りやめる年 青色申告をしていた期間 取りやめる理由etc. 青色申告取りやめ届出書は、事業を廃止しようとする年の翌年3月15日までに、所轄税務署に提出する必要があります。通常は、廃業等届出書と同時に提出することが多いでしょう。 事業廃止届出書 消費税の納税義務がある個人事業主は、廃業する事業のほかに課税売上にあたる所得がない場合、「事業廃止届出書」の提出も必要です。 記入内容 事業を廃止する日 納税義務者となった日etc. 消費税の事業廃止届出書は、事業廃止後すみやかに、所轄税務署に提出する必要があります。 給与支払事務所等の廃業届出書 給与支払事務所等の廃止届出書(正式名称「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」)は、従業員や事業専従者等に給与を支払っている個人事業主が廃業する場合に、所轄税務署に提出する書類です。 記入内容 事業を廃止する日 廃止の理由について「廃業又は清算終了」にチェックをいれるetc. 給与支払事務所等の廃止届出書は、事業廃止から1か月以内に提出する必要があります。 予定納税額の減額申請書 所得税の予定納税額の減額申請書は、前年に比べて所得の減少が予想される場合に、納税の負担を軽減するために、所轄税務署に、予定納税額の減額申請をする書類です。 予定納税とは? 予定納税とは、前年度に所得税・復興特別所得税を15万円以上納税した場合、その翌年は、確定申告を待たずに前もって、予定納税基準額の3分の1にあたる金額を年2回、7月と11月に納付しなければならないという制度。 税金を払いすぎた場合は確定申告をおこなえば還付されますが、廃業する個人事業主にとって予定納税が経済的負担となることは否めません。 そのため、個人事業を廃業をする場合は、減額申請書は提出しておくべきでしょう。 記入内容 予定納税の通知を受けた金額 減額申請する金額 減額申請の理由 添付書類の名称 申告納税見積額等の計算書減額申請する年の6月30日時点の所得金額・税額の見積もり、同年10月31日時点の所得金額・税額の見積もりを記入etc. 予定納税をする前に先立って申請する必要があるため、予定納税額の減額申請書については、第1期分については7/15まで、第2期分は11/15までが提出期限となります。 廃業届の書き方は? 廃業届を出す場合、「個人事業の開業・廃業等届出書」の書式を入手し、書式名の「開業」に二重線を引きます。 まずは、確定申告をする所轄税務署、提出日、納税地、氏名、生年月日、職業(個人事業の職種)、屋号などを記入します。屋号が無い場合は、空欄にしておきます。 そして、廃業の内容について、以下のような項目を記入します。 廃業届に記入する項目(一例) 廃業の理由法人成り、業績不振、高齢etc. 事業の引継ぎの場合、譲渡先の住所・指名を記入 所得の種類不動産所得・山林所得・事業所得から全部または一部を選択 法人成りの廃業の場合設立法人名、代表者名、法人納税地、設立登記日 廃業日 廃業にともなう「青色申告取りやめ届出書」「消費税の事業廃止届出書」の提出の有無 給与等の支払い状況専従者や使用人がいる場合に記入 個人事業の廃業届の書式については、国税庁のホームページでダウンロードすることができます。廃業届の書き方についても、紹介されています。 よく分からない場合は、チャットボットやタックスアンサー、国税相談専用ダイヤル、面接などの方法で、国税庁に相談できるので活用してみてください。 個人事業主の廃業手続き②税務以外 ここでは、個人事業主が廃業する際に必要となる手続きのうち、税務以外の届出について確認していきましょう。 書類期限事業主事業所各種変更届変更があった日の翌日から10日間事業所関係変更(訂正)届変更があった日から5日以内各称・所在地等変更届変更があった日の翌日から10日以内廃業届廃業後すみやかに 個人事業主が廃業する場合、税務以外には、雇用保険、社会保険、労働保険、許認可などの手続きが必要です。 雇用保険に関係する書類としては、個人事業主が廃業する場合、事業主事業所各種変更届出書を、ハローワークに、変更があった日の翌日から10日以内に提出する必要があります。 社会保険に関係する書類としては、個人事業主が廃業する場合、事業所関係変更(訂正)届を、社会保険事務所に、変更があった日の翌日から5日以内に提出する必要があります。 労働保険に関係する書類としては、個人事業主が廃業する場合、各称・所在地等変更届を、労働基準監督署に、変更があった日の翌日から10日以内に提出する必要があります。 許認可については、個人事業主が廃業する場合、廃業届を所轄行政機関に対して、廃業後すみやかに提出する必要があります。 個人事業主に廃業以外の選択肢はある? ①休業 将来的に事業再開を目指す可能性がある場合は、廃業ではなく、事業活動を一定期間、事業を休業するという方法が考えられます。 個人事業主が休業する場合、以下のような書類を関係各所に提出します。 個人事業の休業 異動届出書/個人事業開業・休業・廃業・変更届出書所轄税務署・都道府県税事務所に提出 消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書所轄税務署に提出 給与支払い事務所等の廃止届出書所轄税務署に提出 健康保険・厚生年金保険適用事務所全喪届社会保険事務所に提出 なお、休業中であっても確定申告は必要になります。 赤字は3年間繰り越せるので、とくに純損失の繰り越しがある場合は、忘れずに確定申告をおこないましょう。 ②個人事業の事業承継 個人事業主が高齢化などにより自身で事業を継続できない場合、事業承継という方法が考えられます。 事業承継には、親族内承継、従業員承継、M&Aによる第三者承継などがあります。 事業承継の種類 親族内承継子どもや親戚に事業を引き継ぐもの 従業員承継従業員に事業を引き継ぐもの M&Aによる第三者承継事業を買いたい第三者に、事業を引き継ぐもの 近年では、M&Aによる第三者承継も増えています。 経営ノウハウのある第三者、新たに事業にチャレンジしたい第三者に個人事業を売却することで、事業の存続がかない、譲渡益を手にできるメリットがあります。 M&Aによる事業承継の手順としては、個人事業の後継者探し(買い手探し)をおこない、個人事業の売却価格の交渉を経て、最終契約を締結し、現経営者の廃業手続きと後継者の開業手続きをおこないクロージングとなります。 M&Aによる事業承継の手順 個人事業の後継者探し 売却価格などの交渉 現経営者の廃業手続き・後継者の開業手続き 現経営者の廃業手続きについては、先ほど述べたのでここでは割愛します。 後継者の開業手続きについては、以下のような届出が必要です。 書類期限個人事業の開業届出書事業開始から1か月以内事業開始等申告書事業開始から1か月以内所得税の青色申告承認申請書事業開始日から2か月以内1/1~1/15の開業は3/15まで給与支払事務所等の開設届出書事業開始から1か月以内所得税の減価償却資産の償却方法の届出書事業開始年度の確定申告の時期まで 上記のほか、消費税について課税事業者を選択する場合や、簡易課税制度を利用したい場合には、そのための届出が必要になります。 また、個人事業の許認可については、後継者があらためて申請する必要があります。 数か月で許認可の申請が通ることもありますが、業種・業態によっては1~2年程度の期間が必要になるケースもあります。 個人事業の事業承継については、円滑に事業を引き継げるよう計画的に進める必要があります。 廃業手続きを個人事業主が相談できる窓口 廃業について個人事業主が相談できる窓口としては、商工会や事業承継・引継ぎ支援センター、金融機関、税理士などの士業専門家、M&A仲介会社などがあります。 相談先の特徴、相談のメリットについては「M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる?」の記事で、詳しく解説しています。 廃業手続きの進め方について、個人事業主が相談する場合、上記のような相談先のほか、所轄官庁などに直接問い合わせるという方法も考えられます。 たとえば「廃業届や青色申告取りやめ届出書の記入方法で悩んでいる」という場合、国税庁に問い合わせをおこないます。国税庁では、チャットボット、電話相談、対面相談などが実施されています(「国税に関するご相談について」)。 国税庁以外でも、難しい手続きについては関係各所に直接お問い合わせなさるほうが、より確実で早いといえるでしょう。 まとめ いかがでしたでしょうか。 今回は、個人事業の廃業について、デメリット、廃業の手続き、事業承継のメリットなどをまとめました。 個人事業を廃業するにも、お金がかかります。また、廃業後の生活を考えたとき、第三者に事業承継をおこなうという選択肢には、非常にメリットがあります。 事業売却をおこなうことで、老後の生活資金の不安の解消でき、ご自身の事業も後世まで残すことができるからです。 第三者への事業承継に興味があるという方は、国が主導する事業承継・引継ぎ支援センターや、民間のM&A仲介会社に相談してみましょう。 --- ### M&Aで退職金はどうなる?事業譲渡や株式譲渡の役員退職金も解説 - Published: 2024-03-22 - Modified: 2024-04-02 - URL: https://atomfirm.com/manda/17365 - Categories: 事業譲渡, 事業承継, 株式譲渡 M&Aで退職金はどうなる?事業譲渡の退職金は?株式譲渡なら役員退職金スキームが税金対策になる?この記事では、M&Aにともない退職金を誰が支払うのか、役員退職金を使ったお得な節税スキームについて解説しています。中小企業の経営者の方で、M&Aをご検討中の方など、是非最後までご覧ください。 M&Aで退職金はどうなる? M&A後、従業員の退職金を支払うのは買い手? M&Aにおける役員退職金スキームの活用法は? M&Aをご検討中の経営者の方は、ご自身の役員退職金や、従業員の退職金に関心をお持ちの方も多いでしょう。 株式譲渡をおこなう場合、譲渡対価を退職金代わりにしようとお考えの方も多いかもしれませんが、役員退職金スキームを用いれば、手元により多くのお金を残せる可能性もあります。 この記事では、M&Aをおこなった場合に、誰が退職金を支払うのか、役員退職金スキームはどのようなものなのかについて解説しています。 是非さいごまでご覧ください。 M&Aと退職金①事業譲渡の場合 従業員の退職金 事業譲渡によるM&Aの場合、譲渡対象となる事業に関連する従業員は、売り手側企業を退職し、買い手側企業へ移籍することになります。 そのため、退職金規定などがある場合、M&Aの時点で、退職金の支給が問題になります。 労働協約、就業規則、労働契約に退職金規定がある場合などは、従業員に対して退職金を支払う義務が発生するでしょう。 事業譲渡によるM&Aの場合、従業員の退職金の支給の流れについては、以下の2つのパターンが考えられます。 パターン1 事業譲渡のタイミングで、売り手側企業が退職金を支払う。 従業員が買い手側企業に移籍した後、その企業を退職する時に、その企業から退職金を支払う。 パターン2 事業譲渡のタイミングで、売り手側企業は、買い手側企業に退職金を引き継ぐ。この時点では、売り手側企業からの退職金の支払いはない。 従業員が買い手側企業に移籍した後、その企業を退職する時に、その企業から「売り手側企業から引き継ぎをうけた退職金」と「買い手側企業での勤務に対応する退職金」をあわせて支払う。 なお、買い手側企業に移籍しない従業員については、依然として、売り手側企業の社員です。そのため、売り手側企業を退職しない限り、退職金の支給はありません。 また、事業承継にともない、みずから退職を選んだ社員については、退職金規定などの要件を満たす場合、その時点での雇用主から退職金を支給することになります。 たとえば、従業員が買い手側企業への移籍を拒否した後、配置転換となり、それが理由で自己都合退職するようなケースが考えられます。このケースでは、売り手側企業が、退職金規定にしたがい退職金を支払うことになります。 社長・役員の役員退職金 事業譲渡をおこなう場合、会社の一部または全部の事業を売却したにとどまり、会社そのものは存続し、依然として経営権は現経営者の手に残ります。 そのため、現経営者の役員退職金は、事業譲渡のタイミングでは問題になりません。将来、会社の経営から退くタイミングで、売り手側企業が負担することになります。 社長以外の役員についても、売り手側企業に在籍し続けることがほとんどです。事業譲渡にともない、売り手側企業を退職するようなケースでない限り、M&Aの時点では、役員退職金は問題にならないといえます。 事業譲渡と役員退職金 売り手側企業を退職する時に、売り手側企業から、役員退職金を支払う M&Aと退職金②株式譲渡の場合 従業員の退職金 株式譲渡によるM&Aが行われた場合、会社の所有権や経営権が、買い手側にうつるだけです。 会社そのものは存続するため、従業員は、新しい経営者のもとで働くことが可能であり、会社が倒産したときのように、会社都合による退職という扱いにはなりません。 つまり、株式譲渡によるM&Aが実行されたタイミングでは、退職金は問題になりません。その後、新体制となった会社を退職する時が来たら、退職金の支給が問題となります。 退職金の支給内容については基本的には、売り手企業側の制度を、買い手企業側が引き継ぎます。 つまり、買い手側企業は、売り手側企業出身の従業員については、新たに合意を締結したりしない限り、売り手側企業で適用されるはずだった退職金制度にもとづいて、退職金を支払うことになります。 株式譲渡と従業員の退職金 M&Aの実施後、従業員が新体制となった会社を退職する時に、退職金の支払いが問題となる 売り手側企業の制度にもとづいて、新しい経営者から退職金を支給する ただし、買い手企業と新しい雇用契約を締結した場合などは、従前の労働条件とは変わってしまう可能性があります。 M&A成約後も従業員の安定した雇用維持を図るのであれば、その旨をM&Aの最終契約書に落とし込んでおく必要があるでしょう。 社長・役員の役員退職金 役員退職金をもらうための手続き 役員退職金は、定款または株主総会決議にもとづき支給されます。 ただし、役員退職金について定款規定を作っている会社は、あまり多くありません。 そのため、ほとんどの企業では、社長や役員が役員退職金を受け取るには、株主総会決議を経る必要があるといえます。 株主総会決議は、株式を譲り受けて新しく株主となった買い手側がおこなうことになります。 そのため、売り手側の経営陣の役員退職金の支給について、買い手側の協力を得る必要があります。 この場合、役員退職金スキームのメリットを、買い手側にも理解してもらう必要があるでしょう。 役員退職金スキームとは 「経営者をもうやめたい」と考えて株式譲渡によるM&Aをおこなう場合、現経営者は退任を予定していることでしょう。 退任するからには、役員退職金を手にしたいものです。 株式譲渡をおこなえば、その譲渡対価を手にすることができます。そのため、譲渡対価をそのまま退職金代わりにするのも良いでしょう。 しかし場合によっては、株式の譲渡対価の一部を、正式に「役員退職金」として受け取ることで、手取りを増やすことができます。 これが、いわゆる「役員退職金スキーム」と呼ばれるものです。 役員退職金スキームは、売り手側だけでなく、買い手側のメリットにもなります。 役員退職金スキームの特徴 売り手側のメリット譲渡益の手取りを増やせる節税方法のひとつ。株式譲渡の対価の一部を「役員退職金」とすることで、譲渡益にかかる税金が減る。役員退職金は、退職所得の税制優遇を受けられる。 買い手側のメリット役員退職金を支出することで、純資産が減少し、M&Aの対価をおさえることができる。役員退職金を損益算入することで、利益が圧縮され、法人税の節税につながる。 役員退職金スキームは、株式譲渡の譲渡益の手取りを増やせる節税方法のひとつですが、注意点もあります。 役員退職金スキームの注意点としては、「すべてのケースにおいて、売り手にとって節税対策になるとは限らない」という点です。 役員退職金スキームを活用する場合は、よくシュミレーションをおこない、損をしないように注意を払う必要があります。 M&Aと役員退職金 退職金スキームを活用しない場合 ここでは、役員退職金スキームを活用しない場合と、活用した場合のシュミレーションをおこないます。 まずは役員退職金スキームを活用しない場合について、見ていきましょう。 事例1 ある社長が資本金1000万円で会社を立ち上げた 勤続年数30年で、株式譲渡による会社売却をした 株式譲渡の対価は、5億円だった 株式譲渡にあたってM&A仲介会社を利用。手数料が2800万円かかった 役員退職金の支給はない この場合、株式の譲渡所得にかかる税金(所得税・復興特別所得税)の税額は9835万5300円となります。 税金とM&A仲介手数料を差し引くと、手取りの金額は3億7814万4700円です。 計算結果 譲渡所得の金額※譲渡対価-(取得費・資本金+株式譲渡の仲介手数料)=譲渡所得・5億円-(1000万円+2800万円)=4億6200万円 税金(所得税・復興特別所得税)※譲渡所得×20. 315%=税金・4億6200万円×20. 315%=9385万5300円 手取りの金額※株式譲渡の対価-(税金+手数料)=手取りの金額・5億円-(9385万5300円+2800万円)=3億7814万4700円 役員退職金スキームを活用した場合 では今度は、株式譲渡の対価の一部を「役員退職金」として受け取る場合、税金や手取りの金額にどんな変化があるか見ていきましょう。 会社の資本金、社長の勤続年数、譲渡対象となる株式が5億円相当であること、M&A仲介手数料については、さきほどと同様の条件にします。 役員退職金についてはケースバイケースですが、今回は、最後に受け取った役員報酬の月額(最終報酬月額)が80万円だったと仮定して、功績倍率法にもとづき7200万円と仮定します。 事例2 ある社長が資本金1000万円で会社を立ち上げた 勤続年数30年で、株式譲渡による会社売却をした 株式譲渡の対価は、当初5億円を想定。退職金スキームを活用し、一部を「役員退職金」として受け取ることになった 役員退職金は7200万円※功績倍率法による役員退職金最終報酬月額80万円×役員在任期間30年×功績倍率3倍=役員退職金7200万円 株式譲渡にあたってM&A仲介会社を利用。手数料が2800万円かかった この場合、株式の譲渡所得は4億2800万円となり、その税金(所得税・復興特別所得税)は7922万8500円になります。 計算結果①(株式譲渡の税金) 譲渡所得の金額※5億円のうち、7200万円が役員退職金となるため、譲渡対価は4億2800万円となる。※譲渡対価-(取得費・資本金+株式譲渡の仲介手数料)=譲渡所得・4億2800万円-(1000万円+2800万円)=3億9000万円 税金(所得税・復興特別所得税)※譲渡所得×20. 315%=税金・3. 9億円×20. 315%=7922万8500円 手取りの金額※株式譲渡の対価-(税金+手数料)=手取りの金額・4億2800万円-(7922万8500円+2800万円)=3億2077万1500円 役員退職金は7200万円ですが、退職所得控除額などの税制優遇を受けられるため、結果として課税される金額は2850万円になります。 この2850万円にかかる税金(所得税・復興特別所得税・住民税)は、1163万4684円となります。 計算結果②(役員退職金の税金) 役員退職金の金額7200万円 退職所得控除額800万円+70万円×(30年-20年)=1500万円 税金が課される所得金額(7200万円-1500万円)×1/2=2850万円 退職所得の税金860万4000円+18万684円+285万円=1163万4684円▼税金の内訳※所得税 (2850万円×40%-279万6000円)=860万4000円※復興特別所得税 860万4000円×2. 1%=18万684円※住民税 2850万円×10%=285万円 手取りの金額※役員退職金-税金=手取りの金額・7200万円-1163万4684円=6036万5316円 株式譲渡による手取り額と、役員報酬金による手取り額を合計すると、手取りの金額は3億8113万6816円となります。 計算結果③(手取りの金額) 3億2077万1500円+6036万5316円=3億8113万6816円 役員退職金スキームを活用しなかった場合の手取り額は、3億7814万4700円でした。 一方、役員退職金スキームを活用した場合の手取り額は、3億8113万6816円でした。 両者を比べると、役員退職金スキームを活用したほうが、299万2116円多く手元にお金を残せることが分かります。 このケースでは、株式譲渡によるM&Aにともない、うまく役員退職金スキームを活用できているといえます。 役員退職金でよくある質問 Q. 役員退職金の税制優遇って何ですか? 役員退職金を受け取る場合、所得税の対象となる退職所得の金額は、原則として以下のように計算します。 退職所得の場合、税金がかかる金額は、退職金として受け取った金額から、一定の控除額を差し引いた金額の半分になる点で税制優遇があるといわれています。 退職所得の金額=(収入金額-退職所得控除額)÷1/2 国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)「 No. 1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」より引用。204. 3. 25現在の情報です。最新の情報についてはご自身でご確認ください。 Q2. 退職所得の控除額について教えてください。 退職所得控除額は、勤続年数が20年以下の場合と、20年を超える場合で、計算方法が変わってきます。 勤続年数が20年以下の経営者の方の場合、原則として、40万円×勤続年数が退職所得控除額となります。 勤続年数が20年を超える場合は、800万円+70万円(勤続年数-20年)という計算式で、退職所得控除額を算出します。 勤続年数(=A)退職所得控除額20年以下40万円×A(80万円に満たない場合には、80万円)20年超800万円+70万円× (A-20年) 国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)「 No. 1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」より引用。204. 3. 25現在の情報です。最新の情報についてはご自身でご確認ください。 たとえば勤続年数が15年3ヶ月の場合、端数は切り上げて、勤続年数16年として計算します。勤続16年の場合、退職所得控除額は460万円です(40万円×16年=460万円)。 勤続年数が21年の場合、870万円です(800万円+70万円×(21-20年)=870万円)。 Q3. 役員退職金にかかる税率を教えてください 退職金にかかる税金については、以下のようなものになります。 表の見方としては、さきほどQ1で見たように「(収入金額-退職所得控除額)÷1/2」という計算式で算出した退職所得が「課税される退職所得金額」になります。 たとえば、課税される退職所得金額が195万円の場合、その5%を税金として納める必要があります。 課税される退職所得金額が330万円の場合なら、23万2500円が所得税となります(330万×10%-9万7500円=23万2500円)。 所得税 課税される退職所得金額(円)税率控除額(円)1,000~195万以下5%0195万~330万以下10%97,500330万~695万以下20%427,500695万~900万以下23%636,000900万~1800万以下33%1,536,0001800万~4000万以下40%2,796,0004000万~45%4,796,000 国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) 「別紙 退職所得の源泉徴収税額の速算表」より引用。204. 3. 25現在の情報です。最新の情報についてはご自身でご確認ください。 まとめ いかがでしたでしょうか。 現在、株式譲渡によるM&Aや、事業譲渡をご検討中の経営者の方は、ご自身の役員退職金や、従業員の方の退職金について大きな関心をお持ちだと思います。 ご自身のケースで一番お得な退職金の受け取り方を検討するためにも、一度、M&Aの専門家に相談してみるのも良いでしょう。 M&Aの相談窓口については、「M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる?」の記事をご覧ください。 また、M&A後のご自身の身の振り方については「会社売却後の人生はどうなる?会社売却で経営者・社員等のその後は?」の記事で解説しています。第二の人生の過ごし方について、是非ご参考になさってみてください。 皆様のM&Aが成功することを心より願っています。 --- ### 親族内承継とは何か?子や孫に事業を承継する方法と流れを解説 - Published: 2024-03-21 - Modified: 2024-04-02 - URL: https://atomfirm.com/manda/17005 - Categories: 事業承継 親族内承継とは、経営者が自身の親族に事業を承継させることです。子や孫への事業承継を希望する経営者の方は、後継者が安心して事業を継続できるよう、入念な準備を行いましょう。 親族内承継とは、子や孫に経営を引き継ぐ、事業承継の方法の一つです。 親族内から後継者を見つけて会社を引き継ぐだけの簡単な方法に思えるかもしれませんが、親族内承継は数年単位で時間がかかる場合もあり、入念な準備が必要になるケースが多いです。 子や孫への事業承継を希望する経営者の方は、後継者が安心して事業を継続できるよう配慮する必要があるでしょう。 この記事では、親族内承継の方法と注意点などについて解説します。 親族内承継とは何か? 親族内承継とは 親族内承継とは、経営者が自身の親族に事業を承継させることです。 特に小規模な会社では、事業を引き継ぐ場合には、この親族内承継という手段が用いられるケースがこれまでは一般的でした。 後継者となる親族としては、経営者の子供や兄弟姉妹、配偶者などが考えられます。 会社のことをよく知っている親族に継承することができれば、経営理念や企業文化を円滑に引き継ぐことができます。従業員からの反発を防ぐこともできるかもしれません。 しかし近年、後継者候補となる人材が見つからない「後継者不足」の問題に直面する企業が増えており、親族内承継の割合は減少しています。 親族内承継による事業承継を希望する場合には、早期から対策を行う必要があるでしょう。 親族内承継のメリット 親族内承継の主なメリットとしては、「親族が引き継いでくれることへの安心感」、「スムーズな事業移行」、「企業文化の継承」、「従業員の士気向上」などがあります。 親族内承継では、親族間で事業を引き継ぐため、経営理念やノウハウの共有がスムーズに行えます。経営者の思いや理念を共有しやすく、企業文化を守りながら事業を継続できる可能性が高まります。 また、事前に後継者育成を計画的に進められるため、事業の停滞を最小限に抑えることができます。 従業員にとっても、長年勤めた会社が家族経営で継続されることは、安心感につながるかもしれません。 親族内承継のデメリット 一方で、親族内承継には「後継者の能力不足」、「親族間のトラブル」、「組織の硬直化」などのデメリットも存在します。 親族内に後継者候補がいるからといって、必ずしも事業を継承できる能力を持っているとは限りません。事業を引き継ぐ意思があることはもちろん必要ですが、経営者としての資質を持っているのかどうかを見極めなければなりません。もし能力不足のまま親族内承継をしてしまえば、事業がうまくいかない可能性もあります。 事業承継を巡って、親族間で意見対立や争いが発生する可能性があるのも、親族内承継のデメリットと考えられます。 親族内承継で経営者が交代したとしても、親族経営であることに変わりはありません。親族経営の場合、外部からの意見を取り入れにくく、組織が硬直化してしまう可能性があります。 親族内承継の方法 生前贈与 経営者が生前に後継者に事業を贈与する方法です。 生前贈与により会社の株式を譲渡しておけば、代表者としての立場を交代した後も、新しく経営者となった子や孫などにノウハウを教えて育てることができます。 生前贈与による親族内承継は、経営者が所有する株式を譲渡する形となり、株式の評価額に対して贈与税が課せられます。 相続 贈与の手続きを行うことなく、経営者が亡くなった場合、遺言書に基づいて後継者が事業を承継します。遺言書がない場合は、法定相続人の間で遺産分割協議を行い、誰が事業を承継するかを決めることになります。 分割協議になると、相続人同士でトラブルになるケースもあります。株式の保有数によっては、後継者候補が会社の支配権を単独で所有できない恐れもあります。 親族内承継を希望する場合は、生前贈与によって特定の親族に事業承継しておく方が望ましいといえます。 なお、相続の場合は株式の評価額と受け継いだほかの財産との合計額に対して、相続税が発生します。 関連記事 親の会社を相続したらどうすればいい?会社相続を相談できる窓口とは 親族内承継の流れ ①現状の把握 親族内承継を行いたい場合には、まず自社の現状を確認しなければなりません。 具体的には、株主や親族関係の把握、個人名義の不動産や負債、個人保証などの整理が必要となります。 他にも、財務諸表を分析して、事業の運営状況の評価を行いましょう。 事業の強みや弱点、課題や改善すべき点を明確にすることで、後継者が引き継ぎやすい組織・事業へと磨き上げを行っていきます。 ②後継者の選定 親族内から、事業承継の後継者候補を探します。 後継者候補の能力・適性を判断してから、後継者候補の意思を確認することをおすすめします。 なお、親族内から複数の候補者が出てしまった場合には、綿密にコミュニケーションをとり、誰を経営者にするのかを決めなければなりません。 ③事業承継計画の策定 事業承継計画とは、中長期的な視点から、事業承継の時期、課題、具体的な対策を盛り込んだ計画です。 事業承継後の計画を策定することにより、後継者が事業を進めやすくなることはもちろん、社内関係者や金融機関からの信頼を損なうリスクを低くすることができるでしょう。 事業承継計画の策定は、次の流れで進むケースが一般的です。 現状分析・将来予測 承継時期・承継方法の決定 承継後の事業目標の設定 承継後の課題の整理 事業承継の実行 親族内承継をスムーズに進めるためのポイント 後継者をなるべく早期に決める 後継者を早い段階で決めれば、育成に必要な対策を講じることができます。 現場の仕事を知り、経営者としての自覚を高めていくには長い時間がかかり、数年間ほど必要な場合もあるでしょう。 また、親族内承継は、親族間のトラブルにつながる可能性のある事業承継の手法でもあります。一人の候補者に事業承継することで親族間の人間関係が悪くなってしまったり、相続によって事業承継が発生した場合には相続分などで揉めたりするリスクがあります。 早期に後継者を決めることで、親族内に方針を説明することができ、関係悪化や相続時のトラブルを防ぐことができるかもしれません。 事業承継税制の要件などを整理する 親族内承継は、贈与もしくは相続によって実行されることが一般的です。 贈与を行う場合には贈与税、相続が発生する場合には相続税がかかります。 事業承継税制とは、事業承継に伴い発生する贈与税や相続税の納税を、一定条件を満たす場合に猶予・免除する制度です。 承継後の納税は、多くの後継者が不安になるポイントです。 事業承継税制の適用を受けられれば、税負担が軽減されます。安心して承継後の事業経営を進めることができるでしょう。 関連記事 事業承継税制とは?納税が猶予・免除される要件とメリット・デメリットを解説 個人保証について金融機関と交渉 中小企業の場合、金融機関から借り入れをする際に経営者の個人保証が行われることがあります。 金融機関は現経営者を信頼して融資を行っているため、親族に事業承継をしたとしても、後継者の個人保証による借入が困難になることもありえます。 そのため、後継者を前もって金融機関に周知し、信頼関係を深くしていきましょう。 親族内承継できない場合の手段 社内承継(従業員承継) 親族内に後継者候補が見つからなかった場合の手段の一つとして、社内承継(従業員承継)があります。 社内承継とは、役員や従業員など、社内にいる人材に事業を引き継ぐ方法です。 経営者の近くに長年いた社内の関係者に承継できれば、自社の事業のことをよく知っています。そのため、事業承継がスムーズに進むことが多いのです。 通常、社内承継は親族内承継と比べて後継者候補となる人材の数が増えるため、事業を継続して成長させられそうな後継者を選べるようになるでしょう。 社内承継のメリット 事業をよく知る人材に承継できる 後継者候補を増やすことができる 仲介手数料が不要なケースが多い 関連記事 従業員承継とは?会社を譲る方法・メリット・デメリットまとめ 第三者承継(M&A) 親族内承継も社内承継もできなかった場合、他の会社や経営者などの第三者に会社を売却する手段があります。 第三者承継であれば、親族や社内などの限られた範囲ではなく、どこからでも後継者候補を探すことができます。 第三者承継による事業承継を進める際には、相手と交渉する価格を決定するための企業価値評価や、買い手探しなど、第三者承継を行おうとする場合には専門的な知識とノウハウが必要となることが多いです。 そのため、第三者承継の場合はM&A仲介会社などの専門業者を利用するケースが一般的ですが、成約した価格に応じた仲介手数料が発生します。 他にも、これまでの経営陣とは全く異なる第三者が経営し始めるため、企業文化が喪失したり従業員の不安が強くなったりするリスクもあります。 関連記事 第三者承継の方法は?メリットは?3つの注意点も解説! 親族内承継ができない場合は専門家に相談を 親族内承継ができない場合、社内承継をまずは検討することになるでしょう。 しかし、いずれの手段によっても事業承継が困難な場合は、専門家に相談して第三者承継の手続きを進めていきましょう。 知り合いの経営者や資産家に会社を売却する場合でも、売却価格の金額設定や契約書の作成方法など、注意すべき手順が多いので、専門家に相談したほうがスムーズに進められます。 M&Aの手続き全てを一括して任せたい場合には、M&A仲介会社やM&Aアドバイザリーなどがおすすめです。 契約書の作成やリスクなどを把握したい場合には弁護士、税金対策を行いたい場合は税理士など、目的に応じた専門家に相談し、スムーズな事業承継を進めていきましょう。 --- ### M&Aのデューデリジェンスとは?調査や費用は?事業譲渡のDDは? - Published: 2024-03-21 - Modified: 2024-04-02 - URL: https://atomfirm.com/manda/17028 - Categories: 会社売却の流れ, 事業譲渡, 会社売却の費用 M&Aのデューデリジェンスとは?費用は約50万~300万円?調査内容は?この記事ではM&Aのデューデリジェンス(DD・買収監査)について解説しています。中小企業のM&Aをご検討中の方は是非ご覧ください。 M&Aのデューデリジェンスとは?タイミングは? M&Aのデューデリジェンスの費用は?調査内容は? 事業譲渡のデューデリジェンスはどうなる? デューデリジェンスは、デューデリ、DD、買収監査などと呼ばれます。 M&Aにおけるデューデリジェンスは、企業買収や事業譲渡に関する最終契約を締結する前に、買い手側がおこなう調査のことです。 この記事では、M&Aのデューデリジェンスについて、その役割、調査内容、費用、手順などについて解説しています。 現在、M&Aをご検討中の方など、ぜひ最後までご覧ください。 M&Aのデューデリジェンスとは? デューデリジェンスとは? デューデリジェンス(買収監査/DD)とは、M&Aをおこなう際に、買収側が、譲渡対象となる会社や事業の実態を調査することです。 デューデリジェンスの役割は?  買い手側企業にとって、デューデリジェンスは、M&A成立後の経営統合(PMI)の準備といえます。M&Aが成立した後の、会社経営がうまくいくかどうかをイメージするために、デューデリジェンスは必須です。 買い手側企業はデューデリジェンスをおこなうことで、M&Aを実行して良い相手か、M&Aの価格や取引条件をどうするかなどについて、適切な判断をくだすことができるようになります。 デューデリジェンスでおこなわれる調査の範囲は、多岐にわたりますが、なかでも事業デューデリジェンス、法務デューデリジェンス、財務デューデリジェンスの3つが重要といわれています。 関連記事 M&AのPMIとは?PMIの手順は?売り手が協力すべきことは? デューデリジェンスの時期は? デューデリジェンス(買収監査)は、買い手側がM&Aに応じるべきかどうかの最終判断をくだすための調査です。 そのため、基本合意の締結後、最終契約締結のための条件交渉の前に、デューデリジェンス(買収監査)は実施されます。 関連記事 M&Aの流れ・手順を解説!会社を売るためのステップとは? M&Aのデューデリジェンスの調査内容 事業デューデリジェンス 事業デューデリジェンスとは、対象企業のビジネス全体を詳細に調査される買収監査のことです。ビジネスデューデリジェンスとも、呼ばれます。 事業デューデリジェンスでは、ビジネスフローやシナジー効果、事業統合に関連するリスクなどが調査によって把握され、事業計画の実現可能性が精査されます。 具体的には、以下のような内容が調査されることになります。 事業DDの調査内容 事業内容 市場環境 競争力 顧客基盤 仕入高や人件費、宣伝広告費などのコスト 事業の成長性や持続可能性etc. 買い手側企業の責任者によって、当初予想していた収益が得られないと判断されれば、売り手側はM&Aの価格交渉で不利な立場になります。 売り手側としては、自社の強みとなる経営資源や、買い手に与えられるシナジー効果の予測などをおこない、交渉に臨む必要があるでしょう。 事業デューデリジェンスの担当者 事業デューデリジェンスは、ビジネスモデルの調査になるので、買い手企業の担当者がみずからおこなうことが多いでしょう。 経営コンサルタントに依頼することもできます。 財務デューデリジェンス 財務デューデリジェンスとは、売り手側企業の財務諸表がきちんと作成されているのか、株価算定の基礎となる情報が適切かなどを買い手側が調査することです。収益性・財務健全性・将来性などを吟味される買収監査ということができます。 過去数年間の財務諸表については、過去数年分を調査されることが多いです。 財務デューデリジェンスの結果、資金繰りにリスクがあると判断されれば、M&Aの価格交渉に悪影響が生じる可能性があります。また、簿外債務や粉飾決算などが見つかった場合、M&Aの成約そのものが危ぶまれるリスクがあるでしょう。 財務デューデリジェンスの担当者 財務デューデリジェンスは、公認会計士や税理士、買い手側の財務経理担当者などによっておこなわれます。 法務デューデリジェンス 法務デューデリジェンスとは、売り手側企業が締結中の契約について、M&A成立後、買い手側に不利になる契約がないか、M&Aのクロージングの妨げになる問題はないかなどについて、調査される買収監査のことです。 法務DDの調査内容 会社のガバナンス 会社の株式の保有者 官公庁等の許認可 契約書周りの不備(取引先や物件の賃貸借契約など) 知的財産権の状況 人事・労務の問題(人事制度、懲戒・長時間労働、ハラスメント、メンタルヘルスの問題など) 訴訟・紛争のリスク 環境リスク(土壌汚染、排気排水、大気汚染など)と原状回復にかかる費用 反社会的勢力でないことの確認 人事・労務の問題については、人事デューデリジェンス、労務デューデリジェンスとして区分されることがあります。 また、環境リスクについては、環境デューデリジェンスとして区分されることもあります。 法務デューデリジェンスで問題が発覚した場合、買い手側が買収を断念せざるを得ない重大なリスクも多々あります。 法務デューデリジェンスの担当者 法務デューデリジェンスは、弁護士や、買い手側企業の法務担当者によっておこなわれます。 人事や労務の範囲であれば、人事コンサルタントや社会保険労務士に、デューデリジェンスを依頼できる場合もあります。 税務デューデリジェンス 財務デューデリジェンスは、売り手側企業の過去の税務申告で、追徴課税などが課される心配がないかなどを調査するものです。 万一、税務デューデリジェンスで問題が見つかった場合、M&Aの最終契約書の中で、「買い手側から売り手側に対して、追徴課税に相当する金銭を請求できる」という表明・保証条項を締結することも多いでしょう。 税務デューデリジェンスの担当者 税務デューデリジェンスは、税理士や買い手企業側の財務経理担当者によっておこなわれます。 ITデューデリジェンス ITデューデリジェンスとは、情報システムや活用状況を把握して、統合の可能性を評価する調査のことです。 統合によるコスト削減ができるのかなどの見極めや、データの統合などは、今の時代、会社運営とは切り離せない重大な課題といえます。 ITデューデリジェンスの担当者 ITデューデリジェンスは、ITコンサルタントに委託することが一般的です。 M&Aのデューデリジェンスの費用はいくら? デューデリジェンスの相場の目安としては、一般的には、約50万円~500万円程度といわれています。 ただし、依頼する専門家によっても、デューデリジェンスの手数料は異なります。 また、デューデリジェンスにおける調査内容が多ければその分、費用はかかります。 個別の調査項目について、相場の目安としては、以下のとおりです。 事業デューデリジェンス(事業DD)およそ50万円~100万円程度 財務デューデリジェンス(財務DD)およそ100万円~500万円程度 法務デューデリジェンス(法務DD)およそ50万円~300万円程度 税務デューデリジェンス(税務DD)およそ60万円~120万円程度 なお、このデューデリジェンスの費用はあくまで目安です。 会社の規模や、デューデリジェンスを依頼する範囲などによって、費用は異なります。 ご自身がデューデリジェンスを依頼する場合は、依頼する専門家から見積もりをもらうなどして、費用を確認するようにしましょう。 M&Aのデューデリジェンスの手順 調査チームの立ち上げ まずは、買い手側企業は、各専門分野の担当者で構成される調査チームを立ち上げ、調査計画を策定します。 調査対象となる企業の規模や複雑性に応じて、弁護士、会計士、税理士、コンサルタントなどの外部専門家も必要に応じて招集します。 調査の準備 次に、買い手側企業は、調査に必要な資料リストを作成し、買収先企業に開示を依頼します。 資料は財務諸表、事業計画書、顧客情報、従業員情報、訴訟関係資料など、調査項目に応じて幅広く収集します。 資料の分析・調査の実施 買い手側企業は、収集した資料を分析し、買収先企業の実態を詳細に調査します。 事業、財務、法務、税務など様々なデューデリジェンスが実施されます。 必要に応じて、買収先企業の経営陣や従業員へのインタビューによる情報収集もおこなわれます。 調査結果の検討 買い手側企業は、調査結果を踏まえ、買収先企業の価値を評価し、買収価格や契約条件を検討します。調査で発見されたリスクや課題についても分析し、買収後の統合計画に反映します。 調査結果は報告書にまとめ、M&Aの意思決定に役立てられます。 M&Aのデューデリジェンスでよくある質問 Q1. デューデリジェンスの結果、M&Aが中止になることはある? デューデリジェンスの結果、M&Aが中止になることはあります。 たとえば、売り手側企業に多額の簿外債務などがあり、M&Aを実行すれば、買い手側の企業価値をそこなうと判断されるような場合です。 また、中止とまではいかなくても、デューデリジェンスの結果、期待した企業価値を手にすることができないと判断されれば、買い手側企業からM&Aの対価を値切られることもあるでしょう。 Q2. デューデリジェンスにあたって、M&Aの売り手側の心得は? 売り手側の心得としては、デューデリジェンスの前に、会社の磨き上げをおこない、事前にM&Aの懸念点を払拭しておくことです。 会社を良く見せようと思って、その場しのぎで会社の抱える問題を隠したとしても、あとからバレて重大な責任を負う可能性があります。 M&Aの最終契約では、表明・保証条項を締結する例も多いものです。 表明・保証条項とは、一定の事項について売り手側企業が真実であることを表明・保証するという条項です。 売り手側が買い手側に開示した情報が、あとになって真実ではなかったと判明した場合、買い手側企業から損害賠償を請求されるリスクが生じます。 売り手側としては、適切な情報開示ができるように、懸念点を払拭しておく必要があります。 関連記事 事業承継型M&Aの磨き上げとは?磨き上げの目的や対象を解説! Q3. 事業譲渡のデューデリジェンスはどうなる? 事業譲渡とは? 事業譲渡とは、一定の目的のために組織化された有機的一体をなす機能的財産を譲渡する取引のことをいいます。 分かりやすく言い換えると、事業譲渡は、売り手側企業が、買い手側に対して、会社の事業の一部または全部を譲り渡すというものです。 売り手側企業の経営権そのものは、売り手側に残り、個別の財産を買い手側に譲渡するというM&Aスキームになります。 事業譲渡と株式譲渡の比較 中小企業で事業承継型M&Aをおこなう場合、株式譲渡という方法が取られることが多いものです。株式譲渡の場合、買い手側は簿外債務(帳簿に記載のない債務)を知らないうちに承継するリスクがあります。 一方で、事業譲渡の場合は、承継する財産を個別に選択できるので、そのようなリスクは限りなく低くなるといわれています。 事業譲渡のDDのポイントは? 買い手側がもっとも気になる点としては、売り手側企業に簿外債務があるのかということです。これは財務デューデリジェンスの範囲です。 さきほど述べたとおり、事業譲渡の場合、買い手側が簿外債務を引き継ぐリスクは限りなく低いといわれています。 そのため、買い手側が財務デューデリジェンスにおく比重は小さいものといえます。そして、その分、売り手側の調査協力の比重も軽減されるでしょう。 とはいえ、完全に簿外債務のリスクがないとは言い切れません。そのため、商号を継続利用する買い手の場合、想定外の簿外債務に対するリスクヘッジとして、免責登記をおこなう場合が多いのではないでしょうか。 第二十二条 事業を譲り受けた会社(以下この章において「譲受会社」という。)が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負う。2 前項の規定は、事業を譲り受けた後、遅滞なく、譲受会社がその本店の所在地において譲渡会社の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には、適用しない。(以下、略) 会社法22条1項、同2項前段 Q4. セルサイドDDとは何ですか? デューデリジェンスは、従来、買い手側が主導するのが通常でしたが、近年、売り手側もデューデリジェンスをおこなうケースが増えてきました。 売り手側企業が交渉に入る前に、売却価値の最大化を目的として、自社の実態や問題点を見直すために実施するデューデリジェンスが、セルサイドDDです。 セルサイドDDを専門家に依頼する場合、その手数料は、売り手側企業の経営者が負担することになります。 しかしその分、買い手主導のDDが実施される前に、買い手が問題視する点を把握することで、売却価格の減額を主張されたり、M&Aの交渉の長期化・決裂を回避するための対応策を立てられるメリットがあります。 セルサイドDDは、買い手主導のDDに備えるものです。そのため、実施するDDの種類は、事業DD、法務DD、財務DDなど多岐にわたり実施することが多いでしょう。 まとめ M&Aのデューデリジェンスは、買い手側が売り手側企業のビジネスモデルや、財務状況、法律関係などを調査するプロセスです。 デューデリジェンスを主導するのは、買い手側ですが、売り手側も協力する必要があります。 適切な情報開示をすることができなければ、買い手側から損害賠償を請求されたり、M&Aの中止につながったりする可能性があります。 もし現在、自社のビジネスモデルや、財務状況、法務などについて不安がある場合は、民間のM&A仲介会社や、公的機関である事業承継・引継ぎ支援センターなどに相談してみるのはいかがでしょうか。 M&Aの専門家に相談する中で、M&Aを成功させるための課題が見えてくるでしょう。 --- ### M&Aにおける注意点とは?会社売却側・買収側のリスクや確認事項を解説 - Published: 2024-03-19 - Modified: 2024-03-28 - URL: https://atomfirm.com/manda/16328 - Categories: その他 M&Aや会社売却を進めるためには、専門的な知識が必要です。売り手側、買い手側ともに、注意点を踏まえて手続きを行いましょう。 M&Aや会社売却は、専門的な知識がなければ適切に手続きを進めるのが難しい取引です。 準備や検討を始めてから成約に至るまで1年以上かかるケースもあり、各ステップにおける注意点を十分認識しておかなければなりません。 この記事では、会社売却側、会社買収側のリスクや確認すべき事項をまとめています。 M&Aで会社売却側が注意すべき点 客観的な企業価値評価 M&Aで会社を売却する場合、まず重要なのが客観的な企業価値評価(バリュエーション)です。 企業価値評価の際には、自社の強みや成長性だけでなく、市場環境や競合状況なども考慮し、妥当な売却価格を設定する必要があります。 ですが、売り手側が自社の企業価値を計算しようとすると、収益性や将来性を高く評価してしまう傾向があります。 買い手側がどのように判断するかをある程度想定した上で、相手を納得させることのできる売却価格にするよう心がけましょう。 企業価値の評価方法は、DCF法やマルチプル法など、複数の計算方法があります。 これらを用いて算出し、客観性を高めることが重要です。また、会計士やM&Aアドバイザーなどの専門家に依頼し、第三者の視点から評価してもらうのも有効です。 関連記事 M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 売却価格などの条件 企業価値を算定したら、買い手候補との交渉に入ります。 価格の条件交渉においては、譲渡後の成長見込みなども考慮した条件を提示しましょう。通常のビジネスと同様、M&Aの交渉でも、売り手側はなるべく高く売るためのアピールを行い、買い手側はなるべく安く買うための主張をしてきます。 しかし、昨今のM&A市場は売り手市場であり、希望条件に近い内容でクローズできる可能性は十分にあるといえるでしょう。 他にも、従業員や役員の給与・待遇に変化がない旨を保証する内容を契約書に記載させたり、経営者が顧問やアドバイザーとして買収後の企業に残る場合には、その職務内容や期間を定めたりする必要もあるでしょう。 関連記事 M&Aの売り手市場はいつまで?売り手のメリットは?事業承継の動向は 従業員・役員への説明 M&Aが決定したら、従業員や役員に丁寧に説明する必要があります。 説明内容は、M&Aの目的、理由、スケジュール、従業員への影響などです。 しかし、会社売却によって企業が統合されるという情報は、買い手企業との交渉段階では社内に公表すべきではありません。 もし仮に話を聞いた従業員や役員が、SNSなどで情報を漏洩させてしまった場合、M&Aが途中で打ち切られてしまう可能性があるからです。 そのため、最終契約の締結段階まで進んだところで、自社の従業員や役員に説明するのが最適なタイミングでしょう。必要に応じて、個別相談や説明会を開催するなど、不安や疑問に丁寧に答え、理解を得ることが重要です。 M&Aの手続き中に業績を悪化させない M&Aの手続きは数ヶ月から数年かかる場合もあります。 手続き中に業績が悪化すると、価格が減額される可能性があります。 M&Aの手続き中に業績を悪化させないように、本業にも注力する必要があります。 買い手、仲介会社の言いなりにならない M&Aの交渉では、買い手や仲介会社が自社にとって不利な条件を提示してくる場合があります。 相場となる企業評価の額よりも遥かに低額での価格提案や、従業員や役員の保護が確約されていないなど、受け入れるべきではない条件については拒絶することも必要です。 会社売却を優先させようと、不利な条件を受け入れるのではなく、自社や重要員の利益を守るために、毅然とした態度で交渉を行いましょう。 必要に応じて、弁護士やM&Aアドバイザリーなどの専門家に相談し、アドバイスを受けることも有効です。 M&Aで会社買収側が注意すべき点 M&Aの目的を明確にする 会社買収の手続きに入る前に、まずM&Aの目的を明確にすることが重要です。 事業の拡大や新規事業への参入、経営資源の強化やコスト削減、人材獲得や技術力の向上など、M&Aによって実現したい目標は状況によって異なります。 目的が明確でないと、適切なターゲット企業を見つけられず、買収後のシナジー効果もイメージしづらくなってしまいます。 関連記事 M&Aのシナジー効果とは?シナジーの種類と分析まとめ 買収価格などの条件 買い手候補となる企業を選び、トップ面談に進むと、買収価格や従業員の処遇、経営者の退任などの各条件を定めていくことになります。 提示された価格に見合う価値が売り手企業にあるかどうかを評価し、必要があれば、両社が納得できる金額に調整します。 M&Aを実施し、両社が統合された後、役員や社員の待遇・給与がどうなるのかなど、詳細を決めることも必要です。売り手企業側の従業員がM&A後に不満を抱いて、離職が相次ぐような事態にならないよう、注意しなければなりません。 また、中小企業の場合、M&A後は退任・リタイアを希望する経営者も多いでしょう。 しかし、前任経営者に協力してもらうことで、業務のスムーズな引継ぎや統合が進む場合もあります。 M&A後に顧問などの肩書を与えて引継ぎなどに協力してもらうかどうかも、この交渉段階で定めておくと便利です。 デューデリジェンス ターゲット企業を選定し、大まかな条件が整ったら、デューデリジェンス(買収監査)を実施する必要があります。 デューデリジェンスとは、M&Aにおいて買い手企業が売り手企業を細かく調査することです。 具体的には、財務状況、法務状況、人事状況、事業環境などを詳細に調査し、買収に伴うリスクを評価します。財務諸表の分析、訴訟リスクの調査などを行い、ターゲット企業の実態を正確に把握する必要があります。 専門家のサポートを活用し、漏れなく調査を行うことが重要です。 PMI(統合プロセス)の計画と実行 買収手続きが完了したら、PMI(Post Merger Integration:統合プロセス)を実行する必要があります。 PMIは、買収した企業を円滑に自社に統合するためのプロセスです。組織体制の構築、業務プロセスの統合、社内文化の融合など、様々な課題を解決する必要があります。 事前に詳細な計画を立て、売り手側とコミュニケーションを密に取ることで、スムーズな統合を実現しましょう。 従業員への説明と理解を得る 買収によって、従業員の雇用環境やキャリアパスが大きく変わる可能性があります。そのため、買収の理由や目的、今後の計画などを丁寧に説明し、従業員の理解を得ることが重要です。 不安や疑問に耳を傾け、丁寧に対応することで、買収後のスムーズな事業運営に繋げることができます。 説明会を開催したり、社内報やFAQを作成するなど、様々な方法で情報提供を行いましょう。 M&A売り手のリスク・確認事項 期待通りの価格で売却できない可能性 市場環境や競合状況、ターゲット企業の業績など、様々な要因によって、期待通りの売却価格が実現できない可能性があります。 M&Aの手続きでは、基本合意の段階で独占交渉権がつくケースが多いです。プロセスが進むと、複数の買い手から見積もりを取ることは難しくなるでしょう。 買い手企業や仲介会社の提案に妥協できない場合は、なるべく早い段階で他の買い手を探したり、他の仲介会社に相談したりして、選択肢を広げましょう。 なお、デューデリジェンスの結果、買い手に公表していなかった負債などの事実が判明すると、当然最終売却額が下がってしまいます。相手に与える印象もよくないので、調査によって判明しそうな負債やリスクなどは予め伝達しておいた方がいいケースもあります。 担当のアドバイザーに確認して、誠実な対応を心がけましょう。 関連記事 M&Aで会社を高く売る方法とは?買い手へのアピールポイントを解説 情報漏洩 M&Aの過程で、企業情報や顧客情報などが漏洩する可能性があります。特にM&A成約が決まっていない段階で従業員や役員に説明してしまうと、情報漏洩のリスクが高まります。 情報セキュリティ対策を徹底しておかないと、買い手候補からM&Aの打ち切りを告げられてしまうパターンもあるので、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることが重要です。 会社売却後の経営者残留について M&A売り手側の確認事項として、経営者が次の会社に残るのか否かも重要です。 M&Aが成約となると、円滑な事業承継を実現するため、買い手から顧問や相談役などの肩書で会社に残ってほしいと要請される場合があります。 このようなケースでは、会社に残る期間や担当する職務内容などを確認しておきましょう。 M&A買い手のリスク・確認事項 買収価格の支払い負担 買収価格が高額な場合、支払い負担が重くなり、財務状況が悪化する可能性があります。 資金調達方法や財務計画を慎重に検討することが重要です。 期待通りのシナジー効果が得られない可能性 市場環境や競合状況、ターゲット企業との文化の違いなど、様々な要因によって、期待通りのシナジー効果が得られない可能性があります。 事前にターゲット企業との相性や統合後の事業計画を慎重に検討することが重要です。 また、買収後の経営統合がうまくいかず、混乱が生じる可能性もあるでしょう。 統合計画を立て、コミュニケーションを密に取るなど、M&A後の統合プロセスを丁寧に進めることも重要です。 簿外債務の発覚 ターゲット企業に、買収後に発覚する隠れ債務がある可能性があります。 デューデリジェンスを徹底的に実施し、隠れ債務のリスクを把握することが重要です。 M&Aは、事前にリスクを把握し、適切な対策を講じることで、成功の可能性を高めることができます。 上記の確認事項を参考に、M&Aを慎重に進めてください。 まとめ M&Aは、事業拡大や経営資源の強化など、様々なメリットをもたらす可能性があります。 しかし、同時に様々なリスクも伴います。 会社売却側・買収側それぞれが注意すべき点を理解し、慎重に検討することが重要です。 --- ### M&AのPMIとは?PMIの手順は?売り手が協力すべきことは? - Published: 2024-03-19 - Modified: 2024-04-02 - URL: https://atomfirm.com/manda/16708 - Categories: 会社売却の流れ M&AのPMIとは?PMIの目的は?手順は?売り手にも関係する?この記事では、M&AのPMIの意義や流れなどを紹介しています。売り手目線のPMIのポイントについても触れているので、今後、M&Aによる会社売却をご検討中の経営者の方も、是非ご覧ください。 M&AのPMIとは? M&AのPMIの手順は? M&AのPMIは売り手側にも関係する? PMIとは、M&Aによるシナジー効果を実現し、買い手側の企業価値を高めるための重要な手段です。 買い手企業は、経営戦略、販売・仕入の体制、労務、情報システム等を統合することで、当初思い描いていたシナジー効果の実現に奔走することになります。 そして、買い手が望み通りの統合効果を達成するために、PMIの場面で、売り手側に協力を求めてくる場面があります。 今回は、M&AのPMIの意義、手順などについて、売り手側の視点も踏まえて解説していきます。 現在、中小企業のM&Aをご検討中の経営者の方など、是非さいごまでご覧ください。 PMIとは?M&Aでの役割は? PMIとは? PMIとは、M&A成立後に、当初計画した価値を創造し、統合効果の最大化を図るために、組織統合マネジメントを推進するプロセスのことをいいます。 Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)の頭文字をとって、PMIと呼んでいます。 PMIの重要性は? 当初期待していた統合効果が実現してはじめて、満足のいくM&Aとなるものでしょう。 M&Aの成立後、持続的に価値を創出するには、短期的および中長期的な計画にもとづく統合作業が重要です。 PMIをおこなうことで、M&Aによるシナジー効果を促進させることができます。 とはいえ、2023年版「中小企業白書」(第2部第2章 Ⅱ-180ページ)で引用されているデータでは、中小企業の大半がPMIを認知していないとの実情もあるようです。 PMIのタイミングは? 一般的には、PMIは、M&Aのクロージング前から始める必要があると言われています。 具体的には、買収監査(デューデリジェンス/DD)の直後から、PMIに向けた準備を始めることが想定されています。 実際のところ、2023年版「中小企業白書」(第2部第2章 Ⅱ-181ページ)で引用されている㈱帝国データバンク「中小企業の事業承継・M&Aに関する調査」では、基本合意締結前からPMIを開始した場合、M&Aについての買い手企業の満足度は74. 8%でした。 基本合意締結後からクロージング完了後にPMIを開始した場合の、M&Aの満足度は61. 8%となっています。 なお、PMIを検討していない企業の場合、M&Aの満足度は48. 8%と低い結果になっています。 初期段階において、M&Aによる統合の阻害要因を検証しておくことで、M&A後の経営統合を円滑に進めやすくなり、M&Aの満足度が上がるといえます。 関連記事 M&Aの流れ・手順を解説!会社を売るためのステップとは? PMIの対象は? M&AのPMIで統合をおこなう対象としては、おもに経営統合、業務統合、意識統合の3種類となります。 PMIの対象 経営統合理念・戦略、マネジメントフレームの統合。ヒアリングと対話によりM&A成立後の経営の方向性を確立する。 業務統合業務・インフラ、人材・組織・拠点の統合。買収監査やヒアリングによる現状把握と、改善をおこない、事業の円滑な引継ぎを目指す。 意識統合企業風土や企業文化の統合。経営ビジョンや従業員間の相互理解、取引先との関係構築などが課題となる。 M&Aの買い手側企業は、売り手企業の従来の経営方針などに否定的な発言をすることは控えたほうがよいでしょう。 見直しをしたい点については、売り手側企業の理解や協力が得られるよう、率直かつ、継続的なコミュニケーションをとり、相互理解を深めることが大切です。 売り手側企業の経営陣などが経営統合のキーマンとして、買い手側企業に在籍することになる場合は、役職や在籍期間などについて明確に取り決めをおこなうことも必要でしょう。 PMIでM&Aの売り手側が協力すべきことは? PMIは、M&Aの買い手側企業が、買収した会社や事業を統合するプロセスなので、主体となるのは買い手側企業です。 しかし、PMIが上手くいく確証がなければ、買い手側としてもM&Aの成約に踏み切ることはできません。 PMIを円滑に進めるためには、売り手側の協力が必要になる場面もあるでしょう。 PMIで売り手側が協力すること キーマン条項の締結 従業員への周知 取引先の理解を得るetc. ①キーマン条項の締結 売り手企業のことを一番理解しているのは、売り手企業の経営陣です。そのため、売り手側企業の社長や役員などは、PMIを円滑におこなうためのキーマンとされる場合もあるでしょう。 具体的には、M&A成立後も一定期間、キーマンとなる売り手側の経営者や従業員が、経営統合のために、買い手企業で働かなければならないという条項を締結する場合があります。 ②従業員への周知 M&Aに不安をかかえる社員が離職してしまうケースでは、人材確保ができないことでM&Aが中止になることもあります。 売り手側の経営者としては、そのような事態にならないよう、適切な時期に従業員へのフォローをおこなう必要があります。 ③取引先の理解を得る 中小企業の場合、社長の信頼関係があって初めて取引関係が継続できるケースも多々あります。 そのため、M&Aによって社長が交代した場合や、親族への事業承継でさえ、取引関係が危ぶまれることがあるのです。 とくに、売り手側と取引先の間で、チェンジオブコントロール条項(COC条項)を締結している場合は、注意が必要です。 COC条項とは? M&Aなどによって経営権の移動が生じた場合、契約内容に何らかの制限がかかったり、他方の当事者によって一方的に契約を解除することができたりする規定。 COC条項を締結している場合、取引先の承諾を得ないでM&Aを実行し、経営者が買い手企業に変わったときは、取引先から取引停止を言い渡される可能性があります。 その結果、買い手企業は、売り手企業の買収によって得られたはずのシナジー効果を手にすることができなくなる可能性が非常に高くなります。そのため最悪の場合、M&Aも中止になります。 売り手側としても、M&A対価の獲得や、事業承継問題の解決など、M&Aに期待するところは大きいものです。それらのメリットを享受できないのは、大きな痛手を負うものといえるでしょう。 売り手企業は、情報公開ができるようになったらすぐに、自社の取引先に連絡をいれ、M&Aを実施することについての理解を得る必要があります。 PMIの手順 ①買収監査~M&A最終契約(Day1) PMIの第一段階としては、M&Aの成約(Day1)までに、統合のビジョンを明らかにし、数値目標を達成するためのスケジュールを立てることなどが必要です。 第1段階 利害関係者へM&Aを周知させる 統合方針を決める ランディング・プランを策定する 100日プランなどの中長期目標を策定するetc. それぞれの内容は、以下のようなものになります。 利害関係者へM&Aを周知させる まずは、株主・取引先・従業員などに、M&Aのメリットを伝え不安を解消するというプロセスが必要です。 通常、Day1(最終契約締結の日)直後に、企業のルール等の変更があるので、事前にM&Aについて周知させておく必要があります。 統合方針を決める 次に、買収監査、売り手側企業の経営状況、業界動向、関係者への周知状況などを考慮して、売り手の自主性を維持するか、買い手側の組織に完全に取り込むかなど、統合方針を決める必要があります。 統合の類型には、連邦型統合、支配型統合、吸収型統合があります。 連邦型統合売り手側企業の自主性を、できるだけ維持する方法。売り手側企業の業績が良い場合に適する方法。 支配型統合売り手企業が経営不振の場合などに、買い手企業が経営に積極的に関与する方法。シナジー効果を追求しやすい反面、売り手側出身の従業員の反発を買い大量退職をつながるおそれがある。 吸収型統合法人格を一体化し、売り手企業を買い手企業の組織に完全に吸収する方法。シナジー効果の早期実現が期待できる反面、統合作業による負担や混乱が生じるおそれもある。 ランディング・プランを策定 M&Aの全体的な計画表としての役割を担うのが、ランディング・プランです。 ランディング・プランの策定とは、統合方針を円滑に進めるために、統合チームを発足させ、クロージング後3ヶ月~6ヶ月以内の目標設定とスケジュールを立てることです。 売り手側出身の従業員も含めた信頼できるメンバーで、現状を分析し、課題を洗い出して、いつ、だれが、何を、どのように取り組みを行うのかといった具体的なアクションプランを策定することが必要です。 100日プランなど中長期目標を策定 100日プランは、ランディング・プランの中でも、特に緊急性の高い課題を解決するための計画をいいます。 100日プランの策定とは、Day100(M&Aの最終契約からの3ヶ月間)の数値目標と、そのための計画をたてることです。 ほかにも直近1年間、その後2~5年程度の中長期数値目標を立てる必要があります。 ②最終契約からの3ヶ月(100日プラン) PMIの第二段階は、100日プランの実行です。 PMIにおける100日プランとは、M&Aのクロージング後100日間で実行すべき中長期経営計画のことです。 第二段階 100日プランの実行 100日プランの具体例については、以下のようなものがあげられます。 業務担当者・引継ぎのタイミングを決める 新経営体制・経理体制の整備 クイックヒット(即効性のある就労環境改善策の実行)で従業員の心をつかむetc. M&A成立後、3ヶ月間集中して、初期の統合作業を終えることで、短期的なシナジー実現につなげることが理想です。 複数のプランを同時並行して進めることになるため、PMO(Project Management Office)を設けて、進捗管理をすると良いでしょう。 ③Day101以降~PMIの効果検証と改善 第三段階は、Day100以降の効果検証と改善です。 100日プランを実行し、Day101を迎えたら、計画したプランが実現しているか、進捗状況のモニタリング(成果の測定)をおこない、残された課題に取り組むことになります。 第三段階 Day100以降の効果検証と改善計画の進捗状況の把握と、効果の測定をおこない、残された課題に取り組む この時点で、経営統合はおおよそ達成されていると思われますが、実態にあわせた微調整などが必要になるでしょう。 意図したシナジー効果が実現できていない場合は、さらなる対策を講じる必要があります。 また、継続的なコミュニケーションを通じ、従業員の意識統合の後押しを図ることも大切です。 M&Aの成約から数年間は、KPIを具体的に設定し進捗度合いを確認しながら、PDCAサイクルを回して、統合効果を達成できるよう根気よく取り組む必要があります。 M&Aを成功させる!PMIのポイント3選 ①トップダウン型の基本方針 M&Aにより生まれ変わった新しい組織をまとめるには、経営トップのリーダーシップが非常に重要です。 M&Aの成功は、経営層の明確なビジョンと強いコミットメントによって大きく左右されます。統合後の姿やシナジー効果を具体的に示し、関係者全員が共有できるよう徹底しましょう。 統合プロセスにおいては、様々な課題や意思決定が求められます。経営層は、迅速かつ明確な意思決定を行い、プロジェクトを推進していく必要があります。 経営層は、統合の目的や進捗状況を定期的に従業員に伝え、不安や疑問を解消する必要があります。双方向のコミュニケーションを活性化し、一体感を醸成しましょう。 ②統合準備室 関係各所との連携を図るために、統合準備室を設けることも必要でしょう。 統合準備室は、PMIの計画や実行の取りまとめをおこなうことになるので、取締役などの求心力のある人物が室長を務めるべきです。 統合準備室のその他のメンバーしては、M&Aに詳しい専門家、法務、財務、人事など各分野の専門家を集めたチームが望ましいといえます。そうすることで、それぞれの専門性を活かし、統合計画の策定、実行、課題解決などの推進が期待できます。 統合準備室は、各部門と密接に連携し、情報共有や意見交換を積極的に行う必要があります。部門間の協力体制を築くことで、スムーズな統合を実現できます。 また、必要に応じて、M&Aや経営統合に精通した外部アドバイザーの支援を得ることも有効です。専門的な知識や経験に基づいたアドバイスは、プロジェクトの成功確率を高めてくれます。 外部の相談先としては、民間のM&A仲介会社や、公的な機関である事業承継・引継ぎ支援センターなどがあげられるでしょう。 関連記事 M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? ③PMIのマスタープラン PMIマスタープランは、統合スケジュール、人員配置、業務プロセス統合、ITシステム統合、課題の優先順位など、統合の全体像を具体的に示した計画書です。 PMIマスタープランは、M&Aの目的であるシナジー効果を最大化するために策定されるものです。 各施策の目標、スケジュール、責任者などを明確にし、実行状況を定期的に評価・改善していく必要があります。 当初の計画通りに進まない場合は、状況に応じて計画を修正し、柔軟に対応していくことも大切です。 まとめ いかがでしたでしょうか。 M&AのPMIにおいては、買い手側は主導的に進めるものですが、売り手側も協力を求められることが多々あります。 買い手側が、経営統合が成功するイメージを持つことができれば、M&Aの成約に一歩近づくことができます。 売り手側としても、PMIについて可能な限り協力し、両社にとってwin-winなM&Aを目指しましょう。 --- ### 自社株評価とは?簡易計算できる?自社株評価の3ステップ - Published: 2024-03-15 - Modified: 2024-03-22 - URL: https://atomfirm.com/manda/16447 - Categories: 会社売却の相場, 事業承継, 企業価値, 会社相続 自社株評価とは?簡易計算できる?自社株評価の3ステップ!この記事は、事業承継をご検討中の中小企業の経営者の方に向けて、自社株評価について解説しています。自社株評価を下げる要因、高める方法についても言及しているので、是非参考になさってください。 自社株評価とは? 自社株評価は簡易計算できる? 自社株評価というと、中小企業の事業承継対策で問題になるイメージが大きいでしょう。 自社株の評価額を下げることで、子どもや孫が事業承継をする際に、相続税や贈与税をおさえることができます。 しかし、近年、少子化などにより親族内承継が難しいケースも増加し、M&Aによる事業承継(第三者への会社売却)が盛んにおこなわれるようになってきました。 M&Aによる事業承継の場合、自社株評価を高める措置を講じて、高額売却を目指すのが主流です。 満足のいく事業承継をおこなうためにも、自社株評価を簡易計算できると便利ですよね。 この記事では、自社株評価の意義、計算方法、自社株評価を高める方法などを解説します。 ぜひ最後までご覧ください。 自社株評価とは? 自社株評価とは? 自社株評価とは、一般に、非上場企業の株式価値を算定することをいいます。 非上場企業の株式には、上場企業のように、証券取引所での市場価格がありません。そのため、国税庁が定める基準などを用いて、株式価値を評価することになります。 自社株評価の必要性は? 中小企業の場合、自社株評価は、現経営者が次の代に会社を引き継ぐ場面で問題になることが多いでしょう。 生前贈与や相続による親族内承継であれば、株式価値の大きさに応じて、後継者が贈与税や相続税の納税額が決まります。 事業承継先が身内の場合は、できる限り、自社株評価を下げて負担を減らしたいと考え、税金対策を講じる方が多いでしょう。 一方で、M&Aによる事業承継(第三者承継)の場合は、株式価値を上昇させて、より多くの売却益を手にしたいと考えるものです。 自社株評価は、事業承継の場面における売り手の願いを叶えるために必要なものです。 簡易計算できる?自社株評価の3ステップ 非上場会社の自社株評価は、①株主の判定、②会社の種類・規模の判定、③評価方法の判定の3ステップでおこなうことができます。 ①株主の判定 同族株主の自社株評価においては、おもに原則的評価方式を用いることになります。 株主が同族株主ではない場合、あるいは同族株主であっても議決権割合が5%未満の場合などは、例外的評価方式である配当還元方式などの評価方法を用いることになります。 同族株主とは? 議決権割合が30%以上の同族関係者のグループのこと。 議決権割合が50%超を占めるグループがあれば、その一族のみが同族株主になる。 次に会社の種類・規模の判定をこないます。 ②-1会社の種類の判定 特定の評価会社とは、それ以外の会社(一般評価会社)の業態と比べて、資産の保有状況や営業の状態などが著しく異なる会社のことをいいます。 具体的には、比準要素数1の会社など、以下1~6までの会社が特定の評価会社になります。 特定の評価会社に該当するか否かは、6または5の会社から順番に見ていきます。 これらの特定の評価会社のうち、1~5に該当するときは、原則、純資産価額により自社株評価がおこなわれます。 6に該当するときは、清算分配見込額により自社株評価がおこなわれます。 特定の評価会社 比準要素数1の会社3つの比準要素のうち、直前期末に2つがゼロ、かつ直前々期末に2つ以上がゼロの会社 株式等保有特定会社総資産額に占める株式等の割合が50%以上の会社 土地保有特定会社課税時期に、土地保有割合が70%以上の大会社や、90%以上の中会社などを指す。 開業後3年未満の会社等 開業前又は休業中の会社 清算中の会社 類似業種比準方式に比べ、純資産価額方式は自社株評価が高くなる傾向があります。 とくに、株式等保有特定会社や土地保有特定会社は、資産が多額にわたるため、その傾向が顕著といえるでしょう。 後継者の税金負担を減らしたい場合は、保有比率を下げるなどの対応が必要になります。 ②-2会社の規模の判定 会社の規模については、大会社、中会社の大・中・小、小会社に区分できます。 それぞれの区分に応じて、自社株評価の方法、計算式の係数に違いが生じます。 従業員が70人以上の一般評価会社 従業員が70人以上の場合、無条件で大会社となります。 従業員とは? ここでいう従業員は正規雇用者に限られない。 継続勤務従業員就業規則などにより、課税時期の直前の期末時点から起算して、1年間にわたり週30時間以上継続勤務すると定められている従業員 非常勤の従業員1年間にわたり、全員の労働の合計時間を1800時間で割り、その数値を人数としてカウントする 従業員が70人未満の一般評価会社 従業員が70人未満の場合、卸売業、小売り・サービス業、それ以外の3つの業種に分けて、総資産価額や取引金額によって、会社の規模を判定します。 従業員数が35人超70人未満(=36人~69人)の会社の場合、卸売業は総資産価額が20億円以上のとき、小売り・サービス業は15億円以上のとき、それ以外の業種は15億円以上のとき大会社となります。 中会社の大・中・小、小会社についても、以下にまとめ表がありますので、ご覧ください。 総資産価額による区分 単位:円 従業員数卸売業小売業等それ以外大会社35人超20億以上15億以上15億以上中会社の大35人超4億以上5億以上5億以上中会社の中20人超35人以下2億以上2. 5億以上2. 5億以上中会社の小5人超20人以下7000万以上4000万以上5000万以上小会社5人以下7000万未満4000万未満5000万未満 取引金額による区分としては、卸売業については30億円以上、小売り・サービス業については20億円以以上、それ以外の業種については15億円以上の場合に、大会社となります。 中会社の大・中・小、小会社についても、以下の表に整理したので、ご参考になさってください。 取引金額による区分 単位:円 卸売業小売業等それ以外大会社30億以上20億以上15億以上中会社の大7億以上5億以上4億以上中会社の中3. 5億以上2. 5億以上2億以上中会社の小2億以上6000万以上8000万以上小会社2億未満6000万未満8000万未満 ③評価方法の判定 ここまでの3ステップを経ることで、自社株評価の算定手法が決定します。 ここまでの流れで、採用すべき評価方法は明確になりますが、納税者の選択に応じて採用できる評価方法もあります。 最終的には、実際のケースに応じて具体的に検討する必要があるでしょう。 ここまでの内容をおさらいしておきましょう。 ステップ1 まずは株主の判定をおこないます。 同族株主等以外→特例的評価方式 基本的には、配当還元方式による。 同族株主等→原則的評価方式を採用 会社の種類、規模に応じて評価方法が決まる。 ステップ2 次に会社の種類、規模の判定をおこないます。 特定評価会社→純資産価額方式や清算分配見込み額などによる。 一般評価会社→会社の規模によって評価方法が決まる。 大会社、中会社(大・中・小)、小会社の区分により、基本的には以下のような評価方法を採用します。 規模評価方法計算式大類似業種比準価額方式※中の大併用方式類似×0. 9+純資産×0. 1中の中併用方式類似×0. 75+純資産×0. 25中の小併用方式類似×0. 6+純資産×0. 4小純資産価額方式※ ステップ3 最後に、評価方法の判定をおこないます。 それでは、自社株評価の具体的な計算式を確認していきましょう。 ここでは、原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式・併用方式)、特例的評価方式(配当還元方式)を確認します。 原則的評価方式 類似業種比準方式 類似業種比準方式は、大会社の同族株主の自社株評価などに用いられる計算方法です。 計算式は「類似業種の株価×(A+B+C)÷3×斟酌率×(1株あたりの資本金額÷50円)」というものになります。 ※A:評価会社の1株当たりの配当金額÷類似業種の1株当たりの配当金※B:評価会社の1株当たりの利益金額÷類似業種の1株当たりの年利益金額※C:評価会社の1株当たりの純資産価額÷類似業種の1株当たりの純資産価額※斟酌率:大会社0. 7、中会社0. 6、小会社0. 5 併用方式 併用方式は、中会社の大、中会社の中、中会社の小の同族株主の自社株評価などで用いられる算定方法になります。 計算式は、以下のようなものになります。 純資産価額方式 純資産価額方式は、小会社や、特定の評価会社の自社株評価で用いられる計算方法です。 計算式は、総資産評価額から、負債の合計と評価差額に対する法人税等相当額を差し引き、発行済み株式数で割るというものです。 比較的簡易的に計算できる方法といえるでしょう。 特例的評価方式(配当還元方式) 特例的評価方式は、同族株主等以外に適用される自社株評価の方法です。 具体的には、配当還元方式により算出されることになります。配当還元方式は、配当金額を一定の割合で還元し評価する方法です。 配当還元方式による計算式は、以下のようになります。 その株式の年配当金額は、直前期末以前2年間の剰余金の配当金額の合計の1/2を発行済株式数で除した金額です。それが2円50銭未満の場合や、無配の場合は、2円50銭で計算することになります。 M&Aにおける自社株評価と簡易計算 簡易計算するなら年倍法 M&Aによる会社売却価格を検討する際、簡易計算するには、年倍法(年買法)という計算方法があります。 年倍法は、税法で規定されているのではなく、M&A仲介会社を中心に広まった企業価値評価の算定手法です。 年買法では、時価純資産+修正営業利益×1~5年間分=企業価値(会社売却価格の目安)というふうに計算できます。 そのほかにも、企業価値を計算する方法としては、企業の将来の収益性に着目するDCF法、類似マーケットと比較するEBITDAマルチプル法などもあります。 厳密にいえば、企業価値評価と自社株評価は異なりますが、自社株評価を上げることで、企業価値評価をさらに高めることができるでしょう。 関連記事 企業価値と事業価値、株式価値とは?それぞれの違いと関係性を解説! M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! 自社株評価を下げる要因は? M&Aによる事業承継で会社の高額売却を目指す場合、自社株評価を下げる要因を知っておくことも大切でしょう。 また、親族内承継を検討している場合は、後継者となる親族の負担になる相続税や贈与税を少しでも減らしたいものです。自社株評価を下げることができれば、その株式の贈与や相続にかかる税金も下げることができます。 自社株評価を下げる要因としては、赤字が増えることや、会社の純資産が減ることなどがあげられるでしょう。 たとえば次のような対応をする場合、純資産が減ることにつながります。 自社株評価を下げる方法(一例) 先代経営者・役員に退職金を支払う 役員報酬を上げる 設備投資をおこなう 不良債権を処分するetc. 企業ごとに有効な対策は、異なります。 事業承継に強い税理士などの士業専門家や、事業承継・引継ぎ支援センターなどで相談してみるのも、良いかもしれません。 事業承継の相談窓口については「事業承継の相談窓口は?事業承継成功の秘訣は専門家への無料相談?」の記事をご覧ください。 自社株評価を高める方法は? M&Aによる事業承継をおこなう場合、いままで育ててきた会社をできる限り高く評価してもらいたいと思うものでしょう。 自社株評価を高めるためには、まずは会社の現状把握(見える化)をおこなう必要があります。そして、会社の魅力の磨き上げをおこないます。 自社株評価を高める方法(一例) 見える化(現状把握)経営の課題を明らかにする 磨き上げ(改善)財務状況や、契約書周りの整備など経営上の懸念払しょくに努めるetc. 人生で何度もM&Aによる事業承継を経験している方はまれで、不慣れなことが多いものです。 そういう場合には、勇気を出して相談窓口を訪ねてみると良いでしょう。 磨き上げについては「事業承継型M&Aの磨き上げとは?磨き上げの目的や対象を解説!」で解説していますので、あわせてご一読いただければ幸いです。 皆様の事業承継が上手くいくことを願っています。 --- ### 事業売却・事業売買の方法とは?手続きの流れやメリットを解説 - Published: 2024-03-14 - Modified: 2024-03-19 - URL: https://atomfirm.com/manda/16172 - Categories: 事業譲渡, 事業承継 事業売却を行う場合、事業価値評価や買い手候補との交渉に加えて、トリマ利益会や株主総会での決議が必要になるケースがあります。手続きが複雑な会社売却の方法の一つなので、専門家に相談して進めるのがおすすめです。 事業売却とは、会社の事業の一部もしくは全部を売却することです。 特定の事業に注力するために、他の事業を切り離したいときなどに活用されることが多いです。 事業売却・事業売買を行う際には、自社の事業価値を評価し、買い手候補となる企業を探すところから始めなければなりません。 この記事では、事業売却・事業売買の手続きの流れやメリット・デメリットについて解説します。 事業売却に興味をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。 事業売却・事業売買とは? 事業売却・事業売買の意味 事業売却・事業売買とは、会社が所有する事業の一部または全部を第三者に譲渡することを指します。事業売却は、経営者・オーナーの引退、事業承継問題、経営環境の変化など、さまざまな理由で行われます。 事業売却と株式譲渡の違い 事業売却が事業単体を売却する取引であるのに対し、株式譲渡は会社そのものを売却する取引です。会社の所有権や経営権など、原則として全て一括で譲渡するため、株式譲渡を会社売却と表現する場合もあります。 事業売却を行った場合でも、所有権は手元に残るため、企業経営を続けることが可能です。 会社経営から離れたいという希望があるなら、株式譲渡による事業承継を検討するべきでしょう。 関連記事 事業譲渡と株式譲渡の違いは?目的・メリット・デメリットなど解説 株式譲渡による事業承継とは?手続きの流れとポイントを解説 事業売却と会社分割の違い 事業売却も会社分割も、譲渡する事業や資産などを選別できる点は共通しています。しかし、事業売却は事業や資産、契約などを全て個別に引き継ぐ必要があります。 買い手側からしてみれば、リスクのない事業だけを選択して買収することができる利点がある一方、個別に手続きを取る手間がかかります。 会社分割は、継承する対象を包括的に移転できます。手続きは会社分割の申請だけとなり、事業譲渡よりも簡単です。 事業売却の方法・流れ M&A仲介などの業者を選ぶ 事業売却を検討する場合には、まず始めにM&A仲介会社などの専門業者を選ばなければなりません。 事業売却の手続きでは、事業価値の評価や事業売却先の選定、各種契約書の作成など、専門知識やノウハウが必要になるステップが多いです。 初回の無料相談などを活用して、相性のいい業者を利用しましょう。 知人や友人の会社に事業譲渡するケースなどでは、仲介会社などを利用しない場合もあるかもしれません。その場合は、事業価値評価や、各種契約書の作成などを自分で進めるか、必要に応じて会計士や税理士などに相談することをおすすめします。 事業価値を評価する 売却する事業の価値を評価し、買い手候補と交渉するための価格を設定します。事業価値の評価方法には、類似会社比準法やDCF法などの計算方法があります。 M&A仲介会社などの専門業者に依頼しておけば、複雑で難解な計算も全て任せることができます。 専門業者を利用する前に、まずは自分で計算をしてみたいという方は、以下の関連記事を参考にしてみてください。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 事業売却先を探す 知人や友人に事業売却するケース以外では、買い手となる会社を探さなければなりません。 自身で事業売却先を探す方法としては、マッチングプラットフォームやSNSなどの活用が挙げられます。 しかし、M&Aの知識や経験がなければ、自社の事業を買いたいと考える企業がどの程度の規模なのか、同業種なのか異業種なのかなど、分からないことの方が多いでしょう。 M&A仲介会社などの業者を利用することで、独自のネットワークにより幅広い買い手候補を紹介してもらうことができます。 関連記事 会社売却成功への道!M&A買い手探しの目的とポイントとは 秘密保持契約(NDA) NDAは秘密保持契約のことで、M&A仲介会社などの専門業者と、交渉する買い手候補との間で締結します。 M&Aの手続きの中で入手した機密情報を外部に漏らさないというのが主な目的で、違反した場合の損害賠償等が規定される場合もあります。 トップ面談 トップ面談は、事業売却側と買い手側の代表者同士が話し合いを行い、事業売却の手続きを進めていくか検討する面談です。 トップ面談では、今後の事業展望や事業を統合することによって得られるシナジーなどについて話し合われるケースが一般的です。 基本合意 トップ面談を終え、実際に事業売却を進めていくとなった場合、売却価格や支払い方法、支払期日などの条件について基本合意を行います。 しかし、この基本合意で定めた内容通りに事業売却が成立するとは限りません。 次のステップで実施する買収監査によって、買収対象となる事業の収益性の評価が変わったり、事業に伴う各種契約にリスクが判明したりすると、価格や条件が見直される可能性があるからです。 買収監査(デューデリジェンス) 譲受側企業が、譲渡側企業の調査・監査を行うことをデューデリジェンス(DD)と呼びます。 事業売却においては、財務DD、事業DD、法務DDなどがメインで実施されるでしょう。 財務DDでは、純資産および収益力の把握を目的として、売却側を調査します。 事業DDでは、売却側のビジネス全体を調査します。顧客や取引先の関係や市場競争力などを確認することが主な目的です。 法務DDでは、売却側の資産・負債や、既存の契約に潜むリスクなど、法的なリスク調査を行います。 他にもデューデリジェンスには、税務DD、人事DD、ITDDなどがあります。 事業売却は会社全体の譲渡ではないため、全てのDDを丁寧に実施することは一般的ではないでしょう。 最終条件交渉 買収監査(デューデリジェンス)の結果を受け、基本合意をしていた内容から条件の見直しの提案を受けた場合は、再度買い手側と調整を行い、事業売却の最終条件が決定されます。 取締役会決議 事業の全部または重要な一部の譲渡を行う場合は、取締役会を設置する会社では、取締役会での事業譲渡の承認決議が必要です(会社法362条4項1号)。 「重要な一部の譲渡」とは、事業における売上や収益、従業員などの売却対象が事業全体の10%を超える場合を指すケースが一般的です。 もしくは対象となる事業売却が、会社のイメージに大きく影響を及ぼす場合などには「重要な一部の譲渡」と考えられます。 事業譲渡契約の締結 取締役会決議を経た後は、譲渡会社と譲受会社が事業譲渡契約を締結します。両当事者の権利・義務を確定させるために、事業譲渡契約書が作成されます。 契約書の記載内容は、法令で定められているわけではないですが、譲渡対象事業、譲渡期日、譲渡資産、対価およびその支払方法などが記載されます。 関連記事 事業譲渡契約を解説!契約書を作る際のポイントとは? 事業譲渡の通知・告知 事業譲渡の内容が決定したら、効力発生日の20日前までに、事業譲渡をおこなうことについて、株主に通知・公告をしなければなりません(会社法469条3項,4項)。 株主総会の特別決議 事業売却の内容によっては、買い手も売り手も株主総会の決議を得なければなりません。 事業売却を行う会社は、事業の全部または重要な一部の譲渡を行う場合に、株主総会を開催し特別決議を得なければなりません。 事業買収を行う会社は、事業の全部を譲受する場合もしくは、一定数以上の株主が反対した場合に、株主総会を開催し特別決議を得る必要があります。 事業売却のメリット、費用 事業売却のメリット・デメリット 事業売却は、事業を譲渡するのみで会社の所有権を移転するわけではありません。 そのため、不採算事業を切り離して、経営資源の「選択と集中」を進められる点や、経営権を手元に残しておける点などが事業売却のメリットといえるでしょう。 デメリットとしては、株主総会による承認が必要な点や、手続きが複雑な点、従業員・取引先への対応が必要な点などが挙げられます。 事業売却を検討すべきタイミング 事業売却は、経営状況や事業環境などによって検討タイミングは異なります。 市場環境の変化や競争激化などにより、特定の事業が継続困難になった場合は、事業売却を検討する必要があります。事業売却・事業譲渡は注力したい事業以外の分野を切り離して売却することができます。 他にも、新規事業への投資や借入金の返済など、資金調達が必要な場合は、事業売却を積極的に検討すべきタイミングといえるでしょう。 事業売却のスケジュールと費用 事業売却には、準備から完了まで数ヶ月から数年かかる場合があります。スケジュールと費用は、事業規模や複雑性などによって異なります。 事業売却の一般的なスケジュール 準備期間(数ヶ月)専門業者への依頼、事業価値評価、買い手探しなど 交渉期間(数ヶ月)条件交渉、デューデリジェンスなど 契約締結・完了(数週間)契約締結、引渡しなど 事業売却にかかる費用としては、M&A仲介業者・アドバイザーに支払う報酬や法人税などがあります。 専門業者に支払う手数料は、売却益に対して3~10%前後の成功報酬が必要になるケースや、着手金や月額報酬が発生するケースもあります。 事業売却を行う場合、売却益を得るのは経営者個人ではなく売り手企業になるため、法人税や消費税が発生します。 事業売却を検討する際には、スケジュールと費用を事前に把握しておくことが重要です。 関連記事 事業譲渡の仲介手数料・費用はいくらかかる? 事業譲渡の税金は?消費税や法人税は利益の何%?お得なのは会社譲渡? 事業売却後の手続き 従業員への説明 従業員への説明は、事業売却後の重要な手続きの一つです。不安や不満を解消し、スムーズな事業移行を促すために、できるだけ早く丁寧に行うことが重要です。 特に、対象となる事業に従事していた従業員は、事業売却に伴い転籍するかどうか決めなければなりません。 従業員は転籍を拒否することもできますが、買い手企業からしてみれば、従業員の労働能力も計算に入れて事業譲受をしています。 売却側としては、転籍に同意してもらえるよう、丁寧に従業員に説明を行うべきでしょう。 顧客への通知 顧客への通知は、事業継続や信頼関係維持のために重要です。 サービス内容や問い合わせ先などの変更があれば、忘れずに伝える必要があります。 関係機関への手続き 事業売却に伴い、税務署、登記簿謄本、許認可、融資、契約など、関係機関への手続きが必要です。必要に応じて、早めに手続きを進めることが重要です。 事業売却後の手続きは、複雑で時間と労力がかかります。しかし、円滑な事業移行と関係者との信頼関係を維持するために、重要な手続きです。 --- ### 事業承継・引継ぎ補助金のすべて|M&Aで活用できるお得な補助金とは… - Published: 2024-03-13 - Modified: 2024-03-27 - URL: https://atomfirm.com/manda/16147 - Categories: 事業承継, 会社売却の費用 事業承継にかかる費用負担を減らしたい…事業承継・引継ぎ補助金について徹底解説!この記事では、補助金の種類、要件、注意点などを解説しています。中小企業の事業承継をご検討中の方は、ぜひご一読ください! 事業承継・引継ぎ補助金とは? M&Aによる事業承継で活用できる? 事業譲渡を成功させるために専門家に依頼したいが、費用の心配がある... 事業承継・引継ぎ補助金という補助金制度をご存じでしょうか? 事業承継・引継ぎ補助金とは、中小企業者等の事業承継(M&A、事業譲渡)などを応援するために、国が用意した補助金制度です。 事業承継を検討しているけれど、M&A仲介会社の利用などの手数料に心配がある場合などに、活用できる補助金になります。 この記事では、事業承継・引継ぎ補助金の種類、申請要件、採択率、補助金申請から交付までの流れ、注意点などを解説しています。 是非最後までご覧ください。 事業承継・引継ぎ補助金とは? 事業承継・引継ぎ補助金とは 事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業者や個人事業主(中小企業等)の事業承継(M&Aを含む)や、事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎなどを支援してくれる国の補助金制度です。 事業承継・引継ぎ補助金の種類 事業承継・引継ぎ補助金には、大きく分けて経営革新事業、専門家活用事業、廃業・再チャレンジ事業の3類型があります。 経営革新事業や専門家活用事業については、さらに細分化することができます。 種類 【Ⅰ型】経営革新事業創業支援類型、経営者交代類型、 M&A類型の3類型がある 【Ⅱ型】専門家活用事業買い手支援類型、売り手支援類型の2類型がある 【Ⅲ型】廃業・再チャレンジ事業 ①経営革新事業枠 概要 経営革新枠は、事業承継をきっかけに、経営革新にチャレンジして、地域経済に貢献する事業者を対象とする補助金制度です。 事業再構築、設備投資、販路開拓等に挑戦するための費用の補助を受けることができます。 具体的には、経営革新枠の補助金の対象となる経費は、人件費、店舗等借入費、設備費(1品目につき税抜き20万円以上)、原材料費、産業財産権等関連経費、謝金、旅費、マーケティング調査費、広告費、会場借料費、外注費、委託費などがあげられます。 補助金として支給される額 経営革新枠の事業承継・引継ぎ補助金について、補助率、補助金額は以下のとおりです。 類型補助率補助金額創業支援型経営者交代型M&A型2/3以内または1/2以内100万円~600万円以内 * 令和3年度の情報です。最新情報については、ご自身でご確認ください。 * Ⅱ型専門家活用枠と、Ⅲ型M&A枠のいずれとも併用可能。* 補助率については、400万円以下は3/2以内、400万円超600万円以下は1/2以内となる。* 廃業・再チャレンジ事業と併用した場合、廃業費として150万円以内が、補助金額の上限に上乗せされる。* 生産性向上要件(付加価値額または1人当たり付加価値額の伸び率が年3%)を満たさない計画の場合、補助金額の上限が400万円以内となる。 なお、経営革新枠の補助対象となる経費が150万円未満の場合、その3分の2が100万円未満となるため、補助対象額を下回り、補助金の交付申請はできません。 補助対象者の要件 経営革新枠で事業承継引継ぎ補助金を受けるためには、補助対象者となるための11要件を満たすことや、Ⅰ型からⅢ型までの各類型に該当することなどが必要です。 補助対象者の要件 国内に拠点、国内で事業をおこなう 地域経済への貢献 反社会的勢力ではない 法令を順守している 事務局からの質問などに適切に対応すること 事務局への再度通知の同意すること 返還等の費用負担に同意すること 補助金指定停止措置や指名停止措置を受けていないこと データ利用に同意すること 調査等に協力すること 4項目の一定要件のいずれかに該当すること*¹ *⁰ 令和3年度の情報です。最新情報については、ご自身でご確認ください。*¹ 要件11の4項目については、以下①~④のとおり。①中小企業基本法等の小規模企業者であること②直近決済機の営業利益や経常利益が赤字であること③コロナ禍での売上高減少(2020年4月2020年4月以降の連続する6か月のうち、任意の3か月の合計売上高が、新型コロナウイルス感染症拡大期以前(2019年1月~2020年3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少)④再生計画等を策定中であること 経営革新型のⅠ型~Ⅲ型の特徴については、以下のとおりです。 【Ⅰ型】創業支援型 創業支援型とは、他の事業者の経営資源を引き継いで、創業する場面で用いることができる補助金制度です。 創業者支援型の要件 事業承継対象期間内に、法人を設立、又は個人事業主として開業すること 廃業予定の者から、株式譲渡や事業譲渡などにより有機的一体としての経営資源(設備、従業員、顧客等)*を承継して創業すること * 令和3年度の情報です。最新情報については、ご自身でご確認ください。* 設備のみを引き継ぐ等、個別の経営資源のみを引き継ぐ場合は原則該当しない* 物品・不動産等のみを保有する事業の承継(売買含む)は対象とならない 【Ⅱ型】経営者交代型 経営者交代型とは、親族や従業員が経営資源を引き継ぐ場面で利用できる補助金制度です。 経営者交代型の要件 以下2要件を満たす場合、経営者交代型として、支援補助金をもらえる可能性があります。 親族内承継や従業員承継等の事業承継(事業再生を伴うものを含む) 経営等に関して一定の実績や知識等を有している者であること例)産業競争力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者etc. * 令和3年度の情報です。最新情報については、ご自身でご確認ください。* 承継者が法人の場合、事業譲渡や株式譲渡等による承継は原則として対象とならない 【Ⅲ型】M&A型 M&A型とは、M&A(株式譲渡や事業譲渡など)により、経営資源を承継す場面で利用できる補助金の枠です。 M&A型の要件 事業再編・事業統合等のM&A 経営等に関して一定の実績や知識等を有している者であること例)産業競争力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者etc. * 令和3年度の情報です。最新情報については、ご自身でご確認ください。* 物品・不動産等のみを保有する事業の承継(売買含む)は対象とならない このほか、営資源引継ぎの要件、対象となる中小企業等などについてのルールもあります。詳細については、事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)のホームページや公募要項などで、よく確認しましょう。 ②専門家活用事業枠 概要 事業承継・引継ぎ補助金のうち、専門家活用事業は、事業承継にあたり、FA、仲介業者、弁護士、司法書士などを活用する場合に利用できるものです。要件を満たせば、専門家の手数料にかかる費用の補助金を出してもらえます。 M&Aをおこなう場合、企業価値の算定、デューデリジェンス(買収監査)、M&A契約書の作成など、専門家でなければ難しい手順が多くあります。通常、公認会計士、税理士、弁護士などに依頼することになりますが、その手数料はかなり多額になります。そのため、このような補助金制度があることで、事業承継をおこないやすくなるといえます。 専門家活用事業には、買い手支援型(Ⅰ型)と、売り手支援型(Ⅱ型)の二種類があります。 買い手支援型は、事業を譲り受ける承継者の支援のための補助金です。売り手支援型は、事業を譲り渡す被承継者に補助金をだす制度です。 補助金として支給される額 専門家活用枠の補助率・補助金額については、以下のとおりです。 補助率補助金額買い手支援型2/3以内50万~600万円以内*売り手支援型1/2以内または2/3以内50万~600万円以内* * 令和3年度の情報です。最新情報については、ご自身でご確認ください。* 廃業・再チャレンジ事業と併用した場合、廃業費として最大150万円が上乗せされます。* 補助事業期間内に経営資源を承継できなければ、補助上限額は300万円以内に変更され、廃業費は補助対象外になる。 補助対象となる経費は、M&A仲介契約に基づく中間報酬や成功報酬などの例外を除き、原則として事業実施期間内に契約を締結し支払いを終えた費用になります。 補助対象者の要件 補助を受けるには、以下の11項目にも該当する必要もあります。 補助対象者の要件 日本国内に拠点、国内で事業をおこなう 反社会的勢力ではない 法令を順守している 事務局からの質問などに適切に対応すること 事務局への再度通知の同意すること 返還等の費用負担に同意すること 補助金指定停止措置や指名停止措置を受けていないこと データ利用に同意すること 調査等への協力すること M&A支援機関登録制度事務局への報告に同意すること M&A支援機関が補助対象者ではないこと * 令和3年度の情報です。最新情報については、ご自身でご確認ください。 このほかにも、経営資源引継ぎの要件、対象となる中小企業等などについてのルールが細かく決められています。詳細や最新の情報については、ホームページや公募要項などでチェックしましょう。 ④廃業・再チャレンジ事業枠 概要 廃業・再チャレンジ枠は、廃業・再チャレンジをおこなう中小企業等を支援するための補助金制度です。 事業承継やM&Aにともない、買い手側が譲受した既存事業を廃業する場合や、売り手側が譲渡できなかった事業を廃業し再チャレンジするような場合に活用できる補助金です。 単独申請もできますが、これまで見てきた経営革新事業や専門家活用事業との併用が可能です。 併用申請にあたる場合 補助事業期間終了日までにM&Aまたは廃業が完了 以下、①~③のいずれかをおこなうこと①事業承継後に新たな取り組みをする(経営革新事業との併用)②M&Aによって事業を譲り受ける(専門家活用事業との併用)③M&Aによって事業を譲り渡す(専門家活用事業との併用) 単独申請(再チャレンジ申請) 2020年以降に売り手としてM&Aに着手し、6ヶ月以上経過している 補助事業期間終了日までに廃業が完了していること 廃業後に再チャレンジすること 再チャレンジにかかる事業が、公序良俗違反、風俗営業などではないこと 新しい法人を設立するなどして、地域の新たな需要の創造や雇用の創出できるような再チャレンジであること * 令和3年度の情報です。最新情報については、ご自身でご確認ください。 補助金として支給される額 廃業・再チャレンジ事業の補助対象となる経費については、廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、現状回復費、リースの解約費、移転・移設費用などがあげられます。 補助率補助金額廃業・再チャレンジ2/3以内*¹50万~150万円以内*² *⁰ 令和3年度の情報です。最新情報については、ご自身でご確認ください。*¹ 補助対象となる経費が75万円未満である場合、75万円の3分の2が、補助金額の下限である50万円を下回るので、事業承継・引継ぎ補助金の申請はできない。 *² 廃業支援費の上限額は50万円となる。 補助対象者の要件 廃業・再チャレンジ事業として補助金を受けるには、以下の12項目にも該当する必要もあります。 補助対象者の要件 日本国内に拠点、国内で事業をおこなう 地域経済に貢献する中小企業者等である 反社会的勢力ではない 法令を順守している 事務局からの質問などに適切に対応する 事務局への再度通知の同意すること 返還等の費用負担に同意すること 補助金指定停止措置や指名停止措置を受けていないこと データ利用に同意すること 調査等への協力すること▼再チャレンジ申請の場合は以下2項目も必要 M&A・事業譲渡に着手したが、不成立* 廃業後、再チャレンジする事業の計画を策定し、認定支援機関の確認等を経る * 令和3年度の情報です。最新情報については、ご自身でご確認ください。* M&A等への「着手」が認められる場合は、以下①~③に限られる。①事業承継・引継ぎ支援センターへの相談依頼②M&A 支援機関(M&A仲介業者や地域の金融機関など)と契約を締結③M&A マッチングサイトへの登録なお、M&A支援機関登録制度に登録されていない業者の利用は、補助金の対象外となる。自力でのM&Aは支援の対象外。 このほかにも、対象となる中小企業等などについてのルールが細かく決められているので、ホームページや公募要項などでよく確認しましょう。 事業承継・引継ぎ補助金の申請の流れ 補助金申請から交付までのおおまかな流れ 事業承継・引継ぎ補助金のおおまかな流れとしては、まずは以下のようなものです。 今まで見てきた経営革新枠、専門家活用枠、廃業・再チャレンジ枠のいずれかで申請できるか検討をおこない、gBizIDプライムで、補助金の交付申請します。 交付決定がでたら、いよいよ補助対象事業を実施し、実績報告をおこない、問題なく確定検査が通れば、晴れて補助金交付となります。 * 2024年3月15日現在の情報です。最新の情報については、ご自身でご確認ください。 採択率と事業スケジュール いままで実施されてきた事業承継・引継ぎ補助金にかかる事業のスケジュールは、以下のとおりです。 交付決定の割合(採択率)についても、経営革新枠、専門家活用枠は約60%であることから、比較的申請が通りやすい印象があります。 8次公募 事業承継・引継ぎ補助金の8次公募は、令和6年1月9日~令和6年2月16日の期間におこなわれました。 事業スケジュール 申請受付期間2024. 1. 9~2024. 2. 1617:00まで交付決定日2024年4月上旬(予定)事業実施期間交付決定日~2024. 9. 16実績報告期間~2024. 9. 26補助金交付手続き2024年9月中旬以降(予定) 7次公募 事業承継・引継ぎ補助金の7次公募は、令和5年9月15日~令和5年11月17日の期間におこなわれ、以下のとおり交付決定がだされています。 経営革新枠313件中190件交付(約60. 7%) 専門家活用枠498件中299件交付(約60. 0%) 廃業・再チャレンジ枠28件中10件交付(約35. 7%) 事業スケジュール 申請受付期間2023. 9. 15~2023. 11. 1717:00まで交付決定日2023. 12. 25事業実施期間交付決定日~2024. 6. 30実績報告期間2024. 3. 29~2024. 7. 10補助金交付手続き2024年7月上旬以降(予定) 6次公募 事業承継・引継ぎ補助金の5次公募は、令和5年6月16日~令和5年8月10日の期間におこなわれ、以下のとおり交付決定がだされています。 経営革新枠357件中218件交付(約61. 1%) 専門家活用枠468件中282件交付(約60. 2%) 廃業・再チャレンジ枠37件中23件交付(約62. 2%) 事業スケジュール 申請受付期間2023. 6. 23~2023. 8. 1017:00まで交付決定日2023. 9. 15事業実施期間交付決定日~2024. 4. 24実績報告期間2023. 12. 14~2024. 5. 10補助金交付手続き2024年4月下旬以降(予定) 5次公募 事業承継・引継ぎ補助金の5次公募は、令和5年3月20日~令和5年5月12日の期間におこなわれ、以下のとおり交付決定がだされています。 経営革新枠309件中186件交付(約60. 2%) 専門家活用枠453件中275件交付(約60. 7%) 廃業・再チャレンジ枠37件中17件交付(約45. 9%) 事業スケジュール 申請受付期間2023. 3. 20~2023. 5. 1217:00まで交付決定日2023. 6. 16事業実施期間2023. 6. 1~2024. 1. 22実績報告期間2023. 9. 12~2024. 2. 10補助金交付手続き2024年2月上旬以降(予定) 事業承継・引継ぎ補助金の注意点 申請の注意点 事業承継・引継ぎ補助金の公募要領では、「申請締切りの直前になると、認定経営革新等支援機関に確認を依頼しても間に合わない場合があるため、余裕をもって依頼をすること。」との注意喚起がありました。 事業承継・引継ぎ補助金の申請は、2024年3月現在、「電子申請(Jグランツ)」を利用することになり、「gBizID プライム」アカウントが必要です。 「gBizID プライム」アカウントの取得には、少なくとも1~3週間程度かかるようなので、事業承継・引継ぎ補助金の公募期間に間に合うように、計画的に準備を進めることが大切です。 補助対象となる経費の注意点 補助対象となる経費については、使用目的の特定などが認められる必要があります。 補助対象経費の注意点 使用目的の特定補助対象事業の遂行に必要であると明確に特定できること 補助事業期間内補助事業期間内に、銀行振り込みやクレジットカード1回払いで決済まで完了すること 証拠書類等対象会社・支配株主・株主代表・個人事業主が支出した経費で、証拠書類で金額・支払いが確認できること * 令和3年度の情報です。最新情報については、ご自身でご確認ください。 実績報告の内容によっては、交付額が減額される可能性があります。契約上の不備、相見積もりの不備、支払い方法の不備などには十分注意して、事業承継を進めてください。 また、事業承継・引継ぎ補助金の専門家活用枠では、M&Aの仲介手数料やフィナンシャルアドバイザー費用について補助金がでますが、登録機関データベースにある登録機関に限られます。 事業承継・引継ぎ補助金以外の支援策 事業承継に役立つ制度・相談窓口一覧 中小企業庁のホームページでは、事業承継の支援施策(一覧)が紹介されています。 事業承継・引継ぎ補助金以外にも、多くの支援施策が用意されています。 事業承継(M&Aによる第三者承継を含む。)の不安を除去するためにも、活用を検討してみる価値はあるでしょう。 また、事業承継の相談窓口については、「事業承継の相談窓口は?事業承継成功の秘訣は専門家への無料相談?」の記事で紹介しているので、あわせてご参考になさってください。 この記事で事業承継・引継ぎ補助金に興味をお持ちになり、M&Aに前向きになれた方がいらっしゃったら幸いです。 --- ### 株価算定方法とは?非上場企業の株式価値の計算方法を紹介 - Published: 2024-03-13 - Modified: 2024-03-28 - URL: https://atomfirm.com/manda/15931 - Categories: 企業価値, 株式譲渡 自社の株価がいくらに算定されるのか気になる場合には、株価算定が必要です。株価算定を行う場合には、純資産法や年倍法、DCF法など複数の計算方法を組み合わせて価値評価を行いましょう。 株式譲渡を検討している経営者・オーナーの方は、自社の株価がいくらに算定されるのか気になるのではないでしょうか。 上場企業であれば、公開された市場で株式が取引されるため、株価算定の必要はありません。しかし、非上場企業の株価を確認する場合には、純資産法や年倍法、DCF法などの手法を用いて、株価算定を行う必要があります。 この記事では株価算定の方法を解説します。 今後の株式譲渡による会社売却に興味があるなら、ぜひ参考にしてください。 株価算定とは 株価算定とは 株価算定とは、企業の価値を客観的に評価するために、株式の価値を算出する手法です。具体的には、将来の収益性や財務健全性などを分析し、現在の株価に反映させることで、企業の価値を算出します。 なお、上場企業の場合は、株価が市場で公開されているため、特殊な分析や計算方法などは原則として不要です。 株価算定の目的 株価算定は、M&Aや事業承継においては、相手方と交渉するための目安となる価格を算出するために行われます。 M&A以外にも、株式の増資や譲渡における価格決定、経営戦略の策定や財務分析、相続税や贈与税の評価などのために実施されることもあるでしょう。 株価と企業価値、事業価値との関係 株価は、株式における価値を指し、株式価値とも呼ばれます。 一方、企業価値は、企業全体が有する総合的な価値を指します。企業価値を評価することは「バリュエーション」とも呼ばれます。 なお、事業価値は、企業が有する事業の価値を指します。EV(エンタープライズバリュー)とも呼ばれます。 企業価値の大部分を占めるため、M&Aの際には、事業価値は特に重要視されます。 3つの価値の関係性を示すと、以下の図のようになります。 企業価値をもとに考えると、次の2つの計算式が成り立ちます。 企業価値=事業価値+非事業価値 企業価値=株式価値+有利子負債 上記から、株式価値を求める式は「株式価値=事業価値+非事業価値ー有利子負債」となります。 つまり、非上場企業の株式価値を求める場合には、事業価値の計算から始めなければなりません。 これは、企業の総合的な価値から企業が抱える負債を差し引いた額を株式価値とみなすアプローチです。 関連記事 企業価値と事業価値、株式価値とは?それぞれの違いと関係性を解説! 株価算定の注意点 株価算定は、将来の予測を伴うため、完全な精度で算出することはできません。 また、算定方法によって結果が異なる場合もあるため、複数の方法を組み合わせるなど、状況に応じた適切な方法を選択することが重要です。 非上場企業の株価算定方法 純資産法 純資産法は、貸借対照表における資産と負債を基に、企業価値を算定する方法です。 対照表の記載通りに計算する「簿価純資産法」と、時価を反映させて対照表を修正する「時価純資産法」の2つに分類されます。 また、中小企業の企業価値評価においては、年倍法と呼ばれる手法もよく利用されます。 年買法(年倍法)とは、時価純資産に将来の収益性を加えて企業価値を評価する方法です。 将来の収益性として加算される資産は、営業権(のれん)と呼ばれ、一般的には営業利益の1~5年分が加算されます。 しかし、のれんをどのくらい加算するのかについては、売却側と買収側の間で交渉しなければならず、主観的な評価にならないよう注意する必要があります。 純資産法や年倍法で企業価値を算定したら、発行済み株式総数で割れば、1株あたりの株価を算定することができます。 関連記事 M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? 類似会社比準法 類似会社比準法は、マルチプル法とも呼ばれます。 手順としてはまず、評価対象会社と規模や事業等が類似する複数の上場会社を選び出します。その後、複数社の株価などを基に評価倍率(マルチプル)を算出します。 マルチプルとして用いられる倍率としては、EV/EBITDA倍率、PBR、PERなどがあるでしょう。そして、評価対象会社の特定指標とマルチプルをかけ合わせることで企業価値を導き出します。 例えば、評価対象会社のEBITDAを指標とする場合には、EV/EBITDA倍率を掛け合わせ、純資産を指標とする場合には、PBRをかけ合わせます。 計算された企業価値を発行済み株式総数で割れば、1株あたりの株価を算定することができます。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! DCF法 DCF法はディスカウントキャッシュフロー法とも呼ばれ、将来発生するフリーキャッシュフローを現在の価値に換算して事業価値を算定する手法です。 事業価値を計算したら、余剰現預金などの非事業価値を加えて企業価値を算定します。 計算された企業価値を発行済み株式総数で割れば、1株あたりの株価を算定することができます。 関連記事 企業価値評価におけるDCF法とは?株主資本コスト、加重平均資本コスト(WACC)の求め方を徹底解説! 配当還元法 配当還元法は、株主へ支払う配当金を基に株価を算定する方法です。 過去の配当をもとに株価を評価する実績配当還元法と、所属する業種での平均的な配当性向をもとに株価を評価する標準配当還元法等の種類があります。 ただし、配当還元法は企業の配当政策に依存しており、確定的な配当額を見積もることが難しい企業には適用しづらい側面があります。 特に、多額の欠損や成長企業など、配当が見込めない場合は配当還元法は適切ではありません。 配当還元法と混同されやすい「配当還元方式」は、非上場株式を相続・贈与した際の税金計算の際に使用される方法であり、配当還元法とは異なる計算方法を採用しています。 非上場企業の株価算定で必要な費用 株価算定の費用は、M&A仲介会社やアドバイザリーなどの専門家を利用する場合にかかります。通常、これらの専門家はM&A成約までの全体の手続きを担当するため、株価算定のみ独立した費用が生じることはありません。 ただし、企業価値評価や株価算定だけを頼む例外的な場合は異なります。 その場合、企業の大きさや業界、評価の難易度によって費用が変動します。小規模な企業やシンプルな評価の場合は通常、数万円から数十万円が一般的ですが、大企業や複雑な計算が必要な場合は100万円を超えることもあるでしょう。 株価算定の流れ・必要書類 株価算定の流れ 株価算定を行う場合には、まずM&A仲介会社などの専門業者に相談します。 類似会社比準法、純資産法、DCF法などの、企業価値評価の代表的な方法を用いて計算するケースが一般的ですが、複数の方法を組み合わせることで、より客観的な評価が可能になります。 ただし、上記の方法はいずれも計算の仕組みが非常に複雑です。自身で計算方法を学んで株価を算定するのではなく、プロに任せた方が妥当な価格を提示してもらうことができるでしょう。 株価算定のために準備する書類 企業価値の算定方法に応じて必要な書類は異なります。 例えば、財務諸表、事業計画書、設備投資計画、株主名簿、類似業種の上場企業資料などが必要になる場合があるでしょう。 書類を準備することができたら、企業の財務状況、事業内容、将来展望などを分析します。財務分析ツールや専門家の意見などを活用することで、より精度の高い分析が可能になります。 分析結果に基づき、選択した算定方法を用いて株価を算出します。業者で用意できない書類については、自社内で整理したものを提出してください。 株価算定のスケジュール 株価算定のスケジュールは、企業規模、複雑性、必要な情報量、専門家の関与などによって異なります。 一般的には、数日から数週間程度で完了しますが、複雑な案件の場合は数ヶ月かかることもあるでしょう。 まとめ いかがでしたでしょうか。 株価算定は、専門的な知識や分析力がなければ、妥当な価値を計算することが難しいケースが一般的です。 M&A仲介会社などの専門業者であれば、初回相談時に大まかな企業価値、株式価値を教えてもらえることもあります。 会社売却に興味がある場合は、複数社に初回相談を申し込み、どの業者を利用するか検討してみることをおすすめします。 --- ### 後継者不足の場合は廃業?倒産を防ぐ方法・解決策とは - Published: 2024-03-13 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/15916 - Categories: 後継者不足 身近に後継者がいない問題は、事業承継における大きな課題です。もう廃業するしかないかと思う経営者も多いかもしれませんが、会社売却による第三者承継を行うことで、後継者不足を解決できる可能性が残っています。 事業を承継できる後継者がいない問題は、高齢の経営者にとっては差し迫った課題でしょう。 身近に後継者がいないと、もう廃業するしかないのかと思ってしまうかもしれません。しかし、会社売却による第三者承継も、後継者不足に悩んだ場合の解決策となりえます。 これまでは、会社を売却するという行為は「身売り」としてマイナスイメージを持たれていました。しかし、企業同士が統合して世の中に次々と新たな価値を生み出している昨今、そのような考え方は古くなっているといえます。 特に近年では、会社を買いたいという買い手のニーズは非常に膨れ上がっている一方で、会社売却したいという売り手が少ないという市場の状況です。 業績が良好ではなく買い手がつくか不安だとしても、廃業に踏み切る前に、まずはM&A仲介会社などの専門業者への相談をおすすめします。 後継者不足の現状と課題 後継者不足の現状 近年、中小企業を中心に後継者不足が深刻化しています。 帝国データバンクの調査によると、2023年の全国休廃業・解散動向調査における休廃業件数は5万件を超え、経営者の平均年齢は70. 9歳でした。 後継者不足により事業承継が進まないまま、経営者の高齢化が進んでしまい、休廃業に陥ってしまっていると予想されます。 その他にも、事業の複雑化や都市部への人口集中なども、後継者不足の要因と考えられます。 後継者不足の主な要因 経営者の高齢化団塊世代の経営者が70代を迎え、引退を検討する人が増えている 事業の複雑化TI化やグローバル化により、事業の規模や複雑さが増し、後継者育成が難化している 都市部への人口集中地方の人口減少により、地方企業の後継者候補が不足している 事業の魅力低下長時間労働や低賃金など、事業の魅力が低下し、若い世代が事業継承を敬遠している。 後継者不足の防止・解決方法 後継者不足問題を防止するためには、早めからの対策が重要です。 親族内や会社内から後継者候補を選び、早期から将来の経営者候補として育成し、必要なスキルや知識を身につけさせる必要があります。 後継者の育成には少なくとも数年以上はかかるといわれています。 気付いた時には自分が高齢になってしまい、後継者候補が誰もいないという状態にならないよう注意すべきでしょう。 もし現時点で事業を引き継ぐ候補者がいないのであれば、M&A・会社売却を検討しましょう。 業績がよくない会社であっても、業種や事業内容、地域などによっては、複数の買い手に興味を持ってもらえるケースもありえます。 赤字会社であっても、売却できる可能性はゼロではないので、まずはM&A仲介会社などの専門業者に相談してみてください。 後継者問題の防止・解決には、経営者自身の意識改革と、積極的な行動が不可欠です。将来を見据えた対策を早めから実行することで、事業の継続と発展を実現することができます。 関連記事 事業承継対策とは?中小企業の事業承継対策3つのポイントと支援機関 後継者不足の解決策はM&A?後継者問題の実態は... 後継者不足で廃業・倒産する 廃業とは 廃業とは、個人事業や法人事業を当事者の意思で辞めることです。解散と清算という二段階のステップを経て、会社は廃業されます。 会社の事業をやめて債権債務を整理する手続きに入ることを解散といいます。廃業の準備段階ともいえるでしょう。 経営者が事業継続できないと判断した場合の他、会社法で定められている解散事由を満たした場合に、会社は解散となります(会社法471条)。 清算とは、会社の資産を実際に処分し、債権者への弁済を行い、残余財産を株主に分配することです。 会社の解散が決定したら、残る債権債務などの処理を行う清算人を選任します。清算人は、債権を回収したり財産の換価を行ったりして、債権者に弁済していきます。 廃業と倒産の違い 当事者自身の意思で事業をやめる判断をする廃業に対し、倒産とは、法律の要件に当てはまる場合や、労働基準監督署の認定を受けた場合を指しています。 前者を法律上の倒産といい、破産や特別清算、民事再生などが具体例です。 後者を事実上の倒産といい、事業が停止して再開見込みがないような場合に、労働基準監督署長から倒産の認定を受けることとなります。 廃業・倒産の費用 廃業には、手続き費用や債務整理費用など、様々な費用がかかります。 これらの費用は、廃業後の生活にも影響を与えるため、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。 関連記事 会社をたたむときの費用はいくらかかる?廃業かM&Aか迷ったら専門家に相談を 廃業の手順・流れ 廃業の手順・流れは以下の通りです。 株主総会の解散決議・会社法の解散事由に該当 解散登記・清算人選任登記 解散届出などの書類提出 債権者保護手続き 清算手続き 解散事業年度確定申告 残余財産の分配 清算事業年度確定申告 清算結了登記 株主総会の解散決議・会社法の解散事由に該当 株主総会によって決議されるか、その他の会社法上の解散事由に該当すると、解散が決定します。 株主総会における解散決議とは、議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成によって成立する特別決議でなければなりません。 会社法上の要件とは、定款で定めた存続期間の満了や、定款で定めた解散事由が発生した場合などです。 解散登記・清算人選任登記 会社の解散と清算人が決定されたら、2週間以内に、解散登記と清算人登記を行います。 解散登記と清算人登記は、本店所在地の法務局に申請します。申請の際には、定款、株主総会議事録、清算人の就任承諾書、印鑑届出書などの書類が必要です。 解散の届出 解散登記、清算人選任登記が終了したら、解散の届出を税務署や各都道府県の税事務所に提出しなければなりません。 提出が必要な書類としては、異動届出書や給与支払事務所等廃止届などがあります。会社の状況に応じて、準備しなければならない書類は変わります。 また、社会保険や労働保険などの各種保険に関する書類の提出も必要です。 各保険の適用事業所ではなくなったことを、公的機関に届け出ます。 社会保険については日本年金機構、雇用保険は管轄ハローワーク、労働保険は労働基準監督署がそれぞれ提出先となります。 官報公告・個別催告 債権者に対して解散を知らせるため、官報で公告します。知れている債権者には個別に催告する必要もあります。 この手続きは債権者保護を目的としたもので、会社法によって定められています。もし違反すれば、過料が課される可能性もあります。 清算株式会社は、第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった後、遅滞なく、当該清算株式会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、二箇月を下ることができない。 会社法499条1項 清算手続き① 清算の段階では、残る債権を取り立て、債務を完済します。清算会社は所有する財産を売却し、その売却代金で債務を完済していくケースが一般的です。 清算人は就任後遅滞なく、会社財産の現況を調査して解散日における財産目録と貸借対照表を作成しなければなりません(会社法492条1項)。 また、清算株式会社は、作成した財産目録・貸借対照表は株主総会に提出し承認を受けた上で、清算結了登記が完了するまで保存する必要があります(会社法492条4項)。 清算手続き② 清算人が債務の完済を達成し、残余財産が確定すると、その後は企業の株主に残余財産を分配する必要があります。 残余財産は、全ての債務が清算された後に企業に残る資産を指します。 株主に残余財産を分配する際には、原則として、これらの資産を全て現金に換金する必要があります。 非上場株式が含まれる場合や、固定資産が多い場合などでは、資産を現金化するまでに時間がかかる可能性があります。 計画的に残余財産を処理するためには、司法書士や弁護士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。 解散事業年度確定申告 会社が解散した場合、事業年度開始の日から解散の日までを1つの事業年度とみなします。これを解散事業年度といいます。 清算人が作成した財産目録と貸借対照表をもとに、解散日の翌日から2ヶ月以内に解散事業年度の確定申告を行います。 清算事業年度確定申告 解散した会社は、解散日の翌日以降は清算会社と呼ばれます。 解散日の翌日から1年間が、清算事業年度となり、事業年度が終わるごとに、清算中の所得を申告しなければなりません。 確定申告書は、事業年度の終了後2カ月以内に税務署に提出します。 清算結了登記 清算事務が完了した後は、精算株式会社は遅滞なく決算報告の作成を行う必要があります(会社法507条1項)。 また清算人は、この決算報告を株主総会に提出し、承認を受けなければなりません(会社法507条2項)。 清算の承認を受けた場合、2週間以内に、法務局に清算結了登記を申請し、清算手続きは終了します。 後継者不足で廃業する際の注意点 廃業・倒産前にやっておくべきこと 廃業前に、以下の準備をしておくことで、円滑な廃業手続きが可能となります。 廃業・倒産前の準備 顧客への告知 従業員への説明 取引先への連絡 債権回収 在庫処分 廃業・倒産後の生活 廃業後、どのように生活していくかは、個々の状況によって異なります。 他の企業に就職するケースもあれば、新たな事業を立ち上げるケースもあるでしょう。 廃業は人生の大きな転機となります。 事前にしっかりと準備しておくことで、不安を軽減し、新たな人生に向けて一歩を踏み出すことができます。 後継者不足で廃業を防ぐために 後継者候補がいない場合であっても、事業承継を諦める必要はありません。 第三者承継(M&A)という選択肢によって、廃業を回避できる可能性があります。 後継者不足なら第三者承継(M&A)を利用する 第三者承継(M&A)とは、自社の事業を第三者に譲渡・売却することを指します。M&Aによって、以下のようなメリットを得ることができます。 事業の継続: 後継者不足による廃業を防ぎ、事業を継続することができます。 事業価値の最大化: 第三者による買収により、事業価値を最大限に活かすことができます。 経営資源の有効活用: 経営資源を有効活用することで、事業の効率化を図ることができます。 新しい経営ノウハウの導入: 第三者による新しい経営ノウハウの導入により、事業の成長を促進することができます。 関連記事 第三者承継の方法は?メリットは?3つの注意点も解説! 第三者承継の流れ 第三者承継(M&A)は以下の流れで進みます。 第三者承継(M&A)は、複雑な手続きや専門知識が必要となるため、アドバイザーなどの専門家の支援を受けることが重要です。 関連記事 会社売却の流れを解説!手続きや手順の注意点は? まとめ 後継者不足は、事業継続にとって大きな課題となっています。第三者承継(M&A)は、この課題を解決し、事業を存続させる有効な手段の一つとなりえます。 M&Aを検討する際には、専門家の支援を受け、自社の状況や事業内容に合った方法を選択することが重要です。 --- ### M&Aの売り手市場はいつまで?売り手のメリットは?事業承継の動向は - Published: 2024-03-11 - Modified: 2024-03-19 - URL: https://atomfirm.com/manda/15697 - Categories: 事業承継, 会社売却の流れ, 後継者不足, 相談・仲介 M&Aは売り手市場?売り手市場のメリットは?そもそもM&Aによる事業承継のメリットは?今後も売り手市場は続くの?この記事では中小企業のM&Aによる事業承継をご検討中の方等に向けて、M&A市場の動向について解説しています。 M&Aは売り手市場? 売り手市場のメリットは? M&Aの売り手市場はいつまで続く? 近年、M&Aは売り手市場といわれています。 後継者の不在や、将来の不安をかかえる中小企業にとっては、まさに今が、M&Aに挑戦する絶好の機会といえるでしょう。 この記事では、M&A市場の現状、売り手のメリット、M&Aにおける売り手の注意点などを解説しています。 ぜひ最後までご覧ください。 M&Aの売り手市場とは? M&Aの売り手市場とは? M&Aの売り手市場とは、M&Aを検討している売り手企業の数よりも、買い手企業の数の方が多い状態を指します。 M&Aが売り手市場の場合、売り手企業は、複数の買い手企業から選り好みできるため、高値売却を実現しやすい環境となります。 売り手市場になった理由 M&Aが売り手市場をむかえている理由としては、事業承継の多様化や、経済環境の変化をあげることができるでしょう。 事業承継の多様化 後継者に会社を譲る手法として、息子や娘に継がせる、親戚に譲渡する、はえぬきの従業員を後継者にするなどがオーソドックスなものです。 しかし近年、M&Aによる事業承継が注目されています。 M&Aは、事業の存続と、従業員の雇用確保という二つの課題を同時に解決できる手段として選ばれています。 従来、M&Aといえば、身売りや敵対的買収など否定的なイメージがつきまとうもので、社外の第三者に承継させるというイメージは浸透していませんでした。 しかし昨今、経済産業省が中小企業の事業承継対策に取り組む中で、M&Aに対するイメージが好転し、M&Aに踏み切る企業は増加しています。 経済環境の変化 低金利政策や企業の積極的な投資姿勢により、M&A市場全体の活発化が続いています。 コロナ禍により先行き不安をかかえる会社が増える一方、富裕層のカネ余りも顕著となり、投資先としてM&Aに注目が集まっています。 設備投資の代わりに、技術や販路拡大をねらう成長戦略としてM&Aをおこなう企業もあります。 また、高齢化にともなう労働力不足を解消する手段として、人材確保の一手段として、会社を買収したいと考えている企業も増えています。 脱サラしたサラリーマンが、小規模な会社を買って起業する(スモールM&A)といったパターンもあるでしょう。 関連記事 スモールM&Aで事業承継できるのか?中小企業を売却する方法とは M&Aの売り手市場はいつまで続く? 帝国データバンクの調査によると、会社売却のみのデータはありませんが、「M&Aほか」(買収・出向・分社化)という括りで事業承継の割合についてのデータが公開されていました。 M&Aほかによる事業承継については、2022年度(実績値)は全体の18. 6%でしたが、2023年度(速報値)は全体の20. 3%を占めるようになっています。 事業承継・引継ぎ支援センターの公表では、2023年度の相談件数は22631者(前年度比107%)、M&Aによる事業承継の成約件数は1681件(前年度比111%)と、過去最高件数を記録したとのことです。 2023年度までのM&A市場の動向や、低金利、経済成長の鈍化、労働力不足などを踏まえると、今後もM&A市場は促進されると予想されます。 関連記事 M&A業界の動向を解説!業界ごとのM&A傾向とは M&Aの売り手市場到来!メリットは? M&Aによる事業承継のメリットは? 企業の将来に不安がある場合や、親族や従業員の中から後継者を選定できないケースでは、廃業という選択肢もあります。 廃業とM&Aによる事業承継、いずれを選択すればよいのでしょうか。 廃業するにも、それなりの手間や時間、費用がかかるものです。また、廃業となれば、従業員は生活の糧を失うことになります。 一方、M&Aによる事業承継についても、手間や時間はかかりますが、売り手には、①M&Aの対価として譲渡益を得られるメリットがあります。 譲渡益が得ることができれば、リタイア後の生活資金や新規事業立ち上げの資金にあてることができます。 そのほかにも、②企業の存続・成長が期待できる、③後継者問題を解決できる、④従業員の雇用維持を図れる、⑤経営者の責任・個人保証からの解放など、売り手にとって、M&Aには多くのメリットがあります。 このように、M&Aによる事業承継は、経営者ご自身も、従業員の方も、会社の将来も明るくできるメリットがあります。 廃業という選択をする前に、一度、M&Aによる事業承継を検討してみてください。 関連記事 会社をたたむときの費用はいくらかかる?廃業かM&Aか迷ったら専門家に相談を M&Aのメリット・デメリットは?売り手にメリットがあるM&Aとは 売り手市場のメリットは大きい? M&Aが売り手市場をむかえたことで、売り手が受けられるメリットとしては、以下のようなものでしょう。 高値でM&Aによる会社売却 売り手市場の場合、複数の買い手企業から、オファーを受けることが多いものです。 そのため、売り手側の希望価格での売却、あるいはそれ以上の高値売却を実現しやすい環境となります。 関連記事 M&Aで会社を高く売る方法とは?買い手へのアピールポイントを解説 好条件でM&Aによる会社売却 M&Aの条件交渉で問題とすべき事項は、売却価格だけではありません。支払い条件や従業員の雇用などの交渉も重要です。 売り手市場の場合、様々な条件面においても、売り手側に有利な交渉が可能となります。 関連記事 M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? スピーディーにM&Aによる会社売却 売り手市場の場合、買い手企業が多く、市場が活発なため、短期間で売却先を見つけられる可能性も高いでしょう。 売り手市場の場合、売却先が見つからず、買い手が現れるまで待つというケースを回避できます。早期に交渉を開始して、M&Aの成約を目指せるメリットがあります。 関連記事 M&Aの流れ・手順を解説!会社を売るためのステップとは? 売り手市場を逃さない!M&Aを成功させる要因は? 現状把握と磨き上げ いくら売り手市場といえども、M&Aの対価は莫大なものになるため、買い手にとって大きなリスクをともなうものです。 買い手側が興味を持ってくれたという程度で、M&Aの成約にこぎつけるほど甘くはありません。 M&Aを成功させるには、対価に見合う価値を提供できることを、買い手に伝える必要があります。 そのためには、まずは自社の価値を正確に把握することが重要です。財務状況、市場シェア、技術力、人材など、様々な要素を分析し、客観的な評価(企業価値評価)を行います。 企業価値評価の手法は専門的な知識を有するため、公認会計士に依頼することも多いでしょう。 自社の現状把握ができたら、強みを強化し、弱みを補強するなど、会社の磨き上げをおこないます。 こうすることで、売り手側は、より洗練された姿で買い手探しができるようになります。買い手側からてみれば、M&A後の経営統合をイメージしやすくなるため、M&Aに応じる決断をしやすくなります。 将来性がある事業や、経営再建が期待できる会社については、買い手がつきやすいものでしょう。 関連記事 事業承継型M&Aの磨き上げとは?磨き上げの目的や対象を解説! 売却しやすい事業の特徴と成功事例!売却しやすい事業とは? 適切なM&A仲介業者を選ぶ 売り手側がM&Aを成功させるには、適切なM&A仲介業者を選ぶことも大切です。 M&Aによる事業承継は、売り手側にとって、急を要する課題であることが多いでしょう。 経営者が高齢ですぐにでも次の代に引き継ぎたい場合、会社の将来に不安がありすぐにでも経営再建にとりかかるべき場合など、早期に事業承継をおこなわなければならないケースが多々あります。 これらのケースでは、買い手探しにかけることができる時間は限られているでしょう。 そのため、民間のM&A仲介会社や、事業承継・引継ぎ支援センターなどのネットワークを利用して、できるだけ早期に買い手探しをおこなう必要があります。 また、M&Aの支援機関は、買い手企業との交渉や手続きなどのサポートもおこなってくれます。 財務情報の整理、事業計画の作成、デューデリジェンスへの対応、各種契約書の締結など、必要な手続きがたくさんあります。 M&Aで必要になる手続き 財務情報の整理 事業計画の作成 デューデリジェンスへの対応 契約書の締結秘密保持契約書、基本合意書、株式譲渡契約書etc. M&Aによる事業承継は、ほとんどの経営者の方が初めて経験することでしょう。不慣れなことを進める時は、よきアドバイザーをつけるべきです。 M&Aによる事業承継を円滑に進めるためには、M&A仲介会社や、公認会計士・税理士・弁護士などの士業専門家の助けを借りるのが近道といえます。 M&A仲介会社の注意点 M&A仲介会社を利用する場合、手数料が発生します。 必要な手数料は、仲介会社ごとに異なりますが、多くの場合、M&A案件が成約したら「成功報酬」を支払う必要があるでしょう。 なかには、成功報酬目当てに強引に成約を目指すM&A仲介業者もいるとのことなので、注意が必要です。 とはいえ、価格交渉などの落としどころの見極めは、M&A市場にくわしい仲介会社のほうが上手いと思います。そのため、信頼できるM&A仲介業者を選ぶことがポイントといえそうです。 関連記事 M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? M&A仲介手数料の相場はいくら?誰が払う? 情報公開と秘密保持のバランスをとる M&Aを成功させるためには、買い手企業に自社の魅力を伝えるべく、適切な情報公開が必要です。 買い手側との交渉を進めるためには、財務情報、事業内容、経営陣の経歴など、企業に関係する内容を詳しくお伝えしなければならないこともあるでしょう。 そうやって、必要な情報を公開することで、信頼関係を築きながら、魅力を伝えていきます。 しかし一方で、情報漏洩のリスクもあります。そのため、秘密保持契約を締結し、互いに情報漏洩に注意を払う必要があります。 まとめ M&Aの売り手市場は、売り手優位で、高値売却や好条件で会社売却を実現できるチャンスです。 M&Aによる事業承継は、ご自身の大切な会社を高額で評価してもらえる上に、事業の存続などもかなう理想的な選択肢といえるでしょう。 上記のポイントを押さえ、しっかりと準備することが、M&Aの成功への近道です。 皆様の会社売却が成功することを心より願っております。 --- ### 株式譲渡による事業承継とは?手続きの流れとポイントを解説 - Published: 2024-03-11 - Modified: 2024-04-01 - URL: https://atomfirm.com/manda/15662 - Categories: 事業承継, 株式譲渡 株式譲渡は、事業承継の選択肢の一つであり、事業の継続性と円滑な経営権移行を実現できる手段です。株式譲渡による事業承継を希望する場合には、M&A仲介会社などの専門業者に相談しましょう。 事業承継は、多くのオーナーにとって大きな課題となっています。 会社の経営を離れ、後継者に事業を引き継ぐ場合には、株式譲渡の形式をとるケースが一般的です。 本記事では、株式譲渡による事業承継のメリット・デメリット、具体的な手順、成功させるためのポイントなどを網羅的に解説します。 株式譲渡による事業承継の不安を解消し、円滑な事業承継を実現していきましょう。 株式譲渡による事業承継とは? 株式譲渡は、事業承継の選択肢の一つです。現経営者が保有する自社株を、後継者に譲渡することで、会社の経営権を承継させることができます。 株式譲渡による親族内承継 経営者が子供や孫などの親族に事業承継することを、親族内承継といいます。 株式譲渡によって親族内承継を行う方法としては、自社株の贈与もしくは相続が一般的です。 贈与による親族内承継の場合は、贈与契約を結んで自社株を譲渡するケースが一般的です。 株式を売却する場合には、原則として株式譲渡契約書を結びますが、贈与の場合は「贈与契約書」を作成することとなります。 相続による親族内承継の場合は、現経営者が亡くなると株式が移転されます。 株式譲渡による従業員承継(社内承継) 会社の役員や従業員などに事業承継することを従業員承継といいます。 株式譲渡によって従業員承継を行う方法としては、贈与、相続、売買など、あらゆる方法が考えられます。 しかし、後継者候補となる役員・従業員に資力がなければ株式を購入することが難しいため、贈与の形式をとるという方法も考えられるでしょう。 親族内承継も従業員承継も、譲受した側には贈与税もしくは相続税が課されます。いずれも、譲受する財産によって税率が変わります。 関連記事 従業員承継とは?会社を譲る方法・メリット・デメリットまとめ 株式譲渡による第三者承継(M&A) 親族内や自社内で後継者候補がいない場合や、外部の専門人材に経営を託したい場合などには、第三者に事業承継することになります。 第三者承継であれば、後継者候補を広く外部から探すことができます。また、自社株売却の利益を得ることもできるでしょう。 株式譲渡によって第三者に事業承継する場合には、M&A仲介会社などの専門業者を使うケースが一般的です。 関連記事 第三者承継の方法は?メリットは?3つの注意点も解説! 株式譲渡による事業承継のメリット・デメリット 株式譲渡による事業承継のメリット 株式譲渡による事業承継の最大のメリットは、後継者問題の解決に役立つことです。 親族や従業員に後継者がいない場合には、廃業か第三者承継しか選択肢がありません。 第三者承継のうち、会社の経営権そのものを手放す株式譲渡であれば、後継者不足を完全に解決して事業を将来に残すことができるでしょう。 他にも、株式譲渡は手続きが比較的簡単で、迅速に現金化することができるメリットもあります。 どのように条件交渉を進めるかによりますが、会社を売却した金額をリタイア後の生活資金に充てることも可能でしょう。 株式譲渡による事業承継のデメリット 株式譲渡による事業承継には、以下のようなデメリットがあります。 会社の支配権を失う 不採算事業があると売却額が下がる M&A仲介会社への費用・手数料がかかる 株式譲渡によって過半数の株式を手放すと、会社の支配権がなくなります。譲渡後は、会社名が変更されてしまうケースもあるでしょう。 株式譲渡では、事業ごとに分割して売買することができません。そのため、採算の取れていない事業があると、条件の見直しやM&Aの中止などに繋がる可能性があります。 株式譲渡を効率よく行うためには、不採算事業の立て直しを検討したり、事業撤退したりする方法が考えられるでしょう。 また、株式譲渡をはじめとしたM&Aでは、仲介会社やアドバイザリー会社などを利用するケースが一般的です。専門業者には、着手金や月額報酬、成功報酬などを支払わなければならない場合もあります。 関連記事 株式譲渡の費用とは?手数料はいくら?株式譲渡の税金も解説 株式譲渡とその他の事業承継方法の比較 株式譲渡による事業承継を検討する際には、メリットとデメリットを理解し、他の方法との違いを踏まえて、慎重に計画を進めることが重要です。 株式譲渡とその他の事業承継方法の比較 株式譲渡事業譲渡従業員承継親族内承継支配権・経営権失う残る失う失う譲渡対象会社全体特定の事業のみ会社全体会社全体税金所得税・法人税など法人税・所得税など贈与税など贈与税・相続税など従業員原則そのまま雇用転籍するか選択原則そのまま雇用原則そのまま雇用仲介手数料必要必要原則不要原則不要 関連記事 事業承継の費用・手数料の相場は?承継方法別に解説 事業承継の方法は?手続きの流れは?現経営者が踏むべき5つの手順とは 株式譲渡の流れ・手順 株式譲渡の流れは、通常の会社売却の流れに、株式譲渡承認請求や臨時株主総会・臨時取締役会の開催などの要素が加わります。 ここでは、まず会社売却の流れを簡単に確認し、株式譲渡特有の手続きについて解説します。 事前準備 株式譲渡の事前準備とは、自社の株式価値の算定や買い手探しなどを行うことです。 非上場企業の場合には、自社の株価がいくらになるのか、すぐに確認することはできません。 そのため、純資産法や年倍法、DCF法などを利用して、買い手候補と交渉するための企業価値を算出しなければなりません。 計算方法は複雑で難しいため、M&A仲介会社などの専門業者を利用して、効率的に進めることをおすすめします。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 交渉 自社の企業価値、株式価値を算出できたら、交渉段階に入ります。 交渉段階では、トップ面談を踏まえて、譲渡条件や譲渡日、従業員の雇用など、様々な項目が定められます。 買い手側から意向表明を受け、基本合意を得ることができたら、買収監査(デューデリジェンス)を行い、問題がなければ最終条件を定めます。 この交渉の段階では、自社の意向を相手に正確に伝える必要があります。また、各ステップで複数の契約書を締結しなければなりません。 事前準備の段階で専門業者に依頼していれば、交渉も任せることができるでしょう。 関連記事 M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? 株式譲渡の承認請求・承認決議 非上場企業の株式には、一般的には譲渡制限がつけられています。 譲渡制限とは、会社の許可がなければ、第三者に自社株を譲渡できない制限のことです。 第三者承継を行うために買い手側と交渉を進め、最終条件が決まったとしても、直ちに株式譲渡が実行されるわけではありません。 株式譲渡を希望する場合は、会社に対して株式譲渡承認請求書を提出し、請求を受けた会社は、臨時株主総会を開催し、承認するかどうか決定します。取締役会設置会社の場合は臨時取締役会が開催されます。 株主総会、取締役会で株式譲渡承認請求が不承認となった場合、会社または指定買取人が対象株式を買い取ることになります。 譲渡制限付き株式の譲渡について承認決議がなされた場合は、株式の引き渡しや経営権の移行、株主名簿の書き換えなど、最後のステップに進みます。 なお、相続によって株式譲渡が発生する場合には、例外的に株主総会の決議は不要となります。その後、相続した非上場株式を売却する場合には、承認請求が必要になります。 株式譲渡契約書の締結 売却価格、支払条件、残留条件など、すべての条件について合意が成立し、譲渡承認請求が承認されたら、最終的な株式譲渡契約書を締結することになります。 株主名簿の書き換え 株主名簿の書き換えは、譲受人を株主として新たに名簿に記載することです。 上記のステップをすべて終え、株式譲渡が完了したら、速やかに名簿を書き換えましょう。 株式の譲渡が完了したとしても、株主としての権利を行使するためには、株主名簿に正式に記載される必要があります。 株主名簿に譲受人の名前が記載されないと、株式を所有している証明が得られないため、名簿の書き換えも重要な手続きの一つです。 関連記事 株式譲渡の手続き・流れを徹底解説!会社の株式譲渡で必要な書類と注意点とは 株式譲渡でかかる税金 個人株主が株式譲渡を行う場合、売却益に対して所得税、復興特別所得税、住民税が課せられます。税率の合計は20. 315%となります。 課税対象となる譲渡所得は、売却代金から株式の取得費・売却のための必要経費を差し引いて求められます。 法人株主が株式譲渡を行う場合、売却益に対して法人税が課されます。法人税は総合課税方式となるため、他の所得と通算のうえ課税されることになります。 法人税は一般的に約30%程度の税率となることが多いです。 所得全体の金額次第では、大きな負担となる場合もあるでしょう。 なお、生前贈与及び相続による事業承継の場合には、株式を譲り渡す側は納税する必要はありません。譲受側に贈与税もしくは相続税が課されます。 関連記事 非上場株式譲渡の税金とは?売却価格と税金の関係は? 株式譲渡による事業承継のポイント 早期からの準備 事業承継は数年間の期間がかかるケースもあります。 後継者候補探しや、後継者の育成、M&A実行に向けての企業価値の向上など、事業承継を成功させるためには、早期から準備を進めなければなりません。 事業承継の準備で必要なこと 後継者候補探し 後継者の育成 経営課題の明確化 企業価値向上・磨き上げ(経営改善) etc・・・ 専門業者の活用 第三者に株式譲渡を行い、事業承継を実行する場合、M&A仲介会社などの専門業者を利用するケースが一般的です。 専門業者に依頼することで、自社にとって最適な売却先を探したり、希望の条件通りに交渉したりする手間と負担を軽減することができるでしょう。 しかし仲介手数料や費用はもちろん発生するため、自身で買い手を探したり交渉したりするリスクと照らし合わせて、相性のよい業者を探すことをおすすめします。 関連記事 M&A仲介とは?FAとの違い、M&Aでの役割を解説! M&A仲介手数料の相場はいくら?誰が払う? 事業承継税制などの活用 売却する形式による株式譲渡では、所得税もしくは法人税が譲渡側に課せられます。 一方、贈与・相続による株式譲渡では、贈与税もしくは相続税が譲受側に課せられます。 譲受側に重い税金が課せられてしまうと、事業承継のハードルが高くなってしまいます。そこで、条件を満たす場合、一定期間は贈与税・相続税の納税が猶予される事業承継税制を活用することができます。 金銭面について、事業承継・引継ぎ補助金を活用することで経済的負担を軽減させることも考えられます。 さまざまな制度があるので、適宜活用して事業承継を円滑に進めていきましょう。 関連記事 事業承継税制とは?納税が猶予・免除される要件とメリット・デメリットを解説 事業承継・引継ぎ補助金のすべて|M&Aで活用できるお得な補助金とは... 事業承継の重要性と課題 後継者不足や高齢化が進む現代において、事業承継は多くの経営者にとって重要な課題となっています。 事業承継には様々な方法がありますが、その中でも株式譲渡は、事業の継続性と円滑な経営権移行を実現できる手段です。 株式譲渡は、事業譲渡と異なり、会社そのものが存続するため、事業のブランドやノウハウ、従業員など、これまで築き上げてきた経営資源をそのまま引き継ぐことができます。  株式譲渡による事業承継を希望する場合には、売却価格の見通しや、M&A成約までのスケジュールを把握するため、M&A仲介会社などの専門業者に相談しましょう。 --- ### M&Aの事例を紹介!会社売却(事業譲渡・株式譲渡)の成功事例とは - Published: 2024-03-11 - Modified: 2024-03-19 - URL: https://atomfirm.com/manda/15644 - Categories: その他 M&Aは、大企業が不採算事業を整理するために事業譲渡したり、開発費や経営資源の獲得のために株式譲渡したりするなど、目的に応じて事例の形態はさまざまです。 M&A・会社売却は年々実施件数が増えている事業承継の方法です。 M&Aの事例としては、大企業が不採算事業を整理するために事業譲渡したり、開発費や経営資源の獲得のために株式譲渡したりするなど、目的に応じて形態はさまざまです。 この記事では、近年話題になったM&Aの事例を大企業、中小企業、ベンチャー企業に分けてご紹介します。 大企業のM&A・会社売却事例3選 パナソニックオートモーティブシステムズの会社売却 2023年に基本合意された、パナソニックHD子会社の会社売却事例です。 アメリカの投資ファンド大手アポロ・グローバル・マネジメントのグループ会社に数千億円規模で売却されます(2024年3月予定)。 パナソニックオートは自動車の電子部品、車載充電器事業などを手掛け、2022年度の売上高は1兆円を超えていました。 今後のEV開発や自動運転開発などの研究費を確保するため、アメリカの投資ファンドと連携することとなりました。 JTBベネフィットの会社売却 2021年に実施されたJTB子会社の会社売却事例です。 JTBベネフィットは福利厚生事業を手がける業界3位の子会社でしたが、JTBは同業最大手のベネフィット・ワンに150億円で売却しました。 コロナ禍で業績不振に陥ったJTBが、収益改善策の一環として、ベネフィット・ワンの提案を受け入れた形となります。 ソニーの会社売却(事業譲渡) 2014年に実施されたソニーのPC事業の譲渡事例です。 ソニーはVAIOというブランドのPCを製造販売していましたが、不採算が続いていたため、投資ファンドである日本産業パートナーズ(JIP)に売却しました。 売却額は数百億規模とされています。 中小企業のM&A事例3選 手袋メーカー「スワニー」の会社売却 2022年に実施された手袋メーカー「スワニー」の会社売却事例です。 後継者を誰にするのか悩んでいた先代経営者が、日本共創プラットフォーム(JPiX)に全株式を売却しました。 スワニーは業績良好で黒字経営でしたが、社内人材や親族内から後継者を探すだけでは限界があると判断し、M&Aという手法で事業承継を行うこととなりました。 ホテル・旅館経営「浦島観光ホテル」の会社売却 2023年に実施された、那智勝浦地域でホテル・旅館を経営する「浦島観光ホテル」の会社売却事例です。 浦島観光ホテルは創業後70年近くが経過し、施設の設備投資などを見据える中で、経営の専門家を探しており、日本共創プラットフォーム(JPiX)に全株式を売却しました。 売却額は非公表です。  工作機械製造「シンクス」の会社売却  2024年に実施された、工作機械、木工機械などの設計、製造、販売を手がける「シンクス」の会社売却事例です。 シンクス社の株式を保有していた投資ファンド「株式会社マーキュリアインベストメント」は、さらなる経営資源確保のために、阪和興業株式会社に全株式を売却しました。 ベンチャー企業のM&A・会社売却事例3選 NFT関連企業「メモリア」の会社売却 2023年に実施された、非代替性トークン(NFT)関連事業を手掛けるベンチャー企業「メモリア」の会社売却事例です。 電子書籍配信を手がけるBookLive社に、株式の過半数を売却しました。 メモリアは2021年6月に設立したスタートアップであり、創業からわずか2年以内での会社売却事例となりました。 ロボット開発「Kyoto Robotics」の会社売却 2021年に実施された工場向けロボット開発を手掛けるベンチャー企業「Kyoto Robotics」の会社売却事例です。 Kyoto Robotics社の株式を保有していた投資ファンド「株式会社INCJ」は、さらなる技術開発のために、日立製作所に対し全ての株式を売却しました。 コンタクトレンズ開発「ユニバーサルビュー」の会社売却 2021年に実施されたオルソケラトロジー用コンタクトレンズ開発を手掛ける医療ベンチャー「ユニバーサルビュー」の会社売却事例です。 ユニバーサルビュー社の株式を保有していた投資ファンド「株式会社INCJ」は、同社の技術や製品をさらに世間に浸透させる目的のために株式を売却しました。 M&A・会社売却のお悩みは専門家に相談を ここで紹介した事例以外にも、M&Aの事例は年々増えてきています。 中小企業やベンチャー・スタートアップの会社売却(イグジット)も活発に行われており、売り手にとっては会社売却を狙いやすい状況になりつつあります。 自社の企業価値や買い手探しなど、M&A・会社売却の手続きには複雑で専門的な知識が求められます。会社売却を希望するのであれば、専門家に相談して、効率的にプロセスを進めていきましょう。 --- ### M&A業界の動向を解説!業界ごとのM&A傾向とは - Published: 2024-03-11 - Modified: 2024-03-19 - URL: https://atomfirm.com/manda/15612 - Categories: その他 後継者不足に悩む経営者の解決策の一つとして、M&Aが選択されるケースが増えてきています。 M&Aは近年になり、活発に実施されるようになってきています。 経営者の高齢化、後継者不足、競争の激化など、事業継続が困難になった場合に、第三者に事業承継を行うM&Aが選択されているのです。 この記事では、M&A業界全体の動向と、M&Aが活発な業界について解説します。 M&A業界の動向 M&A近年の動向 M&Aは後継者不足に悩む経営者の解決策の一つとして、積極的に実施されるようになってきています。 日本では、事業承継の際には、子供や孫などの親族に承継させるケースや、同じ会社の従業員や役員に承継させるケースが一般的でした。無関係の第三者に会社を譲渡するM&Aは、身売りなどとマイナスイメージを持たれやすく、経営者が避ける傾向にあったといえるでしょう。 しかし、後継者候補となる親族が経営者となるのを拒むケースや、将来の見通しがつかないために経営者の方が親族に事業を承継させたくないケースなどが近年増えてきました。 こうした状況の中、経済産業省などが主体となり、事業承継の選択肢としてM&Aを押し出したこともあり、M&Aが積極的に検討されるようになっています。 例えば、各都道府県に作られた事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業の経営者の相談先として広く使われるようになりました。 2022年度の事業承継・引継ぎセンターのデータによると、2018年には11,477人だった相談者数が、2022年には22,361人にまで倍増しています。 また、M&A成約件数も拡大しており、2018年には923件でしたが、2022年には1,681件になっています。 M&Aの今後の動向予想 日本は高齢化が進んでおり、事業を継続することが困難になる経営者が増えていくことが予想されます。 中小企業庁の資料によると、2025年までに70歳を超える中小企業の経営者は約245万人となり、その約半数が後継者未定となると推定されています。 このような状況を受け、大企業だけに限らず、中小企業のM&Aを手厚くサポートする専門業者も最近では増えてきています。 今後のM&A市場についても、さらに活発になっていくことが予想されます。 M&A専門会社の動向 公的機関である事業承継・引継ぎ支援センターだけでなく、M&A仲介会社やM&Aアドバイザリーなど、民間の企業についても、業績を年々伸ばしています。 各会社によって、大規模な企業のM&Aに強い傾向があったり、中小企業のM&Aに強い傾向があったりするなどの違いがあります。 初回の無料相談などで、自社の事業承継にマッチしているかどうかをよく検討した上で、どこの会社を利用するのか判断することをおすすめします。 関連記事 事業承継の相談窓口は?事業承継成功の秘訣は専門家への無料相談? M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? M&Aの流れ M&Aの流れには、専門業者の選定から始まり、企業価値評価、買い手探し、交渉など、数多くのステップがあります。 ここでは、売却側に着目したM&Aの流れをご紹介します。 関連記事 M&Aの流れ・手順を解説!会社を売るためのステップとは? M&A業界別の動向 医療・クリニック業界のM&A動向 医療・クリニック業界は他業界と同様に、経営者の高齢化により、事業承継の課題が顕在化しています。後継者不足や専門人材の不足により、廃業するかどうかを選択しなければならない状況が増えてきているのです。 なお、クリニックと病院は、病床の数などによって分類されます。 病床数19床以下の医療施設はクリニック、病床数20床以下の医療施設は病院として分類されます。 クリニックや病院などの医療業界においては、国家資格が必要な職業となるため、親族内承継のハードルが高いといえます。そのため、医療・クリニック業界でも、M&Aを行うことで後継者問題を解消する傾向が強くなっているのです。 調剤薬局業界のM&A動向 調剤薬局業界におけるM&Aも活発化しており、今後もその傾向は続くと予想されています。 調剤薬局とは、病院や診療所などの医師の診断を経て処方箋にて指示された薬を、調剤して患者に受け渡す薬局です。 都道府県にある地方厚生局から指定を受け、保険診療による処方箋の調剤を実施している場合には、「保険調剤薬局」もしくは「保険薬局」と呼ばれます。 現代の日本では、医療と調剤を分けて行う医薬分業が進んでおり、医薬分業率は80%近くになってきています。 令和3年の厚労省のデータによれば、調剤薬局の数は日本全国で6万を超えるとされており、主要コンビニエンスストアの店舗数を上回るといわれています。 調剤薬局のM&Aが活発になる最も大きな要因は、医療・クリニックと同じく、経営者の高齢化です。調剤薬局も親族内承継が難しくなりやすいため、第三者承継が選択されるケースが増えているのです。 他にも、薬価改定などにより、減収傾向にあることも、M&Aが検討される大きな理由となっています。特に小規模の調剤薬局では、大手の調剤薬局チェーンに買収されることで、生き残りを図ろうとするケースもあるでしょう。 IT業界のM&A動向 IT業界は、市場への参入がしやすい業界の一つでもあるため、今後も市場規模は拡大していくと見込まれており、それに比例してM&Aも活発に行われていくでしょう。 矢野経済研究所の調査によると、IT業界の市場規模は14兆円を超えるといわれています。 業界・業種ごとのシステム開発やサービスに強みを持つ中堅、中小企業を、大手IT企業やコンサル会社などが買収するケースもあります。 飲食業界のM&A動向 飲食業界は競争が激しい業界であり、人手不足や価格競争など、事業がうまく回らないと倒産してしまう企業もあるでしょう。 このような問題を解決するための方法として、M&Aが活用されることが多いです。 コロナ禍が明けたことで、他業態への進出を狙う企業も出てきており、飲食業界のM&Aは今後も活発になることが予想されます。 アフターコロナに他業態を買収した実例としては、サンマルクホールディングスによる喫茶マドラグの買収が挙げられます(2022年)。サンマルクは2024年4月に、子会社である倉式珈琲の吸収合併も行っています。 また、飲食業界では、資本業務提携によるM&Aもよく見られます。 有名な実例としては、吉野家ホールディングスによる株式会社せたが屋の株式取得(2016年)が挙げられます。 介護業界のM&A動向 高齢化が急速に進む日本では、介護業界は成長産業です。そのためM&Aの件数も比例して増加傾向にあります。 介護業界に参入する場合には、利用者のための設備を整え、介護スタッフを用意しなければなりません。 これらを全て最初から準備すると、時間のコストが大幅にかかるため、M&Aにより迅速に参入しようとする買い手が多いのも特徴です。 そして他業界と同じく、経営者の高齢化や後継者不足の問題を解決したいという譲渡側の希望によるM&Aも活発です。 美容室業界のM&A動向 美容室を売却する場合、スケルトンにしてからの譲渡、もしくは居抜きでの譲渡が主な手法でした。しかし、近年では、株式譲渡や事業譲渡なども実施されるようになってきています。 美容室を賃貸物件で経営していたのであれば、退去時には使用していた設備を全て取り払ってスケルトンにします。しかし、貸主の許可を得れば、次の借主(事業の後継者)との間で造作譲渡を行い、経営していたときの状態で承継することも可能です。これを居抜きといいます。 スケルトンや居抜きでの譲渡は、あくあで施設や店舗の権利を譲渡するだけで、ただちに経営権や従業員などを承継することにはなりません。そのため、一括して美容室事業を承継するため、M&Aが検討されるようになっているのです。 ただし、美容室業界はほとんどが小規模サロンであるため、他業界と比べれば、M&Aの件数は多くはないでしょう。 まとめ 日本では、どの業界であっても経営者の高齢化が進み、事業承継できる候補者が不足しています。 第三者に事業承継するM&Aは、このような後継者不足を解決する手段となりえます。 廃業すると費用を負担しなければならない場合もありますが、会社売却ができれば、売却益を取得できる可能性もあります。 まずはM&A仲介会社などの専門家に相談し、自社の企業価値を評価するところから始めましょう。 --- ### M&Aのシナジー効果とは?シナジーの種類と分析まとめ - Published: 2024-03-08 - Modified: 2024-03-19 - URL: https://atomfirm.com/manda/15400 - Categories: 会社売却の相場 M&Aのシナジー効果とは?分析の方法とは?M&Aのシナジー効果が高く評価されれば、売り手側がもらえる対価も高額になります。この記事では、M&Aのシナジー効果の種類、分析方法、M&A価格への反映方法などについて解説しているので、是非ご参考になさってください。 M&Aのシナジー効果とは? M&Aのシナジー効果の種類は? M&Aのシナジー効果の分析方法は? シナジー効果とは、M&Aによって得られるプラスの相乗効果のことです。 M&Aは、売り手企業と買い手企業を足すことで、事業の成果を1+1=2ではなく、3にも4にもできる可能性を秘めています。 この記事では、M&Aのシナジー効果の種類、分析方法などについて解説しています。 是非さいごまでご覧ください。 M&Aのシナジー効果の定義 M&Aのシナジー効果とは? M&Aのシナジー効果とは、売り手企業と買い手企業が統合することで生まれる相乗効果のことです。 複数の企業が統合することで、それぞれの企業の技術、ノウハウ、販路などの経営資源を組み合わせることができ、その結果、1社単独では実現できないより大きな価値を生み出すことを指します。 シナジーが生まれるM&Aとは? シナジー効果は、戦略的に計画されたM&Aによってのみ実現できます。 単に企業規模を拡大するだけでなく、事業ポートフォリオの補完や経営資源の有効活用など、明確な目的を持ったM&Aが重要です。 M&Aのアナジー効果とは?シナジーとの違い M&Aの効果には、シナジー効果とアナジー効果の2種類があります。 シナジー効果はプラスの効果であす。 一方、アナジー効果はマイナスの効果です。 M&Aを成功させるためには、シナジー効果を最大化し、アナジー効果を最小限に抑えることが重要です。 M&Aのシナジー効果の種類 M&A(会社売却)のシナジー効果には、事業シナジー(売上シナジー・コストシナジー・研究開発力アップ)、財務シナジー、組織シナジーといったシナジーがあります。 これらのシナジー効果について、解説していきましょう。 売上シナジー効果とは? M&Aによって、買い手企業は、単独で営業していた頃と比べて売上が伸びた、コストを削減できた、財務状況が改善したなど、さまざまなシナジー効果を受けると思います。 M&Aのシナジー効果をとらえる切り口には様々なものがあります。 売上シナジーとは、M&Aによる経営統合により、単独で営業していた頃よりも、売上が伸びるという効果のことです。 売上シナジーは、クロスセリングなどをおこなうことで創出されます。 売上シナジーの創出(一例) クロスセリング 新製品の共同開発 ブランドの共同利用 販路の拡大etc. クロスセリング クロスセリングとは、売り手企業と買い手企業の顧客を共有することです。 M&Aの実行によりクロスセリングが可能になった場合、それぞれの企業が単独で営業していた時よりも多くの顧客に商品やサービスを販売でき、売上が向上する効果を期待できます。 新製品の共同開発 M&Aの実行により、新製品の共同開発が可能になります。 お互いの技術資源を取り込むことができるので、単独では開発できなかったような革新的な新製品やサービスを開発することができ、売上が向上する効果が期待できます。 ブランドの共同利用 M&Aを実行することで、お互いのブランド力を活かして、商品やサービスの認知度が高まり、売上が向上することが期待できます。 ただし、M&Aによってブランドが統合されたことで、もとのブランドイメージが変わってしまい、顧客離れにつながるなどのアナジー効果のおそれもあります。 販路の拡大 M&Aを実行することで、店舗や通販など、販売チャンネルを拡大することができます。 その結果、より多くの顧客に商品やサービスを販売することができるようになり、売上が向上するといった効果が期待できます。 売上シナジーの注意点 売上シナジーの創出は顧客しだいです。 たしかにM&Aをおこなえば、クロスセリングや新製品の共同開発など、売上向上につながるチャンスをつかむことはできます。 しかし、実際に顧客が商品やサービスを購入してくれるかどうかは、お客様しだいです。 売上シナジーは、コストシナジーに比べて、実現するかどうかの予測が難しいものといえるでしょう。 コストシナジー効果とは? コストシナジーとは、M&Aによる企業統合により、単独で営業していた頃よりも、会社運営にかかるコストを削減できるという効果のことです。 コストシナジーは、共同購買などをおこなうことで創出されます。 コストシナジーの創出(一例) 共同購買・共同仕入れまとめて発注をかけることで、有利な取引条件で購入でき、仕入れコストの削減につながる 拠点の統廃合生産拠点や販売拠点を統廃合することで、維持費や修繕費などコスト削減、事業や組織の合理化につながる 物流合理化物流拠点の集約により、管理や配送効率を向上させ、無駄な物流コストを削減できる ビジネス視点の切り口とは? M&Aのシナジー効果については、ビジネスにおける切り口からとらえた場合、事業シナジー、財務シナジー、組織シナジーといった分類が可能です。 ビジネスのシナジー効果 事業シナジー 財務シナジー 組織シナジー 事業シナジー 複数の企業が経営統合することによって、事業運営において発揮されるシナジー効果のことを、事業シナジーといいます。 事業シナジーには、売上シナジー、コストシナジー、経営資源の有効活用といった効果が含まれます。 売上シナジーやコストシナジーについては、先ほどお伝えしたとおりです。 経営資源の有効活用については、スケールメリット(規模が大きくなることで経済効率が上がること)の拡大、研究開発の効率化、人材が増えることで適材適所が促進されるといった効果が期待できます。 財務シナジー 財務シナジーとは、M&Aによる企業統合により、単独で事業をおこなっていた頃よりも、財務状況が良くなるという効果のことです。 財務シナジーには、経営統合をしたグループ全体での資金の有効活用、節税、資金調達力の増強やコスト削減といった効果が含まれます。 たとえば、売り手企業の業績が好調で手元資金が厚い場合、買い手側は、M&Aによって売り手側企業の余剰資金を手にすることができ、投資に回すことができます。 また、財務状況が好調な企業は、金融機関からの信頼が厚く、金利削減につながる可能性もあります。 そのほか、M&Aの買い手側は、赤字企業を買収した後に利益をあげた場合、従前の赤字を繰越欠損金とすることで黒字の幅を縮小できるので、所得税を節税できる効果があります。 組織シナジー 組織シナジーとは、異なる企業文化やノウハウを持つ企業が統合することで、組織全体の活性化とイノベーションの促進につながる効果です。 組織シナジーは、以下の3つの要素から構成されます。 人材の活性化異なる人材が交流することで、新たなアイデアや発想が生まれ、組織全体の活性化につながる。 ノウハウの共有それぞれの企業が持つノウハウを共有することで、業務効率化や新製品・サービスの開発につながる。 企業文化の融合異なる企業文化が融合することで、新しい価値観や目標が生まれ、組織全体の成長につながる。 M&Aのシナジー効果の分析 バリューチェーンによるシナジー分析 バリューチェーンとは、原材料の調達から製品の販売まで、企業が顧客に価値を提供するために必要な一連の活動を体系的に分析するフレームワークです。 バリューチェーンは、主活動と支援活動に分類されます。 主活動とは、製品やサービスの価値を生み出す直接的な活動のことです。「購買物流→製造→出荷物流→販売・マーケティング→アフターサービス」といった流れが主活動になります。 支援活動とは、主活動を円滑に進めるための間接的な活動のことです。インフラ、人事・労務、技術開発、調達などは支援活動になります。支援活動は、主活動全体にかかわるものです。 事業の流れに沿って検討する場合、売上シナジー、コストシナジー、財務シナジー、組織シナジーの分析がしやすくなります。 たとえば、主活動の「製造」であれば、M&Aによって生産能力の拡大や、ノウハウの共有によって、売上シナジーが生まれることが期待できるでしょう。また、M&Aによって工場の統廃合や、外注作業の内製化ができれば、コストシナジーが生まれるでしょう。 また、支援活動の「技術開発」については、研究施設の統廃合によるコスト削減などのシナジー効果が期待できます。「調達」の場面では、M&Aによって企業の信用力が高まれば、金融機関から借り入れしやすくなるといった財務シナジーも期待できるでしょう。 買い手側は、バリューチェーンにのっとり、シナジー効果を想定するフレームワークによって、売り手企業とのM&Aが価値あるものかを検討しています。 売り手側としても、どの段階で、どのような価値を、買い手側企業に提供することができるのか、どの過程でどのような旨味があるのかを、説得的に伝えていくことが必要でしょう。 アンゾフの成長マトリックスによるシナジー分析 シナジー効果の分析の手法としては、上記のバリューチェーンにしたがう分析方法のほかに、アンゾフのマトリックスというものがあります。 アンゾフの成長マトリックスとは、経営戦略の父と呼ばれるイゴール・アンゾフが提唱したフレームワークです。 製品と市場をそれぞれ「既存」と「新規」に分類し、4つの象限で企業の成長戦略を分析します。 市場浸透戦略 市場浸透戦略は、既存の市場で既存の製品を販売することで、製品を浸透させて、売上を増加させる戦略です。 価格競争、販売促進、顧客サービスの向上などが、市場浸透戦略の主な施策となります。 販売エリアが異なる同業他社とのM&Aにより、販路拡大による売上シナジーが生まれる可能性があります。また、経営資源の統廃合、組織の合理化などを実現できれば、コストシナジーが生まれ、価格競争に強くなることが期待できます。 新製品開発 新製品開発戦略は、既存の市場において、新たなニーズを満たす製品を開発して販売することで売上を増加させる戦略です。 顧客ニーズの分析、新製品開発、市場調査などが、新製品開発戦略の主な施策となります。商品の差別化が鍵となる戦略です。 新市場開拓戦略 新市場開拓戦略は、既存の製品を、新たな市場に投入することで売上を増加させる戦略です。 新規市場への参入、販売チャネルの拡大、ブランド戦略などが、新市場開拓戦略の主な施策となります。売る力が試される戦略です。 多角化戦略 多角化戦略は、新たな市場で新たなニーズを満たす製品を開発することで、売上を増加させる戦略です。 ハイリスクハイリターンの戦略となります。新規事業の立ち上げ、経営資源の確保などコストがかかりますが、新しいビジネスチャンスを創出することができれば、リターンは大きいものとなります。 多角化戦略の内容についても、4つの分類ができます。 水平型多角化戦略既存顧客に対して、新しい製品やサービスを投入する戦略です。顧客基盤や販売チャネルを活かせるため、比較的低リスクで展開可能です。新製品の開発、販売チャネルの構築などに投資が必要となります。例)電気メーカーがゲーム機を販売する 垂直型多角化戦略既存事業の供給過程(川上)や販売過程(川下)に進出する戦略です。安定供給、品質向上、コスト削減などのメリットがある一方、設備投資、技術開発などのリスクもあります。例)繊維メーカーがアパレルブランドを作る 集中型多角化戦略既存事業と技術的・マーケティング的に関連性のある分野に、新規参入する戦略です。メリットはシナジー効果による競争力強化にありますが、一方で市場調査、技術開発などのリスクもあります。例)製薬会社が化粧品を作る 集成型多角化戦略既存事業との関連性のない分野に、新規参入する戦略です。集約型多角化は、コングロマリット型多角化ともよばれます。ブランド力、資金力などを盾にして、いままでとは全く異なる分野に進出するものです。多角化戦略の中で、もっともリスクの高い戦略であるといわれています。例)楽器メーカーが、オートバイ製造、バスタブ製造、英語教室運営などをおこなう 多角化戦略は、ほぼ未経験の市場で新製品を投入することになるため、かえってコストがかかり、シナジー効果の実現に時間を要するなどハイリスクな戦略です。 ですがその分、成功すれば、様々な分野で事業展開できることから、リスク分配ができ、大規模収益の安定化も図ることができるでしょう。 シナジー効果の高いM&Aを目指すには? シナジー効果の評価はいくら? M&Aの価格に、シナジー効果を反映させるには、M&Aによるシナジーを定量化して、企業価値評価をおこなう必要があります。 シナジーを定量化するにはまず、期待されるシナジー効果を分析・抽出します。そして、シナジーで生み出される利益の見込み金額と、実現のためのコストを洗い出します。その後、DCF法などを用いて、シナジー効果を反映させながら、企業価値評価をおこないます。 実現可能性が低いシナジー効果については、シナジーで生み出される予測金額がディスカウントされる可能性もあるでしょう。 なお、中小企業のM&Aにおいては、譲渡対象企業の簿価純資産に、営業利益の直近5年間分を加算した金額が、M&Aの価格相場になるともいわれています。 様々な計算方法を組み合わせて、売り手側と買い手側双方が交渉を重ねていき、最終的な売却価格を合意します。 関連記事 企業価値評価におけるDCF法とは?株主資本コスト、加重平均資本コスト(WACC)の求め方を徹底解説! 会社はいくらで売れる?会社売却価格の計算方法、相場を解説 シナジー効果の高いM&Aを目指すには? M&Aによるシナジー効果には様々な種類があり、分析の着眼点も色々ありました。 M&Aによるシナジー効果を高く評価してもらえれば、M&Aの価格も高額になり、売り手のメリットは大きいものとなります。 買い手に自社の魅力をうまく伝えて、シナジー効果を期待してもらえるよう、会社の魅力の磨き上げを十分におこなう必要があるでしょう。 磨き上げについて詳しく知りたい方は「事業承継型M&Aの磨き上げとは?磨き上げの目的や対象を解説!」の記事もご覧ください。 --- ### M&Aの流れ・手順を解説!会社を売るためのステップとは? - Published: 2024-03-07 - Modified: 2024-04-01 - URL: https://atomfirm.com/manda/15005 - Categories: 会社売却の流れ M&Aの流れは、「検討・準備」段階、「交渉」段階、「クロージング」段階の3つに大きく分けられます。M&A・会社売却を希望する場合、なるべく早い段階から専門業者に相談することをおすすめします。 M&Aの流れは、「検討・準備」段階、「交渉」段階、「クロージング」段階の3つに大きく分けられます。 ここでは、会社売却側、会社買収側それぞれの立場から、M&Aの流れを解説します。 M&Aの検討を始めてから、成約まで数年間かかる場合もあります。少しでもM&Aによる事業承継に興味があるのであれば、なるべく早い段階で専門業者に相談してみましょう。 M&Aの大まかな流れ M&Aの手順①検討・準備フロー M&Aの目的・戦略を検討する M&Aによる会社売却、買収を行おうとする場合には、M&Aの目的と戦略を明らかにする必要があります。目的に応じて、M&A成約までにかかる期間や利用すべき専門家などが変わる可能性があるので、M&Aの手順を進める前に密な検討と準備を行うことが不可欠です。 他にも、M&Aが実現することによるシナジー効果を明確にすることで、会社売却側は買い手に対するアピール材料を増やすことができます。買い手にとっては、買収候補を絞り込む際に活用できるでしょう。 また、M&Aによるリスクを想定することも重要です。交渉や手続きを進めていく中で、リスクが払しょくできないと判断した場合には、M&Aを中止することもあり得るからです。 M&A売り手の目的・戦略など 売り手からすれば、M&A(会社売却)の目的は、後継者問題の解決や会社の売却益を手に入れることなどでしょう。他にも、M&Aの初期段階では、以下のような点を明確にしておく必要があります。 M&A売り手の目的・戦略など 売却の目的事業撤退、経営資源の集中、後継者不足、資金調達など、会社売却を行う目的を具体的に定めましょう。 売却戦略目的達成のためにどのような売却方法を選択するのか、具体的な戦略を策定します。売却対象となる買収候補の規模や業種、売却後の関係などを検討します。 シナジー効果売却によって、買い手が期待できるシナジー効果を具体的に洗い出します。交渉フローで役に立つでしょう。 リスク売却に伴うリスクを想定し、対策を検討します。買収後の経営統合の難航、業績悪化、従業員の離職など、M&Aの失敗要因を事前に把握しておくことが重要です。 M&A買い手の目的・戦略など 買い手からすれば、M&A(会社買収)の目的は、さらなる事業の拡大やコスト削減などでしょう。他にも、M&Aの初期段階では、以下のような点を明確にしておく必要があります。 M&A買い手の目的・戦略など M&Aの目的事業拡大、新規事業進出、経営資源の獲得、人材確保、コスト削減など、M&Aを行う目的を具体的に定めましょう。 M&A戦略目的達成のためにどのような買収方法を選択するのか、具体的な戦略を策定します。買収対象となる企業の規模や業種、買収後の統合方法などを検討します。 シナジー効果買収によって期待できるシナジー効果を具体的に洗い出し、定量化します。売上増加、コスト削減、技術融合など、M&Aのメリットを明確にすることが重要です。 リスク買収に伴うリスクを想定し、対策を検討します。文化の違い、経営統合の難航、業績悪化など、M&Aの失敗要因を事前に把握しておくことが重要です。 関連記事 M&Aの目的とは何か?売り手買い手別のM&Aの狙いと重要性を解説 M&A仲介会社(専門業者)を探して依頼する M&A・会社売却は複雑な手続きを伴うため、専門知識を持つM&A仲介会社やアドバイザリー会社のサポートを受けることが一般的です。 M&Aの初期段階から専門業者を利用することで、M&Aの手続きをスムーズに進めることができます。豊富な経験、業界知識、人脈、成功実績などを考慮して、自社に合った専門業者を選びましょう。 特にM&A仲介会社は両手取引と呼ばれ、売り手と買い手の両方を担当します。両社の希望を効率よく調整できるため、M&Aの成約までスムーズに進みやすいといえます。 いずれも初回相談は無料で行っている会社が多いです。自身で考えた売却の目的、戦略、スケジュール、希望売却額などを伝え、専門業者に具体的なアドバイスやサポートを依頼しましょう。専門家の費用には、成功報酬型、着手金+成功報酬型、固定報酬型など、様々な報酬体系があります。 関連記事 会社売却の相談先は弁護士?相談先の選び方と相談窓口一覧 企業価値評価 M&Aでは、買収対象となる企業の価値を正確に評価することが重要です。企業価値を評価する方法としては、DCF法、類似会社比準、時価純資産法など、複数の評価方法を用いて、企業価値を算出します。 専門業者によっても評価が異なることがよくあるため、複数の会社の無料相談を試してみて、最も希望をかなえてくれそうな会社を選ぶべきでしょう。 関連記事 M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! 売却先・買収先を探す M&A仲介会社などを通じて、売却候補、買収候補となる企業を探します。取引しているメインバンクから紹介を受けてM&Aが成約するケースもあります。 専門業者を使わずに自分の知り合いの中からM&Aの相手を探そうとしても、すぐに限界がくるでしょう。M&A仲介会社やプラットフォームなどを複数活用し、自社にとって最適な相手方を見つけましょう。 関連記事 会社売却成功への道!M&A買い手探しの目的とポイントとは M&Aの事例を紹介!会社売却(事業譲渡・株式譲渡)の成功事例とは M&Aの手順②交渉フロー M&Aの検討・準備が完了したら、いよいよ具体的な交渉に入ります。M&Aの交渉は、複数のステップに分かれており、それぞれのステップで確認すべきポイントや進め方があります。 トップ面談 トップ面談とは、売り手と買い手の企業のトップ(最高経営責任者など)が会って、M&Aについて話し合うことです。具体的な条件交渉ではなく、経営者同士の人間性や企業文化などを確認する場となります。企業の社長以外にも、重要な株主や影響力のある株主、関連する部門の責任者も参加することがあります。 トップ面談では、将来の計画を共有したり、M&Aで生じるシナジー効果について話し合ったりして、最終的にはM&Aを進めるかどうかを検討します。 意向表明 意向表明とは、買い手側が正式に買収意欲を表明し、基本的な条件を提示することです。意向表明書(LOI)と呼ばれる書面を会社譲受側が譲渡側に送ります。 意向表明書には、譲受を希望する理由や買収価格、支払い方法、株式交換比率、従業員の雇用などが記載されるケースが一般的です。 側の企業に対して、会社売却の提示条件を記載した書面のことです。 譲受を希望する企業が複数の場合は、売り手企業は意向表明書を見ながら、譲渡先候補を1社にしぼります。 その後は、基本合意の締結に向けて話し合いをおこないます。 基本合意 基本合意は、M&A・会社売却の主要な条件について合意することです。基本合意書を締結することにより、譲渡企業、譲受企業のM&A対する合意を確認することができます。 また、トップ面談や意向表明を通じて定めた会社売却価格、支払条件、残留条件などの条件について合意を行うことで、今後の交渉がスムーズになるでしょう。 契約を締結すると原則として法的拘束力が生じるため、契約に違反した場合には損害賠償責任を負う可能性があります。 しかし、基本合意書の場合には、秘密保持や独占交渉権などの一部の条項のみに、法的拘束力を設定するケースが一般的でしょう。 独占交渉権とは? 基本合意書を締結する際には、買い手候補となる企業から「独占交渉権」の条項を盛り込むよう要求されることが多いです。 独占交渉権が基本合意書に規定されると、売り手企業は、基本合意書を締結した買い手候補の同意なしには、一定期間、他の買い手候補との交渉を禁止されます。 そのため、売り手としては、基本合意書を締結する相手としてふさわしい企業か否かについて、慎重に検討する必要があるでしょう。 買収監査(デューデリジェンス) 買収監査(デューデリジェンス、DD)とは、 売り手企業の財務状況、法務状況、事業状況などを買い手側が調査することです。 基本合意までの段階で売り手側が全ての情報を開示していない可能性や、隠れた債務がある可能性があるため、M&AにおいてDDは必須のプロセスといえます。 通常、DDは買い手企業が実施しますが、売り手も無関係ではありません。売り手は買い手のDDに協力したり、リスクを率直に開示して理解してもらったりする必要があります。 DD前に改善できるリスクがある場合は、早期に対処しておくことも重要でしょう。 DDで問題が発覚した場合は、交渉をやり直したりM&Aが中止になったりする恐れがあります。例えば、簿外債務や、不自然なキャッシュフロー、未払いの買掛金などが問題になりやすい傾向にあります。 DDには、財務DD、法務DD、環境DD、労務DDなどの種類がありますが、中小企業の場合は財務DDと法務DDのみ実施されることが一般的です。 最終条件交渉 買収監査が終了した後、最終的なM&Aの成立を確定させるために、具体的な条件について詳細な交渉が行われます。この最終条件交渉では、買収価格の調整や契約内容の修正、リスクの分担などについて協議が行われることが一般的です。 買い手は、買収監査の結果に基づき、リスクを低減させるための施策の提案などを行うことがあります。売り手としては、会社売却価格や社員・経営陣の処遇など、希望する詳細条件を具体化する最終の交渉を行います。 会社売却価格の交渉、従業員の処遇、取引先との関係、先代経営者の引退計画など、様々な要素が明確にするようにしましょう。 最終条件交渉では、両当事者にとってメリットのあるM&Aになるよう、改善できる点は歩み寄り、反論できる点はきちんと主張していくという姿勢が重要です。 M&Aの手順③クロージング 最終契約締結 最終条件交渉がまとまったら、最終契約書を締結します。最終契約書には、実際の売却価格や契約違反時の責任などが詳細に規定されます。基本合意書と異なり、売却条件なども含め全面的に法的拘束力が生じます。 最終契約書に違反すれば損害賠償が発生したり、紛争になったりする可能性もあります。 専門業者にM&A仲介を依頼している場合は、最終契約書まで対応してもらえることが多いです。 関連記事 M&Aの契約書の種類や内容は?契約の流れに沿って解説! クロージング M&Aにおけるクロージングとは、最終契約に基づいて、株式譲渡や事業譲渡などの手続きを行い、売却手続きを完了させることです。 M&A・会社売却が成約したら、会社売却代金の支払い手続き、経営権の移転を完了させることで、クロージングとなります。 クロージングまでの手順は、M&A・会社売却にとって重要な手続きであり、不備が内容に進めなければなりません。関係者全員が協力して、スムーズに進めることが重要です。 M&A後の統合について(PMI) M&Aはクロージングの後も、PMI(Post Merger Integration)と呼ばれる、M&A成立後の「経営統合プロセス」を行う必要があります。 例えば、統合後の体制構築、業務オペレーションの整理、ITシステム統合などの一連の取り組みがPMIと呼ばれます。これにより、M&Aによるリスクを低減し、両社が統合した効果を最大化することができます。 PMIは原則として、買い手企業が取り組むべきものです。しかし、売り手企業としても、自社の社員の混乱防止、取引先との関係維持など、円滑な事業承継のために、協力を求められるケースもあるでしょう。 まとめ M&Aの流れは複雑で成約まで数年かかるケースもあります。 M&A・会社売却を希望する場合、なるべく早い段階から専門業者に相談することをおすすめします。 企業価値評価や買い手探しなど、専門的な知識が必要で時間のかかる作業を、専門家に任せることで、スムーズにM&Aを進めることができるでしょう。 --- ### 事業承継型M&Aの磨き上げとは?磨き上げの目的や対象を解説! - Published: 2024-03-07 - Modified: 2024-03-19 - URL: https://atomfirm.com/manda/15065 - Categories: 事業承継, 企業価値, 会社売却の流れ 事業承継型M&Aの磨き上げとは?磨き上げの目的や対象は?時期は?手順は?方法は?この記事では、事業承継をご検討中の経営者の方に向けて、M&Aの「磨き上げ」について徹底解説しています。是非ご覧ください。 事業承継型M&Aの「磨き上げ」とは? 磨き上げの目的は? 磨き上げの対象は? 事業承継型M&A(M&Aによる事業承継)をおこなう場合、磨き上げは非常に重要な過程になります。 M&Aにおける磨き上げとは、会社の魅力に磨きをかけることです。強みや弱みを把握した上で、手直しを加えたり、現状維持を選択したりと、磨き上げの方法は様々でしょう。 この記事では、事業承継型M&Aにおける「磨き上げ」について、その目的や方法、対象、相談先、磨き上げのためのツールなどを解説します。 中小企業の経営者の方など、現在、事業承継をご検討中の方は、是非さいごまでご覧ください。 事業承継型M&Aの磨き上げとは? 磨き上げとは 事業承継型M&Aにおける磨き上げとは、M&Aによる事業承継に向けて経営改善をおこない、企業価値を高めることを指します。 親族内承継や社内昇格などがかなわず、後継者不在の問題をかかえる中小企業では、M&Aによる事業承継をおこなう例が増えています。 M&Aによる事業承継は、買い手探しをおこなう必要があるため、磨き上げは、事業承継型M&Aにおいて非常に重要な課題です。 関連記事 事業承継問題とは?課題は後継者不在?解決策はM&A? 磨き上げの目的 事業承継型M&Aで磨き上げをおこなう目的としては、おもに以下の2点があげられます。 磨き上げの目的(一例) M&Aの成立させること 高額でのM&Aを実現すること 磨き上げの目的は、ひとつには、事業承継型M&Aを成立させることにあります。 また、売り手にとって、より良い売却条件、高額でのM&Aを実現するということも、磨き上げの目的です。 事業の将来性に不安がある場合、事業承継先が見つからない事態も想定できます。 しかし、磨き上げをおこない魅力的な企業になることで、買い手を探しやすくなり、M&Aの価格交渉を有利に進めやすくなるなどの効果が期待できます。 磨き上げの方法 磨き上げの時期 事業承継型M&Aの「磨き上げ」には上記のような目的があるので、買い手探しをおこなう前、M&Aの検討・準備段階で着手しておく必要があります。 関連記事 M&Aの流れ・手順を解説!会社を売るためのステップとは? 磨き上げの手順 事業承継型M&Aの「磨き上げ」には、決まった方法はありません。 経営状況や財務状況は企業ごとに異なり、より良くできる方法は、その企業によって違うからです。 しかし、大枠として、以下のような手順にしたがうことが多いでしょう。 まずは、その企業の経営課題の現状を把握します(見える化)。企業価値評価により、企業の現在の価値を見える化するのも良いでしょう。この際、心強い味方となってくれるのが、事業承継・引継ぎ支援センターや、M&A仲介会社や公認会計士などです。 そして、経営改善の計画をたてて(Plan)、実行し(Do)、効果を確認し(Check)、さらなる対策を立てる(Action)というPDCAサイクルで、磨き上げを進めていくことになります。 関連記事 M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 事業承継型M&Aで重要!3つの磨き上げとは... 事業承継型M&Aの「磨き上げ」の対象となる分野については、財務、税務、法務、ビジネスなど多岐にわたります。 これらの項目は、事業承継型M&Aの買収監査(デューデリジェンス)の対象になるものです。 買収監査とは? 買収監査とは、買い手側が、売り手側の企業について、その価値やリスクを徹底的に調査すること。 事業承継型M&Aの流れとしては、買収監査の結果を踏まえて、最終的な条件交渉をおこない、条件がまとまれば成立となります。 売り手側がM&Aの成功を目指すためには、買収監査を先回りして、磨き上げに取り組むことがポイントです。 財務・税務の磨き上げ 財務状況が良好である会社は、安定した会社運営が期待できるため、高く売ることができます。 そのため、財務・税務の磨き上げは、M&Aの価格決定にかかわる重要な作業です。 財務・税務の磨き上げについては、たとえば、過去5年間分程度、貸借対照表や損益計算書の重要科目や、増減の多い科目の推移分析をおこない、企業の健全性を確認し、改善を図るという方法が考えられます。 以下のような項目について、意識してチェックするとよいでしょう。 簿外債務の有無と金額簿外債務の発覚により、M&Aの延期、中止、責任追及のおそれがある。具体的には、未払残業代、保証債務、役職員退職金の支給額、賃貸不動産の原状回復義務などを確認し、対応を検討する。 長期滞留の在庫や、不稼働機械などの資産の有無と金額会社運営に必要のない資産を確認し、活用方法を検討する。不要な場合は、早期に処分することで、資産の管理にかける無駄なコストを削減することができ、財務の適正化を図る。 会計・税務処理の適正性粉飾決算など不適切な会計処理は論外。解釈の余地がある取引については、税務当局から否認されるリスクを回避できるよう、事業との関連性の説明をできるよう準備しておく必要がある。 このほか、回収不能債権などの有無と回収見込み額、個別資産の価値評価と妥当性、リース債務の有無と残高なども、財務状況に関係するので、確認しておくと良いでしょう。 法務の磨き上げ どんなに収益性があり魅力的な事業を展開していても、法的に不備がある会社運営をしていると、後日、紛争に発展するリスクがあります。 そのような会社とM&Aをおこないたいと思う相手は居ないでしょう。 そのため、法務の磨き上げは、M&Aの成立・実行の可否自体に関わる重要な過程になります。 法務の磨き上げの対象は、株主、会社運営、契約書など多岐にわたります。 株主の履歴株主名簿の作成・管理の有無、情報の正確性、株主の異動が適正な手続きでおこなわれたかなどを確認し、不備があれば対処する。 会社の設立手続き・登記・規則・議事録会社が設立手続きが適正なものだったか、現在の実体関係と登記が一致しているかを確認する。会社の規則の整備・運用、議事録の作成など、適切な会社運営がなされているか確認し、不備があれば対処する。 許認可・業法などの遵守状況免許なしに事業をおこなう場合、行政処分の対象になる恐れや、企業の信用喪失につながる場合がある。買収監査で注目される事項であり、万一不備がある場合は、早急に対処する。 COC(チェンジ・オブ・コントロール)条項の有無株主や代表取締役の交代がある場合、相手方の承諾を得ることを義務付ける条項(COC条項)が締結されていることがある。COC条項に違反した場合、取引停止や損害賠償請求を受けるリスクがあるため、事前に、COC条項の有無、および承諾の見込みの有無を確認しておくことが望ましい。 契約書の整備中小企業の場合、取引基本契約書を締結することなく、注文書と請書のみで、取引先との継続的取引をおこなっているケースも多い。M&A後も、安定的な取引を継続するため、契約書周りの整備もおこなう必要がある。 訴訟リスクの確認債権・債務、顧客からのクレーム、特許・ノウハウの使用が法的に有効か、製造物責任、雇用・労働問題、ハラスメント問題など訴訟に発展するリスクがある問題の有無を確認し、解決を図る必要がある。 ビジネスの磨き上げ ビジネスの磨き上げは、自社のビジネスモデルや、そのビジネス特有のリスクなどを把握し、ビジネスの強み・弱みを把握したうえで、改善できる点があれば見直すという取り組みになります。 ビジネスの磨き上げをおこなうことで、自社の魅力を、買い手側に伝えやすくなります。その結果、買い手企業側は、M&Aによるシナジー効果をイメージしやすくなり、ひいては、M&A成約へのモチベーションが高まることにつながるでしょう。 ビジネスモデルの分析は、次のような点を踏まえて行われます。 競合他社の有無 市場の動向 特定企業への依存度(主要取引先、業務提携先etc. ) 急成長分野における不確定要素(将来予測の困難性、対応人材の不足etc. )を踏まえた、収益の予測 ビジネスにともなう環境汚染等の有無(騒音、異臭、土壌汚染、水質汚濁、アスベスト、PCBetc. )の確認 ビジネスの磨き上げは、買い手側に、企業の成長機会や将来のリスクをイメージさせるものであり、M&Aの価格にも影響します。 ビジネスにともなうリスクについては、できる限り早期に対処する必要があるでしょう。 磨き上げに役立つ相談窓口・ツール 事業承継型M&Aの専門家 現経営者が自ら磨き上げを実施することも可能です。 しかし、事業承継型M&Aに不慣れな方も多いでしょう。磨き上げだけに時間をかけていると、その後の買い手探しや、具体的な交渉まで、なかなか進むことができません。 磨き上げを効率的に進めるには、公認会計士、税理士、弁護士、中小企業診断士などの専門家に相談する方法もあります。これらのM&Aの専門家は、非常に心強い存在です。 磨き上げの相談先 公認会計士 税理士 弁護士 中小企業診断士etc. また、民間のM&A仲介会社、公的なM&A支援機関などに相談すると、総合的な案内を受けられたり、必要に応じて専門家につなげてもらえるメリットがあるでしょう。 無料相談の機会なども、うまく活用してみてください。 関連記事 M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? 磨き上げのためのツール 磨き上げのためのツールとしては、以下のようなものがあります。 各企業の現状把握や経営分析のために、国が公開しているツールもあります。 ローカルベンチマーク(経済産業省)通称ロカベン。企業の経営状態の把握をおこなうためのツール。財務分析(売上持続性、収益性、生産性、健全性、効率性、安全性)と、非財務(業務フロー、商流、経営者・事業・環境・内部管理統制)のパートに分かれる。 経営者が自らご作成なさることも可能ですが、公認会計士などのM&Aの専門家の手を借りて作成することも可能です。 まとめ いかがでしたでしょうか。 事業承継型M&Aをご検討中の方は、まずは、会社の魅力を思い浮かべてみてください。 経営者の方にとっては、会社の強みも弱みも、その全てに愛着があり、魅力を感じるものだと思います。 ですが、M&Aは、買い手がいるからこそ成立するものです。買い手にとっても魅力的な会社になるよう、「磨き上げ」に真剣に取り組む必要があります。 まずは企業の現状把握をおこない、情報を整理しましょう。そして、より良い条件でのM&A成約を目指して、魅力の磨き上げをおこなうことが大切です。 --- ### 創業者利益とは…IPOやM&Aで獲得できる?仕組みや税金を解説! - Published: 2024-03-06 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/manda/14779 - Categories: 株式譲渡, 会社売却の相場, 会社売却の税金 創業者利益とは?IPOやM&Aで創業者利益を獲得できる?仕組みや税金を解説!創業者利益とは、創業者が会社売却をおこない、得られる売却益のことです。この記事では、IPOとM&Aを比較しながら、創業者利益の金額、獲得方法、税金などについて解説しています。 創業者利益とは?いくら獲得できる? 創業者利益を得るならM&A?IPO? 創業者利益にかかる税金は? IPOは創業者としてビジネスを成功させたステータスになるものかもしれませんが、創業者利益を獲得する場合にはM&Aの方が向いているかもしれません。 この記事では、IPOやM&Aによって創業者利益を獲得する仕組みや、税金について解説しています。 中小企業の創業者の方で、会社売却をおこない、売却益を獲得したいとお考えの方など、是非さいごまでご覧ください。 創業者利益とは? 創業者利益とは? 創業社利益は、創業者利得ともいわれます。 創業者利益は、会社の創業者が会社を売却する際、対価として受け取る利益のことです。 ただし、創業時の資本金や初期投資、会社売却にかかる手数料などの必要経費を考慮すれば、実質的な創業者利益は、株式の譲渡価格と、諸々の必要経費の差額と考えてよいでしょう。 創業者利益 創業者利益=株式の譲渡価格-必要経費(資本金額・手数料など) 創業者利益とキャピタルゲインの関係 創業者利益は、キャピタルゲインの一種です。 キャピタルゲインとは、株式や債券など、保有している資産を売却することで得られる売買差益のことをいいます。 創業者利益を最大化する仕組みは? 創業者利益を最大化するには、創業者の持ち株比率を100%近くにすることです。ただし中小企業の場合、所有と経営が分離していないことが多く、創業時にすでに創業者や同族株主が100%近くの株式を保有していることは多いでしょう。 また、企業価値を高めることで、高額での株式譲渡を実施できるようにすることも、創業者利益の最大化につながります。 関連記事 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 創業者利益を得るメリットは? 創業者利益を得ることで、新規事業立ち上げの資金や、リタイア後の生活資金を確保できるメリットがあります。 創業したての頃は、金融機関から融資を受け、その借入金返済のために奮闘していたかもしれません。ですが、十分な創業者利益を得ることができれば、今後は、金融機関から資金調達をせずに済み、新規事業に打ち込むことができます。 創業者として日々会社の業務に追われる生活から脱却したい場合、会社売却をおこない創業者利益を獲得することができれば、より豊かな第二の人生をスタートさせることが可能になります。 また、会社をたたむことになれば、従業員の雇用喪失につながります。しかし、M&Aが成功すれば、従業員の雇用を確保することができます。 創業者利益を得ることは、創業者のメリットになるだけでなく、従業員のメリットにもなるのです。 IPO(株式上場)による創業者利益 IPOとは?IPOの創業者利益とは? IPOとは、Initial Public Offeringの略で、新規株式公開のことです。 今まで未上場だった株式会社が、証券取引所に新規上場して売り出すのが、IPOです。 IPOによる創業者利益とは、創業者が保有する株式を、証券取引所に新規上場して、第三者に売却することで獲得する利益のことを指します。 ベンチャーキャピタルで創業者利益を獲得する仕組み IPOにより創業者利益を得るには、ベンチャーキャピタルという共同投資の枠組みを活用することも多いでしょう。 ベンチャーキャピタルは、まず金融機関や投資家などから資金を集め、その資金でファンドを組成し、スタートアップの非上場企業などに出資します。そして、企業が上場した際などに、株式売却をおこない、値上がり益を獲得し、出資者に還元するという仕組みで運営されるのが、ベンチャーキャピタルです。 IPOのメリット IPOをおこなうことができた場合、企業の社会的信用や知名度が向上するため、企業価値が高まり、株式をより高額で売却できる可能性があがるでしょう。 また、IPOの場合、市場取引が可能になるため、創業者自身で株式の買い手を探したり、株価を計算したりといった手間がかからないというメリットがあります。 IPOのデメリット IPOのデメリットとしては、創業者が自身が保有する株式を大量に売却している動向について、投資家に察知されれば、経営不振を疑われ、株価の下落につながる危険性があることです。株価が下落すれば、創業者利益の最大化はかないません。 また、そもそもIPOの要件が厳しく、上場が難しいという根本的な問題もあります。 仮に上場できたとしても、株価安定のために、一定期間株式売却ができない期間(ロックアップ期間)が設定されることがあります。このロックアップにより、任意のタイミングで株式売却ができなくなり、機会損失のリスクもあります。 IPOは、経営戦略として企業の信用力や知名度を上げたい場合、長期にわたり株式市場から資金調達をしたい場合などに向いているスキームといえるでしょう。 創業者利益はいくら?計算方法とは? IPOの場合、株式の売却価格は、市場の取引価格にしたがいます。 そのため、創業者利益の金額は、株式の市場価格によるといえるでしょう。 ただし、創業時の資本金や証券取引所の委託手数料などの必要経費がかかるため、それらの金額との差額が、実質的な創業者利益といえるでしょう。 M&A(株式譲渡)による創業者利益 M&Aとは?M&Aによる創業者利益とは? M&Aとは、Mergers and Acquisitions(合併と買収)の略で、2つ以上の会社を1つにしたり、株式譲渡などの方法で会社を売却したりすることです。 IPOによる場合、不特定多数の者が買い手候補となります。 一方、M&Aによる場合は、創業者は、証券取引所をとおさずに、みずから買い手探しをおこなうことが可能になります。 より良い条件で株式を売却できる相手を見つけて、創業者利益の最大化を図れるのがM&Aによる創業者利益の特徴です。 M&Aのメリット M&Aによる創業者利益獲得のメリットは、手続きが比較的簡便であることです。 IPOの場合は、上場審査やロックアップを経てから、やっと株式の市場取引ができるようになり、買い手がつくのを待つという流れになります。一方、M&Aの場合は、任意に買い手を探すことができ、買い手との合意のみで株式売却をおこなうことができます。 また、M&Aの場合、IPOのような株式の大量売却に関する不都合はありません。そのため、M&Aは、創業者利益を実現しやすい手法といえるでしょう。 M&Aのデメリット M&Aの場合、企業価値評価や価格交渉など特有の手順もあります。 ですが、必要がある場合は、M&A仲介会社やM&A支援機関、士業専門家などのアドバイスを受けることで、解決することが可能です。 関連記事 M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? 創業者利益はいくら?計算方法とは? 上場会社のM&Aでは、市場価格の約3~5割増の価格でTOBなどが実施されることも多いでしょう。 中小企業の場合、非上場会社であることが多いものですが、非上場会社の売却益については、株式の市場取引がなく時価が不明確であるため、以下のような3つのアプローチにより、売却価格を検討することになります。 譲渡価格の計算方法 コストアプローチ資産や負債に着目した算定手法例)時価純資産法   マーケットアプローチ事業の類似するマーケットに着目した算定手法例)EBITDAマルチプル法株価=EV+現預金-有利子負債 インカムアプローチ収益性に着目した算定手法例)DCF法将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を算出 中小企業の場合、純資産や将来の収益性に着目した「年買法」が多用される傾向もあります。 年買法を用いると、時価純資産額に、3年~5年間の営業利益を加算した金額が、売却金額となります。 年買法 純資産+営業利益の3~5年分=売却価格 M&Aによる実際の手取り額としては、売却価格から資本金等の初期費用や、M&A仲介会社の手数料等を差し引いた金額となります。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? 創業者利益にかかる税金 創業者利益にかかる税金の税率は、上場株式の売却であれ、非上場株式の売却であれ、いずれも所得税15%、復興特別所得税0. 315%、住民税5%(合計20. 315%)となります。 たとえば資本金1億円の会社の株式を、11億5千万円で譲渡した場合に、M&A仲介会社の利用手数料が5千万円かかったとします。 この場合の創業者利益にかかる所得税等の税額については、譲渡所得10億円に、税率が20. 315%を乗じた結果、2億315万円となります。 11億5000万円-(1億円+5000万円)=10億円10億円×20. 315%=2億315万円 まとめ 会社の経営者が、創業者利益を獲得するには、M&Aにより株式の売却益を手にする方法がおすすめです。 IPOの最大の弱点は、大量の株式をいっぺんに売却することが難しい点です。会社売却をおこない創業者利益を手にするには、保有する株式を一挙に売却できるM&Aを実行しましょう。 会社売却の流れについて知りたい方は「株式譲渡の手続き・流れを徹底解説!会社の株式譲渡で必要な書類と注意点とは」の記事もご覧ください。 皆様の創業者利益の獲得が成功することを、心より願っております。 --- ### 第三者承継の方法は?メリットは?3つの注意点も解説! - Published: 2024-03-05 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/manda/14488 - Categories: 事業承継, 後継者不足, 株式譲渡 第三者承継とは?方法・メリット・注意点について解説しています!中小企業の経営者で事業承継をご検討中の方など、是非ご参考になさってください。第三者承継には後継者問題を解決し、さらに譲渡益を得られるというメリットがあります…… 第三者承継とは?方法は? 第三者承継のメリットは? 第三者承継の注意点は?相談先は? 後継者不在が原因で、黒字廃業となる中小企業は意外と多いものです。 このような後継者問題に対処する方法として、第三者承継は非常に有用です。 この記事では、第三者承継のメリット、具体的な方法、注意点など徹底解説していきます。また、第三者承継の相談先についてもご紹介します。 現在、後継者不在のお悩みをお持ちの中小企業の経営者の方など、ぜひ最後までお読みください。 第三者承継とは? 第三者承継とは? 第三者承継とは、会社経営やある事業を、親族や従業員以外の第三者に引き継ぐことをいいます。 親族内承継や従業員承継ができない場合、選択肢の一つとして、第三者承継があります。 第三者承継で引き継ぐものは? 第三者承継を行うと、経営権や資産、知的資産を主に引き継ぎます。 事業承継の構成要素 経営権 資産の承継株式、事業用資産(設備・不動産など)、資金(運転資金・借入など) 知的資産の承継経営理念、従業員の技術技能、ノウハウ、経営者の信用、取引先との人脈、顧客情報、特許、許認可etc. 第三者承継の現状は... 全体の何%? 経済産業省の調査によると、2025年までに、70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者が約245万人となり、そのうち約半数の127万人が後継者未定となっている現状です。 この現状を放置した場合、2025年までの累計で650万人の雇用が失われる可能性があるということです。 こうした中、第三者承継は脚光を浴び、年々増加傾向にあります。帝国データバンクの調査によると、M&Aほか(買収や出向など)による2023年度の第三者承継は、全体の約20. 3%でした。 第三者承継の方法 第三者承継のおおまかな流れ 第三者承継のおおまかな流れとしては、以下のようなものです。 事業承継問題をかかえている場合まずは、民間のM&A仲介会社や、国が設置した支援機関である「事業承継・支援引継ぎセンター」に相談をしてみるとよいでしょう。事業承継先の探し方や、事業承継の手続きの進め方などを相談することができます。 現在の会社の価値を算定する、企業価値評価の工程も大切です。公認会計士などの専門家の力を借りながら、資産、債務、収益などを分析して、会社の売却価格を算定していきます。 そして企業価値評価と平行しながら、買い手探しもおこないます。事業承継先の候補となる企業があらわれたら、双方の経営陣同士で顔合わせ(トップ面談)をおこないます。 事業承継先となる企業から、M&Aを進めたいという意向表明を受けた場合、当事者間でM&Aを進めることについて基本合意を締結します。 売り手側企業の買収監査(デューデリジェンス)を経て、最終条件交渉をおこない、最終契約(株式譲渡契約、事業譲渡契約etc. )を締結すれば、クロージングとなります。 関連記事 M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 M&Aの契約書の種類や内容は?契約の流れに沿って解説! 株式譲渡による事業承継 第三者承継をおこなう方法として、株式譲渡という手法があります。 株式譲渡による第三者承継は、現経営者が保有する譲渡対象会社の株式を、後継者に対して譲渡することによって、会社を引き継がせる方法です。 中小企業の場合、所有と経営が分離されておらず、経営者が議決権の3分の2以上を確保していることが多いものです。そのため、現経営者の株式を後継者に譲渡すれば、会社の所有権のみならず、経営の実権までも譲渡できるケースが一般的となります。 関連記事 株式譲渡の手続き・流れを徹底解説!会社の株式譲渡で必要な書類と注意点とは 事業譲渡による事業承継 会社の事業の一部を、第三者に承継させたい場合などには、事業譲渡による事業承継という手法があります。 事業譲渡の手法によれば、自社の事業のうち存続・成長が難しい事業のみを第三者に譲渡して、会社そのものは現経営者の手元に残すということも可能です。そのため、事業譲渡は、主力事業に注力したい場合や、会社再建を図る場合に向いている手法といえるでしょう。 また、負債がある場合は、株式譲渡では買い手がつかないときでも、事業譲渡であれば買い手が見つかることもあるでしょう。 というのも、株式譲渡の場合は、会社の負債もすべて引き継ぐことになります。一方、事業譲渡の場合は、会社の事業のうち負債の大きい部門を避けて、承継したい事業のみを取引できます。そのため、事業譲渡のほうが、買い手にとってリスクが小さい取引になるからです。 関連記事 事業譲渡手続きの流れは?会社譲渡の方法や手順を知ってスケジュールを立てよう 株式譲渡による第三者承継のメリット ここでは、株式譲渡による第三者承継のメリットについて、お話ししていきましょう。 株式譲渡による第三者承継には、以下のようなメリットがあります。 ①譲渡益を得られる 株式譲渡による第三者承継には、譲渡益(株式譲渡の対価)を得られるというメリットがあります。 この譲渡益は、老後の資金や新たな事業への投資など、自由に活用できます。 会社の売却価格は?相場はいくら? 会社の売却価格の相場は、業種、規模、資産、財務状況、成長性などの要素によって算出されます。 中小企業の場合は、時価純資産に営業利益の1~5年分程度を加算した金額が、譲渡益の目安とされることも多いでしょう。 関連記事 会社はいくらで売れる?会社売却価格の計算方法、相場を解説 売却しやすい会社とは? 業績が安定している企業などは、売却しやすいと言えるでしょう。 売却しやすい会社の特徴(一例) 業績が安定している 成長性の高い市場に参入している 独自の技術やノウハウを持っている 財務状況が良好 経営陣が優秀・誠実 事業の透明性が高い 関連記事 売却しやすい事業の特徴と成功事例!売却しやすい事業とは? ②会社の存続・成長につながる 自社の成長には限界があると感じた場合、会社をたたむという選択肢もあるかもしれません。しかし、ここまで育ててきた会社をたたむというのは、苦渋の決断となるでしょう。 このような場合、第三者承継を実行すれば、会社を存続させることができ、後継者に会社の成長をたくすことができます。 また、廃業手続きには、費用や時間などの手間がかかります。 それなら、いっそのこと、信頼できる買い手を見つけて、M&Aをおこない、譲渡益を得るほうが賢い選択肢といえるのではないでしょうか。 関連記事 会社をたたむときの費用はいくらかかる?廃業かM&Aか迷ったら専門家に相談を ③後継者問題を解決できる 後継者問題を解決することができるという点も、株式譲渡による第三者承継のメリットです。 親族や従業員の中から後継者を選べない場合は、第三者を後継者にすることで、後継者不在の問題を解決することができます。 関連記事 事業承継問題とは?課題は後継者不在?解決策はM&A? ④従業員の雇用維持 従業員の雇用維持の可能性をあげる点も、株式譲渡による第三者承継のメリットです。 株式譲渡の場合、従業員の雇用要件は、基本的には、新しい経営者に引き継がれます。 ただし、早いうちから、従業員の雇用維持の条件について、買い手企業との間で話し合いの機会をもうけたほうが、より安心です。条件がまとまったら、最終契約書に規定しておきましょう。 関連記事 M&Aで従業員はどうなる?会社売却後の社員の雇用について解説 ⑤経営者の責任・個人保証からの解放 株式譲渡による第三者承継をおこなう場合、後継者に経営権が承継されるため、現経営者(先代)は社長の重責から解放され、落ち着いた生活を送ることができるようになります。 また、中小企業の場合はとくに、経営者が、会社の保証人となっていることが多いものです。その場合、会社が借金を返済できなければ、代わりに経営者が、個人資産から返済することになります。しかし、株式譲渡による第三者承継によって、後継者に経営権が承継された場合は、交渉しだいで、金融機関から先代の個人保証をはずしてもらえるケースも多いでしょう。 事業譲渡による第三者承継のメリット 事業譲渡による事業承継についても、譲渡益を得られること、企業の存続・成長につながること、後継者問題を解決できること、従業員の雇用維持に資することなどのメリットがあります。 事業譲渡のメリット 譲渡益を得られる 企業の存続・成長につながる 後継者問題を解決できる 従業員の雇用維持に資するetc. ただし、株式譲渡と事業譲渡は異なるスキームです。 そのため、前述の株式譲渡の場合における説明が、事業譲渡の場合に、すべてあてはまるわけではありません。 事業譲渡の場合は、とくに以下のような点に注意が必要です。 譲渡益について まず、事業譲渡は会社の取引行為であることから、その譲渡益は会社に入ることになります。したがって、先代経営者は直接、譲渡益を得られるわけではありません。 後継者問題の解決について 譲渡対象となった事業については、後継者に引き継ぐことができます。 一方で、譲渡できなかった事業や、会社そのものについては別の後継者を見つけるか、廃業という道をたどることになるでしょう。 従業員の雇用維持について 従業員の雇用維持については、買い手企業に従業員を移籍させるには、従業員ごとに同意をとる必要があります。 関連記事 事業譲渡と株式譲渡の違いは?目的・メリット・デメリットなど解説 第三者承継の注意点 ①買い手探し 第三者承継の注意点としては、必ずしも買い手が見つかるとは限らないという点です。 たしかに、第三者承継の場合、親族内承継や従業員承継に比べて、後継者候補の選択の範囲は広がります。 しかし、売り手側の条件にあった買い手が見つかるという保証はありません。 そのため、できるだけ早い時期に、買い手探しを始めることが大切です。 また、買い手が見つからない場合は、企業価値を高めるなどして、魅力的な会社に育てることも必要になるでしょう。 関連記事 会社売却成功への道!M&A買い手探しの目的とポイントとは 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 ②取引先への対応 第三者承継をおこなえば、当然のことながら、経営者は変わります。 中小企業の場合は、社長同士の信頼関係から取引に応じているケースも多く、見ず知らずの第三者が経営者になることで、取引先から取引停止を言い渡されるリスクがあります。 取引先との取引関係は、売り手企業の収益力を支える大切な経営資源です。もし取引停止になれば、売り手企業の収益力の低下が見込まれるため、買い手側から、会社の売却価格の値下げを提案されたり、M&Aそのものの中止に発展したりする可能性があります。 そのため、第三者承継の場合、とくに取引先への対応が重要となります。 通常、取引先に事業承継について報告するのは、クロージングの段階に入ってからとなります。あまりに早い段階で取引先に伝達してしまうと、売り手企業の信用不安につながる恐れがあるでしょう。そもそも買い手や仲介会社などと秘密保持契約を締結しているため、M&A成約の見込みがかなり高い段階でなければ説明できないこともあります。 適切なタイミングを見計らって、第三者承継を決断した理由や、取引関係を継続したいことなど、できる限り丁寧な説明をおこない、取引先の理解を得る必要があります。 ③契約書の作成・M&A手続き 第三者承継をおこなう過程では、秘密保持契約書、基本合意書、最終契約書など様々な契約書が必要となります。 また、第三者承継を実行するための手続き、経営者の変更に伴う登記手続き、会社売却の対価にかかる税金の手続き、経営者の個人保証をはずすための交渉など、法律の専門家の手助けが必要な場面が沢山あります。 法的に不備のない手続きを踏んで、第三者承継を手順よく進めていくには、弁護士、司法書士などに相談すると良いでしょう。 第三者承継を成功させるには?相談先は? 第三者承継は、事業の存続、経営者の責任解放、譲渡益の獲得など、多くのメリットがあります。 一方で、そのメリットを享受するには、取引先への配慮をおこたらないこと、必要な契約や手続きを理解することなど、注意点も存在します。 そして、第三者承継をするには買い手探しが必要になるので、とくに早期に動きだすことが重要です。 まずはM&A仲介会社のマッチングサイトに登録するなどして、はじめの一歩を踏み出してみましょう。 第三者承継の相談先については、「事業承継の相談窓口は?事業承継成功の秘訣は専門家への無料相談?」の記事をご参考になさってください。 --- ### 事業譲渡契約を解説!契約書を作る際のポイントとは? - Published: 2024-03-04 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/manda/14482 - Categories: 事業譲渡 事業譲渡契約は、基本合意後に、デューデリジェンスを実施してから締結するのが一般的です。事業譲渡契約を締結することにより、譲渡側と譲受側の権利・義務が明確になり、後のトラブルを防止することができます。 事業譲渡は、会社売却の種類の一つです。事業の一部または全部を譲渡しますが、あくまで事業を譲渡するだけで、売り手側に経営権が残るという特徴があります。 この記事では、事業譲渡による会社売却を行う際の、契約の注意点についてまとめています。 事業譲渡契約書を作成する際の記載項目やひな形を紹介していますので、参考にしてください。 事業譲渡とは 事業譲渡とは、事業の一部または全部を買い手に譲渡する形式の会社売却です。 譲渡後も売り手に経営権が残るのが特徴で、不採算事業を切り離したり、特定の事業にリソースを集中させたりする目的で、実施されることが多いです。 会社売却のもう一つの手法である株式譲渡は、経営権ごと、買い手に譲渡します。 関連記事 事業譲渡と株式譲渡の違いは?目的・メリット・デメリットなど解説 事業譲渡契約とは 事業譲渡契約とは、事業譲渡を行う際に、譲渡側と譲受側が締結する契約です。この契約書には、譲渡対象、代金、支払期日、譲渡期日、従業員の雇用、債務の引受、秘密保持、競業制限などの重要な事項が記載されます。 事業譲渡契約の必要性 事業譲渡契約を締結することにより、譲渡側と譲受側の権利・義務が明確になり、後のトラブルを防止することができます。 また、契約書に詳細な内容を記載することで、事業移行を円滑に進めることができます。事業譲渡契約は法的拘束力を持つため、契約違反があった場合には、損害賠償請求などの法的措置を取ることができるようになるでしょう。 事業譲渡契約の締結時期 事業譲渡契約は、基本合意後に、デューデリジェンス(買収監査)を実施してから締結するのが一般的です。デューデリジェンスによって、譲渡対象に関する正確な情報を得ることができ、契約内容をより具体的に確定することができます。 事業譲渡契約書の記載事項 一般的な記載事項 事業譲渡契約書は、事業譲渡における重要な書類であり、譲渡側と譲受側の権利・義務を明確にするために作成されます。 法令で定められている記載事項などはありませんが、一般的には以下の内容が盛り込まれることが多いです。 事業譲渡契約の記載事項 契約者 目的 譲渡対象 公租公課の負担 対価 書類の交付時期 財産の移転時期 従業員の雇用 遵守事項 表明保証 損害賠償請求 合意管轄 etc・・・ 関連記事 M&Aの契約書の種類や内容は?契約の流れに沿って解説! 競業避止義務に関する事項 会社法では、事業譲渡した企業が同じ事業を行うことを一定期間禁止しています。 1事業を譲渡した会社(略)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(略)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない。 2譲渡会社が同一の事業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その事業を譲渡した日から三十年の期間内に限り、その効力を有する。 会社法21条1項,2項 法律上、競業避止義務が科せられるのは原則として20年間です。特約がある場合には30年間となりますが、当事者の間に合意があれば競業避止期間の短縮・免除することもできます。 会社法とは異なる条件で競業避止義務を契約に盛り込む場合は、契約書に条件や期間を独自に設定する必要があります。 収入印紙 事業譲渡契約書には、必要な印紙税分の収入印紙を貼付する必要があります。 いくら分の収入印紙が必要になるのかについては、印紙税法2条・別表第一・第1号の1に一覧が紹介されています。 例えば、譲渡額が1億円なら6万円、7億円なら20万円の収入印紙が必要です。 事業譲渡契約書に必要な収入印紙 契約金額印紙税額契約金額の記載なし 200円1万以上10万円以下200円10万超え~50万円以下400円50万超え~100万円以下1,000円100万超え~500万円以下2,000円500万超え~1,000万円以下10,000円1,000万超え~5,000万円以下20,000円5,000万超え~1億円以下60,000円1億超え~5億円以下100,000円5億超え~10億円以下200,000円10億超え~50億円以下400,000円50億円を超える額600,000円 事業譲渡契約書の注意点 専門家を活用して不備のない契約書を作る 事業譲渡契約書は、法的な効力を持つ書類です。不備があると、トラブル発生時に大きな損害を被る可能性があります。そのため、弁護士や税理士などの専門家を活用し、法的に問題のない契約書を作成することが重要です。 デューデリジェンスの徹底 デューデリジェンスは、事業譲渡前に、譲渡対象に関する財務状況、法務状況、人事状況などを調査することです。デューデリジェンスを徹底することで、譲渡対象の潜在的なリスクを把握し、契約内容に反映することができます。 リスク管理 事業譲渡には、様々なリスクが伴います。例えば、従業員の雇用問題、顧客離れ、債務の引受などです。これらのリスクを事前に想定し、契約書に適切な条項を盛り込むことで、リスクを回避することができます。 事業譲渡契約書のひな形、サンプル 事業譲渡契約書のひな形は、金融庁のサンプルや中小企業庁のサンプルなどが参考になります。 ご自身で契約書を作成するのであれば、活用してみてください。 M&A仲介会社などを利用している場合には、契約書締結までサービス内容となっていることがほとんどです。 まとめ 事業譲渡契約を締結する場合には、弁護士などの専門家への相談がおすすめです。 M&A仲介会社などを利用せずに、自分で探した買い手と交渉して契約条件を決めたような場合、今後のトラブル防止のために契約書の記載内容が極めて重要になります。 契約や法律の専門知識がないのであれば、自力で手続きを進めることなく、専門家と相談してみてください。 --- ### 会社の身売り(M&Aによる会社売却)のメリットは?注意点は3つ! - Published: 2024-03-01 - Modified: 2024-04-01 - URL: https://atomfirm.com/manda/14238 - Categories: 事業承継, 事業譲渡, 会社売却の流れ, 後継者不足 会社の身売り(M&Aによる会社売却)のメリットは?5つの注意点とは…この記事では、中小企業の経営者の方等に向けて、会社の身売りのメリット・注意点、身売りの方法などについて解説します。 会社の身売りとは? 会社の身売り(会社売却)にはメリットがある? 会社売却の注意点は?具体的な方法は? 会社の身売りとは、会社の特定の事業や、会社そのものを、会社とは関係のない第三者に売却することです。 身売りと聞くと、会社の経営状態が悪く、第三者に買いたたかれるような否定的なイメージがつきまとうかもしれません。 しかし昨今、後継者問題をかかえる中小企業が、従業員の雇用維持や会社の存続のために、第三者に会社を売却するケースが増えています。 もはや身売りというネガティブな表現は、ふさわしくないでしょう。 この記事では、会社売却(会社の身売り)の方法、メリット、デメリットについて解説していきます。 現在、後継者不在の悩みをお持ちの経営者の方など、ぜひ最後までお読みください。 会社の身売りとは? 会社の身売りとは? 会社の身売りとは、会社売却(会社そのものや会社の事業を第三者に売却すること)を指します。裏を返せば、第三者に会社やその事業が買収されることです。 たしかに、会社売却のことを「身売り」と表現してしまうと、マイナスイメージがつきまといます。会社経営をあきらめて、会社を手放し、従業員を見捨てた社長という悪いレッテルがつきそうで、抵抗を感じる方もいるでしょう。 しかし、昨今、会社売却は、M&A(Mergers and Acquisitions)の一種として、会社の存続・成長をうながす経営戦略のひとつであるという認識が、徐々に広まりつつあります。従業員の雇用を守るという観点からも、「身売り」は有益です。 会社売却には、「身売り」という表現ではあらわせない、プラスの側面があるのです。 会社の身売りの目的・きっかけは? 会社の身売りの典型例としては、先行き不安をかかえた会社が、事業の存続や経営資源を確保する目的で、会社を売却するものでしょう。 サブウェイは2月、他社への身売りを検討していると発表していた。(略)サブウェイが自社売却を決めた背景には、同業他社との競争激化や社員の不祥事によるイメージ悪化で経営が傾いていたことがある。 2023. 8. 25日本経済新聞「サンドイッチ大手サブウェイ、身売りで合意 1兆円超か」(2024. 3. 4現在) ヤマダ電機は12日、経営再建中の大塚家具を30日付で子会社化すると発表した。(略)大塚家具は販売が低迷し、赤字経営が続いていた。店舗閉鎖などリストラを進めたが財務体質は改善せず、身売りに追い込まれた。 2019. 12. 13埼玉新聞「大塚家具が身売り、ヤマダ電機の子会社に 唯一、大塚家具の店舗が残る八木橋「協力関係深めたい」」(2024. 3. 4現在) また昨今では、後継者問題をかかえる経営者が、会社を存続させる目的で、第三者に「身売り」をする例も増えています。 会社の後継者不在による身売りは何%? さて後継者不在のために、身売りをする会社は全体の約何%にのぼるのでしょうか。 こちらの円グラフは、2023年度に選択された事業承継の方法について、帝国データバンクの調査結果をもとにまとめたものです。 2023年度の事業承継では、内部昇格(従業員承継)が一番多くて全体の約35. 5%、次いで、同族承継が約33. 1%でした。 そして、3番目に多かったのが、M&Aほか(買収・出向など)で、全体の約20. 3%を占めています。 「身売り」という言葉のイメージにとらわれ、会社売却(M&Aによる事業承継)という選択肢を捨てるのは、時代にそぐわないものでしょう。 関連記事 後継者がいない会社は61%!跡継ぎがいない会社の実態と選択肢まとめ 会社の身売りのメリットは? ①譲渡益を得られる 会社売却によって得られる譲渡益は、経営者にとって大きなメリットとなります。 会社売却は、経営者が築き上げてきた事業の価値を換金できる機会となります。 会社売却によって得られる譲渡益は、安定した老後生活の糧となるほか、新規事業の立ち上げなど次なる挑戦への資金として、活用することができます。 関連記事 創業者利益とは... IPOやM&Aで獲得できる?仕組みや税金を解説! M&Aで退職金はどうなる?事業譲渡や株式譲渡の役員退職金も解説 ②企業の存続・成長 会社売却は、主力事業への経営資源の集中や、シナジー効果による事業の成長を実現する有効な手段となる点も、メリットとなります。 不採算事業のみを売却し、主力事業に経営資源を集中させることで、経営を再建できる可能性もあるでしょう。 先行き不安をかかえる場合でも、会社売却をおこなうことで、事業規模の拡大や市場シェアの獲得がかない、第三者の手によって事業そのものを永続的に存続・成長させることができるかもしれません。 ③後継者不足の解決 会社売却は、後継者不足を解決できるというメリットもあります。 我が子や兄弟姉妹などの親族から後継者を選ぶことができない場合や、経営手腕のある従業員がおらず内部昇格をさせることができない場合などは、第三者に「身売り」をして会社の後継者になってもらうことで、後継者不足の問題を解決することができます。 ④従業員の雇用維持 会社売却は、従業員の雇用維持の可能性がある点でも、メリットがあります。 廃業してしまえば、従業員は露頭に迷うことになります。しかし、会社売却をおこない廃業をまぬかれることができれば、ただちに食い扶持を失うことにはならないでしょう。 会社の身売りの方法が株式譲渡であれば、従業員の待遇はそのまま引き継がれるのが基本です。また、事業譲渡の場合でも基本的には、従業員が移籍に同意すれば、新しい会社でも雇用関係が継続します。 関連記事 M&Aで従業員はどうなる?会社売却後の社員の雇用について解説 ⑤経営者の責任・個人保証から解放 社長としての誇りをお持ちである反面、会社経営をもうやめたいと思われている方は、意外と多いものかもしれません。 会社売却のメリットには、経営者としての重責から解放されることで、精神的な負担を軽減できるという点があります。 また、会社経営から離れることができれば、会社の保証人の地位をからも離れられる可能性が高まります。借金返済の心配をかかえて老後を過ごすというリスクを回避できる可能性があります。 関連記事 会社の経営者をもうやめたいと思ったらどうする?経営をやめる場合の3つの対応方法とは 会社の身売りの3つの注意点とは? ①競業避止義務など制約がある 会社の身売りをした場合、売り手側には競業避止義務やキーマン条項による制約が課される可能性があります。また、スキームによっては、負債が残るリスクがあります。 競業避止義務 競業避止義務とは、譲渡対象の会社がおこなっている事業と競業する行為をおこなわない義務のことです。 会社売却後、売り手側には、一定期間、競業避止義務が生じるという取り決めがなされることが一般的です。 業務内容はもちろんのこと、地域的な限定をもうけることが多く、競業避止義務を負う期間についても相手方と話し合いの上、決定することになります。 競業避止義務に違反すれば、損害賠償を請求される可能性もあるので、注意が必要です。 キーマン条項によるロックアップ キーマン条項とは、経営者や重要な業務にたずさわる従業員などの事業運営に不可欠な人材については、会社が買収された後、一定期間、退職が禁じられ、売却先企業の業務に従事するという取り決めのことです。 キーマン条項が設けられた場合、すぐには会社運営から離れられません。 退任後の人生を謳歌しようとしている経営者の方にとっては、注意点といえるでしょう。 スキームによっては負債が残る 企業価値を評価してもらえる一部の事業のみを売却した場合、残りの赤字事業の負債をかかえることになるかもしれません。 身売りの対価として譲渡益が入るため、返済にあてることもできるでしょうが、譲渡益でまかなうことができなかった分は、保証人として経営者個人の資産からお金を捻出して、返済する必要があります。 ②関係者からの非難 会社売却は、経営者にとって重要な決断であると同時に、従業員、顧客、取引先など、様々な関係者に影響を与える出来事です。特に、事前に十分な説明や配慮が欠如していると、関係者からの反発や不安が生じる可能性があります。 とくに、キーマン条項やCOC条項に関する遵守事項の違反は、M&Aの中止につながるリスクがあるので、注意が必要です。 COC条項に関する遵守事項 COC(チェンジオブコントロール)条項に関する遵守事項とは、身売りをする側の企業が、その取引先企業から、M&Aの実施についての承諾を得るよう義務付ける取り決めのこと。 COC条項がある場合、経営者の変更を理由として、一方的に取引を停止することができます。 仮に、身売りをする企業とその取引先の間の取引が停止になった場合、M&Aの買い手側企業は、得られるはずだった経営資源を得られなくなります。 その結果、買い手側企業が、M&Aに応じるメリットが半減するため、M&Aの中止につながる可能性が高くなります。 ③身売りができない会社もある 身売りをしたくても、身売りができない会社も、なかにはあります。 買い手探しで失敗するケース、会社売却のタイミングを逃してしまうケース、交渉が決裂してしまったケースなど様々です。 身売りができない事態を打開するには、まず早い段階から買い手探しや企業価値評価にに着手することです。そして、情報を収集しながら、身売りにそなえておく必要があるでしょう。 関連記事 会社売却のタイミングは?会社を売る最適な時期を逃さない方法は? 事業承継の失敗事例3選!成功事例を目指すための教訓とは... 会社売却の流れは?身売り後の影響は? 会社の身売りの手続きの流れは? 中小企業の経営者の方が、会社売却をおこなう場合、その流れとしては、以下のようなものになるでしょう。 まずは、M&A仲介会社などへの相談や、M&Aマッチングサイトへの登録をおこない、企業価値評価や買い手探しに着手します。 その後、買い手候補となる企業があらわれたら、経営陣同士の顔合わせ(トップ面談)をおこない、買い手の意向表明を受け、互いにM&Aを進める意思を固めて基本合意を締結します。 その後、身売りをする側の企業の会計、税務、法務などについて買収監査(デューデリジェンス)が実施され、その結果を踏まえながら、最終的な条件交渉をおこないます。 交渉がまとまれば、最終契約の締結をして、クロージングに向けて各種手続きを進めていきます。 会社売却の方法には、株式譲渡や事業譲渡がありますが、選択する手法しだいで必要となる手続きが違います。M&A仲介会社や、M&Aを支援する公的機関に相談しながら、一歩ずつ進めていきましょう。 関連記事 会社売却の相談先は弁護士?相談先の選び方と相談窓口一覧 M&Aの契約書の種類や内容は?契約の流れに沿って解説! M&Aスキーム (手法)を比較!メリット・デメリット・手続きの違いを解説 会社の身売りの後はどうなる? 会社の身売りの後、経営者や役員、従業員など、関係者には様々な影響があるでしょう。 経営者の方は多くの場合、退任することになりますが、場合によっては顧問として活躍される方もいます。 役員や従業員の方は、通常、新しい雇い主に引き継がれ、買い手企業において業務に従事することになるでしょう。しかし、身売りの後、買い手側から不利な条件をつきつけられる場合もあります。 身売りをする側の企業の経営者として、従業員の方のために最後にやるべきことは、従業員の待遇についての交渉です。そして、従業員の処遇についての条項を、最終契約書に盛り込む必要があるでしょう。 会社の身売りの後どんな影響について、もっと詳しく知りたい方は「会社売却後の人生はどうなる?会社売却で経営者・社員等のその後は?」の記事もご覧ください。 会社の身売りを成功させる秘訣 会社の身売りを成功させる秘訣は、会社売却(会社の身売り)について、引け目を感じないことです。 そして、経営者として最善の選択ができるよう、情報収集をおこないましょう。 会社売却の方法・メリット・デメリットを理解したうえで、失敗事例や成功事例のパターンを把握しつつ、しかるべき手順で迅速に進めることが大切です。 会社売却にともない、譲れない条件がある場合は、買い手候補とうまく交渉していく必要もあります。 事業承継・引継ぎセンターや、顧問税理士など、会社売却の相談先はたくさんあります。会社売却にご興味のある方は、一度ご相談なさってみるのはいかがでしょうか。 --- ### 会社売却のタイミングは?会社を売る最適な時期を逃さない方法は? - Published: 2024-03-01 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/manda/14047 - Categories: 会社売却の流れ, 事業承継, 相談・仲介 会社売却に最適なタイミングはいつ? 会社売却の時期を逃す原因は? 会社売却のタイミングを逃さないためには? 会社売却は、経営者の年齢や体調、事業環境の変化など、様々な理由で検討されます。 一般的には、企業価値が高く、買い手企業を見つけやすい時期が、会社売却のタイミングとして最適とされます。 この記事では、会社売却のタイミングを判断する際の4つのポイントや、会社売却に最適な時期を逃さないための方法について解説します。 会社売却のタイミングでお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。 会社売却の最適なタイミングは? 会社売却を決断するタイミング4つ 会社売却を決断するタイミングとして、以下の4つの時期があげられます。 会社売却のタイミング(一例) 業績が好調な時期 業界再編が活発な時期 経営者の高齢になった・体調の変化があった時期 事業環境の変化があった時期 ①業績が好調な時期 会社の業績が好調な時期は、会社売却にとって絶好のタイミングです。 会社の業績が好調な時期は、買い手にとって、会社が魅力的に映ります。売却価格が多少高額であっても、買い手企業が積極的に買収を検討してくれる可能性が高いでしょう。 業績が好調な時期(一例) 過去最高の業績を達成した 新規事業が成功し、収益が拡大している 市場シェアを拡大し、業界内で競争優位な地位を獲得しているetc. ②業界再編が活発な時期 業界再編が活発な時期も、会社売却にとって最適なタイミングのひとつです。 業界再編が活発な時期は、競合企業が買収を検討している可能性が高く、売却先を見つけやすい環境と言えます。 業界再編の波に乗ることで、自社の事業をより高く評価してもらえる可能性があります。また、競合企業に買収されることで、事業の存続や成長を図ることもできます。 業界再編が活発な時期(一例) 同業他社によるM&Aが活発化している 業界大手による買収意欲が高まっている 新興企業の台頭により、業界の勢力図が変化しているetc. ③経営者の年齢や体調の変化 経営者の年齢や体調の変化も、会社売却を考えるタイミングになります。 特に、以下のような状況である場合、会社売却を検討すべきタイミングと言えるでしょう。 経営者の年齢や体調の変化(一例) 経営者が60歳になり、事業承継の準備が必要になった 経営者の体調が悪化し、事業継続が困難になった 経営者のモチベーションが低下し、事業への意欲が減退したetc. 経営者の年齢や体調の変化は、会社の将来に大きな影響を与える可能性があります。 経営者の年齢や体調に変化が生じた時に、めぼしい後継者がいないときは、事業の安定的な継承や成長のためにも、早めに会社売却を検討することが重要となります。 関連記事 会社の経営者をもうやめたいと思ったらどうする?経営をやめる場合の3つの対応方法とは 親の会社を相続したらどうすればいい?会社相続を相談できる窓口とは ④事業環境の変化があった時期 事業環境の変化も、会社売却のタイミングを考える重要な要素となります。 事業環境の変化は、会社の競争力を低下させ、収益を悪化させる可能性があります。変化に対応するためには、会社売却も選択肢の一つとして検討する必要があります。 以下のような環境の変化があったタイミングで、事業に先細りを感じる場合は、会社売却を検討してみてもよいでしょう。 事業環境の変化(一例) 市場環境の変化により、事業の将来性が不透明 技術革新により、事業モデルが陳腐化 規制緩和により、新規参入企業が増加etc. 関連記事 どんな会社売却や事業売却が儲かる?相場やメリット徹底解説 会社はいくらで売れる?会社売却価格の計算方法、相場を解説 会社売却のタイミングを逃す原因 後継者問題を先送りにする 会社売却のタイミングを逃す原因のひとつとして、後継者問題を先送りにすることがあげられます。 一般に60歳を過ぎたら、後継者を選定して育てるのが望ましいとされています。 しかし、まだまだ現役であるからといって、後継者を立てることなく、70代や80代になっても社長職にとどまる方も少なからずいます。 その場合、ベストな条件で会社売却ができない可能性があります。 近い将来、経営者自身が体力の衰えを感じ、今後の経営方針や、会社売却先の選定や交渉に力を注ぐことが難しくなるおそれがあります。 また、経営陣の高齢化により会社の収益力が下がるケースもあります。全盛期と比べて売却価格が低額になってしまったり、買い手が見つからなかったりするケースもあるでしょう。 関連記事 後継者がいない会社は61%!跡継ぎがいない会社の実態と選択肢まとめ 会社売却にネガティブなイメージ 会社売却というと、従来、身売り、マネーゲームなどのネガティブなイメージがあり、会社売却について後ろめたい気持ちになる経営者も多いものでした。 会社を手放すことに抵抗を感じるため、経営者には「会社売却」という選択肢は無いに等しいものだったと思います。そのため、今でも会社売却に踏み切れずに、タイミングを逃すケースもあるでしょう。 ですが一方で、近年では、国が設置した事業承継・引継ぎ支援センターなどが、会社売却(M&Aによる事業承継)を支援するようになりました。そのため、会社売却に対する否定的な考え方はくつがえされつつあり、会社売却に踏み切る中小企業も増えています。 会社を手放すのが惜しいと感じる 会社売却のタイミングを逃す原因として、現経営者が会社を手放すのが惜しいと感じることがあげられます。 自分が築き上げてきた会社に愛情が湧き、第三者の手にわたることを躊躇してしまうのです。 いつまでも社長でいたい、会社経営に参画していたいという気持ちは、会社売却の最適なタイミングを逃す原因になり得ます。 関連記事 会社売却後の人生はどうなる?会社売却で経営者・社員等のその後は? 会社売却のタイミングを逃さない方法 会社売却のメリットを意識する 会社を手放すのが惜しいなどと思う気持ちから、会社売却のタイミングを逃してしまいそうなときは、会社売却のメリットを意識するようにしましょう。 会社売却をおこなえば、譲渡益を得られ、新規事業のための資金や今後の生活資金を確保することができます。 先行き不安があり、自身が社長として事業継続するのが困難である場合、経営ノウハウのある第三者に売却することで、会社が存続し、成長を遂げる道を残すことができます。 また、会社売却をおこなえば、後継者不在の場合でも会社の存続がかない、従業員の雇用維持ができる可能性や、経営者が個人保証から解放される可能性もでてきます。 このように会社売却には、たくさんのメリットがあります。 会社を手放すことに躊躇した場合は、会社売却のメリットを思い浮かべて、ご自身を奮起させ、会社売却の好機を逃さないようにしましょう。 関連記事 M&Aのメリット・デメリットは?売り手にメリットがあるM&Aとは 企業価値向上に努めてタイミングをうかがう 高額での会社売却のタイミングを逃さないためには、企業価値の向上につとめながら、機会をうかがうことが大切です。 企業価値を高めることができれば、その分、会社売却価格も高額になります。 企業価値を高めるには、事業の収益性をあげるほか、無駄なコストを削減するなどの対策を講じる必要があります。 関連記事 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 M&Aで会社を高く売る方法とは?買い手へのアピールポイントを解説 早い段階で会社売却の情報・流れをつかむ 会社を売却できるかどうかは、業界の動向にも左右されます。そのため、早いうちから、こまめに業界動向についてチェックしておくと良いでしょう。 また、安心して会社売却を進めるためには、会社売却の流れや、各段階での手続きのポイントを押さえておくと安心です。 ここでは、買い手探しや条件交渉についてコメントしておきましょう。 会社売却先(買い手)の探し方 経営者自身の人脈を使って、買い手探しができるケースもあるでしょうが、なかなか買い手が見つからないこともよくあります。 効率よく会社売却先を探すには、民間のM&A仲介会社やM&Aマッチングサイト、公的機関である事業承継・引継ぎ支援センターの人材バンクなどを利用する方法が考えられます。 関連記事 会社売却の相談先は弁護士?相談先の選び方と相談窓口一覧 会社売却の条件交渉 せっかく買い手候補があらわれたとしても、自分に有利な条件に固執するあまり、買い手側企業との交渉が決裂してしまい、好機を逃すこともあります。 会社売却に最適なタイミングを逃さないためには、譲歩できるポイントと、譲歩できないポイントを明確に意識して、交渉にのぞむことが重要です。 会社売却の交渉で悩んだ場合は、M&Aアドバイザリーや、交渉を得意とする弁護士などに相談してみると良いでしょう。 関連記事 M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? 会社売却の流れを解説!手続きや手順の注意点は? まとめ 会社売却は、経営者にとって重要な決断です。タイミングを逃してしまうと、売却価格が低くなったり、買い手企業が見つからない可能性もあります。 早めに準備を始め、専門家のアドバイスを受けながら、最適なタイミングで会社売却を検討しましょう。 --- ### 事業承継の方法は?手続きの流れは?現経営者が踏むべき5つの手順とは - Published: 2024-02-28 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/manda/13670 - Categories: 事業承継, 会社売却の流れ 事業承継の方法は?手続きの流れは?事業承継で踏むべき5つの手順とは?この記事では中小企業の事業承継の方法について解説しています。次の世代へ会社を譲ることをお考えの経営者の方など、是非ご参考になさってください。 事業承継の方法は?手続きの流れは? 事業承継を円滑に進めるための手順とは? 中小企業と個人事業主の事業承継の手続きは違う? 後継者不足、経営者の高齢化、事業環境の変化など、様々な課題に直面する中小企業にとって、事業承継は存続の鍵となる重要な取り組みです。 しかし、事業承継はスムーズに進むとは限りません。 この記事では、事業承継の基本的な知識から、具体的な方法、手続き、成功させるためのポイントまでを網羅的に解説します。 事業承継を成功させ、未来へ繋がる確かな一歩を踏み出しましょう! 事業承継とは? 事業承継とは? 会社や事業を、経営者から後継者に引き継ぐことを「事業承継」と呼びます。 これは、経営者自身の引退や高齢化、事業継続の意思がない場合などに必要となる重要なプロセスです。 近年では、中小企業を中心に後継者不足が深刻化しており、事業承継は企業の存続を左右する重要な課題となっています。 関連記事 事業承継の失敗事例3選!成功事例を目指すための教訓とは... 事業承継と事業譲渡との違いは? 事業承継と混同されやすい言葉に「事業譲渡」があります。 事業譲渡とは、会社の事業の一部または全部を第三者に譲り渡すことを指します。 現経営者は、事業譲渡をおこなっただけでは、会社の経営権を失いません。そのため、事業譲渡後も、譲渡しなかった事業については運営し続けることができます。 一方、事業承継といった場合、一般的には、後継者に今後の会社全体の運営を託すことを意味します。事業承継を行うと、現経営者は経営の最前線から離れ、会社を手放すこととなります。 事業承継で引き継ぐものは? 事業承継では、以下のようなものが引き継がれます。 事業承継の構成要素(一例) 経営権 資産株式、事業用資産(土地、建物、設備、商品、在庫)、資金(運転資金、借入金)、許認可 知的資産経営理念、経営者の信用、取引先、従業員の技術・ノウハウ、顧客情報etc. 事業承継問題とは?解決方法は? 事業承継問題とは、後継者不在により、会社が廃業になるリスクのことです。 近年、事業承継問題は深刻化しており、多くの企業が後継者不足に悩んでいます。 帝国データバンクの調査によれば、2023年度の中小企業の後継者不在率は53. 9%にのぼります(全国「後継者不在率」動向調査(2023 年))。 また、日本政策金融公庫の調査によれば、2023年度に廃業予定である企業のうち約3割が後継者難による廃業とされています(中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2023年調査)11頁)。 事業承継問題が起こる原因としては、以下のような事情をあげることができます。 事業承継問題の原因 後継者不足: 適切な後継者が見つからない 経営者が事業承継の時期を先送り: 現経営者の高齢化により後継者候補の選定・育成が間に合わない 事業の不振: 事業が不振で、引き継ぎ手が現れない 資金不足: 事業承継に必要な資金が不足している 税制上の問題: 事業承継に伴う税金負担が重い 事業承継問題の解決方法としては、まず、早期に後継者を選定して育てることが大切です。 また、後継者候補となる者が、後継者となる自覚を持つために、明確な意思疎通を図り、後継者教育を施す必要があります。約10年くらいの期間をかけて、事業を次の世代に引き継ぐ計画を進め、人材を育てることが理想的です。 親族や従業員など周囲の人材から後継者候補を選定できない場合は、M&Aによる事業承継を検討することになるでしょう。 関連記事 事業承継問題とは?課題は後継者不在?解決策はM&A? 事業承継対策とは?中小企業の事業承継対策3つのポイントと支援機関 親族による事業承継の方法・流れ 事業承継には、親族内承継という方法があります。現経営者が我が子や兄弟姉妹など親族に対して、事業承継をする方法が親族内承継です。 中小企業の場合、所有と経営が分離されていないことが多いものです。そのため、会社の株式を承継することによって、親族内承継を実行できることが多いでしょう。 親族内承継の具体的な方法としては、自社株式の生前贈与や、相続などが考えられます。 生前贈与による事業承継の方法 現経営者がご存命のうちに、後継者に事業承継をおこなうには、生前贈与という方法があります。 生前贈与による事業承継の場合、相続争いによる会社運営の不安定化を防ぐことができ、後継者の会社運営が軌道に乗るまでサポートをすることもできます。 ただし、生前贈与の場合、受贈者である後継者には多額の贈与税がかかることや、生前贈与は遺留分減殺請求の対象となる可能性があるといった注意点があります。経営承継円滑化法にもとづく制度をうまく活用するなどして、計画的に進める必要があるでしょう。 生前贈与による事業承継のおおまかな手続きの流れは、以下のようなものです。 必要になる手続き 現経営者と後継者の間で、贈与の合意をする。贈与契約書を作成しておく 株式譲渡について株主総会の承認決議をとる 株主名簿の名義書き換えをする 株主総会や取締役会で後継者を代表取締役に選出し、役員変更の登記をおこなう 後継者は贈与税を支払う 相続による事業承継の方法 現経営者の死亡にともない、後継者に事業承継をおこなうには、相続という方法があります。 相続による事業承継の場合、周囲からの理解を得やすいとういメリットがあります。また、相続の優先順位が低い親族を後継者にしたい場合も、遺言を活用できます。 ただし、相続人には、多額の相続税が課税されるリスクもあります。事業承継税制などをうまく活用して対応する必要があるでしょう。 また、後継者に指名したい人物に、議決権の3分の2以上の株式を集約できるよう、遺言を残しておくことが大切です。 相続による事業承継の大まかな手続きの流れは、以下のようなものです。 必要になる手続き 遺言書の作成(公正証書遺言を作成するには、公証役場を利用) 株主名簿の名義書き換えをする 株主総会で後継者を代表取締役に選任し、役員変更の登記手続きをおこなう 後継者は相続税を支払う 関連記事 事業承継税制とは?納税が猶予・免除される要件とメリット・デメリットを解説 従業員による事業承継の方法・流れ 事業承継には、従業員承継という方法があります。会社の役員や従業員を後継者として、事業承継をする方法が従業員承継です。 従業員承継の具体的な方法としては、MBOや経営権のみの譲渡などが考えられます。 MBOによる事業承継の方法 MBOとはManagement Buy Outの略称で、現経営者から役員や従業員が事業承継することを指します。 社長以外の経営陣や経営者の資質のある従業員が、投資ファンドなどから金融支援を受けることで、会社の一部を買収し、事業を承継するという手法です。 MBOによる事業承継の場合、従業員は株式を取得するための資金を自分で準備する必要がなくなり、経済的負担が軽減されます。 ただし、投資ファンドが経営権を握ると、後継者は雇われ社長となります。そのため、自身の首を繋ぐためには会社の利益を上げ続けるか、いずれはお金をためて会社の株式を買い取るなどの対応が必要になるでしょう。 MBOのおおまかな手続きの流れは、以下のようなものです。 必要になる手続き 現経営者と後継者の間で、株式譲渡の合意をする。株式譲渡契約書を作成する 株式譲渡について株主総会の承認決議をとる 株主名簿の名義書き換えをする 株主総会や取締役会で後継者を代表取締役に選出し、役員変更の登記手続きをおこなう 先代経営者は所得税を支払う 経営権のみ引き継ぐ事業承継の方法 こちらの方法は、現経営者から後継者となる従業員に対して、経営権だけを譲り、会社の株式は現経営者が保有し続けるというものです。 こうすることで、株式を取得するための費用を調達する必要がなくなるため、後継者となる従業員の経済的負担はなくなります。 ただし、先代の発言権が強くなり、旧態依然の会社運営が続き、会社運営に必要な判断をくだせない事態もしばしばあります。また、いずれ相続が起これば、株式の相続に関連して事業承継問題が再燃するおそれがあるでしょう。 経営権のみ引き継ぐ事業承継の方法としては、以下のような手続きが必要になります。 必要になる手続き 株主総会や取締役会で、後継者を代表取締役に選出し、会社の役員変更の登記をおこなう 関連記事 従業員承継とは?会社を譲る方法・メリット・デメリットまとめ M&Aによる事業承継の方法・流れ M&Aとは、複数の企業をひとつの企業にまとめること(合併)や、ある企業が他の企業の株式や事業を買い取ること(買収)をいいます。 中小企業がM&Aによる事業承継をおこなう場合、その多くは、株式譲渡によって実行されるものでしょう。 M&Aによる事業承継には、後継者候補が親族や従業員に限定されないため、後継者の選択肢が広がるメリットがあります。一方、条件に見合う、誠実な買い手を見つける難しさもあるでしょう。 株式譲渡による事業承継を進めるには 中小企業の株式は、譲渡制限がついた非上場株式であることが多いため、証券取引所における売却ではなく、独自に買い手を探す必要があります。 買い手探しの進め方としては、事業承継・引継ぎ支援センターや、民間のM&A仲介会社に相談するといった方法があります。 関連記事 M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? M&Aのメリット・デメリットは?売り手にメリットがあるM&Aとは M&Aによる事業承継の流れ M&Aによる事業承継をおこなう場合、大まかな流れとしては、以下のようなものになります。 段階ごとに必要な手続きや契約書があります。M&Aによる事業承継の場合、秘密保持契約書、M&A仲介契約書、基本合意書、最終契約書(株式譲渡契約書etc. )などが必要になります。 なお、株式譲渡による事業承継を行う場合、最終的に締結する契約書(最終契約書)は、株式譲渡契約書になります。 クロージングの段階で必要となる手続きとしては、以下のようなものです。 必要となる手続き 株式譲渡契約を締結する 株主総会で承認決議をとる 株主名簿の書き換え 株主総会で後継者を代表取締役に選出し、役員変更の登記手続きをおこなう 売り手は所得税を支払う 関連記事 M&Aの契約書の種類や内容は?契約の流れに沿って解説! 事業承継を成功させる5つの手順 事業承継の準備から計画の策定、実行までには、5つの手順があるといわれています。 ここでは、その5つの手順について解説していきましょう。 手順①事業承継の必要性を認識する 事業承継を着実に進めるには、事業承継に向けて早期に準備を開始することが大切といわれています。ですが、日々の業務に追われ、事業承継の必要性を認識できていない経営者も多くおられます。 一般的にいわれるところは、60歳ころから事業承継の準備を進めることが望ましいということです。 経営陣で次の後継者についての話し合いの場を設けたり、事業承継の支援機関に相談をしたりすることが必要でしょう。 何から始めればよいのか分からない場合は、まずは情報収集から始めてみてください。 情報収集の方法 専門家への相談 セミナーへの参加 政府・自治体の支援制度 事業承継によって、会社の未来が変わるだけでなく、従業員や取引先にも影響が生じます。 後継者の選定や経営資源の承継については、時間に余裕をもって計画的に進めていく必要があります。 手順②経営状況・経営課題の見える化 事業承継を成功させるためには、現状把握、すなわち経営状況・経営課題の見える化が非常に重要です。 見える化に取り組むことで、会社の事業の強みや弱みをあらためて認識することができ、その結果おのずと取り組むべき課題が明確になります。 また、後継者に承継できる資産・経営資源を明確にすることで、後継者の不安の解消にもつながります。 そのほか、財務状況の確認も重要です。後継者の代における資金調達や取引の円滑化を図るためには、今から適正な会計処理につとめる必要があり、まずは現状把握が必須です。 手順③会社の磨き上げ 見える化ができたら、会社の磨き上げにとりかかります。会社の磨き上げとは、会社の価値を上げることです。 会社を最善の状態に仕上げることは、事業承継を円滑に進めることにつながります。 事業の強みをさらに強化したり、弱みを改善したりすることによって、後継者となることに魅力を感じてもらえるレベルを目指して、経営改善をおこないましょう。 関連記事 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 手順④事業承継計画の策定・M&Aマッチング 事業承継計画の策定 事業承継計画とは、事業承継を着実に進めるための青写真になるものです。 親族内承継や従業員承継を予定しており、すでに後継者が決定している場合などは、綿密な事業承継計画を立てることで、一歩ずつ着実に事業承継を進めることができるでしょう。 事業承継計画では、「見える化」「磨き上げ」によって浮彫にされた課題を盛り込みつつ、会社の将来に向けた中長期的な経営計画や経営ビジョンを決めていきます。経営理念、事業規模、事業の方向性などを踏まえたうえで、会社の10年後を見据えて、中長期的な売上高や経常利益について具体的な数値目標を立てます。 また、関係者への根回しも非常に重要です。 将来の会社のリーダーを支えてもらえるよう、適切な時期を見計らって、会社の関係者には、後継者の存在を周知させるとともに、丁寧な説明をおこなうべきでしょう。 関係者(一例) 従業員 取引先 金融機関 M&Aマッチング M&Aの場合、見える化・磨き上げを経た後、自分の会社に合う買い手を探します。 マッチングができたら、トップ面談や基本合意、買収監査を経て、M&Aの成約を目指します。 手順⑤事業承継の実行 策定した事業承継計画にしたがい、事業承継を実行したり、M&Aによる事業承継を実行したりする段階です。 事業承継の方法によって、必要となる手続きや契約書が異なります。不安がある場合は、法律の専門家に相談してみると良いでしょう。 相談できる専門家(一例) 弁護士株式譲渡や遺言書作成などの法的手続きについて相談できる 司法書士登記手続きなどについて相談できる 行政書士許認可の申請手続きなどについて相談できる また、MBOやM&Aの場合、先代は事業承継によって利益を得ることになるので、税務署に税金をおさめることになります。税理士に相談して、納税や税金対策をサポートしてもらう必要もあるでしょう。 事業承継の方法でよくある質問 Q. 経営者の個人保証をはずす方法は? 会社の経営者は、その会社の保証人になっていることが多く、事業承継によってその保証人の地位が引き継がれることも往々にしてあります。 ですが、経営者の個人保証をはずす方法が一切ないというわけではありません。 一定の条件がそろえば、交渉しだいで、個人保証をはずせる可能性があります。 経営者保証ガイドライン3つの条件 法人と経営者との関係の明確な区分・分離 法人の財務基盤の強化主たる債務者である法人の財産状態がよく、法人の財産で返済できる状況であること 法人財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保 事業承継をおこなうことによって、後継者に生じる負担をできる限り軽減させることも、事業承継を成功させるポイントです。 Q. 個人事業主の事業承継の方法は? 法人成りしていない個人事業主の場合、現経営者が廃業をしたうえで、後継者が同じ屋号で開業するという方法によって、事業承継をおこなうことが考えられます。 事業承継の具体的な方法としては、株式譲渡ではなく、事業用資産の有償譲渡・贈与・相続などがあげられます。現経営者が後継者に事業を引き継ぐためには、事業譲渡契約書や遺言書などを作成する必要があるでしょう。 加えて、以下のような届出手続きも必要です。 個人事業主の事業承継手続き 現経営者(先代)の廃業手続き廃業等届出書青色申告の取りやめ届出書消費税の事業廃止届出書給与支払事務所等の廃止届出書所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書etc. 後継者の開業手続き開業届青色申告承認申請書青色事業専従者給与に関する届出書減価償却方法・棚卸資産の評価方法の選択届消費税課税事業者選択届出書消費税簡易課税制度選択届出書 また、事業をおこなう際に許認可が必要になる場合は、後継者が新規取得する必要があります。 そのほか、事業用資産の名義変更や、先代の取引先との契約、従業員の引継ぎなどについても手順よく進める必要があります。 まとめ いかがでしたでしょうか。 事業承継には様々な方法があり、手続きの流れも違いますが、手順よく進めるためには情報収集から始めてみましょう。 本サイトの記事をお読みになったり、M&Aの専門家に相談したりして、スムーズな事業承継を目指してください。 --- ### 事業承継の費用・手数料の相場は?承継方法別に解説 - Published: 2024-02-26 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/12974 - Categories: 事業承継, 会社売却の費用 事業承継を行う際には、弁護士費用、税理士費用、M&A仲介会社などへの報酬などが発生します。 自身の会社や事業を後継者に引き継ぐ際、どのくらいの出費が発生するのか気になることでしょう。 子や孫などの親族や、従業員・役員などの会社関係者に事業承継する場合は、仲介手数料などを支払うケースは少ないですが、法人税や相続税・贈与税などがかかることがあります。 第三者承継(M&A)の場合は、会社売却の価格に応じて、専門業者に手数料を支払うことになるでしょう。 事業承継にかかる費用・手数料 事業承継とは、経営者が事業を次の世代へ引き継ぐことです。後継者となるのは、親族、従業員、第三者など様々です。事業承継は、企業の存続と発展にとって重要な課題であり、事前にしっかりと準備しておくことが重要です。 事業承継には、主に「親族内承継」「従業員承継」「第三者承継」という3つの方法があります。それぞれの方法によって、かかる費用・手数料は異なります。 どの方法を選択する場合でも、事前に費用・手数料をしっかりと把握しておくことが重要です。 親族内承継の費用・手数料 親族内承継とは 親族内承継の場合、買い手を探したり、価格交渉したりする必要がないため、M&A仲介会社などを利用することはほとんどありません。 しかし、承継の方法によっては、贈与税や相続税がかかります。 親族内承継を行う場合の税金は、財産の評価額によって計算されます。 また、土地や建物の登記簿謄本取得費用、名義変更費用などの諸費用も発生します。 いずれも手続きが煩雑となるため、手続きが不安な場合は、弁護士や税理士に依頼することも選択肢の一つです。 親族内承継で必要となる費用は、税金を除けば、弁護士や税理士への報酬になるでしょう。 親族内承継の費用・手数料 弁護士費用・手数料契約書作成など、法律面でのアドバイスへの対価。 税理士費用・手数料税務面でのアドバイスや税務申告のサポートへの対価。 会計士費用・手数料財務面でのアドバイスや財務諸表の作成、企業価値評価やデューデリジェンスなどへの対価。 従業員承継の費用・手数料 従業員承継とは 親族の中に後継者候補がいない場合には、自社の役員や従業員の中から後継者を探すこともあるでしょう。社内の後継者に事業承継することを従業員承継(社内承継)と呼びます。 従業員承継には、事業承継を円滑に進め、ノウハウを継承できるなどのメリットがある一方、後継者としての適任者が見つからない可能性や社内紛争が起こる可能性もあるでしょう。 関連記事 従業員承継とは?会社を譲る方法・メリット・デメリットまとめ 従業員承継の費用・手数料 従業員承継で必要になる費用・手数料については、親族内承継の場合とほとんど変わりません。 M&A仲介会社やアドバイザリーなどを利用するケースは珍しく、弁護士、税理士、会計士などの専門家への相談・依頼費用が、主に負担する手数料となるでしょう。 第三者承継の費用・手数料 第三者承継(M&A)とは 第三者承継の場合は、M&Aの形式になることが一般的です。M&Aによる第三者承継は、株式譲渡、事業譲渡が主な方法です。 M&Aによる第三者承継には、親族や従業員などに後継者候補がいない場合であっても、第三者に譲渡することで事業を継続できるメリットがあります。 しかし、買い手探しや企業価値評価などのM&Aの手続きでは、専門知識が必要になることが多いです。 M&A仲介会社やアドバイザリーなどを利用する場合には、高額な費用が発生するケースもあります。 M&Aの主な民間会社 M&A仲介会社売り手と買い手の仲介を行う。両当事者を担当するため、M&A成約までのスピードが速いのが特徴。M&Aの戦略策定、相手先の選定、交渉、手続きなど、様々なサポートを行う。 M&Aアドバイザリー売り手か買い手のどちらかを担当して、M&A成約に向けたアドバイスを行う。売却側の希望を実現するよう調整してもらいやすいが、仲介会社と比べると成約までのスピードが落ちる。M&Aの戦略策定、相手先の選定、交渉、手続きなど、様々なサポートを行う。 マッチングプラットフォーム提供会社M&Aを検討している売り手と買い手がそれぞれ登録し、ネット上で案件の確認を行うことができる。実務的なサポートが欲しい場合には、別料金が発生する場合がほとんど。 どの専門家を利用するのかによって、必要となる費用・手数料は異なります。 複数の専門家から見積もりを取り、費用対効果の高い専門家を選ぶことが重要です。 なお、第三者承継(M&A)の場合は、全ての手続きを一括して全て対応してくれるM&A仲介会社・M&Aアドバイザリーを利用する方が多いです。 弁護士や税理士などに別途、相談・依頼するケースは少ないでしょう。 M&A仲介会社・M&Aアドバイザリーの費用・手数料 M&A仲介会社やM&Aアドバイザリーは、M&Aの買い手探しや企業価値評価、面談調整や交渉など、多岐にわたるサービスを提供します。 M&A仲介会社やM&Aアドバイザリーに支払う費用・手数料は、以下のような種類に分類されます。 相談料 正式な依頼前に相談した場合に必要な費用です。 初回無料にしている会社も多いので、各社のホームページなどで確認しておきましょう。 着手金 着手金とは、M&A仲介会社と契約を結んだ際に、今後の業務に着手するために必要となる費用です。途中で契約を解消したり、M&Aが成約しなかったりした場合であっても、着手金が返金されることはありません。 完全成功報酬制を採用している業者であれば、着手金は不要となります。着手金が必要となる会社の場合、最低でも50万円以上かかることが多いでしょう。 中間報酬 中間報酬とは、売り手企業と買い手企業が基本合意できた時点で必要となる費用です。 中間報酬を不要としているケースもありますが、必要なケースでは成功報酬の10%~20%程度がかかる場合が多いので、依頼する場合はきちんと確認しておきましょう。 なお、中間報酬についても、M&Aが成約しなくても原則として返金されません。 月額報酬 月額報酬が定められている場合は、契約が継続する期間、毎月定額の報酬を支払う必要があります。リテイナーフィーとも呼ばれます。 月額報酬が必要な場合には、数十万円から数百万円かかるケースが多いです。 成功報酬 成功報酬とは、M&Aが成立した場合に、支払う報酬です。 成功報酬は、M&Aの規模によって異なりますが、通常は数千万円から数億円程度です。成功報酬についてはレーマン方式を採用している会社がほとんどなので、会社によって大きく費用が異なることはありません。 独自の報酬体系になっているかどうか、依頼する前に確認しておきましょう。 M&Aマッチングプラットフォームの費用・手数料 M&Aマッチングプラットフォームは、登録無料で利用できる会社がほとんどであり、成約するまで費用・手数料は基本的に必要ありません。 売り手側については成約時についても費用が発生せず、完全無料で使えるサイトも多いです。 買い手については成約価格の5%前後の範囲で、手数料を支払うケースが一般的です。 関連記事 M&A仲介手数料の相場はいくら?誰が払う? M&Aの着手金とは?無料になる?相場や支払いの注意点まとめ M&Aの完全成功報酬はお得?メリット・デメリット・選び方まとめ 事業承継・引継ぎ補助金のすべて|M&Aで活用できるお得な補助金とは... 事業承継にかかる税金 贈与税 親族間で事業を承継する場合、贈与税がかかります。贈与税は、贈与によって財産を取得した人に対して課される税金です。贈与税の税額は、贈与した財産の価額によって計算されます。 法人を承継する場合には、贈与される株式に対して贈与税がかかります。 個人事業を承継する場合には、預貯金や商品などを含めた事業用資産と株式に対して贈与税に対して贈与税が課されます。 贈与税の税率は、一般税率と特別税率の2種類があります。 一般税率は、夫婦間の贈与・兄弟間の贈与・父母から18歳未満の子への贈与の場合などに適用されます。 贈与税の詳細は「贈与税の税率が速算表ですぐわかる!|計算方法や特例も解説」をご覧ください。 相続税 相続によって事業を承継する場合、相続税がかかります。 相続税は、相続によって財産を取得した人に対して課税される税金です。相続税の税額は、相続した財産の価額によって計算されます。 事業承継の場合も、事業用資産や株式に対して相続税が課せられます。 相続税の詳細は「相続税の税率がすぐ分かる!|計算方法や各種控除も解説」をご覧ください。 事業承継税制 贈与や相続によって事業承継を行う際には、一定の要件を満たすことで、贈与税・相続税の納付が猶予、免除される「事業承継税制」を利用することができます。 事業承継税制を利用することで、税金を一括で納める必要がなくなります。 これにより、経営の継続や事業拡大に集中することができます。 関連記事 事業承継税制とは?納税が猶予・免除される要件とメリット・デメリットを解説 法人税 親族内承継、従業員承継を行ったとしても、法人税が課されることはありません。 第三者承継の場合も株式譲渡であれば法人税はかかりませんが、事業譲渡を行い利益が出た場合には、法人税が課せられます。 法人税が課される場合には、事業税、地方法人税、法人住民税が合わされます。 この場合の実効税率は30~35%程度となります。 関連記事 会社売却の税金は?M&Aで税金を節約するには? 非上場株式譲渡の税金とは?売却価格と税金の関係は? 消費税 事業承継で消費税がかかるのは、第三者承継のうち、事業譲渡を行い、譲渡資産の中に課税対象となる資産が含まれている場合です。 それ以外の事業承継では、原則として消費税はかかりません。 関連記事 事業譲渡の税金は?消費税や法人税は利益の何%?お得なのは会社譲渡? 登録免許税、不動産取得税 事業譲渡を行う資産の中に不動産がある場合には、不動産の所有権移転登記が必要となり、その際に登録免許税が課税されます。 登録免許税は、土地・建物を取得した場合に、その所有権を登記する際に国に納める税金です。税額は、その土地や建物の固定資産税評価額に税率を掛けて計算します。 不動産を贈与した場合には、土地・建物に対してそれぞれ2. 0%の税率がかかります。相続した場合には、土地・建物に対してそれぞれ0. 4%の税率がかかります。 一方、不動産取得税は、土地・建物を取得した際、登記の有無に関係なく課される税金です。しかし、不動産を相続する場合には不動産取得税は課されず、贈与や売買の場合に課税されます。 不動産取得税は、不動産の価格(課税標準額)に税率を掛けて計算されます。 税率は土地・住宅用家屋については3%、非住宅用家屋については4%(2024年3月31日までに取得した場合)となっています。 事業承継のお悩みは専門家に相談を 事業承継を進めていくうえで不安な点があれば、専門家に相談しましょう。 国が都道府県ごとに設置する事業承継・引継ぎ支援センターであれば、無料で相談に乗ってもらうことができます。 民間の会社でも、複数社と面談して大まかな費用を概算しておくことも重要です。 --- ### M&Aの売却価格・買取価格を算定する方法は?M&Aの値段について解説 - Published: 2024-02-22 - Modified: 2024-03-11 - URL: https://atomfirm.com/manda/8686 - Categories: 会社売却の相場, 企業価値 M&Aの価格とは、売り手側と買い手側の交渉により決定された会社売却・会社買取の価格です。算定方法はどれも複雑で、いくつかの手法を組み合わせることもあります。不安があれば専門家に相談しましょう。 M&Aで会社を譲渡しようと考えている経営者の方の中には、自分の会社の売却価格や買取価格がどのくらいになるのか、疑問に思っている方もいるでしょう。 M&Aの価格は、上場企業であれば公開されている株価を基に、大体の予測をつけることが可能です。しかし、日本の会社のうち99%以上を占める非上場企業では、自社の価格を簡単に計算することはできません。 M&A・会社売却を検討する場合には、専門家に相談して、最適な方法で会社の売却価格・買取価格を算定するようにしてください。 M&Aの価格とは M&Aの価格とは M&Aの価格とは、売り手側と買い手側の交渉により決定された会社売却・会社買取の価格のことです。 最も簡易的にM&Aの価格を算定する方法としては、時価純資産に営業利益3~5年分を加算する手法が挙げられます。しかし、M&Aの価格算定の方法は、他にもDCF法や類似会社比準法などがあります。 会社の資産に注目するのか、将来の収益性に注目するのかなど、価格算定の指標に応じて、採用される計算方法が異なります。 関連記事 M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 M&Aの価格相場 M&Aの価格には、一定の相場が存在するわけではありません。業種や企業規模、財務状況などによって、M&Aの価格は大きく異なります。 一般的には、以下の要素が価格に影響を与えます。 M&Aの価格に影響する要素 売上高 利益 資産 成長性 市場シェア 競争力 従業員や役員 これらの要素を総合的に評価し、買収企業と売却企業が合意できる価格を決定します。 近年は、M&A市場の活発化により、価格相場は上昇傾向にあります。特に、IT企業などの成長性の高い企業は高値で買収される傾向があるでしょう。 M&Aの価格算定方法 時価純資産法 会社の資産価値に基づいて企業価値を算定する手法です。 貸借対照表に記載されている資産と負債を、それぞれ時価に換算して企業価値を算出します。 この時価純資産に数年分の営業利益を加算することで、大まかな企業価値が算定可能です(年買法)。 なお、何年分の営業利益を加算するのかによって、交渉する価格は変わります。 例えば、5年分の営業利益を加算する場合には、なぜ5年分なのか、買い手を納得させるよう交渉しなければなりません。 関連記事 M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? DCF法 DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)とは、将来のキャッシュフローを現在価値に換算して、企業価値を算定する方法です。 将来の収益や伸びしろなどを価格に含めることができる点がメリットです。 具体的な計算方法については、以下の関連記事をご覧ください。 関連記事 企業価値評価におけるDCF法とは?株主資本コスト、加重平均資本コスト(WACC)の求め方を徹底解説! 類似会社比準法 類似企業の各種指標を参考に算定する手法です。 同種の事業を営む複数の上場企業を選び出し、それらの企業の株価などを基にして評価倍率(マルチプル)を導き出します。 これによって、評価対象企業の株価を計算します。マルチプルとして採用される指標としては、EV/EBITDA倍率やPER、PBRなどがあります。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! M&A価格算定のタイミング M&A検討の初期段階 M&Aの価格は、第一に初期段階で大まかな算定を行います。 この算定により、M&Aの費用対効果を判断でき、買い手候補となる企業の絞り込みに役立ちます。 この段階では、DCF法や類似会社比準法などを用いて算定します。 最終交渉前 最終交渉に入る前に、改めて価格算定を行い、交渉の参考資料とします。この段階では、買収後のシナジー効果などを考慮した価格算定を行うことも重要です。 M&A価格算定は、M&A検討の初期段階、最終交渉前のタイミングで行うことが重要です。 それぞれのタイミングで適切な方法を用いることで、より精度の高い価格算定を行い、円滑なM&Aを実現することができます。 M&A価格算定の注意点 算定方法の偏り M&A価格算定には、DCF法、類似会社比準法、時価純資産法など、いくつかの方法があります。しかし、どの方法にもメリットとデメリットがあり、偏った方法で算定すると、適正な価格算定が難しくなります。 複数の方法を組み合わせ、それぞれのメリットとデメリットを理解した上で、総合的に判断することが重要です。 将来の見通しの不確実性 M&A価格算定には、将来の業績や市場環境などの予測が不可欠です。しかし、将来は不確実であり、予測が外れる可能性もあります。 将来の見通しの不確実性を考慮し、リスクを織り込んだ価格算定を行わなければなりません。 バイアスの影響 M&A価格算定は、買い手と売り手の双方が行います。しかし、それぞれ立場によってバイアスがかかり、客観的な価格算定が難しい場合があります。 専門家などの第三者に意見を求め、バイアスを排除した価格算定を行いましょう。 --- ### M&Aの課題とは?会社売却側の抱える問題点を解説 - Published: 2024-02-22 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/12826 - Categories: その他 M&Aにおける売り手の最大の課題は、適切な売却価格の設定や、取引先・従業員への対応などです。M&A・会社売却は、専門知識や経験が必要となるため、M&Aアドバイザーや弁護士などの専門家を積極的に活用することが重要です。 M&A・会社売却を行う際には、売り手側と買い手側にそれぞれ課題があります。 M&Aにおける売り手の最大の課題は、適切な売却価格の設定や、取引先・従業員への対応などです。 買い手側にも、どのように買収候補となる企業を探すのか、企業文化をうまく統合させられるのかなど、様々な不安があるでしょう。 この記事ではM&Aの売り手と買い手側の課題・問題について解説します。 M&A売り手の課題・問題 適切な企業価値評価 企業価値を評価する方法としては、純資産価額法、類似会社比準法、DCF法などがあります。これらの方法を組み合わせ、自社の強み・弱みを考慮して、適切な企業価値を算出する必要があります。 その他にも、M&A市場の活況、同業他社の買収事例などを参考に、市場動向を把握することが重要です。市場動向を把握することで、妥当な買収価格の範囲を設定することができます。 買収価格の交渉では、自社の強みをアピールし、買収候補企業との競争を促すことが重要です。また、複数の買収候補企業と交渉を進めることで、より良い条件を引き出すことができます。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 取引先・顧客への対応 M&Aによって顧客や取引先との関係が変化する可能性があります。 事前に丁寧な説明を行い、不安を解消することが重要です。 会社売却が決定したら、その理由、売却後の事業計画、顧客・取引先への影響などを具体的に説明するべきです。 M&Aの公表前に説明を行うことで、憶測や不安を防ぐこともできるでしょう。 従業員への対応 M&Aは、従業員にとって大きな不安や疑問を伴う出来事です。会社が変わることで、雇用や待遇がどうなるのか、経営陣が変わったら仕事内容も変わるのではないのか、などといった不安が生じる可能性があります。 M&Aの買い手企業は、売り手企業の従業員を大きな財産とみなしているケースがほとんどです。そのため、会社売却を行う理由や目的などを丁寧に説明し、従業員の不安を取り除かなければなりません。 もし、不安に感じた従業員が次々と離職や転職をしてしまえば、会社売却の価格が大幅に低下してしまう恐れがあるでしょう。 関連記事 M&Aで従業員はどうなる?会社売却後の社員の雇用について解説 デューデリジェンスへの対応 デューデリジェンスは、買い手企業が売り手企業の財務状況や法務状況などを調査するプロセスです。売り手企業は、買い手企業からの質問に丁寧に答え、必要な資料を迅速に提出する必要があります。 デューデリジェンスでは、自社のあらゆる情報を開示する必要があります。情報開示に不備があると、交渉が長引いたり、破談になる可能性があります。 買い手企業からの質問には、正確かつ丁寧に答える必要があります。質問に答える準備をしておくことで、スムーズなデューデリジェンスを実施することができます。 財務諸表、法務関連書類、顧客情報など、デューデリジェンスに必要な資料を事前に準備しておくことが重要です。 M&Aを成功させるためには、売り手はこれらの課題・問題に事前にしっかりと対策を講じておく必要があります。専門家のアドバイスを受けながら、適切な買収価格の設定、顧客・取引先への対応、デューデリジェンスへの対応を進めることが重要です。 M&A買い手の課題・問題 M&Aは、事業の成長や新規事業への参入など、買い手にとっても様々な目的で有効な手段です。ここでは、M&A買い手が直面する代表的な課題・問題を3つ紹介します。 自社の事業戦略に合致する企業を見つける M&Aの成功には、自社の事業戦略に合致する企業を見つけることが不可欠です。しかし、 自社の事業戦略に合致する企業を見つける場合、M&A仲介会社などを使わなければ情報収集が難しくなるでしょう。 また、他社との買収競争に負けてしまう可能性もあります。 適切なターゲット企業を見つけるためには、自社の事業戦略を明確にしたうえで、自社の事業戦略に合致するターゲット企業の選定基準を設けるべきでしょう。 また、M&A仲介業者などの専門家を活用し、ターゲット企業に関する情報収集を進めましょう。 社員・従業員の処遇 M&Aによって企業が買収されると、売り手側の社員・従業員にとっては、 買収先企業の企業文化の違いに馴染めず、モチベーションが低下してしまうのではないかという不安があるかもしれません。 M&A成約後に買収先の企業に馴染めなかったからという理由で退職が相次いでしまうと、期待していた収益を上げることができず、買収した意味がなくなってしまうリスクもゼロではありません。 社員・従業員の不安を解消するために、買い手は 社員・従業員の質問や不安に丁寧に耳を傾けたり、 買収後に社員・従業員がスキルアップできるようなキャリア支援を行ったりする必要があるでしょう。 社員・従業員は企業にとって最も重要な資産です。M&Aを成功させるためには、社員・従業員の不安を解消し、安心して働ける環境を提供することが重要です。 買収後のPMI(統合管理) M&Aの成否を決める重要な要素の一つが、買収後のPMI(統合管理)です。 PMIには、以下のような課題があります。 文化統合: 買収先企業の企業文化を自社の企業文化に統合するのが難しい。 業務統合: 買収先企業の業務プロセスを自社の業務プロセスに統合するのが難しい。 人事統合: 買収先企業の従業員を自社の組織に統合するのが難しい。 PMIを成功させるためには、統合計画の策定や関係者との綿密なコミュニケーションを行うことが重要です。 M&Aは、買い手にとっても大きな挑戦です。これらの課題・問題を理解し、適切な対策を講じることで、M&Aを成功に導きましょう。 M&Aの現状 近年、M&Aは事業承継や資金調達、新規事業への参入など、様々な目的で活用されています。 株式会社レコフデータの資料によると、2023年の日本企業が関連したM&A件数は、4,015件でした。 4,304件だった22年と比べると減少傾向にありますが、依然として4,000件を超えるM&Aが1年の間に成約しています。 M&A売り手のメリット・デメリット M&Aの売り手側のメリット 事業承継問題の解決後継者不足や高齢化などの問題を抱える企業にとって、M&Aは事業承継問題を解決する有効な手段となります。 資金調達M&Aによって資金を調達することで、引退後の生活を豊かにしたり、新規事業への投資や設備投資などを進めたりできます。 経営資源の有効活用自社だけでは活用しきれない経営資源を、M&Aによって有効活用することができます。 一方、M&Aの売り手側が抱えるデメリットとしては、これまで経営してきた会社が消滅してしまう恐れや、専門家へ支払う費用・手数料が高額になる可能性などが挙げられるでしょう。 関連記事 M&Aのメリット・デメリットは?売り手にメリットがあるM&Aとは M&A買い手のメリット・デメリット M&Aの買い手側のメリット 事業拡大・新規事業への参入M&Aによって、自社だけでは難しい事業の迅速な拡大や新規事業への参入が可能になります。 経営資源の獲得M&Aによって、自社だけでは獲得できない経営資源を獲得することができます。経営資源としては、売り手企業の持つ優秀な人材やノウハウ、ブランド力などがあるでしょう。 シナジー効果M&Aによって、シナジー効果を生み出すことができます。競合よりも収益力を高めることができれば、競争優位性を確立することができるでしょう。 一方、M&Aの買い手側が抱えるデメリットとしては、売り手側に対価として支払う金銭の準備や、デューデリジェンスやPMIにかかる負担などが挙げられるでしょう。 関連記事 M&Aのシナジー効果とは?シナジーの種類と分析まとめ M&AのPMIとは?PMIの手順は?売り手が協力すべきことは? M&A・会社売却の成功のために専門家に相談を M&A・会社売却は、専門知識や経験が必要となる複雑なプロセスです。そのため、M&Aアドバイザーや弁護士などの専門家を積極的に活用することが重要です。専門家は、以下のような役割を果たします。 M&Aの専門家の役割 戦略策定・企業価値評価M&A・会社売却の目的や目標を明確化し、最適な戦略を策定する。買い手企業との交渉の際に提示する売却価格を決めるため、企業価値評価を丁寧に行う。 情報収集・買い手探しターゲット企業や市場動向に関する情報収集を行う。専門家であれば、独自のネットワークにより、効率よく買い手候補を探すことができる。 交渉・手続き買収価格や契約条件などの交渉を行う。契約書の締結や成約後の処理など、M&A・会社売却に必要な手続きをサポートする。 M&Aの流れの中では、秘密保持契約書や基本合意書など、複数の書類を締結するケースが通常です。専門家に依頼することで、負担を軽減してスムーズに成約まで進められるでしょう。 初回の相談を無料で実施しているM&A仲介会社も多くありますので、インターネットで検索してください。 --- ### 従業員承継とは?会社を譲る方法・メリット・デメリットまとめ - Published: 2024-02-20 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/manda/12266 - Categories: 事業承継, 後継者不足 従業員承継とは?従業員に会社を譲る方法は?メリット・デメリットは?この記事では、中小企業で役員・従業員に事業承継をご検討中の経営者の方に向けて、従業員承継の方法・特長・活用できる制度について解説しています。 従業員承継とは? 従業員に会社を譲る方法は? 従業員承継のメリットは?デメリットは? 従業員承継とは、事業承継の方法の一つで、社内の役員や従業員に会社を譲ることです。 我が子が会社を継いでくれない場合、社内の有望な人材に白羽の矢が立つことになるでしょう。 この記事では、従業員に会社を譲る方法、メリット・デメリットについて解説しています。 現在、従業員承継についてご検討中の方は、是非ご参考になさってください。 従業員承継とは? 従業員承継とは? 従業員承継は、事業承継のひとつの方法です。 事業承継とは、現経営者から後継者に事業を引き継ぐことをいいます。 事業承継には、親族内承継、従業員承継、外部招聘、M&Aなどの方法があります。 事業承継の種類 親族内承継親族が後継者になる 従業員承継親族以外の従業員が後継者になる 外部招聘・M&A社外の第三者が後継者になるetc. 従業員承継とは、現在の経営者から、親族以外の会社の役員・従業員に会社を譲る方法です。 従業員承継のメリット 従業員承継には、以下のようなメリットがあります。 従業員承継のメリット 後継者候補の選択肢が広がる 会社の経営方針に理解のある後継者に、事業承継できる 会社運営の安定化が図れるetc. 後継者候補の選択肢が広がる 従業員承継のメリットは、後継者の選択肢が広がるという点にあります。 親族内承継の場合、少子化のため会社を継いでくれる我が子がいない、親族内に経営者の資質をそなえる人材がいないなどの理由で、断念せざるを得ないケースもあるでしょう。 そういった場合には、会社の役員・従業員から、将来有望な人材を選定し、後継者とすればよいのです。 会社の経営方針に理解のある後継者 従業員の中から選定した後継者であれば、会社の経営方針を理解し、創業者や先代経営者の意思を継いでくれる可能性が高いものです。 その会社の強みは、技術、技能、ブランド、組織力、販路など、目に見えにくことが多いです。会社を熟知する従業員に会社を譲ることで、事業承継後も、会社の強みを生かした会社運営が期待できます。 会社運営の安定化 まったくの部外者に会社を譲るよりも、従業員に会社を譲るほうが、社内や取引先の理解を得られやすく、事業承継後の会社運営の安定化も期待できます。 また、外部招聘やM&Aによる事業承継よりも、従業員承継のほうが、後継者教育を円滑に進めやすいといえるでしょう。 留意点 ただし、中小企業・小規模事業者の場合、そもそも従業員数が少なく、後継者候補を選定するには母数が少なすぎるケースもあるでしょう。 その場合、経営者になる意欲がある者や、経営の資質がある者を、従業員の中から見つけられないという問題が生じます。 従業員承継が難しい場合は、M&Aなど他の方法による事業承継を検討する必要性があります。 従業員承継のデメリット 従業員承継には、以下のようなデメリットがあります。 従業員承継のデメリット 後継者になれなかった親族株主や従業員から反対される 旧態依然の運営体質による弊害 後継者となる従業員の経済的負担が大きいetc. 親族株主や従業員の反対 事業承継のデメリットは、後継者になれなかった親族や従業員から反対され、内部対立を招くおそれがある点です。 現経営者が経営の実権を握っているうちに、後継者候補の存在を周知させ、内部対立の火種を消し去っておく必要があるでしょう。 旧態依然の運営体質による弊害 従業員承継のデメリットとしては、旧態依然の運営体質が続く点もあげられます。 従業員承継は、経営理念や企業文化に理解がある後継者となる反面、既存の体制を維持する傾向が強くなり、抜本的な経営刷新は難しいものでしょう。 せっかく次の世代に会社を譲ることができたとしても、先行き不安をかかえる中小企業は、いずれ会社存続の危機に立たされるおそれがあります。 従業員承継を成功させるには、経営理念を尊重しつつも、時代の変化に柔軟に対応できるような優秀な従業員を見つけ出す必要があります。 後継者となる従業員の経済的負担 有償で従業員承継を行う場合、後継者となる従業員の経済的負担が大きいという点もデメリットとなります。後継者となる従業員は、会社の株式や事業を買い取るための対価を用意する必要がありますが、個人でそのような資産を有していることは一般的ではありません。 したがって、何らかの方法で資金調達をしなければなりません。 後継者となる従業員が有利な公的制度を利用できない場合、従業員承継を断念せざるを得ないケースもあるでしょう。 従業員に会社を譲る方法 ①有償の株式譲渡(MBO・EBO) 従業員承継の具体的な方法として、株式譲渡という方法があります。 従業員側から見れば株式取得になりますが、役員による株式取得(Management Buy‐Out)や、従業員による株式取得(Employee Buy‐Out)と呼んだりします。 中小企業の場合、所有と経営が分離しておらず、経営者個人が企業の大株主となり、経営の実権を握っていることが多いものです。 この場合、先代経営者から後継者となる従業員に、株式を売却することで、従業員承継を実行することができます。 メリット 株式譲渡による従業員承継について、一般にいえるメリットは、経営者の意見が通りやすくなる点にあります。先代から企業の株式譲渡を受けることで、会社の支配権を握ることができます。また、手続きが簡便である点も、株式譲渡のメリットです。 また、有償の株式譲渡であれば、売り手である先代が、株式の譲渡益を取得することができます。「自ら選び可愛がって育ててきた後継者から対価を受け取るのは忍びない」という気持ちがある反面、自分の退職後の生活資金の問題もあるので、有償で株式譲渡したいとお思いになる経営者も多いことでしょう。 デメリット 株式譲渡による従業員承継のデメリットとしては、後継者となる従業員の経済的負担が大きいことです。 中小企業であっても、企業価値が数千万円をくだらないことも多々あるため、かなりの経済的負担を強いることになります。 経済的負担を払拭するためには、ファンドやベンチャーキャピタル(VC)などから投資を受ける必要があるかもしれません。 ②無償の株式譲渡(贈与・遺贈) 株式譲渡は無償でおこなうことも可能です。 この場合、具体的には、贈与や遺贈という方法で従業員承継をおこなうことになります。 贈与とは、当事者の合意によって、財産を無償で譲ることです。 遺贈とは、遺言によって、財産を無償で譲ることです。遺言をするには、遺言書を作成すれば良いのですが、不備があれば遺言は無効になってしまいます。そのため、自筆証書遺言ではなく、公証人の力を借りて公正証書遺言を作成する方も多いでしょう。 メリット 贈与・遺贈のメリットは、後継者となる従業員の経済的負担を軽減できることです。 デメリット 贈与を受けた者(受贈者)には、贈与税が課されます。後継者となる従業員には、無償譲渡の場合でも、贈与税を支払える程度の資金力が必要になります。 贈与税の税率については、以下のようなものです。 贈与税の速算表*¹ 基礎控除後の課税価格*²1500万円以下3千万円以下3千万円超税率45%50%55%控除額(万円)175250400 *¹ 国税庁HP タックスアンサー(よくある質問)No. 4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)のうち、一般贈与財産用(一般税率)の速算表を参考に作成。基礎控除後の課税価格が1000万円以下の税率、控除額については省略した。*² 基礎控除後の課税価格とは、贈与してもらった金額から、基礎控除額110万円を差し引いた後の金額のこと。  たとえば、8110万円の価値のある株式の贈与を受けた場合、4000万円の贈与税をおさめる必要があります。 基礎控除後の課税価格8110万円-110万円=8000万円 贈与税額の計算8000万円×55%-400万円=4000万円 また、遺贈についても同様の問題があります。すなわち、遺贈を受けた者(受遺者)には、相続税が課されるので、支払いができる程度の資力を有している必要があります。 しかも、配偶者や一親等の親族(代襲相続人となった孫)に該当しない場合、相続税は2割加算になるため、負担が大きいものでしょう。 加えて、経営者の財産の多くが株式である場合、無償の株式譲渡が、相続人の遺留分を侵害することになり、財産の分配について紛争の火種となります。現経営者がご存命のうちに、相続人となる者らの理解をえておく必要があるでしょう。 ④会社の経営権のみを従業員に譲る 従業員承継の方法として、会社の経営権のみを従業員に譲るという方法も考えられます。 会社の経営権のみを従業員に譲るには、株主総会や取締役会を開催し、後継者となる従業員をあらたに代表取締役に選出し、変更登記をおこないます。 メリット 会社の経営権のみを従業員に譲る場合のメリットは、後継者となる従業員に経済的負担がかからないことです。 デメリット 会社の経営権のみを従業員に譲る場合、迅速な意思決定が難しくなり、会社運営に支障が生じるおそれがあります。所有と経営が分離しているため、会社の重要な局面で事あるごとに、先代経営者の了承を得ながら進める必要がありからです。 また、先代経営者が死亡した場合は、株式の相続でもめる可能性があります。誰がどのくらい株式を相続するかによって、後継者が取締役から解任されるリスクもあるでしょう。 従業員に会社を譲るまでの流れ 現状把握(見える化) 従業員承継をスムーズに進めるためには、現状把握が重要です。 経営状況とともに、事業承継の課題を見える化することで、事業承継の方向性を確認することができます。 見える化の対象 事業の成長性・収益性 企業の技術力・事業用資産・経営資源の見直し 社内規定・ガバナンスの問題点 経営者保証の有無 後継者候補の有無、承継の意思・適性、親族の意向etc. 事業承継に向けた経営改善(磨き上げ) 経営状態が厳しい企業の後継者になりたいと望む人は、少ないでしょう。そのため、円滑な従業員承継のためには、経営改善も非常に重要です。 見える化により露呈した経営課題を解決することで、後継者の不安を和らげることができます。 可能であれば、現経営者が、後継者候補とともに経営改善に取り組むと良いでしょう。後継者教育の一環として重要であるとともに、後継者として周知してもらうためにも意義がある取り組みといえます。 事業承継計画の策定 事業承継を進めるには、事業承継計画の策定が必須となるでしょう。 事業承継計画とは、中長期的な経営計画を立て、事業承継の時期、課題、具体的な対策などを計画したものです。 会社の将来を見据えて、いつ、どのように、何を、誰に承継するのか詳細に計画を立てます。 場合によっては磨き上げの段階まで盛り込んで策定することもあるでしょう。 事業承継計画書のフォーマットについては、中小機構のホームページなどでも紹介されています。 事業承継の実行 事業承継計画にのっとり、しかるべき時期がきたら、従業員承継を実行します。 なお、中小企業を従業員に譲る方法としては、株式譲渡の手続きがオーソドックスでしょう。 株式譲渡の手続きについては、「株式譲渡の手続き・流れを徹底解説!会社の株式譲渡で必要な書類と注意点とは」の記事をご覧ください。 従業員承継を成功に導く3つのポイント 従業員承継を成功に導くポイントとしては、以下の3つがあげられるでしょう。 3つのポイント 後継者候補の育て方 資金調達・経済的負担の軽減 経営者保証からの解放 ①後継者候補の育て方 従業員承継の場合、共同創業者や、重役、工場長、優秀な若手従業員などから後継者を選ぶことになります。 しかし、当人は、後継者になるなど全く予期せぬことで、経営リスクを負う覚悟が無いケースもしばしばあるものです。 そのため、まずは後継者候補となる従業員には、早期に打診し、覚悟を決めるための時間を与え、本人の了解を明示的にとりつける必要があるでしょう。 その後、じっくりと後継者教育をほどこしていきます。 ②資金調達・経済的負担の軽減 従業員承継の後継者が資金調達をする方法としては、以下の3つが考えられます。 資金調達・経済的負担の軽減 公的な補助金の申請 公的機関からの融資 ファンドの活用 また、後継者の経済的負担を軽減するには、税制上のメリットを享受できる「事業承継税制」についても知っておく必要があるでしょう。 公的な補助金の申請 国が中小企業を応援する公的な補助金として、「事業承継・引継ぎ補助金」というものがあります。 こちらの補助金は、返済不要であるため、非常に魅力的です。 しかし、必ず申請が通るわけではないこと、募集期間があることなどに留意する必要があります。 公的機関からの融資 経営承継円滑化法にもとづく認定を受けた会社について、事業承継をする場合、その株式取得のための費用については、日本政策金融公庫の低利融資や信用保証協会の支援措置を受けられる可能性があります。 また、商工中金の貸付なども利用できる制度です。 ファンドなどを活用する 金融機関からの投資によって資金調達をおこなうケースが過去には多かったですが、近年では、一定規模の中小企業の事業承継では、ファンドやベンチャーキャピタル(VC)などからの投資によって、従業員承継を実施する例も増えています。 その場合の流れとしては、以下のようなものです。 MBOのスキーム(一例) 後継者(役員・従業員)が、SPC(特別目的会社)を設立 SPCが、株式を投資ファンドやVCに売却、または金融機関から借入れ、従業員承継に必要な資金を調達 SPCが、譲渡対象企業の株式を取得し、子会社化する SPCが、譲渡対象会社から配当などを受け取る SPCが、金融機関に借入金を返済 このスキームによる注意点としては、投資ファンドが筆頭株主となり、後継者が雇われ社長となるケースが多いでしょう。そのため、名実ともに会社の後継者となるためには、資金を蓄え、投資ファンドなどが保有する株式を買い戻すというアクションが必要になります。 また、会社の経営権を維持するためには、従業員持ち株会や複数の取引先に、一部の株式を保有してもらうなどの方法が考えられるでしょう。 金融機関からの借入については、返済の負担が生じます。借入金額が大きければ、会社の財政状況の悪化にもつながります。 事業承継税制 事業承継税制とは、先代経営者から株式を取得した際に贈与税や相続税の納税が猶予され、その次の経営者が株式を承継した場合は猶予された税額が免除されるという制度です。 詳細な適用条件があるので、詳しく知りたい方は「事業承継税制とは?納税が猶予・免除される要件とメリット・デメリットを解説」の記事もご覧ください。 ③経営者保証からの解放 経営者保証とは、中小企業が金融機関から融資を受ける場合に、経営者個人が会社の連帯保証人となる個人保証のことをいいます。 企業が融資の返済をできなくなった場合、経営者保証をしているときは、経営者個人が企業の借金を肩代わりし、返済をしなければなりません。 事業承継をおこなえば通常、経営者保証も承継されることになります。これが従業員承継のハードルをあげるひとつの原因です。 しかし近年、経営者保証に関するガイドラインが制定されたことで、一定の条件を満たす場合には、経営者保証から解放される可能性が出てきました。 経営者保証をはずす3要件 資産について法人と経営者が明確に区分・分離されている 法人のみの資産や収益力で返済が可能 適時適切に財務情報が開示されている 参考:中小企業庁「経営者保証」こちらは2024年2月21日現在の情報です。制度の詳細については、必ずご自身でご確認ください。 従業員承継が難しいならM&Aを検討 現在、従業員承継ができるか不安をかかえている経営者の方は、M&A支援機関に頼ることも考えてみてはいかがでしょうか。 商工会議所などでは、従業員承継のアドバイスのほか、M&Aの相談もできます。 また近年、M&Aによる事業承継の件数が増えてきており、利用しやすい民間のM&A仲介会社も沢山あります。 公認会計士や税理士、弁護士などの士業専門家に相談できることもあります。 まずは無料で提供されているサービスなどを活用してみて、M&Aの可能性を探るところから始めてみてましょう。 --- ### 株式譲渡の手続き・流れを徹底解説!会社の株式譲渡で必要な書類と注意点とは - Published: 2024-02-20 - Modified: 2024-04-01 - URL: https://atomfirm.com/manda/12327 - Categories: 株式譲渡, 会社売却の流れ 親から相続した会社の株を売るときの流れを知りたい 株式譲渡で必要な手続きが分からない 株式譲渡で会社売却をする場合に必要な書類は? 株式譲渡によって会社売却をしようと考える場合、上記のようなお悩みを抱えているかもしれません。 株式譲渡は会社売却の手法の中でも、手続きが簡単な方法ですが、会社法に則った手続きを進める必要があります。 また、株式譲渡によって会社売却をしても、会社名や資産、従業員の雇用などは引き継がれます。株式譲渡は、他のM&A手続きと比べると簡単に進めることができるのです。 この記事では、中小企業で多く活用される株式譲渡の手続き・流れを説明します。 正しい方法で会社売却を進めたい方はぜひ参考にしてください。 株式譲渡とは 株式譲渡とは、会社の株主が保有する株式を、他の者に譲渡することです。 株式譲渡により、譲渡人は株式を譲受人に引き渡し、譲受人は譲渡人に対して譲渡対価を支払います。 株式譲渡の概要 株式譲渡は、会社売却をする際の手法の一つです。 譲渡対象会社の株主が保有するそれらの発行済み株式を、譲受会社または個人(譲受人)に譲渡することで、経営権を移動させます。 株式譲渡による事業承継を行ったとしても、株主が代わるだけで会社はそのまま存続します。株式の保有者が変更されますが、会社が吸収されてなくなるわけではありません。 そのため、会社名や会社の資産、債権・債務、取引先との契約関係、従業員との雇用関係等はそのまま引き継がれます。 「会社売却をしたいが、会社自体は存続させたい」「会社売却後も従業員を雇用したままにしたい」などの希望がある場合には、株式譲渡がおすすめです。 株式譲渡を行う株主・オーナー側のメリット 資金調達ができる 経営権の移転ができる 株主構成を変更できる 株式を換金できる 株式の譲渡制限とは 株式譲渡には、主に「譲渡制限のない株式譲渡」と「譲渡制限のある株式譲渡」の二種類に分かれます。 「譲渡制限のない株式譲渡」は、多くの場合、上場企業の株式譲渡を意味します。 上場している会社の場合は株式に譲渡制限をつけることができないため、自由に譲渡・売買することができます。 「譲渡制限のある株式譲渡」は、譲渡する際に会社の承認が必要となる株式のことを意味します。多くの非上場会社の株式には、譲渡制限が定められています。 例外的に譲渡制限をつけていないケースもありますが、一般的ではないでしょう。 非上場会社の株式は、公開された市場で株価が明らかにされていないため、売り手と買い手の交渉で価格を決定し、譲渡を行います。 関連記事 非上場株式を譲渡するには?売却価格や手続きは? 株式譲渡の手続き・流れ 譲渡承認請求 譲渡制限がついている非上場会社の株式を譲渡・売却する場合には、会社の承認を得る必要があります。 株式譲渡承認請求とは、株式を譲渡する際に、その会社から承認を受けるための手続きです。譲渡制限株式の株主、もしくは譲渡制限株式を取得した株式取得者が、会社に対して証人請求を行うことができます(会社法136条、137条1項)。 譲渡承認請求書には、譲渡する株式数や株式を譲渡する株主の氏名または名称を記載しなければなりません(会社法138条)。 取締役会・株主総会での承認 譲渡承認請求書が提出された会社は、取締役会が設置されている場合には、原則として取締役会を開催し、株式譲渡を承認するか拒否するかを決定します。 取締役会が設置されていない場合には、臨時の株主総会が開かれます。 株式会社が第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をするか否かの決定をするには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。(略) 会社法139条1項 株式譲渡が承認されると、承認請求を行った人は自ら株式譲渡をしたい相手側に株式売却を行うことができます。 なお、取締役会・株主総会で譲渡承認請求が承認されなかった場合は、希望相手に株式譲渡ができません。 企業側は会社自身が株を買い取る、または指定する買取人に買収させるかを決定する必要があります(会社法140条1項)。 決定内容の通知(株式譲渡承認通知) 取締役会や株主総会で株式譲渡が承認された場合、会社から譲渡人に対して株式譲渡を承認した旨を通知します。 なお、株式譲渡承認請求の日から2週間以内に通知をしなかった場合、対象会社は株式の譲渡を承認したものとみなされます。 株式会社は、前項の決定をしたときは、譲渡等承認請求をした者(以下この款において「譲渡等承認請求者」という。)に対し、当該決定の内容を通知しなければならない。 会社法139条2項 また、不承認の場合は譲渡人に対して不承認である旨を通知します。 不承認の場合は、譲渡人は希望する相手に株式譲渡ができません。 企業側は会社自身が株を買い取る、または指定する買取人に買収させるかを決定する必要があります。 株式譲渡契約の締結 会社からの承認を受けることができたら、株式譲渡を本格的に進めていきます。 譲渡価格や条件などについて買い手と大枠で合意している場合には、株式譲渡契約書を作成します。 買い手との交渉が継続している場合には、デューデリジェンスや交渉といった手続きを経て、売却価格などの条件に双方が合意しなければなりません。 関連記事 会社売却の流れを解説!手続きや手順の注意点は? 株主名簿の書き換え 株主名簿の書き換えは、株主帳簿に譲受人を株主として新たに記載することです。 譲渡制限株式を取得した株式取得者が、会社に対して名簿の書き換えを請求できます(会社法133条1項)。 株式の譲渡が完了したとしても、株主としての権利を行使するためには、株主名簿に正式に記載される必要があります。 株主名簿に正しく記載されないと、株式を所有している証明が得られません。したがって、株主名簿の書き換えは非常に重要な手続きです。 一般的なケースでは、株式を譲渡した譲渡人と譲受人が共同で、会社に対して株主名簿の書換え手続きを行います。しかし、中小企業などで株券がない場合、譲受人が単独で名義書換の請求手続きを行うこともあります。 会社は株主名簿書換請求を受けると、手続きを行い、譲受人に株主名簿記載事項証明書を発行します。これにより、株式譲渡にかかる一連の手続きが完了します。 こうして正式に株主となることができれば、会社のオーナーとして権利行使できるようになります。 M&Aの株式譲渡で必要な書類 譲渡承認請求書 譲渡承認請求書は、株式譲渡の手続きを開始したことを会社に伝えるための書類です。 譲渡承認請求書に書かなければならないポイントは、次の3点です。 譲渡する株式の種類と株式の数 譲渡される相手の氏名と住所 譲渡する株主の氏名と住所と印鑑 実際に株式譲渡承認請求書を作成する際は、次のようなテンプレートを参考にすることをお勧めします。 株式譲渡契約書 売り手と買い手の双方が株式譲渡契約に合意した場合、株式譲渡契約書を締結します。譲渡人と譲受人のそれぞれが記名・押印します。また、株券発行会社の場合は上記に加えて株券の交付が必要になります。 この契約書は、主に株式と現金の交換を保証する目的で作成されます。一般的には、以下の内容が盛り込まれます。 譲渡の合意・譲渡日 譲渡価格 株式譲渡目的 対価支払い方法 取引内容 譲渡実行日前後の誓約事項 損害賠償・補償  一般的な契約書では収入印紙の貼り付けが必要ですが、株式譲渡の契約書は課税される文書には当てはまりません。そのため、印紙を貼り付ける必要はありません。 株式譲渡契約書のひな形・テンプレートについては、経済産業省が公開している「各種契約書等サンプル」をご確認ください。 株式譲渡の注意点 譲渡制限株式の注意点 株式譲渡を行う際には、まず自社の株式に譲渡制限がついているかを確認する必要があります。譲渡制限とは、株主が株式を他人に譲渡する際に、発行会社(株主総会または取締役会)の承認を得る必要があるとする制限事項です。 譲渡制限株式の注意点としては、以下の点が挙げられます。 譲渡制限株式を譲渡するには、発行会社の承認が必要である。 承認が得られなければ、株式譲渡の効力を会社に主張することができない。 承認を得るためには、発行会社に譲渡承認請求書を提出する必要がある。 譲渡承認請求書には、譲渡価格や譲受人の氏名・住所などの情報を記載する必要がある。 譲渡制限株式の売却を検討している場合は、事前に発行会社に確認し、承認の可否や承認に必要な手続きについて確認しておきましょう。 手続きを具体的にどのように進めればいいのか分からない場合には、民間のM&A仲介会社をはじめとした専門家に相談してみてください。 関連記事 M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? 株式譲渡の相談先はどこ?専門家ごとの特徴とメリットを紹介 譲渡価格の算出方法 株式譲渡の譲渡価格は、譲渡人、譲受人間の合意によって自由に定めることができます。 ただし、あまりに低すぎる価格で譲渡した場合、通常よりも多く税金をおさめなければならなくなる可能性があります。 株式譲渡を行う際に、株式価格の算出をする場合には、以下の方法が用いられるのが一般的です。 純資産法 DCF法 類似会社比準法 純資産法は、純資産の額から総負債の額を控除して、株価の算定をおこなうという計算方法です。 帳簿の記載通りに計算する「簿価純資産法」と不動産や株価などを時価で再評価して計算する「時価純資産法」の2種類があり、実務で採用されることが多いのは「時価純資産法」です。 DCF法は、譲渡対象会社の将来の収益を元に、事業価値を算定する方法です。将来に予測されるフリーキャッシュフローを現在価値に割り引いて、事業価値を算出します。 類似会社比準法は、類似する会社の資産や利益など、複数の指標を比較することで株価を算出する方法です。 譲渡価格を決定する際には、これらの方法を参考に、適正な価格を算定することが重要です。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 企業価値評価におけるDCF法とは?株主資本コスト、加重平均資本コスト(WACC)の求め方を徹底解説! 税金の注意点 株式を譲渡する場合、譲渡益に対して法人税や所得税などの税金が課税されます。 株式譲渡にかかる税金のルールは、個人株主が譲渡するのか、法人株主が譲渡するのかによって変わります。 解説の詳細は「非上場株式譲渡の税金とは?売却価格と税金の関係は?」をご覧ください。 まとめ いかがでしたでしょうか。 非上場企業の株式譲渡の手続きは、譲渡承認請求から始まり、株式譲渡契約の締結、株主名簿の書き換え、決済の手続きで完了します。 株式譲渡では、譲渡承認請求書、株式譲渡契約書、株主名簿などの書類が必要です。 株式譲渡を行う際には、譲渡制限株式の注意点や譲渡価格の決定方法、税金の注意点などを理解しておきましょう。 --- ### M&Aの完全成功報酬はお得?相場・メリット・デメリットなどを解説 - Published: 2024-02-19 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/12018 - Categories: 相談・仲介, 会社売却の相場, 会社売却の費用 完全成功報酬とは?完全成功報酬の相場・メリット・デメリット・向いている場合は?この記事では中小企業のM&Aをご検討中の経営者の方に、M&A仲介会社の完全成功報酬という料金体系について解説していきます。是非ご参考になさってください。 M&Aの完全成功報酬制とは?手数料はどのくらい? 完全成功報酬制のメリットは?デメリットは? 完全成功報酬制のM&A仲介会社が向いているケースとは? M&Aの完全成功報酬制とは、M&A仲介会社などに支払う手数料の料金体系(報酬体系)のひとつです。 完全成功報酬の場合、着手金や中間金(中間報酬)などは発生せず、M&Aが成約した時点ではじめてM&Aの成約(成功)に対する報酬が発生します。 完全成功報酬制のM&A仲介会社が向いているのは、どのような案件なのでしょうか。 この記事では、完全成功報酬制の概要、成功報酬の相場、メリット、デメリットなどについて徹底解説しています。 現在、M&Aによる事業承継をご検討中の経営者の方など、是非最後までお読みください。 M&Aの完全成功報酬とは?相場は? M&Aの完全成功報酬とは? M&Aをおこなう場合に、仲介会社などを利用したときの手数料としては、着手金、月額報酬、中間報酬、成功報酬などの費用がかかります。 完全成功報酬制とは、着手金、月額報酬、中間報酬などを請求せずに、成功報酬のみ請求するという料金体系です。 各種手数料について 着手金*仲介契約、FA契約の締結時に支払う 月額報酬*一定額を毎月支払う 中間報酬基本合意書の締結時など、案件完了前の一定の時点で支払う デューデリジェンスの費用買い手側が負担。M&A実施にともなうリスクの調査(買収監査)にかかる手数料 成功報酬クロージングの際など、案件の完了のタイミングで支払う *一定期間の継続的な業務に対して支払われる定額顧問料のことをリテイナーフィーということが多いが、単に着手金のみをさしてリテイナーフィーと呼ぶこともある。 関連記事 M&A仲介手数料の相場はいくら?誰が払う? 完全成功報酬を支払うのは誰か? M&A仲介会社が売り手側、買い手側の双方の仲立ちとなるM&A仲介契約においては、M&Aの成約時に、売り手側、買い手側の双方がM&A仲介会社に対して、成功報酬を支払う例が多いでしょう。 ただし、なかには、売り手側は完全無料、買い手側にのみ成功報酬を請求するといった完全成功報酬制もあります。 M&A仲介会社ごとに料金体系が異なるので、確認を忘れないことが大切です。 M&Aが完全成功報酬の場合、手数料の相場は? 成功報酬の相場は、M&A仲介会社によって異なります。 着手金や中間金があるM&A仲介会社の仲介手数料と比べると、成功報酬の相場は、やや高額の料金設定になっているといわれています。 M&A仲介会社の料金体系では、M&Aの取引金額(売却価格)の何割かが成功報酬とされることが多いものです。 また、小規模のM&Aであっても、最低報酬金額として数百万円程度の支払いが必要になることがあるでしょう。 M&Aの成功報酬の算出方法(一例) M&Aの成功報酬の算出方法のうち、代表的なものとしては「レーマン方式」でしょう。 M&Aのレーマン方式とは、取引金額(株式の譲渡金額、事業の譲渡金額などの売却価格のこと)などに応じて、報酬率をかけて、報酬を計算する方法です。 レーマン方式では、取引金額(売却価格)などが大きくなればなるほど、報酬率は下がっていきます。 業界標準といわれるレーマン方式による場合、M&Aの取引金額が5億円以下のときは、その5%である2500万円が成功報酬となります。 レーマン方式(業界標準*) 取引金額(売却価格)報酬率5億円以下5%5億円超~10億円以下4%10億円超~50億円以下3%50億円超~100億円以下2%100億円超1% *こちらの表はあくまで一例です。 中小企業庁・経済産業省の「中小M&Aハンドブック 2024年2月9日版」の21ページを参考にしました。 事例:取引金額10億円の成功報酬 業界標準のレーマン方式による場合、取引金額が10億円のときの成功報酬は4500万円になります。 5億円以下の取引金額に対応する成功報酬が2500万円、5億円を超えて10億円までの成功報酬が2000万円となります。 5億円×5%=2500万円(10億円-5億円)×4%=2000万円2500万円+2000万円=4500万円 レーマン方式の注意点 M&A仲介会社によって、レーマン方式の基礎となる金額や報酬率が異なるなど、計算方法が異なる可能性があります。 また、計算結果にかかわらず、最低報酬金額が設けられていることもあるので注意が必要です。 なお、すべてのM&A仲介会社がレーマン方式を採用しているわけではありません。依頼をする前に必ず料金体系を確認してください。 M&Aが完全成功報酬制の場合のメリット 完全成功報酬のメリットの一例として、以下の3点をあげることができます。 メリット M&Aの初期費用をおさえられる M&A成約へのモチベーションが向上 費用を無駄にするリスクを回避 1. M&Aの初期費用をおさえられる 完全成功報酬制の場合、M&A成約まで報酬が発生しません。 着手金や中間金などの初期費用をおさえられるため、資金繰りなどを気にすることなく、M&Aに踏み切ることができます。 特に、中小企業やスタートアップ企業にとって、初期費用を抑えられる点は大きなメリットとなるものではないでしょうか。 2. M&A成約へのモチベーションが向上 完全成功報酬制の場合、仲介会社の収入は成功報酬のみになります。 そのため、M&A仲介会社の案件成立に対するモチベーションが高まる傾向があります。 売り手側としては、円滑なM&Aの成約を目指すことが期待できます。 3. 費用を無駄にするリスクを回避 交渉決裂となるなどM&Aが失敗した場合には、M&A仲介会社に支払う費用がまったく発生しないため、費用が無駄になるリスクを回避できます。 これは、M&Aが初めてで不安な企業にとって安心材料となります。 M&Aが完全成功報酬制の場合のデメリット 完全成功報酬のデメリットは、M&Aの成約まで仲介会社の報酬がないことの弊害と言い換えることができるでしょう。 たとえば、完全成功報酬のデメリットについては、以下の3点があげられます。 デメリット M&Aの成功報酬が高額になりやすい M&Aの成約まで時間がかかることもある M&Aの成約に躍起になる・交渉が強引になる 1. M&Aの成功報酬が高額になりやすい M&A仲介会社は、結果を出さない限りはまったく利益を手にすることができません。 そのため、結果を出したときの報酬金額は高く設定せざるを得ないという実情があります。 せっかく高額売却がかなったとしても、成功報酬が高額になると、売り手自身の手取りが少なくなってしまうというデメリットがあるでしょう。 売却価格を高額にすることができれば、成功報酬が高額になってもダメージを回避できる可能性があります。 会社を高く売るために企業価値向上に取り組んでおくと良いでしょう。 関連記事 M&Aで会社を高く売る方法とは?買い手へのアピールポイントを解説 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 2. M&Aの成約に至らない可能性もある 完全成功報酬制を採用しているということは、M&A成約の可能性が高く、高額売却が見込まれる案件のみを扱っている可能性が高いものでしょう。 そのような案件に該当しない場合、費用倒れのおそれがあるため、仲介会社の利用を断られることもあるでしょう。 また、成約の見込みが薄い案件の場合、登録はしたものの、なすすべなく買い手が現れるまで延々と待つことになる可能性があります。 とはいえ、売り手側としては、買い手探しのために様々な手段を用いることは重要です。 成約まで無料ならば、いったん相談や登録をしておき、他社と併用するなどの対応をとるのがおすすめです。 関連記事 会社売却成功への道!M&A買い手探しの目的とポイントとは 3. M&Aの成約に躍起になる・交渉が強引になる M&Aが成約に至らなければ報酬がでないため、仲介会社は成約に躍起になる可能性があります。 M&A成約にこだわり、売り手にとって不利な条件で強引な交渉を進めるM&A仲介会社も存在するので、注意が必要です。 完全成功報酬になることで、質の高いサービスの提供を受けられないおそれがある点はデメリットといえるでしょう。 譲れない条件や妥協できる点などについて、あらかじめ検討しておき、M&A仲介会社の担当者とよくコミュニケーションをとることが重要になります。 関連記事 M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? 完全成功報酬が向いているM&Aとは? 初期費用を抑えたい場合や、M&Aの経験が少ない経営者にとっては、完全成功報酬制がおすすめです。 とくに、会社売却をおこない、その後の生活資金や新規事業の立ち上げにあてたいとお考えの場合、無駄な出費をおさえることができるため、完全成功報酬は、非常に魅力的です。 ただし、完全成功報酬制の場合、M&Aが成約するまで仲介会社は報酬を手にすることができないので、M&Aの成約に躍起になるなどのおそれもあります。 完全成功報酬には一長一短ありますが、最後は自分の目で見極めるしかありません。 利用しやすく、信頼できるM&A支援機関を探すことが大切です。 --- ### M&Aの着手金とは?無料になる?相場や支払いの注意点まとめ - Published: 2024-02-19 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/manda/11871 - Categories: 会社売却の費用, 相談・仲介 M&Aの着手金は?無料のケースも?相場や支払いの注意点まとめ!この記事では、中小企業の経営者のM&Aをご検討中の方などを対象に、M&Aの着手金について徹底解説しています。ぜひ最後までご覧ください。 M&Aの着手金とは? M&Aの着手金はいくら?無料のケースもある? M&Aの着手金支払いの注意点とは? M&A仲介会社などに依頼する場合、着手金などの手数料がいくらかかるのか気になりますよね。 M&Aの着手金については、M&A仲介会社によって異なります。 着手金が無料の場合もあれば、案件の規模によって数百万円かかる場合もあります。 この記事では、M&Aの着手金の意義、相場、支払いの注意点などについてまとめています。 現在、M&Aによる事業承継をご検討中の経営者の方など、是非ご参考になさってください。 M&Aの着手金とは? M&Aの着手金とは? M&Aの着手金とは、M&AアドバイザリーやM&A仲介会社に業務を依頼する際に支払う手数料です。 M&Aの成否に関わらず発生する費用であり、M&Aの初期費用として支払われます。 M&Aの着手金の相場は?無料にもなる? M&Aの着手金の相場は、案件の規模や難易度によって異なります。 一般にいわれるところでは、M&Aの着手金の相場は数十万円から数百万円程度です。 とはいえ、近年では、着手金無料のM&Aアドバイザリー会社やM&A仲介会社も増えています。 M&Aマッチングサイトであれば、登録料無料で利用できるケースも多いでしょう。 M&Aで着手金が必要とされる理由は? 一般に着手金とは、これから委託する業務の活動費にあてる目的で支払う費用、いわばファイトマネーです。 ファイナンシャルアドバイザー(FA)やM&A仲介会社は、M&Aの成功に向けて、企業価値評価、買い手候補の探索など必要な業務をおこないます。 これらの業務には、高度な専門知識と経験が必要であり、人件費や資料作成費用などのコストがかかります。 M&Aの着手金は、これらのコストの対価として必要になります。 M&Aの専門家に依頼できること 企業価値評価 買い手候補の探索 ノンネームシート・企業概要書の作成 デューデリジェンス(DD) 条件交渉 各種契約書の作成(基本合意書・株式譲渡契約書など)etc. 関連記事 M&A仲介とは?FAとの違い、M&Aでの役割を解説! 企業価値評価のために着手金が必要 M&Aの仲介契約などを結ぶと、企業価値評価(バリュエーション)に着手してもらうことになるでしょう。 企業価値評価とは、売り手企業の価値を評価することです。 M&Aでは、対価と引き換えに会社売却をおこなうことになります。企業価値評価は、企業の現状を見える化し、磨き上げをおこない、高額売却を目指すための足がかりとなるものです。 中小企業のM&Aにおいては多くの場合、M&Aアドバイザリー会社やM&A仲介会社、公認会計士などの有資格者が、企業価値評価をおこなうことになります。 企業価値評価には、専門的な知識と経験が必要になるため、通常、手数料がかかります。 着手金を支払えば企業価値評価までおこなってくれるケースもあれば、オプションとして一定の手数料を支払って企業価値評価を依頼するというパターンもあるでしょう。 関連記事 M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 M&Aの買い手探しのために着手金が必要 M&Aの仲介契約などを結ぶと、その後、買い手探しに着手してもらうことが多いでしょう。 M&Aを成功させるためには、適切な買い手を見つけることが重要です。 M&A仲介会社は、独自のネットワークを活用して買い手候補を探してくれます。この買い手探しのためのネットワークの構築や維持には、一定のコストがかかっています。 また、実際に買い手探しのために、M&A仲介会社は、ノンネームシートや企業概要書を作成します。これらの書類には、売り手企業の魅力を伝えるため、無用な情報漏洩をしないように注意しながら、できる限り詳しい情報を載せられるよう、内容に工夫を凝らす必要があります。 このような労力が必要となるため、買い手探しに着手する段階から、着手金が必要になるケースも多いです。 関連記事 会社売却成功への道!M&A買い手探しの目的とポイントとは M&A成約までの契約処理などのため着手金が必要 M&Aの仲介契約などを結ぶと、その後、交渉や各種契約書の作成などのサポートを受けられることが多いでしょう。 M&Aアドバイザリー会社やM&A仲介会社は、売り手側または買い手側の代理人として、もしくは双方の仲立ちとしてサポートすることになります。 一般的な条項を網羅した契約書の書式なども準備してくれるケースが多いでしょう。 M&Aの仲介契約などを締結した場合、きめ細やかなサポートをうけることになるため、活動費用として着手金が必要になることも多いものです。 裏を返せば着手金無料でこれらのサービスを受けることができれば、かなりお得といえそうです。 関連記事 M&Aの契約書の種類や内容は?契約の流れに沿って解説! M&Aの着手金の注意点 M&Aの着手金は基本的に返金されない 着手金は一度支払ったら返金してもらえないため、無駄にならないように注意する必要があります。 着手金を支払う前に、そのM&A仲介会社などを利用しても大丈夫かどうかについて、もう一度検討してみましょう。 また、とりあえず相談をしてみたいというニーズであれば、無料相談を実施していたり、着手金無料のM&A仲介サービスを利用したりするほうが向いています。 注意事項 着手金を支払う前に、M&A仲介会社を吟味する 無料相談などを活用するetc. 着手金を含むM&A手数料の事前確認 M&Aアドバイザリー会社やM&A仲介会社によって、着手金の有無や金額、成功報酬との関係、支払い方法など、M&A手数料体系は異なります。 契約前に、以下の項目を必ず確認しましょう。 確認事項(一例) M&Aの実務を依頼するときにかかる手数料の内訳 着手金や成功報酬などの金額 支払い時期や支払い方法etc. M&Aの着手金でよくある質問 Q1. M&Aで必要になる手数料は? 着手金のほかに、中間報酬、成功報酬、月額報酬などがあります。 M&A仲介会社ごとに報酬体系は異なるため、契約前に必ず確認するようにしてください。 中間報酬の概要・目安 中間報酬は、M&Aの交渉中に基本合意を締結した際に、支払う手数料です。 M&Aが成約した場合に支払う成功報酬の10%~30%程度に設定されていることが多い印象です。 ただしその後、M&Aが成約に至らなかった場合でも、返金してもらえないのが通常です。 成功報酬の概要・目安 成功報酬は、M&Aが完全に成約に至った場合に、支払う手数料です。 取引金額をもとにレーマン方式という方法で、成功報酬が算出されることも多いでしょう。 取引金額が5000万円までの部分は10%、5000万円から1億円までの部分は5%、1億円から5億円までは4%など、各段階に応じて成功報酬の手数料率が定まっているのがレーマン方式です。 月額報酬の概要・目安 月額報酬は、M&Aの買い手探しなどを仲介会社に依頼した場合に、月ごとに支払う手数料です。 関連記事 M&A仲介手数料の相場はいくら?誰が払う? Q2. M&Aの流れを教えてください M&Aのおおまかな流れについては、以下のようなものになります。 M&Aの検討・準備段階→交渉段階→クロージングの段階の3段階を経て、M&A成立となります。 関連記事 会社売却の流れを解説!手続きや手順の注意点は? Q3. 成功報酬のみでM&Aを進められる? 完全成功報酬制の場合、M&Aの着手金などの手数料は不要です。 M&Aが成約した段階ではじめて、成功報酬という手数料が発生します。 M&Aが成約に至らなければ、手数料を支払わなくて済みます。 関連記事 M&Aの完全成功報酬はお得?相場・メリット・デメリットなどを解説 Q4. M&Aの着手金無料のメリットは? M&Aの着手金が無料の場合、初期費用をおさえられるというメリットがあります。 また、M&Aが成約に至らなければ費用はかからないという点も、着手金無料のメリットといえます。 手数料無料のメリット 初期費用をおさえられる M&Aが成約に至らなければ費用はかからないetc. Q5. M&Aの着手金無料のデメリットは? M&Aの着手金が無料の場合のデメリットは、着手金が無料である分、成功報酬が高くなる可能性があることです。 また、すべての専門家が着手金無料で対応してくれるわけではありません。 そのため、着手金無料にこだわることで、M&A実務を依頼できる専門家の選択肢が限られるおそれがある点も、デメリットといえるでしょう。 手数料無料のデメリット 成功報酬が高くなる可能性 M&Aを依頼できる専門家が限られるおそれetc. まとめ M&Aの着手金は、M&Aの専門家に、実務を依頼する際に支払う手数料のことです。 依頼するM&Aの仲介会社やアドバイザリーによって、手数料の料金体系が異なります。 M&Aの着手金が無料になるかどうかは、依頼先によって異なります。 着手金無料だからお得、有料だから損とは一概には言えません。しっかりと情報収集を行い、自分に合ったM&A仲介会社を選ぶことが重要です。 --- ### M&Aの価格相場は?いくらで売れる?価格の決定要因と目安について - Published: 2024-02-16 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/manda/11504 - Categories: 会社売却の費用, 企業価値, 会社売却の流れ, 会社売却の相場 M&Aの価格相場は?いくらで売れる?価格決定の要因は?この記事では、M&Aの価格相場、計算方法、売り手が高額でM&Aをおこなうための対策などについて、紹介しています。現在、M&Aをご検討中の中小企業の経営者の方など、是非ご参考になさってください。 M&Aの価格相場はある? 自分の会社はいくらで売れる?目安は? 価格は何で決まる?相場を動かす要因は? M&Aの価格相場は、売り手、買い手の双方が重大な関心を寄せるものです。 買い手には「M&Aの買収価格をおさえたい」という思惑がある一方、売り手側は「相場価格を上回る高額で売却したい」と思うものでしょう。 M&Aの価格相場の算出方法は一律ではありません。いくらで売れるのか、その目安を知るには、様々な観点から検討する必要があります。 いまやM&Aは中小企業の事業承継における一つの重要な選択肢となっています。 この記事では、M&Aの価格相場の算出方法や、相場価格に影響する要素などについて解説していきますので、事業承継をご検討中の経営者の方など、ぜひ最後までご覧ください。 M&Aの価格相場は?価格の決め方は? M&Aの価格相場とは? M&Aとは、「Mergers and Acquisitions」(合併と買収)の略語です。 M&Aが成立すれば、買い手側は、売り手側に対して、対価を渡すことになります。このM&Aの対価が、譲渡価格、買収価格などといわれるものです。 M&Aの価格相場を求めるには、様々な要素を考慮しなければなりません。 いくらで売れるのかは、一概には言えませんが、数ある要素や計算方法を組み合わせることで、一定の目安を知ることはできるでしょう。 M&Aの価格の決まり方は? M&Aの譲渡価格は、最終的には、売り手側と買い手側の交渉によって決まります。 ただ、最終的な価格決定までの道のりは長いものです。 たとえば、仲介会社をとおしてM&Aをおこなう場合は通常、まずは売り手側がノンネームシートにおいて、名前をふせつつ、企業の概要や希望の売却価格を提示します。 買収を検討中の企業は、その情報を参考にしながら、M&Aの交渉に応じるか検討します。この段階で、買い手側としても希望の買収価額(譲渡価格)があるものでしょう。 そして、企業の経営陣同士の顔合わせをおこない(トップ面談)、買い手側がM&Aを前向きに考えていることを示すために、希望の買収価格などを明示して意向表明をおこないます。 買い手と売り手で意気投合できたら、その時点でのおおよその条件(M&A価格を含む)などについて合意をしておきます(基本合意)。 その後、買収監査の結果も踏まえて、最終的なM&Aの価格を双方合意の上で決定し、晴れて成約となります。 関連記事 会社売却の流れを解説!手続きや手順の注意点は? 売り手と買い手の価格相場はズレる? 売り手側から提示するM&Aの価格は、高額になる傾向があります。 一方で、買い手側には買収価格をおさえたいという思惑があるため、おさえた価格を対案として提示してくるものでしょう。 ですが通常、両者ともに、まったく根拠がないM&A価格を提示していることは考え難いものです。 売り手側のM&A価格も、買い手側の対案としての買収価格も、一般的に考慮される要素や、計算方法にのっとっていなければ、話し合いの俎上にのせることができないからです。 売り手と買い手の相場の見立てに違いがあるとすれば、重点を置く要素の違いといえるでしょう。 売り手側の対応としては、根拠にもとづく適切な反論の準備と、譲歩できるラインの設定が必要です。 関連記事 M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? M&Aの価格相場の計算方法 M&Aの売却価格の目安を知るには、実務で用いられている売却価格の算定方法により、計算をおこなう必要があります。 一般に代表的なアプローチは以下の3つになります。 M&A価格の評価方法 コストアプローチ企業の資産価値に基づいて企業価値を算出する方法(例)時価純資産法など インカムアプローチ将来の収益性に基づいて企業価値を算出する方法(例)DCF法など マーケットアプローチ類似企業の市場価値に基づいて企業価値を算出する方法。(例)類似上場会社比較法・EBITDAマルチプル法 時価純資産法 コストアプローチの一種に、時価純資産法があります。簿価純資産法もありますが、実務では、時価純資産法のほうが用いられる機会が多いでしょう。 時価純資産法とは、企業価値評価の算定方法の一種で、企業が保有する資産の時価総額から負債の時価総額を差し引いた額(純資産額)を企業価値とみなす方法です。 資産の時価総額-負債の時価総額=時価純資産額 DCF法 インカムアプローチの一種に、DCF法があります。 DCF法は、将来のフリーキャッシュフロー(FCF)を現在価値に割り引くことで、企業価値を算出する方法です。M&Aにおける企業価値評価で最もポピュラーな手法の一つです。 関連記事 企業価値評価におけるDCF法とは?株主資本コスト、加重平均資本コスト(WACC)の求め方を徹底解説! EBITDAマルチプル法 マーケットアプローチの一種に、類似上場会社比較法があります。その中でも種類はいくつかあり、実務では、EBITDAマルチプル法が用いられることが多いでしょう。 類似上場会社比較法は、類似する上場企業の財務指標を用いて、評価対象企業の企業価値を推測する方法です。 類似企業の選定には、業種、規模、成長性、収益性など様々な要素を考慮する必要があります。また、評価指標は、企業の特性に合わせて適切なものを選択する必要があります。 年倍法(年買法) 中小企業のM&A実務で多用されている計算方法として、年倍法(年買法)という企業価値の評価方法もあります。 年倍法は、M&A価格相場を知るための簡易な計算方法です。 過去の実績に基づき、売上高や利益に一定の倍率をかけることで、企業価値を算出します。 時価純資産額+営業利益の数年分程度=年倍法によるM&A価格 M&A価格相場は、業種や企業規模、成長性によって大きく異なりますが、年倍法を用いることで、資産価値を評価しながら事業の将来性も加味して、M&A価格の目安を把握することができます。 なお、年倍法は将来のリスクなどを評価できていないため、買収監査などによって将来のリスクが顕在化した場合は、買い手側からシビアな値引き交渉を求められることもあるでしょう。 各手法のメリット・デメリット これらのM&A価格の評価方法はどれも一長一短があります。 そのため、いずれの評価方法を採用するかよりも、複数のアプローチを組み合わせて、いかに交渉相手が納得できる金額を提示できるかがポイントです。 企業価値評価の方法 メリットデメリット時価純資産法資産価値を評価できる客観性がある将来の収益性を評価できない無形資産の評価が難しいDCF法将来の収益性を評価できる理論的な根拠がある客観性が担保できない計算が複雑で手間がかかる類似上場会社比較法実例を参考にできるので交渉しやすい比較対象が見つからない時に困る年倍法資産・収益性の両方を考慮リスクを評価できない 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! M&Aの価格相場を動かす要因 M&A価格相場を動かす要因としては、以下のような事情があげられます。 価格相場に影響する要因 売り手側の資産や収益性 M&Aスキームの違い 需要と供給のバランス 買収側のシナジー効果への期待度 売り手側の資産や収益性 M&A価格の算定では、資産や将来の収益性に着目することになります。年倍法やDCF法などの計算方法を見ればわかるように、これらの要素は必要です。 譲渡企業が保有する資産価値が高ければ高いほど、企業の価値も高くなるものでしょう。 売り手側の純資産額や、営業利益の大きさなどの指標も、M&Aの価格相場を動かす要因になります。 資産・収益性のポイント 純資産額はM&A価格の下限の目安になる 無形資産(ブランド、特許、ノウハウetc. )の評価をあげ、のれん代を高額に見積もる 有形資産(土地・建物・設備etc. )を有効活用して、企業価値を高める 営業利益の大きさは、将来の収益力を示す指標になる M&Aスキームの違い M&Aの価格相場には、スキームの違いも影響を与えます。 中小企業のM&Aにおいて、よく採用されるスキームは株式譲渡や、事業譲渡でしょう。 株式譲渡は会社全体の売却になるのに対し、事業譲渡は事業の一部のみ譲渡することができます。 買い手としては、事業譲渡の場合、譲渡対象となる資産を選ぶことができるので、負債を負うリスクを低減させることができます。売り手としては、リスクが低減する分、価値が上がるため、M&A価格をより高額に設定できる可能性があります。 このように、M&Aスキームの違いによっても、価格相場は変動するものです。 ただし、スキームは目的に合うものを選択すべきであり、手続きの難易度も変わってくるので、スキームを選択する際は十分な検討を要します。 M&Aスキームのポイント 中小企業のM&Aスキーム株式譲渡、事業譲渡が選択されることが多い M&A価格の傾向株式譲渡よりも、M&A価格が高額になる傾向がある 注意点目的にあったスキームを選択することが重要 関連記事 事業譲渡と株式譲渡の違いは?目的・メリット・デメリットなど解説 需要と供給 M&Aの価格相場には、需要と供給のバランスも影響を与えます。 同種同業の売り手が多い場合は、売り手の供給過剰となります。この場合、売り手側が他社にない強みを有しないときは、M&A価格は下がる傾向にあるでしょう。 一方、景気の良い時期や、特定の業種で成長が見込まれる場合などは売り手市場となります。売り手が優位な状況では、買収側は競争に勝ち抜くために、より高い価格を提示する必要が生じます。 複数の買い手候補と交渉することで、競争を促し、より高額な売却価格を実現するという戦略も考えられるでしょう。 買収側のシナジー効果への期待度 シナジー効果への期待度も、M&A 価格相場を動かす要因となります。 シナジー効果とは、企業同士が合併や買収によって統合することで、単独で運営していた場合よりも大きな価値を生み出す効果のことです。 買収側が、M&Aによって大きなシナジー効果を期待できる場合、高い価格を支払ってもメリットがあると判断します。 逆に、シナジー効果が期待できない場合は、価格を下げて交渉する可能性が高くなります。 売り手側としては、複数の買い手候補を見比べることで、もっともwin-winな関係を築けると思える相手を見極めることが大切です。 関連記事 M&Aで会社を高く売る方法とは?買い手へのアピールポイントを解説 より高額なM&A価格を目指すには? より高額なM&Aを目指すには、以下の3点が重要です。 売り手側が高額売却を目指すには 企業価値向上を図る 強みをアピールする 買い手探しを慎重におこなう 企業価値向上を図る M&Aの価格は、企業価値をベースに決定されます。そのため、M&Aを検討する前に、企業価値向上に向けた取り組みを行うことが重要です。 企業価値の向上を図るためには、以下のような取り組みが考えられます。 収益性の向上 財務体質の改善 成長戦略の明確化 ガバナンスの強化 これらの取り組みを通じて、企業の魅力を高め、より高額な売却価格を実現する可能性を高めていきましょう。 関連記事 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 強みをアピールする M&Aでは、自社の強みを効果的にアピールすることが重要です。 売り手企業の強みとしては、以下のようなものが考えられます。 独自の技術やノウハウ 優秀な人材 豊富な顧客基盤 強固なブランド力 これらの強みを明確に伝えることで、買収側の興味を引き出し、より高額な価格を引き出すことができます。 買い手探しを慎重に... M&A仲介会社の価格相場は? M&Aでは、自社の価値を理解し、適切な価格を提示してくれる買い手を見つけることが重要です。 行政の相談窓口や、M&A仲介会社を活用すると、買い手探しを比較的スムーズにおこなうことができるでしょう。 M&A仲介会社の価格相場 民間のM&A仲介会社の利用手数料は、会社ごとに異なります。 一般的には、M&A仲介会社の利用価格については、以下のような費用が問題になるでしょう。 相談料 着手金 中間報酬 成功報酬 月額報酬 たとえば、相談料は無料、成功報酬は少なくともM&A価格の5%程度かかるのが相場で、その他オプションを依頼するとその分、利用価格が上がっていくというパターンも多いでしょう。 また、着手金や中間報酬の要否も、会社によって異なります。 M&A仲介会社を利用する場合は、事前に料金体系をよく確認して、予算に合わせて上手に活用することがポイントです。 関連記事 M&A仲介手数料の相場はいくら?誰が払う? まとめ 売り手側が、M&Aで高額売却を実現するには、企業価値を高め、強みを効果的にアピールすることが重要です。 また、買い手探しを慎重に行い、競争入札を検討するなど、戦略的な交渉も必要となります。 M&A価格相場でお悩みの際は、M&A仲介会社の無料相談なども活用してみましょう。 --- ### 会社をたたむときの費用はいくらかかる?廃業かM&Aか迷ったら専門家に相談を - Published: 2024-02-15 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/11601 - Categories: 後継者不足, その他 会社をたたむとは、会社を解散し、清算手続きを経て廃業することです。M&A・会社売却を活用することにより、廃業を回避して企業や事業を継承できるかもしれません。 会社をたたむ際には、登記の費用や清算処理の費用などが発生します。 後継者がいなくて事業承継できない場合や、業績悪化により事業の継続が困難な場合などに、廃業するかどうか検討する方も多いでしょう。 この記事では、会社をたたむ際の費用について解説します。 会社をたたむとは 会社をたたむとは廃業のこと 会社をたたむとは、会社を解散し、清算手続きを経て廃業することを指します。 近年、高齢化などにより事業の継続が困難になるケースや、後継者が不在で事業承継できないケースなどが増えており、廃業を選択する経営者も増えてきています。 会社をたたむ際には、従業員や取引先、債権者など様々な関係者に影響を与えるため、慎重に検討する必要があります。 たとえ赤字であったとしても、業種・業界によっては、M&Aによる第三者承継が可能かもしれません。まずは企業価値評価から、専門家に相談してみるべきでしょう。 会社をたたむタイミングは? 会社をたたむタイミングとしては、以下のケースが考えられます。 事業の継続が困難になった場合売上や利益が減少、資金繰りが悪化 経営者の高齢化病気や体力の問題で経営困難、後継者不足など 新たな事業への挑戦今の会社をたたんで次の事業を始める 関連記事 後継者がいない会社は61%!跡継ぎがいない会社の実態と選択肢まとめ 会社の経営者をもうやめたいと思ったらどうする?経営をやめる場合の3つの対応方法とは 解散と清算の違い 解散と清算という2つのステップを経て、会社は廃業されます。 解散 解散とは、会社の事業をやめて債権債務を整理する「手続きに入る」ことです。廃業の準備段階ということもできます。 経営者の高齢化や後継者問題によって事業が継続できない場合や、会社法で定められている解散事由を満たした場合に、会社は解散となります。 (解散の事由) 株式会社は、次に掲げる事由によって解散する。 一 定款で定めた存続期間の満了 二 定款で定めた解散の事由の発生 三 株主総会の決議 四 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。) 五 破産手続開始の決定 六 第八百二十四条第一項又は第八百三十三条第一項の規定による解散を命ずる裁判 会社法471条 清算 清算とは、会社の資産を実際に処分し、債権者への弁済を行い、残余財産を株主に分配することです。清算人は、債権を回収したり財産の換価を行ったりして、債権者に弁済していきます。 残余財産の分配後は、清算完了の登記をもって、会社の法人格が消滅することになります。 なお、清算には「通常清算」と「特別清算」の2種類があります。 通常清算とは、解散した会社が、自力で債務を返済できる場合の清算であり、特別清算とは自力で債務を返済できない、債務超過の場合の清算です。 会社をたたむ際の主な費用 解散・清算費用 会社を解散する場合、解散登記費用や清算結了登記費用などを支払う必要があります。 解散登記費用: 3万円 清算人選任登記:9千円 清算結了登記費用: 2千円 また、解散を公告する官報へ掲載するため、広告料を支払う必要があります。 この掲載費用は、1行ごとに値段が定められており、一般的には10行で依頼して約3万5,000円必要となります。 会社をたたむ手続きは複雑なため、司法書士や弁護士などに依頼する場合もあります。専門家に依頼すると、数十万円程度の費用が発生するでしょう。 その他の費用 従業員への退職金 会社が解散する前に、従業員に支払います。各従業員の勤続年数や給与によって、退職金の額は異なります。 税金 会社を解散する場合、残余財産の確定に伴い、不動産や在庫などの有形財産を売却することで収益が発生します。この際、法人税が課されます。 同様に、消費税も清算期間中の収益に課税されることがあります。例えば、土地の売却は非課税とされる一方で、建物の売却益は課税対象となります。不動産の売買が発生する場合には、消費税の納付についても考慮しなければなりません。 なお、残余財産の確定後、資本金を超える部分についての株主への分配はみなし配当と見なされ、所得税が課されます。上場株式の源泉徴収税率は15. 315%であり、非上場株式や大口株主の場合は20. 42%となります。 会社をたたむ際の費用を抑えるポイント 会社をたたむ前に、上記の費用を把握しておくことが重要です。費用を把握しておけば、資金繰りの計画を立てやすくなります。 費用を最小限に抑えるためには、専門家に依頼せず自分で手続きを行う方法があります。 しかし、会社の解散・清算の手続きは非常に複雑です。知識が豊富でなければあまりおすすめできません。 会社をたたむ手続きの流れ 経営者の意思で会社をたたむ際には主に次のステップを進めなければなりません。 株主総会で解散の決議 解散登記・清算人選任登記 各種窓口に解散届出などを提出 債権者保護手続き 清算手続きの実行 解散事業年度確定申告 清算事業年度確定申告 清算結了登記 1. 株主総会で解散の決議 株主総会で、会社の解散を決議します。 解散の決議には、特別決議が必要です。特別決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成によって成立します(会社法309条2項)。 2. 解散登記・清算人選任登記 解散決議が行われたら、清算人を選任します。 解散決議の完了により、会社は営業を終了し、取締役は退任しています。そのため、清算業務を行う清算人を選ぶ必要があるのです。 清算人は、定款で定められているケースや、株主総会の決議によって選任されるケースが一般的です。定款に定めがなく、株主総会の選任決議がない場合は、取締役が清算人となります。 解散決議と清算人の選任が完了したら、2週間以内に、解散登記と清算人登記を行う必要があります。 解散登記と清算人登記は、本店所在地の法務局に申請します。 解散登記には、定款、株主総会議事録、清算人の就任承諾書、印鑑届出書などの書類が必要です。 3. 各種窓口に異動届出書などを提出 法務局での解散登記に加えて、税務署や都道府県税事務所、市区町村役場(東京23区内は不要)などに解散の届出をしなければいけません。 具体的には「異動届出書」などを、税務署や税事務所などの公的機関に提出します。 解散登記後の主な提出書類 異動届出書 給与支払事務所等廃止届 履歴事項全部証明書(コピー) 解散事業年度にかかる確定申告書 清算中の各事業年度における確定申告書 ※会社の状況に応じて、提出書類は変更 また、社会保険や雇用保険などに関する書類を、年金機構や労基署などに提出する必要があります。それぞれ書類の種類によって提出期限が異なるため注意してください。 社会保険雇用保険労働保険書類名健康保険厚生年金保険適用事業所全喪届雇用保険適用事業所廃止届労働保険確定保険料申告書提出先日本年金機構管轄ハローワーク労働基準監督署期限事業所を廃止した日から5日以内事業所を廃止した日の翌日から10日以内事業所を廃止した日の翌日から50日以内 4. 官報公告・個別催告 解散の届出をしたら、次は債権者に対して解散を知らせるために官報で公告します。債権者が判明している場合には、個別に催告もしなければなりません。 官報公告は、債権者の中に解散を知らない人がいる可能性があるためで、債権の回収を促すため、公告から2カ月以上の期間が経過しなければ、次の手続きには進めません。 5. 清算手続きの実行 清算の段階では、清算会社は所有する財産を売却し、その売却代金で債務を完済します。 残余財産は、全ての債務が清算された後に企業に残る資産を指します。 清算人が債務の完済を達成し、残余財産が確定すると、その後は企業の株主に残余財産を分配する必要があります。 株主に残余財産を分配する際には、原則として、これらの資産を全て現金に換金する必要があります。 非上場株式が含まれる場合や、固定資産が多い場合などでは、資産を現金化するまでに時間がかかる可能性があります。 計画的に残余財産を処理するためには、司法書士や弁護士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。 6. 解散事業年度確定申告 事業年度の開始日から解散日までの期間を解散事業年度といいます。 解散時点での財産目録と貸借対照表を清算人が作成し、解散日の翌日から起算して2カ月以内に、解散事業年度の確定申告を行います。 7. 清算事業年度確定申告 解散した会社は、解散日の翌日以降は清算会社となり、解散日の翌日から1年間を清算事業年度といいます。 事業年度が終わるごとに、清算中の所得を申告し、消費税の納付が必要になる場合があります。 確定申告書は、事業年度の終了後2カ月以内に税務署に提出します。 8. 清算結了登記 清算手続きが完了したら、株主総会で清算の承認を受けてから2週間以内に、法務局に清算結了登記を申請します。 会社をたたむ前にM&A・会社売却をすべき? 会社をたたむという選択は経営をやめる手段の一つですが、M&A・会社売却という選択肢も存在します。 会社売却とは、自社の事業や会社そのものを、他の会社や経営者に譲渡または売却することです。長年経営してきた会社を廃業することなく、事業を継続できる選択肢として注目されています。 M&A・会社売却で廃業を回避できる? 買い手企業との交渉がまとまり、M&Aが成約となった場合、廃業を回避し、企業や事業を残すことができます。 従来、廃業ではなくM&Aを選択する場合、会社の身売りであるとネガティブにとらえられてきました。 しかし、現在では、事業承継・引継ぎ支援センターや、事業承継・引継ぎ補助金など、国が中小企業のM&Aを支援する体制を強化したおかげで、会社売却の件数は増加傾向にあります。 会社売却を成功させるためには、自社の事業の成長性や収益性、将来性などを考慮し、適切な売却先を見つける必要があります。 ただし、M&A・会社売却は、必ずしも廃業を回避できる方法ではありません。 売却先が見つからず、結果的に廃業となるケースもあります。早期に動き出すことが大切です。 関連記事 会社の身売り(M&Aによる会社売却)のメリットは?注意点は3つ! 会社売却成功への道!M&A買い手探しの目的とポイントとは 会社売却のメリット・デメリット 会社売却には、以下のようなメリットとデメリットがあります。 会社売却のメリット・デメリット メリット 会社や事業を譲渡することで、廃業を回避し、事業を継続できる 企業価値評価の結果次第で、高い売却益を獲得できる デメリット 売却完了までの間、買収企業との交渉期間が必要となる M&A仲介業者などの専門家に手数料を支払う必要がある 関連記事 廃業よりもM&A会社売却の方が利益になるのか?後継者がいない場合はどちらを選択すべき? M&A仲介手数料の相場はいくら?誰が払う? 会社売却を成功させるためのポイント 会社売却を成功させるためには、以下のポイントが重要です。 M&Aの初期段階から専門家に相談する 企業価値を正しく評価する シナジー効果を意識した自社のアピール 複数の買い手候補を探す 早めの準備と専門家の活用により、スムーズな売却プロセスを進めることができます。また、企業価値を正しく評価し、複数の買収候補を探しておくことで、より良い条件での売却を目指せる可能性があります。 関連記事 会社を売る方法は?会社売却の方法・メリット・デメリットを解説 会社売却の相談先は弁護士?相談先の選び方と相談窓口一覧 会社をたたむデメリット 従業員の雇用喪失 会社をたたむと、従業員は仕事を失うことになります。 従業員の中には、転職先を見つけられずに困窮してしまう人もいる可能性があります。 事業の価値の喪失 会社をたたむと、事業の価値が失われます。事業には、ブランドやノウハウ、顧客基盤など様々な価値がありますが、会社をたたむとこれらの価値はすべて失われてしまいます。 特に、将来的に成長が見込まれる事業であった場合、その価値を失うことは大きな損失となります。 経営者自身の社会的信用低下 会社をたたむと、経営者自身の社会的信用が低下する可能性があります。会社を経営する能力や責任が問われることになり、新たな事業を立ち上げたり、融資を受けたりすることが困難になる場合もあるでしょう。 M&A・会社売却は専門家に相談しよう M&A・会社売却は、専門知識や経験が必要となる複雑な手続きです。専門家に相談することで、適切なアドバイスを受けることができ、成功確率を高めることができます。 会社をたたむ前に、M&A・会社売却という選択肢を検討し、専門家に相談することをおすすめします。 --- ### 会社を作って売りたい!ベンチャー起業でイグジットを成功させるために - Published: 2024-02-15 - Modified: 2024-03-08 - URL: https://atomfirm.com/manda/11581 - Categories: その他, 企業価値 会社を起業して、企業価値を高めてから売却することをイグジット(EXIT)といいます。立ち上げた会社を成長させ、高く評価されている段階で売却すれば、高額な売却益を手に入れることができます。 会社を起業して、企業価値を高めてから売却することをイグジット(EXIT)といいます。 イグジットには、M&A・会社売却やIPOなどの種類があります。 この記事では、会社を作って高額で売却する方法や、注意点などを解説します。 会社を作って高額で売却する方法 近年、会社員として勤めるのではなく、起業して経営者になる人々が増えています。中には、立ち上げた会社が軌道に乗ったタイミングで売却し、高額な売却益の獲得を目指している方もいます。 ここでは、起業して高額で会社売却する方法について、M&AとIPOという2つの主要な方法をご紹介します。 M&Aで売却 M&Aとは、企業同士が合併や買収を行うことです。 M&Aで会社を売却する場合、買収企業から現金や株式などの対価を受け取ることができます。 M&Aのメリットは、短期間で高額な売却益を得られる可能性があることです。一方で、買収企業はなるべく価格を抑えて買収してこようとするため、必ずしも希望通りの条件で売却できるとは限りません。 関連記事 会社を売る方法は?会社売却の方法・メリット・デメリットを解説 M&Aで会社を高く売る方法とは?買い手へのアピールポイントを解説 IPOで上場 IPOとは「Initial Public Offering」の略で、「新規公開株式」のことです。株式を証券取引所に新たに上場すると、投資家に株式を売却し、資金を調達することができます。 特定数の株式は、自分で保有したままにすることもできます。 IPOのメリットは、事業の成長資金を調達できるだけでなく、信用性が高まることで、企業価値を高められることです。 なお、IPOを成功させるためには、上場審査基準を満たさなければなりません。他にも、上場後の情報開示義務など、企業運営に負担が生じる可能性があります。 会社を作って高く売るためのポイント 経営基盤 高収益の事業は、企業価値を高める重要な要素です。起業したら、安定した収益源を確保し、利益率を向上させましょう。 経営者のビジョン、戦略、実行力も、買い手側にとって重要な判断材料となります。明確なビジョンを掲げ、優れたリーダーシップを発揮して経営してきた事実があれば、企業価値は高くなるでしょう。 また、透明性の高い財務諸表と健全な財務体質は、投資家や買収企業の信頼を得るために不可欠です。適切な会計処理を行い、資金繰りを管理することで、財務体質を改善しましょう。 関連記事 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 取引先や役員・従業員 安定した顧客基盤を持っていて、取引先と良好な関係であれば、買い手側は事業の継続性と成長性を高く評価します。顧客満足度向上や長期的な取引関係構築に努めましょう。 また、社内に在籍している優秀な人材も、事業の成長と価値向上を支える重要な要素です。人材育成や評価制度の構築、魅力的な労働環境の実現などを通じて、優秀な人材を引き留めましょう。 売却のタイミング M&A市場や業界の動向を把握し、会社価値が高く評価されるタイミングで売却することが重要です。成長期や好景気の時期は、売却価格が高くなる可能性があります。 自社の事業が成長軌道に乗っているタイミングで売却することで、良い評価を得られる可能性は高くなります。しかし、事業の成長率が緩やかになっている段階でも、イグジットを実現させている経営者は多くいます。 買い手探しや売却のタイミングで迷ったら、M&A仲介会社などの専門家に相談しましょう。 関連記事 会社売却のタイミングは?会社を売る最適な時期を逃さない方法は? 会社を作って売りたければ専門家に相談を 会社を作って高額で売却するためには、専門家のサポートを受けることが重要です。 M&Aアドバイザリーや税理士などの専門家は、売却方法の選択、バイヤーの選定、デューデリジェンス、契約締結、税務処理など、様々な面でサポートを提供してくれるでしょう。 会社を作って高額で売却することは、経済的な自由を手に入れるための有効な手段です。 M&AとIPOという2つの主要な方法を理解し、それぞれのメリットとデメリットを比較検討することが重要です。 また、売却手続きや税金対策など、事前に準備しておくべき事項も理解しておきましょう。会社を作って売りたければ、専門家に相談することをおすすめします。 --- ### 事業譲渡ののれんとは?営業権譲渡の流れや売却価格の評価方法は? - Published: 2024-02-15 - Modified: 2024-04-01 - URL: https://atomfirm.com/manda/11312 - Categories: 企業価値, 事業承継 事業譲渡とは?のれんとは?のれん・営業権の評価方法は?この記事では、事業譲渡におけるのれんの評価について、徹底解説しています。のれん代についてより高額の評価が得られれば、売却価格もより高額になります。現在、事業譲渡などをご検討中の中小企業の経営者の方など、是非ご覧ください。 事業譲渡とは?のれんとは? 営業権譲渡の流れは? のれん・営業権の評価が高額売却のポイント? この記事では、のれん(営業権)の譲渡について解説しています。 現在、中小企業の経営者で営業権譲渡をご検討中の方など、是非ご参考になさってください。 事業譲渡ののれんとは?営業権とは? のれんとは? 会計上の概念である「のれん」とは、事業の売却価格と、譲渡された事業の時価純資産額(時価総資産-時価負債)の差額を指します。 時価総資産-時価負債=時価純資産 売却価格-時価純資産=のれん より高額な売却価格を目指したい場合は、のれんを高く評価してもらう必要があります。 のれんの実質は、人材、企業文化、ブランド、ノウハウ、競争力、取引先、顧客など目に見えない経営資源のことです。 関連記事 M&Aで会社を高く売る方法とは?買い手へのアピールポイントを解説 営業権とは? 営業権は、無形資産を有する権利をいいます。 中小企業の場合、営業権とのれんは、ほぼ同義で用いられます。 本記事でも、基本的には以後、のれんと営業権を区別せずに、論じていくことにします。 のれん・営業権を評価してもらうメリット のれんや営業権を評価してもらうことは、売り手にとって大きなメリットになります。 のれんや営業権は、無形資産であるため決算書などにあらわすことができず、基本的には金額をつけることは難しいものです。 しかし、のれんや営業権の評価には目安があります。 具体的には、営業利益の数年分が、のれんの相場といわれることが多いでしょう。 そのため、のれんの評価をあげるには、営業利益をあげることや、将来にわたる収益性を評価してもらう必要があるでしょう。 のれんの評価 相場は、営業利益×数年間分 のれんの評価をあげるには、年間の営業利益をあげる のれんの評価をあげるには、将来にわたる収益性を評価してもらうetc. のれんや営業権は目に見えない資産であるからこそ、その評価の可能性は広がります。 企業価値を高めるための対策にお悩みの場合は、行政の相談窓口や、民間のM&A支援機関に相談してみるのもおすすめです。 関連記事 M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? コラム│正ののれん・負ののれんとは?~買い手側の会計・税務~ 買収価格を時価純資産額が超過した場合は「正ののれん」となります。税務上は資産調整勘定として計上されるものです。 一方、買収価格を時価純資産額が下回る場合は「負ののれん」となります。会計上、負ののれんとして計上された金額は、税務上「負債調整勘定」となります。 負債調整勘定は、退職給与負債調整勘定、短期重要負債調整勘定、差額負債調整勘定の3つに分類されます。 退職給与負債調整勘定 事業承継で承継した従業員の退職給与債務を引き受けた場合、その譲受側が、その退職給与債務の引受額に相当する金額。退職給与を支給した場合などに益金算入が可能。 短期重要負債調整勘定 事業承継で承継した事業について、将来の債務(事業譲渡からおおむね3年以内に見込まれる債務)のうち、譲受した資産総額の20%を超える金額。損失が生じた場合、3年経過した場合などに、取り崩して益金算入される。 差額負債調整勘定 会計上の負ののれんから、退職給与負債調整勘定および短期需要負債調整勘定を控除した金額。5年間にわたり均等減額(均等償却)し益金の額に算入できるため、買い手側に節税メリットにつながる。 営業権譲渡とは?方法・流れ・メリット 営業権譲渡とは? 2006年に商法と会社法が改正され、それまで営業権譲渡と呼ばれていた商行為は、事業譲渡と呼ばれるようになりました。 現在、営業権譲渡と言う場合は、広く一般用語として、多くの場合は事業運営を第三者に譲渡するという意味合いで用いられるものでしょう。 営業権譲渡の流れは? 選択するスキームにより、営業権譲渡に必要な手続きは変わります。 しかし、営業権譲渡のおおまかな流れとしては、こちらのイラストのようになります。 相談 営業権譲渡を効率良く進めるには、まずはM&A仲介会社・アドバイザーなどに相談・依頼してしまうのが早いでしょう。 営業権譲渡をより高額でおこなうためには、早期の段階で、企業価値評価をおこなうことが必須です。 企業価値評価は、M&Aの専門家が得意とする分野です。 現状を見える化できるので、企業価値を高める施策を実施して会社の魅力の磨き上げに着手しやすくなります。 また、M&Aの支援機関は、買い手候補とのマッチングをしてくれるケースも多いので、自力で譲渡先候補を探すよりもはるかに効率の良いものでしょう。 トップ面談・基本合意書 そして、企業のトップ同士の面談(TOP面談)を実施し、経営理念や将来のビジョンを共有しながら、営業権譲渡の相手を選定します。 売り手側・買い手側ともに営業権譲渡の話を進める意思を固めたら、基本合意書を締結しておくケースが多いでしょう。 デューデリジェンス・最終契約・クロージング その後、買い手側によりデューデリジェンス(買収監査)を経て、最終条件の交渉に入ります。 売り手側と買い手側で条件に合意ができたら、最終契約書を締結し、営業権譲渡を実行するための諸々の手続きを進めていきます(クロージング)。 関連記事 事業譲渡契約を解説!契約書を作る際のポイントとは? 営業権譲渡のメリット 営業権譲渡をするメリットは、事業の一部または全部を売却できることです。 営業権譲渡により、主力事業に経営資源を集中させることができ、経営を立て直すことがかなうメリットがあります。 また、営業権譲渡の売却益が入るので、資金調達ができるメリットもあります。 営業権譲渡のデメリット 営業権譲渡のデメリットには、従業員の雇用が不安定になることがあげられます。雇用を維持するためには、買い手側との交渉や手続きが必要です。 また、うまく経営統合できなければ、経営に混乱が生じ顧客が離れて行ってしまうことも考えられるでしょう。 事業譲渡の売却価格はいくら?評価方法とは 事業譲渡の売却価格(のれん代込み) 中小企業の会社売却の場合、年倍法(年買法)で売却価格を評価することが多いでしょう。 事業譲渡の場合、年倍法によれば、譲渡対象となる資産の時価純資産額に、営業利益の数年間分を加算して、売却価格を算出します。 「営業利益の数年間分」の部分がのれん・営業権にあたることになります。1年から5年間分の営業利益が、のれん代として評価されることが多い印象です。 時価の純資産額+営業利益の数年間分=売却価格 譲渡価格の評価方法まとめ 売却価格の相場については、年倍法のほかにも複数の評価方法があります。 代表的な算出方法として、大きく分けて、コストアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチの3種類があります。 売却価格の評価方法 コストアプローチ評価対象企業の資産と負債の額を基礎に売却価格を算定する方法例)時価純資産法 インカムアプローチ譲渡対象となる企業や事業が生み出す収益性を見込んで、売却価格を算定する方法例)DCF法(将来キャッシュフローを現在価値に割り引く) マーケットアプローチ類似する会社・取引などを基礎に売却価格を算定する方法例)類似会社比較法(比較対象となる上場企業を選定して、一定の倍率を乗じる) ただし、これらの算定方法のいずれかが正しく、必ず従わなければならないというルールはありません。 つまるところ、売却価格は、売り手側・買い手側の双方の合意で決まります。そのため、個別の事案にあわせて、相手を説得できる売却価格の評価方法を選ぶことが大切です。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! 企業価値評価におけるDCF法とは?株主資本コスト、加重平均資本コスト(WACC)の求め方を徹底解説! のれん・営業権の譲渡益にかかる税金 営業権の譲渡益にかかる法人税 営業の譲渡、すなわち事業譲渡をおこなう場合、その事業をおこなうための営業権、土地、建物、債権・債務などを譲渡することになります。 そのため、個別の資産ごとに、売却益や売却損が発生します。 土地や商品在庫などの場合は、時価が把握しやすいため個別に売却益と売却損を計算します。 のれん・営業権などの時価が把握し難いものについては、全体の譲渡金額から帳簿価額を控除した金額を法人税の課税対象とします。 法人税の実効税率は約34%です。 (譲渡金額-必要経費)×34%=法人税の税額 営業権の譲渡益にかかる消費税 事業譲渡の対象となる資産のすべてが、消費税の課税対象となるわけではありません。 売り手側は、消費税を納税しなければなりませんが、非課税対象の資産もあるので、注意が必要です。 のれんや営業権は課税対象となりますが、土地などは非課税対象となります。 資産課税資産のれん、営業権、有形固定資産(土地を除く)、棚卸資産(原材料・商品在庫など)etc. 非課税資産土地、有価証券(株式・小切手など)、債権(売掛金・貸付金など)etc. 以下のような事例では、消費税の課税対象は30億円(営業権5億円+有形固定資産5億円)となります。 資産土地(時価評価額):10億円営業権   :5億円有形固定資産:5億円 負債預り保証金 :2500万円 差引支払金額:19億7500万円 関連記事 会社売却の税金は?M&Aで税金を節約するには? まとめ 事業譲渡では、のれん代も売却価格として評価されます。 営業権譲渡において、より高額な売却価格を実現するには、徹底した企業価値評価をおこない、企業価値を高める努力が欠かせません。 また企業の収益力を維持できている今のうちに、機を逃さず、譲渡先候補を見つけることも重要です。 M&A支援機関では、買い手候補とのマッチング支援をおこなっているところも多いので、うまく活用できると良いでしょう。 --- ### 株式譲渡の費用とは?手数料はいくら?株式譲渡の税金も解説 - Published: 2024-02-14 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/11100 - Categories: 株式譲渡, 会社売却の税金, 会社売却の費用 株式譲渡の費用とは?手数料はいくら?株式譲渡の税金はどうなる?この記事では、株式譲渡をご検討中の方に向けて、株式譲渡にかかる費用、手数料の解説をしています。譲渡益にかかる税金についてもケース別に解説しているので、是非ご覧ください。 株式譲渡の費用とは? 株式譲渡の手数料は? 株式譲渡の税金は?費用や手数料との関係は? 株式譲渡では、どのような費用や手数料がかかるのでしょうか。 この記事では、現在、株式譲渡をご検討中の経営者の方などに向けて、株式譲渡でかかる費用・手数料を網羅的に解説しています。 ぜひ最後までお読みください。 株式譲渡の費用・手数料の概要 株式譲渡の費用・手数料とは? 株式譲渡は、会社の株式を第三者に譲渡するM&Aスキームです。株式譲渡は、中小企業の事業承継でも多用されるM&Aの手法です。 株式譲渡をおこなう場合、さまざまな費用・手数料がかかります。 たとえば、株式譲渡の譲受側(買い手側)が負担する費用としては、株式を取得するための対価などがあげられます。 一方、株式譲渡の譲渡側(売り手側)が負担する費用としては、株式譲渡を仲介する業者に支払う手数料などがあげられます。 関連記事 M&Aスキーム (手法)を比較!メリット・デメリット・手続きの違いを解説 株式譲渡の費用・手数料の注意点(譲渡側) 株式譲渡の費用・手数料について、売り手側の注意点としては以下のようなものです。 費用・手数料が高額だと利益が目減り 売り手側は株式譲渡をおこなった場合、買い手側から株式譲渡の対価を受け取ることができます。 しかし、M&Aの仲介にたずさわる業者に支払う手数料が高ければ高いほど、株式譲渡によって手にした利益は目減りしていきます。 そのため、売り手側としては、株式譲渡の仲介手数料の金額について強い関心をお持ちでしょう。 M&A仲介手数料が気になる場合は、登録無料のM&Aマッチングサイトを利用する、あるいは売り手が無料のM&A仲介会社に相談するなどの方法が考えられます。 株式譲渡の相談先について「株式譲渡の相談先はどこ?専門家ごとの特徴とメリットを紹介」の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。 所得金額に税金 株式譲渡の譲渡益には、税金がかかります。 そのため、株式譲渡による儲けがある場合、売り手側は税金をおさめなければなりません。 税金は、所得金額にかかります。 所得金額は、収入金額(譲渡価格・売却価格)から必要経費又は譲渡に要した費用等を差し引いて計算します。 収入金額-必要経費又は譲渡に要した費用等=所得金額 差し引いて計算すべき必要費用や手数料を見落としてしまったら、その分、所得金額は多くなってしまいます。 所得金額が増えれば、税金も増えるので、結果として、本来支払う必要がなかった部分を、多く納税しなければならない事態につながります。 そのため、譲渡価格を手にした売り手側は、仲介手数料以外の経費や費用についても、関心を持つ必要があるでしょう。 関連記事 非上場株式譲渡の税金とは?売却価格と税金の関係は? 株式譲渡の仲介に関する費用・手数料 証券会社の株式委託手数料(譲渡側) 上場株式等の場合、証券取引所を利用することになるので、証券会社への株式委託手数料(消費税相当額を含む)がかかります。 上場株式等 上場株式等とは、証券取引所に上場されているETF、ETNを含む株式のこと。 なお、上場株式以外の株式を一般株式という。一般株式等とは、上場株式等を除く、非上場株式や私募株式投資信託の受益権などの株式等のこと。 株式委託手数料は完全自由化されており、証券会社ごとに独自に手数料体系が定められています。 インターネット割引がきく場合や、大手のネット証券では手数料無料化によってお得に株取引ができる場合もあります。 なお、特定口座(源泉徴収あり)の場合、上場株式等の譲渡益に対する所得税、住民税の納税を簡易な納税手続きで完了することができます。 M&A支援機関の利用手数料(譲渡側) 株式譲渡によるM&Aを実施する場合、M&A支援機関を利用することもあるでしょう。 その際、無料相談ができる場合もあれば、利用手数料がかかるサービスもあります。 M&A支援機関を利用するケース 中小企業が後継者不在のためM&Aによる事業承継をするケース 大手企業がM&Aをおこなうケースetc. 中小企業の場合、譲渡制限つき非上場株式を経営者自身が保有し、会社運営の実権を握っていることが多いかもしれません。 このような非上場企業の場合、証券会社の委託手数料はかかりません。 ですが、非上場企業の株式は、証券取引所で公開されていないため、自力で株式譲渡の相手探しは難しいものでしょう。 そのため、M&Aを支援してくれるアドバイザーの力を借りるケースも多く、M&A実務の実施を依頼すれば利用手数料がかかります。 関連記事 非上場株式を譲渡するには?売却価格や手続きは? M&Aのおもな支援機関 M&Aの支援機関には、行政の公的な相談窓口があります。 また、民間のM&A仲介会社や、M&Aの実務を得意とする公認会計士・税理士・弁護士・行政書士などの士業などの専門家に、M&Aの相談をすることも多いでしょう。 M&Aの支援機関 行政の相談窓口 民間のM&A仲介会社 公認会計士 税理士 弁護士 行政書士etc. 関連記事 M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? M&A仲介会社の手数料 M&A仲介会社の場合、成功報酬については、レーマン方式を採用する業者も多いようです。 ただ、基本的には、着手金、中間報酬、成功報酬、月額報酬などの仲介手数料はM&A仲介会社ごとに決められており、どのくらいの費用がかかるのかは会社ごとに違います。 相談料正式な依頼の前の相談費用。無料相談が可能な場合も多い。 着手金M&Aの実務を依頼するときに支払う費用。完全成功報酬制の場合もある。着手金が必要な場合は数十万円から数百万円程度が相場。 中間報酬M&Aの基本合意が締結できた場合などに支払う費用。成功報酬の10%~20%程度にあたる金額を支払い、無事に成約となった場合は残額を成功報酬として支払う。百万円から五百万円程度。 成功報酬M&Aが成立した場合に支払う費用。M&Aの規模や難易度にもよるが、レーマン方式(買収金額の5%程度)を採用するM&A仲介会社も多い。 月額報酬月ごとに定額を支払う。月額顧問料、リテイナーフィーと呼ばれることもある。月に数十万から数百万程度が相場。月額報酬を不要とするM&A仲介も多い。 関連記事 M&A仲介手数料の相場はいくら?誰が払う? 公認会計士などの専門家の手数料 公認会計士、税理士、弁護士、司法書士などの費用も、所属する事務所によって料金体系が異なります。 案件の規模、依頼内容、依頼先によって、費用は変わります。そのため、依頼する前にどのくらいの費用がかかるのか、きちんと確認しておく必要があります。 専門家依頼内容公認会計士企業価値評価(バリュエーション)・M&A価格の算定、財務対策etc. 税理士バリュエーション、税務デューデリジェンスの対策、税金対策etc. 弁護士法務対策、法務デューデリジェンスの対策、契約書審査・契約書作成、M&Aスキームの検討etc. 司法書士会社の登記etc. 隅から隅までお願いしていると、いくら費用があっても足りないということもあり得るので、ポイントをつかんで依頼していくのが良いでしょう。 また、顧問契約しか受け付けていない場合などもあるので、スポットで対応してもらえるか確認する必要もあります。 株式譲渡の費用・手数料と税金(個人株主) 譲渡益から差し引く費用・手数料 所得税の対象となる所得金額は、収入金額(株式の売却価格)から必要経費又は譲渡に要した費用等を差し引くことで計算できます。 そして、その所得金額に所得税の税率をかければ、所得税額が計算できます。 (収入金額-必要経費又は株式等の譲渡に要した費用等)×所得税の税率=所得税の税額 株式等の譲渡に要した費用等 「必要経費又は株式等の譲渡に要した費用等」としてはまず、取得費(取得価額ともいう。売り手自身が株式を取得した時の価額のこと。)があげられます。 これには通常、株式そのものの価値に加え、購入手数料(消費税を含む)、購入時の名義書換料などその株式を取得するために要した費用も含まれます。 また、取得費に加え、委託手数料なども「必要経費又は株式等の譲渡に要した費用等」に含まれます。 必要経費又は株式等の譲渡に要した費用等 株式の取得費(取得価額) 株式等の譲渡のために要した委託手数料(消費税を含む)など 譲渡した株式等の取得のための借入金等の利子で、本年中の所有期間に対応する部分の金額 株式売買を内容とする投資一任契約に基づいて支払う固定報酬及び成功報酬(ただし、支払いの効果が年をまたぐなどの場合は、個々の契約内容に基づいて、費用計上の時期を判断する必要がある) 株式の取得費についての補足 売却にかかる株式を、売り手が取得した際の株式の価値(以下「取得価額」といいます。)については、以下のように考えます。 まず、株式を購入することで、株式を取得した場合は通常、取得価額は払い込んだ購入代金(1単位当たりの価額×株数)になります。 売り手が創業者の場合は、資本金額が株式の取得価額となります。 創業者を相続した相続人の場合は、創業者の取得価額を引き継ぐことになるので、資本金額が取得価額となります。 ですが、取得価額が分からない場合も当然あるでしょう。 株式の取得価額が分からない場合は、株式の売却代金の5%相当額が取得価額となります。 取得原因取得価額株式譲渡払込金額・購入代金株式会社の創業者資本金額相続*¹、遺贈*¹、贈与による株式の取得被相続人、遺贈者、贈与者の取得費を引き継ぐ取得価額が分からない場合売却代金の5%相当額 *¹ 限定承認にかかるものを除く 関連記事 相続した非上場株式の評価額は?相続税は高い?売却できる? 親の会社を相続したらどうすればいい?会社相続を相談できる窓口とは 所得税の税率 株式等の譲渡による所得金額については、「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」と「一般株式等に係る譲渡所得等の金額」に区分されます。 そして、これらは、他の所得の金額と区分して税金を計算する「申告分離課税」になるので、それぞれの所得金額に、以下の税率で税金がかかります。 株式等の譲渡所得等の税率 区分税率*¹上場株式等に係る譲渡所得等(譲渡益)20. 315%(所得税15. 315%*¹、住民税5%)一般株式等に係る譲渡所得等(譲渡益)20. 315%(所得税15. 315%*¹、住民税5%) *¹ 2024. 2. 13現在、上場株式等にかかる譲渡所得等と、一般株式等に係る譲渡所得等の税率は同じ。*² 平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額に2. 1パーセントを乗じた額を所得税と併せて申告・納付することになるため、15. 315%となる。 所得税の計算方法 以上の情報をあわせると、個人株主が株式を譲渡した場合の所得税については、以下のように計算することができます。 上場株式等、一般株式等のいずれの株式譲渡であっても、以下のような計算式で所得税を計算することができます。 {譲渡価額-(取得費+委託手数料等)}×20. 315%=所得税 株式譲渡の譲渡価額が5億円、売り手は創業者で1億円の資本金を出資しており、M&A仲介会社への委託手数料を3000万円支払ったします。 この場合、以下のような計算式となり、所得税は7516万5500円になります。 {5億円-(1億円+3000万円)}×20. 315%=7516万5500円 株式譲渡の費用・手数料と税金(法人株主) 株式譲渡をおこなった譲渡側が法人株主の場合も、基本的には同じように考えますが、税率が異なります。 法人株主の場合、株式譲渡の譲渡益には法人税がかかります。 株式譲渡の譲渡益にかかる法人税は、譲渡対価から、株式取得価額や諸経費を差し引き、法人税の実効税率を乗じて税額を計算します。 譲渡対価-(株式取得価額+諸経費)×実効税率=法人税の税額 法人の実効税率は地域などによって異なりますが、およそ34%程度が相場といえるでしょう。 まとめ 株式譲渡をおこなう場合は、ある程度の費用や手数料はつきものです。 株式譲渡による利益を最大化するには、費用や手数料をおさえる対策も必要ですが、より高額で株式売却できる方法も考えましょう。 早期に動きだすことで、買い手探しをじっくりおこなうことも可能です。 株式譲渡・会社売却でお悩みの際は、できるだけ早くM&A仲介会社に連絡を入れて、対策を実行していきましょう。 --- ### M&Aの目的とは何か?売り手買い手別のM&Aの狙いと重要性を解説 - Published: 2024-02-13 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/manda/11189 - Categories: その他 M&Aを行う目的や狙いは、会社の売り手と買い手でそれぞれ異なります。M&Aを成功させるためには、相手方の目的や狙いを把握し、効率よく手続きを進めていきましょう。 M&Aを行う目的や狙いは、会社の売り手と買い手でそれぞれ異なります。 会社売却を検討する場合には、買い手が何のために買収を希望しているのかを踏まえて、条件交渉などを行うべきでしょう。 M&A売り手の目的・狙いとは? 近年、企業の成長戦略や出口戦略の一つとして、M&Aは注目されています。 しかし、一口にM&Aと言っても、その目的や狙いは企業によって大きく異なります。 ここでは、M&Aを検討する際に重要な、売り手と買い手それぞれの目的・狙いを詳しく解説します。 後継者問題の解決(事業承継) 後継者不足や経営者の高齢化により、事業の継続が困難な場合、M&A・会社売却によって事業を第三者に承継することができます。 M&Aの市場は買い手が圧倒的に多数で、需要に供給が追い付いていない状況です。 ご自身の企業にどこまで価値がつくのか、買い取ってくれる会社があるのかと不安になることもあるもしれませんが、まずはM&A仲介会社などに相談してみてください。 関連記事 後継者がいない会社は61%!跡継ぎがいない会社の実態と選択肢まとめ 事業の整理 経営不振や事業の見直しにより、不要となった事業を売却することで、経営資源を集中させることができます。 経営を続けたい事業だけを残して、他の事業を売却する場合には、事業譲渡を行うことになります。事業譲渡は、手元に残したい事業以外を売却できる利点があるものの、従業員の転籍や取引先との契約継続に個別対応が必要となるなど、譲渡後の手間がかかる形式の会社売却でもあります。 関連記事 事業譲渡と株式譲渡の違いは?目的・メリット・デメリットなど解説 資金調達 会社売却によって、譲渡側は売却益を手にすることができます。 これは、引退後の生活資金や、新たな会社を立ち上げるための開業資金となるでしょう。 株式譲渡の場合も、事業譲渡の場合も、対価として売却益を受け取る側には税金が課せられます。税率や計算方法などについては、以下の関連記事をご確認ください。 関連記事 事業譲渡の税金は?消費税や法人税は利益の何%?お得なのは会社譲渡? 非上場株式譲渡の税金とは?売却価格と税金の関係は? M&A買い手にとっての目的・狙い M&Aの買い手は、以下のような目的・狙いを持っていることが多いです。 M&A買い手の目的・狙い 新規事業への参入 事業の拡大 経営資源の獲得 シナジー効果 自社で新規事業を立ち上げるよりも、M&Aによって既存の事業を買収することで、迅速に市場に参入することができます。 また、既存事業の規模を拡大するために、関連事業や競合企業を買収することで、市場シェアを獲得することもできるでしょう。 他にも、人材、技術、ブランド、顧客基盤などの経営資源の獲得や、シナジー効果による収益向上なども、買い手にとってのM&Aの目的・狙いといえます。 このように、M&Aは売り手と買い手それぞれにとって、多様な目的・狙いを達成するための有効な手段となります。M&Aを検討する際には、自社の状況や課題を分析した上で、具体的な目的・狙いを明確にすることが重要です。 M&Aの種類・スキーム M&Aは大きく、「狭義のM&A」と「広義のM&A」に分類されます。 狭義のM&A 狭義のM&Aとは、買収と合併を指しています。 ここでは、その中でも、M&A実務で頻繁に用いられる株式譲渡、事業譲渡、会社分割、合併の4つを解説します。 株式譲渡 株式譲渡とは、経営者や株主が保有株式を売却して、経営権を移転させるスキームです。 経営権が切り替わるだけなので、既存取引への影響や従業員への影響を最小限にできるメリットがあります。 また、個人の株式譲渡にかかる税率は20. 315%なので、売却益の約80%を手元に残しておくことができるスキームでもあります。 法人が株式譲渡を行った場合の実効税率は30%ほどとなります。 関連記事 非上場株式を譲渡するには?売却価格や手続きは? 事業譲渡 事業譲渡とは、事業の全部または一部を売却するスキームです。事業譲渡の場合は、経営権は売り手に残ったままになります。 採算の取れていない事業だけを選んで売却できる点が事業譲渡のメリットです。 しかし、事業譲渡を行う場合には、取引先との各契約を再締結したり、従業員を転籍させたりする必要があるなど、個別に対応する手間がかかります。 会社分割 会社分割とは、事業の一部または全てを切り離して、別の会社に承継するM&Aのスキームです。 会社分割が主に用いられるケースとしては、グループ企業の再編などが挙げられます。 事業譲渡と形式が似ていますが、会社分割の場合は、取引先や従業員との契約はそのまま引き継がれるため、個別の対応は必要ありません。 会社分割は、既存の会社に権利義務を引き継がせる「吸収分割」か、新しく設立した会社に引き継がせる「新設分割」に分類されます。 合併 合併とは、複数の会社が統合されるM&Aのスキームです。 既存の会社に他の会社を統合する「吸収合併」と、新しく設立した会社に全ての会社を統合する「新設合併」の二つに分かれます。 統合された会社は完全に消滅します。 合併の対価は、統合された会社から消滅会社の株主に対して支払われます。株式を交付するか、合併交付金を支払うことになります。 広義のM&A 広義のM&Aは、狭義のM&Aに業務提携、資本提携、合弁会社を含めた分類の仕方です。 業務提携とは、資本の移動を伴わずに、2つの会社が協力して業務を行うことを指します。 資本提携とは、一方の会社が提携先の会社の株式を取得したり、それぞれの会社が互いに株式を持ち寄って提携することを指します。 合弁会社とは、複数の企業が資本を出し合い協力して会社運営を行うことです。共同出資会社とも呼ばれます。 M&A売り手の注意点 M&Aは、事業の売却や経営権の移譲など、企業にとって大きな決断となります。売り手は、M&Aを成功させるために、以下の5つの点に特に注意する必要があります。 M&Aの目的・狙いを明確にする 買収候補企業を慎重に選ぶ 専門家に早い段階で相談する 従業員への説明を丁寧に行う 契約書の内容を慎重に確認する M&Aの目的・狙いを明確にする M&Aを検討する前に、まず自社がM&Aによって何を達成したいのか、その目的・狙いを明確にすることが重要です。 事業承継、資金調達、事業拡大など、M&Aには様々な目的がありますが、目的によって株式譲渡や事業譲渡など、どのような手法で会社売却を行うのかが決まるでしょう。 買収候補企業を慎重に選ぶ M&Aの目的・狙いに合致した買収候補企業を慎重に選ぶことが重要です。 買収候補企業の財務状況、事業内容、経営陣、市場環境などを詳細に調査し、自社にとって最適なパートナーを見つける必要があります。 専門家に早い段階で相談する 企業価値評価の段階や、買い手探しの段階で専門家に相談することで、スムーズにM&Aの手続きを進めていくことができます。 特に、自社の価値がどの程度かは、専門知識や複雑な計算が必要となるため、自身の概算だけで進めるのは危険です。 大まかな計算方法や企業価値の見積もりは把握しておいた方がいいですが、買い手候補とどのような条件で交渉していくべきかについては、専門家の意見を参考にすることをおすすめします。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 従業員への説明を丁寧に行う M&Aは従業員にとっても大きな不安となります。M&Aの目的や理由、今後の事業計画などを丁寧に説明し、不安を解消することが重要です。 従業員の理解と協力を得ることが、スムーズな事業統合につながります。 関連記事 M&Aで従業員はどうなる?会社売却後の社員の雇用について解説 契約書の内容を慎重に確認する M&A契約書は、M&Aの条件や権利義務などを定めた重要な書類です。契約書の内容を専門家と共に慎重に確認し、自社の利益を守る必要があります。 M&Aは、売り手にとっても大きなメリットをもたらす可能性があります。しかし、上記の注意点にしっかりと対応しなければ、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあります。 売り手は、これらの点を理解した上で、慎重にM&Aを進めていくことが重要です。 M&A買い手の注意点 M&Aは、企業にとって大きな成長機会となる一方で、様々なリスクも伴います。特に、買い手は買収後の事業運営に責任を負うため、以下の点に注意する必要があります。 買収戦略を策定する 買収対象企業のデューデリジェンスを徹底する 買収後の統合計画を準備する 企業文化の違いを理解し尊重する 買収費用を適切に管理する 買収戦略を策定する M&Aを成功させるためには、まず買収の目的を明確にし、具体的な戦略を策定することが重要です。自社の経営戦略と整合性のある買収対象企業を選び、買収後のシナジー効果を創出できるような計画を立てる必要があります。 買収対象企業のデューデリジェンスを徹底する 買収対象企業の財務状況、事業内容、市場環境、経営陣などを詳細に調査し、正確な評価を行う必要があります。デューデリジェンスを徹底し、潜在的なリスクを把握することが重要です。 買収後の統合計画を準備する 買収後の事業運営をスムーズに進めるためには、統合計画を事前に準備しておく必要があります。組織体制、人事、財務、ITシステムなど、様々な面での統合を検討する必要があります。 企業文化の違いを理解し尊重する 異なる企業文化を持つ企業を統合する場合、文化の違いによる摩擦が発生する可能性があります。相互理解を深め、それぞれの文化を尊重しながら統合を進めることが重要です。 買収費用を適切に管理する M&Aには、買収費用、デューデリジェンス費用、統合費用など、様々な費用がかかります。これらの費用を適切に管理し、買収後の財務状況を悪化させないようにする必要があります。 M&Aは、企業にとって大きな可能性を秘めた戦略です。しかし、買い手は上記の点に注意し、慎重に検討を進めることが重要です。 まとめ M&Aを成功させるためには、相手方の目的や狙いを把握し、効率よく手続きを進めていきましょう。 M&A仲介会社などの専門家に相談すれば、M&A成約実績が豊富なため、売り手企業・買い手企業の目的や狙いを踏まえたアドバイスをしてもらえます。 --- ### スモールM&Aで事業承継できるのか?中小企業を売却する方法とは - Published: 2024-02-13 - Modified: 2024-03-13 - URL: https://atomfirm.com/manda/11180 - Categories: その他, 事業承継 スモールM&Aは、近年注目を集めている中小企業向けの事業承継方法です。大規模なM&Aとは異なり、年間売上高1億円~10億円程度の小規模な企業同士の買収・売却を指します。 スモールM&Aは、近年注目を集めている中小企業向けの事業承継方法です。マイクロM&Aとも呼ばれることもあります。 事業承継は、経営者の高齢化や後継者不足により、多くの企業が直面する課題です。スモールM&Aは、事業の譲渡・継承を円滑に進め、事業の継続と成長を実現する有効な手段として期待されています。 スモールM&Aとは? 中小企業のための最適な事業承継 スモールM&Aに厳密な定義はありませんが、一般的に、大規模なM&Aとは異なり、年間売上高1億円以下の企業同士の買収・売却を指すことが多いです。 売却価格が10億円を下回るM&Aの場合も、スモールM&Aと呼ばれる場合があります。 なぜスモールM&Aが注目されるのか 中小企業の後継者不在が社会問題となり、小規模なM&Aでも多くの仲介会社やアドバイザリーなどが取り扱うようになりました。 ここでは、スモールM&Aが選択される理由、スモールM&Aのメリットなどについて解説していきます。 小規模会社でも売却相手を見つけやすい スモールM&Aは、買収のための資金が少ない企業や個人が検討する形式のM&Aです。 つまり、小規模な会社でも売却相手を広く見つけやすいといえます。 会社を起業、開業しようとするときには、高額な費用がかかります。しかし、スモールM&Aを使えば、会社員などの個人が費用をかけずに起業することができます。 他にも、スモールM&Aを行うことで、顧客や従業員などを引き継ぐことも可能です。新しい事業を起こすよりも、少ないコストと労力で事業を拡大し、事業基盤を強化できるというメリットがあります。 資金調達・出口戦略 近年、ベンチャー企業やスタートアップ企業にとって、IPO(新規上場)以外にも、M&Aによる事業売却が重要な出口戦略の一つとして認識されています。 IPOの場合は審査が厳しいですが、スモールM&Aは、事業規模や業種を問わず、幅広い企業に適用可能であり、事業売却の選択肢の一つとして検討されています。 関連記事 会社を作って売りたい!ベンチャー起業でイグジットを成功させるために 後継者問題の解決 多くの小規模企業や個人事業主は、経営者の高齢化や後継者が不足しているという課題に直面しており、事業を廃業して引退することを考える人も多くいます。 しかし、多くの経営者は自分の代で事業を終了させるのではなく、何らかの形で事業を継続させたいと望んでいます。 スモールM&A市場では後継者不足が理由で、事業の継承先を探す小規模企業が多いです。 身内に後継者がいない場合でも、スモールM&Aを利用すれば、全国から後継者候補を見つけることができます。 スモールM&Aで譲渡先が見つかれば、廃業を回避できる可能性が高くなるでしょう。 関連記事 後継者がいない会社は61%!跡継ぎがいない会社の実態と選択肢まとめ 後継者不足の解決策はM&A?後継者問題の実態は... スモールM&Aの進め方 準備:目標設定、専門家選定 まず、M&Aの目的を明確にし、目標を設定します。事業承継なのか、事業拡大なのか、シナジー効果の追求なのか、目的によって必要な手続きや準備が変わってきます。 さらに、M&Aを成功させるためには、専門家のサポートが不可欠です。M&A仲介会社、会計事務所、弁護士事務所など、自社の状況やニーズに合った専門家を選びましょう。 関連記事 M&Aの目的とは何か?売り手買い手別のM&Aの狙いと重要性を解説 買い手探し:ターゲティング、情報収集、アプローチ M&Aの目的と目標に基づき、買い手となる企業を探します。ターゲットとなる企業の規模、業種、経営理念などを明確にしましょう。 ターゲット企業を選定したら、情報収集を行います。企業の財務状況、事業内容、経営陣の考え方などを調査し、合致度を判断します。 そして、収集した情報に基づき、ターゲット企業に対してアプローチを行います。直接コンタクトを取ることができなければ、M&A仲介会社などを活用するのも有効です。 関連記事 会社売却成功への道!M&A買い手探しの目的とポイントとは 交渉:デューデリジェンス、条件交渉、契約締結 買い手候補との交渉では、デューデリジェンス(買収先企業の調査)を行い、企業価値を評価します。財務状況、法務状況、人事状況など、様々な項目を調査し、問題点を把握しましょう。 デューデリジェンスの結果に基づき、買収価格や支払い条件などの条件交渉を行います。双方が合意できる条件を見つけることが重要です。 条件交渉がまとまれば、契約締結を行います。契約書には、買収価格、支払い条件、従業員の雇用条件など、M&Aに関する全ての事項を記載する必要があります。 関連記事 M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? クロージング:PMI(買収後の統合) 契約締結後、M&Aが完了します。M&A後の統合(PMI)を円滑に進めるためには、事前にしっかりと計画を立てておくことが重要です。 PMIでは、企業文化の融合、人事制度の統合、経営体制の構築など、様々な課題に取り組む必要があります。 スモールM&Aを希望するなら専門家に相談を スモールM&Aは、小規模会社のM&Aではありますが、買い手探しや企業価値評価など、専門的な知識・ノウハウがあった方が効率的に進みます。 スモールM&Aを検討する場合は、M&A仲介会社や、M&Aアドバイザリーなどに相談してみましょう。 --- ### 会社を売る方法は?会社売却の方法・メリット・デメリットを解説 - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-04-01 - URL: https://atomfirm.com/manda/8833 - Categories: 会社売却の流れ 会社を売る方法は?会社売却のメリットは?デメリットはある?株式譲渡と事業譲渡の違いは?この記事では、会社売却をご検討中の方に向けて会社売却の方法について徹底解説しています。 会社を売る方法は? 会社を売るにはどうやって買い手を探すの? 会社売却のデメリット・メリットは? 会社を売る方法には、会社そのものを売却する株式譲渡と、ある事業のみを売却する事業譲渡などがあります。 会社を売るきっかけには、早期リタイア、会社経営の行き詰まりなどがありますが、譲渡益があればその後の生活資金や借入金の返済にあてられるメリットがあります。 イグジット戦略に重点をおいたベンチャー企業も増えてきており、利益を手にする方法として、会社売却をするという選択も珍しくはありません。 また、第三者に事業承継できることも、会社売却のメリットです。その人の経営手腕にもよりますが、第三者に会社を売ることで、いままで育ててきた会社そのものや事業を後世に残せる可能性があります。 この記事では、M&Aにおける会社売却の方法(株式譲渡・事業譲渡)に触れつつ、会社売却のメリット・デメリットについても解説していきます。 ぜひ最後までご覧ください。 会社を売る方法は? 会社を売る方法①株式譲渡 会社を売る方法のひとつとして、株式譲渡というM&Aの手法が考えられます。株式譲渡は、会社の株式を譲渡することにより、会社の経営権を移すM&Aの方法です。 株主は会社のオーナーなので、株式を第三者に移転させれば、会社の経営権もその第三者にうつることになります。 株式譲渡によって会社を売るには、会社法などに規定されている株式譲渡に関する手続きをおこなうだけでよく、廃業の手続きなどは必要ありません。 会社経営から完全に離れるために会社売却を検討されている場合は、株式譲渡をおこなうのがよいでしょう。 関連記事 株式譲渡の手続き・流れを徹底解説!会社の株式譲渡で必要な書類と注意点とは 会社を売る方法②事業譲渡 事業譲渡は、会社全体ではなく、ある事業のみを売却するという会社売却の方法です。 こちらも会社売却をするための、M&Aの手法のひとつです。 事業譲渡の場合、不採算事業と採算部門を切り離すなど、売却したい事業のみを譲渡することも可能です。採算がとれている事業のみの売却であれば、買い手が見つかる可能性があがるでしょう。 事業譲渡による会社売却は、主力事業に注力して経営再建をおこなう場合に適する手法といえます。 会社運営から離れたい場合は、事業譲渡をおこなったあと、廃業の手続きもおこなう必要があります。 関連記事 事業譲渡手続きの流れは?会社譲渡の方法や手順を知ってスケジュールを立てよう 会社売却の方法は株式譲渡がおすすめ? 中小企業の会社売却では、手続きの負担が少ない「株式譲渡」がおすすめです。 事業譲渡の手続きは大変? 事業譲渡というのは、法律上、会社が第三者に事業を譲渡するというスキームになります。 そのため、事業譲渡の譲渡益は会社に帰属します。事業売却の売却益は、会社経営者個人に直接入るわけではありません。 事業譲渡による譲渡益を経営者個人が手にするには、配当金や役員退職金として、自身に利益が入るスキームの実行が別途必要になります。 そして、配当金や役員退職金として利益を受け取る場合、税金がかかります。 すでに会社が事業譲渡の譲渡益を手にした時点で、課税されているのに、さらに課税されることになります。 また、会社運営から離れたいと思っている場合は、事業譲渡に関連する手続きのほかに、廃業に関する手続きもおこなわなければなりません。 株式譲渡の手続きは簡単? 一方、株式売却であれば、所定の手続きにしたがって株式を売却するだけで、譲渡益を得ることができ、会社の廃業手続きをおこなわずとも経営から退くことができます。 会社売却の方法(対比) 事業譲渡株式譲渡譲渡益の帰属会社株主個人税金会社が納税。譲渡益を社長個人に支給する場合は、社長も納税。個人が納税。廃業の手続き 必要不要 関連記事 個人事業主の廃業のデメリットは?廃業手続きと廃業以外の選択肢まとめ 会社売却のメリット メリット①事業承継が可能(後継者不在) 会社を売却するメリットの一つは、後継者不在という問題を解決できることです。 中小企業の後継者不在 中小企業では後継者不在の問題が生じやすいものです。 息子や娘が稼業を継がないなどの事情で後継者が見つからない場合は、廃業するという選択肢が頭をよぎると思います。 しかし今まで苦労して大きく育ててきた会社を廃業にするというのは、とても苦しい決断でしょう。 廃業を回避するには、誰かに事業を承継してもらう必要があります。 そこで出てくる選択肢の一つが、会社売却です。 経営手腕のある第三者に、会社売却ができれば、会社の未来を託すことができます。 相続による後継者不在 また、突然の不幸で親の会社を相続したものの、自身では家業を継げないといった場合にも、会社売却という選択肢は有用です。 親の会社を自分がたたむ決意ができない場合は、今後の存続の可能性にかけて第三者に会社売却をおこなうという選択肢が現実的でしょう。 関連記事 後継者不足の解決策はM&A?後継者問題の実態は... メリット②従業員社員の雇用を確保できる 廃業という選択肢をとった場合、今まで会社に尽くしてきてくれた従業員を解雇せざるを得なくなってしまうでしょう。 しかし会社売却をおこない、第三者に事業承継をすれば、従業員の雇用を維持できる可能性が高くなります。 買い手にとっても、既存の従業員のスキルやノウハウを引き継ぐことは、事業の効率化や収益拡大を図るために、メリットがあるものです。 メリット③個人保証・連帯保証から解放 会社を設立する際、中小企業ではとくに経営者が個人保証をしたり、会社の連帯保証人になっていたりするケースが多いものです。 万が一、会社が倒産してしまえば、借入金の返済義務を負うことになります。またご自身が他界した後は、相続人であるご家族にリスクの高い保証債務を負わせることになってしまいます。 保証債務から解放されて今後の人生を送るには、まずはご自身が元気なうちに会社のオーナーとしての地位を第三者に譲る決意を固めることです。そしてその上で、買い手や保証会社などと交渉を進めていく必要があります。 メリット④廃業手続き不要で会社運営から解放 会社を廃業すると、税務署や都道府県税事務所に廃業届を提出する必要があります。また、従業員の退職手続きや、残っている資産の処分なども必要になります。 しかし会社売却をおこなえば、これらの会社の解散手続きをおこなう必要はありません。 たとえば、株式譲渡による会社売却に必要な手続きは、株主総会決議や株主名簿の書き換えなどです。株式譲渡をおこなえば、廃業手続きとは比べものにならないくらい簡便な手続きで、会社運営からの解放が実現します。 メリット⑤売却益を今後の生活資金に 会社を売却した際の売却益の使い道は様々です。 売却益を新規事業にあてたり、事業再生をめざして経営資源を主力事業に集約するために会社売却がおこなわれることもあります。 また、早期リタイアにともない、新たなことにチャレンジするための元手とすることができるでしょう。 退職金や年金だけでは不足するおそれがありますが、多額の売却益があれば生活費を補うこともできます。 関連記事 会社売却後の人生はどうなる?会社売却で経営者・社員等のその後は? 会社売却のデメリット デメリット①競業避止義務を負う 会社売却により、売り手企業は、売却した事業と競合するような事業を一定期間行わないという競業避止義務を負うことがあります。 競業避止義務は、会社売却において、買い手企業の利益を守るために設けられることが多い条項です。 売り手企業にとっては、事業を展開する上で制約となる可能性があります。 デメリット②ロックアップ ロックアップとは、売り手企業の経営陣や従業員が、一定期間会社を退職しないという義務を負うことです。 ロックアップは、買い手企業の経営統合を円滑に進めるために設けられています。 売り手企業の経営陣や従業員にとっては、自由な意思決定を制限される可能性があります。 デメリット③従業員の冷遇 会社売却により、譲渡対象会社の社員と譲受会社の社員の間に、軋轢が生じる可能性があります。 これは、両社の社員の価値観や考え方が異なることや、給与や待遇などの待遇面で差が生じることが原因として考えられます。 事業承継後に、譲渡対象会社の社員が左遷される、減給されるといった待遇をうけることもよくあります。 また譲渡対象会社のなかでは、重要なポジションだった社員が冷遇されることもよくあることです。 このような軋轢をおこさないためには、会社売却をおこなう際、事業承継の後のことにも思いを馳せる必要があるでしょう。社員が不測の事態に陥らないようにするためには、その後の待遇について、買い手企業と交渉をおこなう必要があります。 関連記事 M&Aで従業員はどうなる?会社売却後の社員の雇用について解説 デメリット④会社売却の方法が難しい 会社売却では、まずは会社売却できる相手を探さなければなりません。そもそも、買い手を見つける段階でつまずいてしまうケースも多々あります。 企業価値が下がらないうちに、早期に買い手候補を見つける必要があります。 買い手が見つかったあとも、成約・クロージングまで気を抜くことは出来ません。 売却価格の算定、交渉、その他諸条件の交渉など、会社売却はステップが進むにつれて、さらに忙しくなります。 そして流れのなかで、会社法などで必要とされる手続きを踏み、不備の無いM&A契約書の作成などもおこなう必要があります。 会社売却までの道のり(一例) 買い手が見つからない 売却価格の算定がむずかしい 必要な手続きが分からない 会社売却の条件がまとまらない 契約書の準備が大変・・・ このように会社売却までの道のりでは、突破しなければ関門がいくつもあります。 そのため、適切なスケジュール管理や、難しい法的手続きをサポートしてくれるパートナーも必要です。 M&A仲介が多用される理由としても、ひとりで会社売却を進めるには難しい面が多いためでしょう。 関連記事 会社売却成功への道!M&A買い手探しの目的とポイントとは 会社はいくらで売れる?会社売却価格の計算方法、相場を解説 M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? デメリット⑤売却後に喪失感 会社売却により、経営者は会社を手放すこととなります。そのため、経営者や従業員に喪失感や不安感が生じる可能性があります。 これは、経営者にとって会社は、単なる事業体ではなく、人生の一部でもあるからです。 しかし、経営不振で先細りが目に見えているようなケースでは、買い手がいなくなる前に新しい一歩を踏み出す必要があるでしょう。 本当に会社の存在自体がなくなってしまうのと、会社を第三者に譲って手放すのとでは、喪失感の大きさが桁違いです。 いっときの感情に流されず、タイミングを逃さずに会社売却をおこなう決断が求められます。 会社を売るにはどんな手続きが必要? 会社売却の手続きの流れ 買い手探し~交渉・最終契約 会社売却では、まずは会社売却の候補先を見つける必要があります。 その後、トップ面談(TOP面談)などをおこない、基本合意を締結します。 そして、買い手側企業が、売り手側企業の財務や法務など、経営状態について買収監査(デューデリジェンス・DD)をおこないます。 その後、売り手の希望売却価格や、DDの結果などを踏まえつつ、最終条件交渉に進みます。 そして条件交渉がうまくまとまれば、最終契約書にサインをして、M&Aは成約です。 関連記事 M&Aのデューデリジェンスとは?調査費用は?事業譲渡はどうなる? 最終契約・クロージング 成約後はクロージングの段階にはいります。 最終合意書に記載された内容を実現するために、売り手も買い手も諸々の手続きを実行していきます。 なお、M&Aは成約に至ればそれで終わりというものではありません。 売り手側企業と買い手側企業のより良い統合ができるよう努力していく必要があります(ポストマージャーインテグレーション・PMI)。 買収側だけではなく、譲渡企業としても、可能な限り協力すべきでしょう。 関連記事 M&AのPMIとは?PMIの手順は?売り手が協力すべきことは? 会社売却の流れを解説!手続きや手順の注意点は? M&Aの契約書の種類や内容は?契約の流れに沿って解説! 会社の企業価値を分析することは必須 会社を売却する際には、まず自社の企業価値を分析することが必須です。 企業価値は、将来にわたって得られる利益の現在価値と定義されており、売却価格を決定する重要な要素となります。 企業価値を分析する際には、売上高などの項目を検討します。 企業価値の分析要素(一例) 売上高 利益 資産 人材 ブランド力 技術力 営業力 将来性 これらの項目を分析することで、自社の強みや弱み、潜在的な価値を把握することができます。 赤字がある場合は、黒字転換できる展望なども整理しておくことも大切です。 なお企業価値の相場をだすための計算方法もあります。 資産・負債・営業利益・経営権等を参考にしながら算出する「年買法」、キャッシュフローに着目する「DCF法」、同種・同規模の市場に着目する「類似比準方式」など、企業価値の計算方法は様々です。 これら計算方法を組み合わせつつ、説得力ある売却価格を検討することも大切です。 企業価値の分析結果については、ノンネームシート(NN)や企業概要書(IM)に適切な表現になおして落とし込んだり、TOP面談や最終条件交渉の場におけるアピールに用いたりします。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 会社を売るには何が大切?ポイントは? シナジー効果を意識する 会社を売るには、会社の買収によって高いシナジー効果が生まれると思ってもらうことが重要です。 シナジー効果とは、2つの企業が合併や買収によって、単独では実現できなかった新たな価値を創出する効果のことです。 高いシナジー効果が生まれると思ってもらうには、事業内容の親和性などの項目がポイントになるでしょう。 シナジー効果の指標(一例) 事業内容の親和性 顧客層の重複 技術やノウハウの補完性 経営資源の共有 売却先の候補となる企業の意向表明やTOP面談において、買い手がどのようなポイントを重視しているかを把握して、自社の強みをうまくアピールしていきましょう。 M&A仲介で会社売却先を効率よく探す 会社を売却する際には、M&A仲介を利用することで、効率的に売却先を探すことができます。M&A仲介会社は、売り手企業のニーズに合わせて、買い手企業を探し出し、売却を支援します。 M&A仲介を利用することで、以下のメリットがあります。 M&A仲介のメリット(一例) 会社売却の候補先を効率的に探せる 会社売却価格の算出について相談できる 会社売却の手続き・流れを教えてくれる 合意書等の書類を準備してくれる 所得税・住民税・法人税・消費税等の会社売却にかかる税金を相談できる M&A仲介会社によって、対応できる内容は様々です。 M&A仲介を利用する場合、複数の会社を比較検討して、信頼できる会社を選ぶことが重要です。 関連記事 M&Aの失敗事例は約7割?M&Aの難しい点とは?実例は? 会社を売るにはどんなM&A仲介がある? M&A仲介には、様々な種類があります。 自社の状況や、希望などに応じて、マッチする仲介業者を選びましょう。 片手取引とは?注意点は? 買い手もしくは売り手の片方だけを、支援する形式の仲介を片手取引といいます。 買い手探し・企業価値の評価から詳細条件の交渉段階に至るまで全行程にわたって、専属アドバイザリーとして、どちらかの当事者に関与するのです。 片手取引の注意点としては、M&A仲介手数料が高額になりやすいということです。M&A仲介会社の手間がかかる分、それだけ仲介手数料も増える傾向があります。 両手取引とは?注意点は? 売り手・買い手の両方を支援する形式の仲介を両手取引といいます。 両手取引の場合、売り手側の企業価値の評価や、買い手側のデューデリジェンスなど、同じ仲介会社が担当することで、交渉の折り合いをつけやすい側面はあるでしょう。 しかしその一方で、両手取引の場合、最終契約の締結に至れば、両当事者から成功報酬がもらえるという関係性があります。 そのため、売り手の希望する条件に沿わないケースでも、仲介会社がなるべく早く成約に持っていこうとする懸念があるともいわれています。 マッチングプラットフォーム型 M&Aの仲介では、片手取引、両手取引のほかにも、プラットフォームの提供に重点をおく仲介方法もあります。 M&Aを検討している売り手と買い手のマッチングのためのプラットフォームを提供し、その後の基本的な手続きのサポートをおこなうという仲介方法です。 ご自身で相談できる顧問税理士、公認会計士、弁護士などがいるケースでは、マッチング型のM&A仲介でも足りるケースが多いでしょう。 マッチング型のM&A仲介では、通常、片手取引、両手取引の場合に比べ、仲介手数料をおさえられるため、この点も魅力的です。 関連記事 M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? まとめ 会社を売るには、まずはM&Aの手法を選択し、買い手を探して、売却価格などの交渉をおこなうという過程や、所定の適切な手続きが必須です。 しかし、これらのM&A実務については、よく分からないという方も多いのではないでしょうか。 そのような場合は、M&A仲介会社の利用を検討してみてください。 ただしM&A仲介会社の手数料は、サポート内容が手厚くなればなるほど、高額になっていきます。 自社に顧問税理士がいる場合などは、基本的なサポートのみで足り、仲介手数料を押さえられる場合もあります。 会社売却を成功させるには、ご自身のおかれた状況に合わせてM&A仲介業者を選ぶことも大切です。 --- ### どんな会社売却や事業売却が儲かる?相場やメリット徹底解説 - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-04-03 - URL: https://atomfirm.com/manda/8691 - Categories: 会社売却の相場 どんな会社売却・事業売却が儲かる?相場やメリットは?会社売却をご検討中の方必見!儲かるのは市場の需要…などの要因が影響します。儲かる以外のメリットもあれば、注意点もあります。会社売却・事業売却には良きパートナーが必要です。 会社売却は儲かるのでしょうか? 事業売却や株式売却で利益をあげて、新規事業や老後資金にあてようと考えている方も多いと思います。 また「相続で引き継いだ会社の運営が困難なので、会社売却をしたい」、「せっかく家族が大きくした会社なので、高額で売りたい」などとお考えの方もいるでしょう。 この記事では、会社売却でいくら儲かるのかに着目して、相場と企業価値の評価方法、会社売却のメリットなどについて解説していきます。 会社売却で儲かるためには、まずは評価方法を知ることが大切です。ぜひ最後までご覧ください。 会社売却や事業売却で儲かる要因は? 会社売却で儲かる要因は? 会社売却や事業売却が儲かるかどうかは、様々な要因に依存します。 会社売却や事業売却の前に、自社の評価を上げるにはどうしたらよいのでしょうか。 企業の価値の評価では、市場の需要と供給、業界の成熟度・将来性、企業の財務状況・経営の安定などの要因が総合的に考慮されます。 企業価値を高める要因が多ければ多いほど、会社売却や事業売却で儲かる可能性を高めることができるでしょう。 儲かる理由は市場の需要と供給 市場での需要が高ければ、多くの売却益が期待できます。 しかし供給過剰の場合は、価格競争が激しくなり、利益が減少する可能性があります。 買い手が事業を拡大したいと思っているのであれば、多くの店舗を有する会社が売却しやすいでしょうが、同じ条件の売り手が多ければ多いほど、買い手優位になってしまいます。 儲かるかどうか、より高い売却価格を設定できるか以前に、買い手に選ばれないというリスクがあるでしょう。 供給過剰の場合は、他社との差異化によって、買い手候補に強みをアピールすることが重要です。 たとえば近年、印刷業界は供給過剰となっていますが、同業者の下請けではなく官公庁からの直受けが多い、特殊な印刷技術があるなど、他の企業に負けない強みがあれば、会社売却が成功しやすいといえるでしょう。 儲かる理由は業界の成熟度・将来性 成長段階にある新興産業は、企業価値を高く評価してもらえる傾向があります。そして、将来性の有無も売却益に影響を及ぼすといえます。 たとえば、IT関連事業であれば、現在成長段階にある業界であり、他の業種とのシナジー効果も生まれやすいため、企業価値を高く評価してもらえる傾向が強いでしょう。 一方、成熟した業界では、価格競争が激しくなりやすいです。成熟期にある業界では、企業価値が下がらないうちに売却に乗り出すことが必要となります。 たとえばドラッグストア・調剤薬局などは成熟期をむかえていますが、現在、シェア拡大やプライベートブランドの展開などを目的とする業界再編が活発です。 経営基盤を強化したり、後継者問題を解決したりするには、機を逃さずに、自社の強みをうまくアピールして、積極的に買い手を探す必要があります。 儲かる理由は企業の財務状況・経営の安定 企業の財務状況も重要です。健全な財務状況や持続可能な収益性があれば、売却価格が高額になる可能性が高まります。 たとえば売上が5億円以上、営業利益が5000万円以上、赤字なしといった場合は、経営が安定しているといえ、会社売却の買い手がつきやすいといえるでしょう。 会社売却は儲かる?事業売却の相場は? 上場株式を売却すると儲かる?相場は? 企業価値評価の方法は様々です。 上場株式の場合、株式市場で時価が付けられています。 そのため上場株式の譲渡価額は、市場の時価×株式数という計算方法で算出することができます。 上場株式の譲渡益については、譲渡価額-取得費という計算式で算出します。 市場取引相場がない会社売却・事業売却はいくら儲かる? 非上場株式の場合は、市場取引がないため、純資産や類似業種の市場価額、配当額などを参考に譲渡価額を計算する手法があります。それぞれコストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチなどの評価手法があります。 企業価値の3つの評価方法 コストアプローチ資産や負債に着目した算定手法例)純資産法、年買法  会社の売却金額=純資産+営業利益の3~5年分 マーケットアプローチ事業の類似するマーケットに着目した算定手法例)EBITDAマルチプル法  株価=EV+現預金-有利子負債 インカムアプローチ収益性に着目した算定手法例)DCF法  将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を算出 一番儲かる会社売却価格の計算方法 コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチのうち、いずれか必ずひとつの方法で算定しなければならないという決まりはありません。 実務で多用される傾向があるのは、純資産をもとにする年買法(時価純資産+営業利益の3年~5年分)です。しかし、その他のアプローチによってより儲かる売却価格を設定できるのであれば、チャレンジしてみてもよいでしょう。 実際に売却価格をつめるのは、買い手候補が見つかり、DDなどを経て詳細な条件交渉をおこなう段階になります。 買い手候補を募集している現段階では、いずれかの計算方法を採用しながら、ある程度相場を意識しつつ、買い手が興味を失わない程度に売却価格を設定しておくのが得策でしょう。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! 儲かるだけではない... 会社売却のメリットは? 会社売却のメリットは人それぞれ 会社売却で得られるメリットは、人それぞれでしょう。 会社売却のメリット 売却益の活用老後資金、新規事業、借金返済にあてられる 事業の成長シナジー効果で事業が成長・主力事業に注力 個人保証からの解放 売却益の活用 会社売却をすることで、経営者は売却益を獲得することが出来れば、老後資金の心配なく早期リタイアができるでしょう。 また、会社売却の売却益を、新規事業立ち上げの資金として活用する経営者もいます。 ほかにも、会社売却の売却益を獲得できれば、負債の返済にあてることも可能になります。 事業の成長 「自身ではこれ以上、会社を成長させることが難しい」と判断した場合、会社の清算手続きをおこない、廃業するという選択肢もあります。しかし、思い入れのある会社・事業を消滅させてしまうのは、大変心苦しいものです。 こういった場合にも、会社売却や事業売却といったM&Aの手法を実行するメリットがあります。 シナジー効果が高い相手とのM&Aが成立すれば、事業の存続がかない、ひいては買い手によって新たな価値を創造してもらえる可能性があります。 また、会社売却・事業売却をおこなうことで、大切な経営資源を主力事業に集中させることもできるでしょう。 個人保証からの解放 会社の創業者は、会社の連帯保証人になっていることが多いものです。しかし、個人保証からの解放を望む経営者も多くいるものです。 この場合、会社売却の実行が、保証人の地位から解放されるための足がかりとなるかもしれません。 将来の相続にそなえて、我が子に会社運営や保証の重責を負わせたくないと思う経営者が、会社売却に踏み切るケースもあるでしょう。 不採算事業も売却できる?儲かる? 業績悪化が著しい不採算事業を売却することは難しいものです。しかしケースによっては、多少の赤字があっても、他の企業にない強みや将来性がある場合には、会社売却・事業売却ができる可能性があります。 会社売却・事業売却ができるかどうかは、買い手が買いたいと思うような「強み」があるかどうかが重要です。買い手はビジネスの一環として、シナジー効果が享受でき、事業拡大を目指せる可能性があれば、売却に応じてくれるでしょう。 ただし、不採算事業の売却ではタイミングを逃さないことが、特に重要です。 理想的な買い手があらわれた際に、すぐにマッチングできるように、他社にない強みを確立したり、赤字の理由や黒字化の展望などを説明できるようにしておきましょう。 会社売却で後継者問題や社員の雇用確保を解決 会社売却や事業譲渡は、儲かるだけがメリットではありません。 同族経営の場合は、子どもが後を継がないことで会社をたたむという選択肢が現実味を帯びるケースもあるでしょう。 その際、「ここまで育てた会社を廃業するのはもったいない」と感じる場合や、「社員の雇用を維持して生活を守りたい」とお考えの場合は、会社売却を検討してみるのがおすすめです。 会社売却をおこなえば、買い手の経営手腕にもよりますが、その後も会社そのもの、事業そのものを存続させられる可能性はあります。また、社員の雇用も維持できる可能性もあります。 ただし、社員の雇用を維持するには、会社売却・事業売却の詳細条件を交渉するなかで、社員の処遇についても交渉をする必要があります。 事業を引き継ぐのであれば、ノウハウに精通する人材は非常に重要な存在です。買い手との条件交渉では、その点を十分に理解してもらうことも大切です。 関連記事 M&Aで従業員はどうなる?会社売却後の社員の雇用について解説 会社売却・事業売却のデメリット 儲かるとは限らない?会社売却・事業売却のデメリット コストアプローチ等の手法にのっとり、会社売却価格を設定していたとしても、デューデリジェンス後の最終条件交渉で買いたたかれてしまうというケースもあります。 具体的な交渉の場面で、会社売却価格を減額するように要求された場合は、その根拠を数字とともに提示してもらいましょう。 買い手側の事情で減額を提案されることもあるので、冷静に判断し反論していく必要もあるかもしれません。 関連記事 M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? 会社売却の譲渡益で儲かる分、税金がかかる 個人株主が株式譲渡をした場合には、譲渡益について税金がかかります。 税金の内訳は、所得税・復興特別所得税・住民税です。 これらをあわせると20. 315%の税率で、譲渡益に税金が課されます。 関連記事 会社売却の税金は?M&Aで税金を節約するには? ロックアップで早期リタイアできない 会社売却で儲かるとしても、すぐには会社から離れられない可能性もあります。 というのも、引継ぎのために数年程度、売却先の企業において業務に従事しなければならないという取り決め(ロックアップ条項)が、M&Aの最終合意書に盛り込まれる可能性があるからです。 経営者であれば、長年経営してきたノウハウや重要事項など一朝一夕ではとても引き継ぐことができないものでしょう。 数年の単位で、会社にとどまるようオファーされることもあります。 ロックアップになれば、すぐさま新規事業を始めるといったことは難しくなるので、留意しておく必要があります。 会社を手放すことの寂しさ 会社売却・事業売却を行った場合、十分な売却益を得られ儲かるというメリットはあるでしょう。 一方で、会社そのものや、事業が他人の手にわたるという現実もあります。経営者としては、会社、事業を手放すことのさみしさや、むなしさを感じることもあるでしょう。 事業を再開したいと思っても、通常、競業避止義務を負うケースが多いため、同業の会社を立ち上げることできません。 その点が、会社売却や事業売却lのデメリットになるかもしれません。 儲かる会社売却・事業売却には良きパートナーを 会社売却・事業売却・M&Aの相談先は? 会社売却の相談先は、M&A仲介会社やM&Aに特化したプラットフォームなど様々です。 それぞれの媒体で、強みやスキームが異なります。 そのため、まずは問い合わせをしてみて、買い手探しのコネクションを増やしておくのが良いでしょう。 --- ### 事業承継問題とは?課題は後継者不在?解決策はM&A? - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/10162 - Categories: 事業承継, 後継者不足 事業承継問題とは?課題は深刻?解決策は?相談先は?この記事では事業承継問題の実態と解決策をまとめています。頼りになる相談先の一覧や、事業承継問題チェックシートもあるので、是非ご活用ください。 事業承継問題とは? 中小企業の事業承継の課題は?後継者問題で悩む経営者は多い? 事業承継問題はM&Aで解決?相談先は? 近年話題になっている事業承継問題とは、後継者不在によって次の世代に会社を継いでもらうことができず、廃業を避けられないリスクのことです。 廃業をするとしてもある程度のコストはかかりますし、従業員にも迷惑がかかってしまします。 この記事では、事業承継問題の実態、解決策、相談先などをまとめています。 自分の子どもや社員に後継者候補がいなくても、M&Aによって第三者に事業承継ができれば、会社は存続することができます。 中小企業の経営者の方など、是非ご参考になさってください。 事業承継問題の現状は?深刻な課題とは 事業承継問題とは? 近年、「事業承継問題」が深刻化しています。 これは、経営者の高齢化や後継者不足により、事業を継続することが困難になるという問題です。 様々な要素があいまって、事業承継問題が顕在化しています。 事業承継問題の原因 後継者不在 後継者教育が難しい ワンマン経営による事業承継準備の遅れ 適した相談者の不在 経営状況や将来に対する漠然とした不安の対処法が分からない 取引先・従業員からの反発 経営者自身に退く意思がないなど 事業承継問題の実態は?70%が後継者不在 帝国データバンクの調査によると、2023年の後継者不在率は全国で53. 9%となっています(「全国「後継者不在率」動向調査(2023年)」)。 このことから、後継者問題は一定の改善傾向にあるといわれています。 ですが、鳥取県、秋田県などの後継者不在率が約70%にものぼります。 全体的にみれば、事業承継問題は、いまだ深刻な課題に直面している状況といってよいでしょう。 2025年問題とは?事業承継の今後の課題 2025年問題とは、団塊世代の多くが75歳以上の後期高齢者となり、日本が超高齢化社会となることで生じる様々な問題のことを指しています。 事業承継問題も、2025年問題のひとつです。 2025年までに、70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、そのうち約半数である127万人は後継者未定、その結果、経営者が70歳を超える法人の31%、個人事業主の65%が廃業になると想定されています。 事業承継問題を解決できないデメリット 事業承継問題を解決できない場合、さまざまなデメリットが生じます。 廃業のコストがかかる 事業承継問題を解決できないと、廃業するためのコストがかかります。事業で使用しなくなった資産を処分する必要があり、従業員への退職金を支払う必要もでてきます。事業承継ができれば、譲渡益が手に入るメリットがあるのに、廃業を選択することで損をしてしまうのは勿体ないことです。 従業員が露頭に迷う また、退職金を支払うにせよ、従業員の雇用を維持できなくなるというデメリットには注意を払うべきです。年齢によっては再就職が難しい場合もあるでしょう。経営者として、従業員の雇用を維持するには、廃業ではなく、理解のある相手とのM&Aが適切なのではないでしょうか。 自社ならではの技術が消滅・顧客が悲しむ そのほか、自社で培ってきたノウハウ・技術がなくなるというデメリットもあるでしょう。大切に育ててきた会社の存在そのものがなくなることは、経営陣のみならず、顧客にとっても大きな損失です。廃業による自社の消滅を回避するには、どうにかして事業承継の課題を突破しなければなりません。 関連記事 後継者がいない会社は61%!跡継ぎがいない会社の実態と選択肢まとめ 後継者不足の解決策はM&A?後継者問題の実態は... 【事業承継問題・課題チェックリスト】あなたの会社は大丈夫? このチェックリストは、あなたの会社が事業承継問題に直面しているかどうかを判断するためのものです。 事業承継の可否・要否はあくまでケースバイケースですが、一般的にみて事業承継問題への対策が急務かどうかを判断する目安となる質問をご用意しました。 以下の質問に「はい」と答える項目が多ければ多いほど、事業承継問題への対策が急務といえます。 ①後継者についての質問 当てはまるものに「はい」とお答えください。 後継者候補となる人材がいない。 後継者教育に着手していない。 後継者教育のプログラムがない。 後継者候補に意欲がない。 後継者候補に資質がない。 ひとつでもあてはまるものがあれば、いわゆる「後継者不在」の状態の可能性があります。 早急に後継者候補の選定・教育にとりかかってください。 ②現経営者についての質問 当てはまるものに「はい」とお答えください。 経営者の年齢が60歳以上。 体力・健康状態に不安がある。 経営を続ける気力が低下した。 経営者の退職時期が不明確。事業承継の意欲がない。 経営者が会社の個人保証をしている。 ひとつでもあてはまるものがあれば、事業承継問題そのものを認識できていない可能性があります。社長の急逝などによる混乱を招きかねません。 経営陣において早急に、会社の将来・事業承継について向き合う必要があります。 ③事業についての質問 当てはまるものに「はい」とお答えください。 将来の明確なビジョンがない。 事業の収益力が上がらない。 自社の資産を活用できていない。 自社の強みが分からない。 負債がある、あるいは赤字である理由をうまく説明できない。 ひとつでもあてはまるものがあれば、事業承継をする場面で、企業価値を高く評価してもらえない可能性があります。M&Aの相手が見つからないリスクもあります。 事業承継の専門家に相談するなどして、企業価値向上を目指してください。 関連記事 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 ④情報についての質問 当てはまるものに「はい」とお答えください。 事業承継・引継ぎ支援センターを知らない。 民間のM&A仲介会社に相談したことがない。 事業承継のメリットを知らない。 事業承継の手法が分からない。 事業承継税制を知らない。 ひとつでもあてはまるものがあれば、事業承継の流れやメリットなどの重要な情報にアクセスできていない可能性があります。 実際に事業承継をするにしても、とどまるにしても、その経営判断をおこなうための十分な情報収集は欠かせません。 本サイトでは事業承継に関する情報発信をしているので、是非ご参考になさってください。 また、公的機関である「事業承継・引継ぎ支援センター」や、民間のM&A仲介会社などで実施されている無料相談も活用してみてください。 関連記事 M&Aのメリット・デメリットは?売り手にメリットがあるM&Aとは 事業承継税制とは?納税が猶予・免除される要件とメリット・デメリットを解説 事業承継にまつわる課題と解決方法 事業承継問題の最重要課題... 後継者探しはどうする? 後継者を見つける際は、以下の3点に注意をしましょう。 後継者探しの3つの注意点 早めの取り組み 社内外の人材育成 M&Aの活用 早めの取り組み 経営者の高齢化を見据えた長期的な視点で、社内外人材の育成やM&Aなどの選択肢を検討することが重要です。 社内外の人材育成 親族内承継や従業員承継などによる事業承継の場合は、社員教育プログラムや外部人材の採用を通じて、経営に必要な知識、経験、能力を持つ人材を育成する必要があります。 M&Aの活用 親族内承継、従業員承継ができない場合は、外部の第三者への事業売却・会社売却を検討する必要があります。 政府・自治体の支援制度や、民間のM&A仲介会社、税理士などの士業、金融機関などに相談することで、M&Aの相手探しをサポートしてもらえる可能性があります。 事業承継の方法の選択(M&Aの手法選択) 事業承継には様々な方法があります。事業承継の手法を選択する際には、以下の3点に注意しましょう。 事業承継の方法を選択する際の3つの注意点 自社の状況分析 専門家に相談 情報収集 自社の状況分析 事業規模、財務状況、将来性などを分析し、最適なM&A手法を選びましょう。 たとえば、中小企業の経営者が後継者に事業承継をおこなう場合に、健全な財務状況が維持できており、収益性が見込めるときは、株式譲渡による事業承継が選択されることも多いでしょう。 関連記事 事業譲渡と株式譲渡の違いは?目的・メリット・デメリットなど解説 専門家に相談 事業承継の方法によっては、かかる税金が異なります。また、必要になる法的な手続きも変わります。 一生のうちに何度も事業承継を経験される経営者の方はめずらしく、不慣れな方も多いでしょう。 税理士、弁護士、M&A仲介会社などの専門家に助言を求め、その意見を参考にしながら、自社の状況や目標に合致したM&Aの手法を選択・判断するのをおすすめします。 情報収集 セミナー参加、書籍・ウェブサイトでの情報収集などを通じて、M&Aに関する知識を深めるのも良いでしょう。 関連記事 M&Aスキーム (手法)を比較!メリット・デメリット・手続きの違いを解説 事業承継の実行(交渉・契約などの問題) 事業承継の実行については、適切な交渉と、不備のない契約の締結が必須です。また、その他にもクロージングに向けて真摯な態度で、条件の実現に奮闘する必要があります。 実行の注意点3つ 適切な交渉をする・交渉術の活用 不備のない契約の締結 クロージングに向けた努力 適切な交渉をする・交渉術の活用 まずは交渉をおこなうまでに、専門家の知恵を借りて準備をおこなうのが良いでしょう。この場合、事業承継を得意とする税理士、弁護士、公認会計士や、M&A仲介の担当者などに相談をおこないます。 そして、実際の交渉では相手方に誠意をもった対応をすべきですが、すべてを譲歩する必要はありません。自社の利益も尊重できるよう、Win-Winの交渉を目指せると良いでしょう。 交渉に関する古典的な概念のひとつであるBATNA(Best Alternative To a Negotiated Agreement)を理解しておくことも大切です。BATNAとは、相手が提示してきた内容以外の最善の代替案のことです。BATNAを想起しておくことで、不利な条件ものまなければならないという強迫観念を捨てて、精神的に余裕をもって交渉にのぞむことができるでしょう。 不備のない契約の締結 M&Aによる事業承継では、書面の整備は重要です。 契約書や覚書など、合意内容を明確に記載した書面を作成する必要があります。法的書面作成については、弁護士などの専門家に相談すると良いでしょう。 関連記事 M&Aの契約書の種類や内容は?契約の流れに沿って解説! クロージングに向けた努力 クロージングに向けて、事業承継を実行できるように株主総会の承認決議を受けたり、従業員や取引先への連絡・調整をおこなう必要があるでしょう。 とくにキーマン条項や、COC条項がある場合は適切にクロージングができなければ、M&Aの中止を招くリスクがあります。 キーマン条項(ロックアップ) M&Aの売り手側と買い手側の間で締結する条項。売り手側企業の業務遂行において重要なポジションを担う役員・従業員などのキーマンが、M&Aの実施後も一定期間、会社を辞めてはならないという義務を負う条項。 キーマン条項に違反して、キーマンが退職してしまった場合、売り手は、買い手側企業から損害賠償を請求されるリスクがあるほか、M&Aそのものの中止が問題になります。 COC条項(チェンジオブコントロール) M&Aの売り手側とその取引先が締結している条項。M&Aなどを理由として、一方当事者の経営者が変更した場合、他方当事者は契約の解除等ができる。 COC条項の発動をおさえるには、他方当事者へ丁寧な説明をおこない、理解を得ることが重要です。 COC条項が発動され、取引中止となる場合も、売り手企業の企業価値の低下につながることで、M&Aがとん挫するリスクがあります。 事業承継の課題解決で頼りになる相談先と制度(一覧) 事業承継・引継ぎ支援センター 事業承継・引継ぎ支援センターとは、中小企業庁が設置する、事業承継に関する相談窓口です。 事業承継・引継ぎ支援センターは、全国各地に拠点があり、専門家が相談に応じてくれます。相談は無料で、秘密厳守で実施してもらえるうえ、国が設置する相談機関ということで安心感もひとしおでしょう。 主な相談内容 主な相談内容は、後継者候補の選定から手続きまで幅広いものです。 相談内容(一例) 事業承継・引継ぎ(親族内・第三者)に関する相談 事業承継診断による事業承継・引継ぎに向けた課題の抽出 事業承継を進めるための事業承継計画の策定 事業引継ぎにおける譲受・譲渡企業を見つけるためのマッチング支援 経営者保証解除に向けた専門家支援など 利用方法 基本的には、最寄りの事業承継・引継ぎ支援センターに相談することになります。 たとえば、東京都事業承継・引継ぎ支援センターを利用する場合は、電話またはメールで問い合わせをおこない、相談予約をとり、来所して相談することになります。 税理士・公認会計士・弁護士などの事業承継を支える専門家 税理士、公認会計士、弁護士などは、事業承継に対応可能な専門的な知識を有する専門家です。 主な相談内容 専門家相談内容税理士税務のアドバイス、M&A価格の税金対策など公認会計士財務状況の分析、事業価値評価など弁護士契約書作成、交渉のサポートなど 利用方法 各専門家の事務所に直接連絡をいれて相談予約をするか、M&A仲介会社を利用する際に照会してもらうという方法があります。 事業承継問題の相談先(一覧) 事業承継に関する相談先については、以下の記事で整理しています。 課題の解決は、良き相談相手があってこそ叶うものです。 あわせてご参照ください。 関連記事 事業承継の相談窓口は?事業承継成功の秘訣は専門家への無料相談? 事業承継問題で活用できる国の制度・支援 中小企業庁では、事業承継にまつわる様々な問題を解決する豊富な支援策を提示してくれます。事業承継に取り組む中小企業にとって、とても頼りになる公的機関です。 中小企業庁のホームページでは、事業承継の支援施策についての紹介があるので、こちらもチェックしてみると大変参考になります。 また、中小企業庁が主導する「事業承継・引継ぎ補助金」の制度を活用できると、事業承継にかかる経済的負担を軽減することが可能です。 事業承継・引継ぎ補助金の過去の実施状況については「事業承継・引継ぎ補助金のすべて|M&Aで活用できるお得な補助金とは... 」の記事をご覧ください。最新の募集状況については、中小企業庁のホームぺージでお確かめください。 事業承継問題の原因のひとつとして、経営者の個人保証の重い責任を引継ぎたくないから、後継者候補に辞退されてしまうという問題もあります。経営者の個人保証の解除に関する制度もあるので、活用できるか確認してみるのも、事業承継問題を解決する方法のひとつの策です。 事業承継問題の解決にはM&A仲介会社もおすすめ 民間のM&A仲介会社のメリットとは? 民間のM&A仲介会社に相談するメリットは、最適なM&Aパートナーを提案してもらえること、必要な時に専門家を紹介してもらえること、ニーズに合わせてサービスを選択できることなどです。 M&A仲介会社のメリット 最適なM&Aパートナーの提案 必要な時に専門家を紹介 ニーズに合わせてサービスを選択 自身でM&Aの買い手や、M&Aに詳しい専門家を探すとなると、かなり手間がかかります。M&A仲介会社に依頼しておけば、マッチングや専門家を紹介してくれるので大変便利です。 そして、自分のニーズにあわせた活用ができます。たとえば、後継者候補とのマッチングで足りる場合はそれのみを利用する、M&A価格の算定を専門家に依頼したい場合は公認会計士による企業価値評価のサービスを受けるなど、サービスをカスタムできることが通常でしょう。 M&A仲介会社にもそれぞれ特色があるので、複数にアクセスしてみて、使い勝手が良さそうな会社を選ぶのがおすすめです。 --- ### 会社売却の流れを解説!手続きや手順の注意点は? - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/8866 - Categories: 会社売却の流れ 会社売却の流れとは?会社売却で注意すべき手続きや手順は?買い手探しはどうすればいい?会社売却をご検討中の経営者の方へ。この記事では、会社売却の手続きの流れを徹底解説しています。ご参考になさってください。 会社売却の流れとは? 会社売却で注意すべき手続き・手順は? 買い手探しの段階でつまずいている... このようなお悩みをお持ちではありませんか。 会社売却を検討していても、その後の手順が分からなければ、なかなか手をつけることができないものだと思います。 会社売却にとって適切な時期を逃さないためにも、会社売却の流れをつかんでおきましょう。 この記事では、早期リタイアや先行き不安、後継者不在、相続した会社を運営できないなど、さまざまな事情によって、会社・事業をやめたいと考えている方を対象にしています。 会社売却の流れや、注意すべき手続き・手順、買い手探しの方法などを解説していますので、ぜひ最後までお読みください。 会社売却手続きの流れは?各手順の注意点は? はじめに 会社売却の流れは、以下のようなものになります。 この記事では、おおまかな流れに沿って、個別に要所を取り上げて説明していきます。 ①会社売却の目的・方針を検討 まずは、会社売却の目的や方針を検討するところから始めます。 ご自身が何のために会社売却をするのか、どのようなM&Aを望むのかを明確にして、会社売却で成し遂げたい具体的な目標をたてることが大切です。 いったん会社売却をすれば数年間は競業避止義務を負い、同種・同業をおこなえない可能性も高くなります。 そのため、会社売却の準備段階としては、会社運営から完全に離れる決意を固めることも重要です。 ▼この手順の注意点 会社売却をする場合、M&A手続きは複数考えられますが、中小企業が会社売却をする場合、代表的な手続きは株式譲渡になるでしょう。 株式譲渡は、自社の株式を買い手に売却するというM&Aの手法です。 株式譲渡であれば、基本的には、個別契約や許認可の申請手続きなどを経なくても、従来どおりの会社の組織、権利、経営状態をそのまま引き継ぐことができるメリットがあります。 しかし裏を返せば、資産状況について十分な調査ができなければ、売り手企業にとって有利な資産がいつの間にか移転してしまうというデメリットが考えられます。また、買収監査で不測の負債が発覚した場合、その後の交渉で不利になるというデメリットも考えられます。 関連記事 M&Aスキーム (手法)を比較!メリット・デメリット・手続きの違いを解説 事業譲渡と株式譲渡の違いは?目的・メリット・デメリットなど解説 ②買い手探しはM&A仲介会社に相談 会社売却をおこなうには、買い手を探す必要があります。 買い手探しには、M&A仲介業者の活用がおすすめです。 たしかに、買い手を自力で探すことができれば、M&A仲介手数料はかかりません。しかし、現実問題として、自分ひとりで買い手を探すには限界があり、非効率です。また、買い手探しという言葉が独り歩きして、信用不安情報が広まることは避けたいものです。そのため、M&Aでは仲介をしてもらうのが最善の方法でしょう。 M&Aの仲介は、民間のM&A仲介会社、金融機関、各都道府県の事業承継・引継ぎセンターといった機関でおこなってくれます。 M&A仲介会社の場合は、全国規模で買い手を探すことができ、サービスも手厚い印象があります。 金融機関や事業承継・引継ぎセンターを相談先とした場合は、地元企業に強い仲介をしてくれる可能性が高いでしょう。 ▼この手順の注意点 民間のM&A仲介業者は、サービス内容によって仲介手数料が変わります。 ①M&Aのマッチングと必要最低限の手続きサポートを提供する業者や、②売り手と買い手の両者の相談に乗りつつ仲介を行う業者、③売り手・買い手のいずれかの専属アドバイザーとして仲介をする業者など様々です。 仲介手数料は通常、①<②<③の順に高額になる傾向があります。 かりに自社に顧問税理士などがいるのであれば、①でも足りる可能性があります。その場合は仲介手数料をおさえることができるでしょう。 一方で、企業価値を詳しく分析・評価してもらいたい、自社だけのアドバイザーをつけたい等のニーズがある場合は、仲介手数料が高額になりやすいものです。 M&A仲介業者を選ぶ際には、ご自身のニーズや予算を加味して選びましょう。 関連記事 M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? ③企業価値を評価する・ノンネームシート(NN)の準備 M&Aを進めるにあたって、企業価値の評価は非常に重要です。 企業価値の算定をすることにより、会社売却価格を想定することが可能になります。 また、ノンネームシートの作成の前提としても必要です。 ノンネームシートとは、具体的な企業名を特定できないかたちで、売り手の業種、所在地、財務情報、社員数などの企業概要について、まとめた書面です。 買い手候補が見つかったら、ノンネームシートを提示して、自社の情報を確認してもらいます。 そして、買い手候補となる企業に、会社売却に応じる意思があるかどうかを確認します。 ▼この手順の注意点 企業価値評価の算定方法については、コスト・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチなどがあります。 アプローチごとに注目する要素が異なり、計算方法も異なります。 中小企業の場合は、時価純資産+営業利益の3~5年分という計算式が多用されることも多いでしょう。 関連記事 M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 ④秘密保持契約(NDA)の締結 買い手候補となる企業から、会社売却に応じる旨の回答が得られたら、具体的な交渉を開始することになります。 会社売却の前段階では、売却先候補に対して、自社の事業や財務状況などの秘密を開示しなければなりませんが、どれも重要な機密情報です。 そのため、知った秘密を外部にもらさないことを約束する「秘密保持契約」を締結する必要があるのです。 ▼この手順の注意点 秘密保持契約書は、企業間で開示された情報の扱いについてのルールや、万が一情報漏洩した場合の当事者の責任などが規定される契約書です。 そのため、法的な不備がない契約書面を作成する必要があります。 会社売却についてM&A仲介業者や専門家に依頼している場合は、秘密保持契約書のひな型などを準備してくれることも多いので、確認してみましょう。 ⑤企業概要書(IM)の提示 秘密保持契約を締結したら、いよいよ企業概要書を、売却先候補に対して提示する段階となります。 企業概要書(IM)とは、会社の事業内容、業績、会社売却の理由、将来の事業計画など売却したい会社の情報を記載した書面です。 ▼この手順の注意点 売却先候補に、会社売却の話をうけたいと思わせるためには、会社の強みが伝わる魅力的な企業概要書を提示することが必須です。 ⑥意向表明書(LOI) 意向表明書(LOI)とは、譲受を希望する企業から、譲渡する側の企業に対して、会社売却の提示条件を記載した書面のことです。 意向表明書では、譲受企業が譲受を希望する理由や、譲渡価格、そのほか一般的な諸条件についての意向を表明します。 譲受を希望する企業が複数の場合は、売り手企業は意向表明書を見ながら、譲渡先候補を1社にしぼります。 その後は、基本合意書の締結に向けて話し合いをおこないます。 ▼この手順の注意点 意向表明書の段階で、売却価格が低いと感じた場合には、買い手に対して、売却価格について見直しが可能かどうかを再度検討してもらったり、柔軟に交渉していく必要があるでしょう。 ⑦経営者のトップ面談 トップ面談(TOP面談)とは、売り手と買い手のトップ同士が面談をおこなうことです。 トップ面談には、株式会社の場合、社長以外の筆頭株主や議決権の過半数を有する株主や、関係する部門の責任者が出席することもあります。 トップ面談では、これからのビジョンを共有したり、M&Aにともなうシナジー効果などについて話し合ったりして、実際にこのままM&Aをすすめていくかどうかが検討されます。 ▼この手順の注意点 トップ面談が実施された後に、現地視察をおこなう場合もあります。 売り手企業としては、混乱を招かないよう、現場で働いている社員に話を通しておく必要があるでしょう。 関連記事 M&Aの失敗事例は約7割?M&Aの難しい点とは?実例は? M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? ⑧基本合意書(MOU) トップ面談がおこなわれ、M&Aを実施する意向が固まった場合、会社売却価格、支払条件、残留条件などの条件について、基本合意書を締結します。 なお一般的に、基本合意書に規定されている条項については(独占交渉権などを除いて)、法的拘束力が生じません。 しかし、基本合意書は、今後の条件交渉の基礎となるものです。 そのため、会社売却において譲れない条件などがあれば、基本合意書への落とし込みをこころみてもよいでしょう。 ▼この手順の注意点 基本合意書を締結する際、買い手候補となる企業からは「独占交渉権」について条項を盛り込むよう要求されることは多いでしょう。 具体的な基本合意書の内容にもよりますが、一般的には、M&Aの諸条件については法的拘束力を持たせない一方、独占交渉権は法的拘束力が生じさせるケースが多いものです。 独占交渉権が基本合意書に規定されると、多くの場合、売り手企業は、基本合意書を締結した買い手候補の同意なしには、ほかの買い手候補との交渉を数か月間、法的拘束力をもって禁止されます。 そのため、売り手としては、基本合意書を締結する相手としてふさわしい企業か否かについて、慎重に検討する必要があるでしょう。 ⑦デューデリジェンス(DD・買収監査)の実施 買手候補が、売り手企業の財務状況、事業内容、将来性などについて、詳細な調査を行うことをデユーデリジェンスといいます。 デューデリジェンスでは、買手候補は、売り手企業の価値を評価し、最終的な条件交渉を行うための情報を収集します。 デューデリジェンスは、買い手企業がM&Aを実行するかどうかの判断をくだすために、必須の手順です。 財務DD、法務DD、環境DD、労務DDなどの種類があります。 中小企業の場合は財務DDと法務DDのみおこなわれるケースも多いでしょう。 DDで問題が発覚した場合は、交渉決裂となる可能性もあります。 不透明なお金の流れ、未払いの買掛金、簿外の借入金などが問題になりやすい傾向があるでしょう。 ▼この手順の注意点 売り手がDDの手順で重要な事は、買い手に協力すること、リスクを意図的に隠すのではなく開示して買い手に把握してもらうことなどです。 DD前に改善できるリスクがある場合は、早期に対処しておくことも重要でしょう。 関連記事 M&Aのデューデリジェンスとは?調査費用は?事業譲渡はどうなる? ⑧最終条件交渉 デューデリジェンスのあとは、売り手企業と買い手候補が契約締結に向けて、最終的な合意を目指して詳細な条件交渉をおこないます。 買い手からは、デューデリジェンスを踏まえて、あらたな提案をされることもあります。 たとえば、デューデリジェンスの結果、簿外債務が把握されてしまい、会社売却価格の見直しを提案されることもあります。また、リスクを低減させるための施策実施を求められることもあるでしょう。 最終条件交渉では、売り手・買い手の双方にとって有益なM&Aになるよう、改善できる点は歩み寄り、反論できる点はきちんと主張していくという姿勢が重要です。 ▼この手順の注意点 売り手側としても、会社売却の対価、社員・経営陣の処遇など、希望する詳細条件をつめる最後の交渉となります。 会社売却価格の交渉、従業員の処遇、取引先との関係、経営者の引退などについても、きちんと交渉しておかなければなりません。 ⑨M&Aの最終契約書(DA)を締結 最終条件交渉がまとまったら、最終契約書を締結することになります。 売却価格、支払条件、残留条件など合意できたすべての条件について、最終契約書に落とし込みます。 ▼この手順の注意点 最終契約書は、基本合意書と異なり、売却条件なども含め全面的に法的拘束力が生じるものです。 最終契約書に違反すれば損害賠償責任をおったり、不備があれば後日紛争になったりする可能性もあります。 専門性の高い業者にM&A仲介を依頼している場合は、最終契約書のひな型も準備してもらえる可能性があります。個別案件に応じて、適宜活用していくことが必要でしょう。 関連記事 M&Aの契約書の種類や内容は?契約の流れに沿って解説! ⑩クロージング M&Aにおけるクロージングとは、売却手続きを完了させることです。 会社売却成約となれば、会社売却代金の支払い手続き、株式譲渡や事業譲渡の引き渡し手続きなどをおこない、経営権の移転が完了し、クロージングとなります。 クロージングまでの手順は、すべて会社売却にとって重要な手続きです。 各手順の内容や目的を理解し、適切に対応をすることで、会社売却をうまく進めることができるでしょう。 ▼この手順の注意点 M&Aはクロージングをすればそれで終わりというものではありません。 売却後にも、M&Aによるシナジー効果を最大化できるよう注意を払うことも重要です。 そのための取り組みのことをPMIと呼びます。 PMIは、買い手企業が取り組むべきものです。 しかし、売り手企業としても、自社の社員が新体制になじむためのケア、取引先へのケア、経営者としての引継ぎなど、事業承継に必要な協力をする必要はあるでしょう。 M&A手続き別 会社売却の注意点 株式譲渡による会社売却手続き 中小企業の場合、株主の保有する株式には譲渡制限がついていることが多いものです。 譲渡制限株式を譲渡する場合は、取締役会または株主総会において譲渡承認決議を受けなければなりません。 M&Aの流れの中では、多くの場合、最終契約書(DA)締結前に譲渡承認決議をおこない、譲渡承認決議の可決を契約の効力発生条件として規定しておくことになるでしょう。 承認決議を受けることができれば、株式譲渡を実行するとともに、株主名簿の書き換えをおこないます。 関連記事 株式譲渡の手続き・流れを徹底解説!会社の株式譲渡で必要な書類と注意点とは 非上場株式を譲渡するには?売却価格や手続きは? 事業譲渡による会社売却手続き 株式譲渡以外にも、事業譲渡という方法によって会社売却をおこなうこともできます。事業譲渡とは、会社の経営権を売り手に残したまま事業のみを売却するM&Aの手法です。 しかし、譲渡の対象が事業の全部または重要な一部に当たる場合は、譲渡する側の会社において、株主総会の特別決議による承認が必要になります。 株式譲渡の場合と同様に、最終契約書(DA)では、これらの決議で事業譲渡が承認されることを、契約の効力発生要件として規定しておく必要があるでしょう。 また事業譲渡の場合、従業員の雇用を継続するには、譲受会社が主導して雇用契約を締結し直す必要があります。 取引先との契約関係も、当然には承継されないので、譲受会社があらためて契約を締結します。株式譲渡と比べると、事業譲渡は煩雑な手続きとなるため、買い手としても不安が残るものでしょう。 譲渡益にかかる税金 そのほか税金の問題もあります。事業譲渡の場合は、譲渡益に法人税等が少なくとも約30%かかる可能性があり、このほか消費税もかかります。 一方、個人株主の株式譲渡ということであれば、所得税等が20. 315%かかるにとどまります。 関連記事 事業譲渡手続きの流れは?会社譲渡の方法や手順を知ってスケジュールを立てよう 事業譲渡の税金は?消費税や法人税は利益の何%?お得なのは会社譲渡? 会社売却手続き共通の注意点 会社売却を検討する動機として、会社の連帯保証や個人保証の責任から解放されたいというものもあるでしょう。 株式譲渡や事業譲渡をおこなうことによって、会社の経営者としての地位から離れることができたとしても、当然に個人保証などから解放されるわけではありません。各所との交渉が必要になります。 会社売却は手順を踏んで... まずは買い手探しから いかがでしたでしょうか。 会社売却の手続きの流れは、つかめましたか。 会社売却の成功の第一歩は、買い手探しです。 自力で探すとなると、経営不振のうわさが広がったり、機密が漏洩するおそれもあるでしょう。 効率的に、安心して買い手探しをするのであれば、M&A仲介に依頼するのもひとつの手です。 --- ### 企業価値・事業価値・株式価値とは?それぞれの違いと関係性を解説! - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-22 - URL: https://atomfirm.com/manda/9683 - Categories: 企業価値 企業価値とは、事業の持つ価値と事業以外の資産などを合わせた企業全体の価値のことです。株式価値は企業価値から有利子負債を差し引いた価値となります。 企業価値とは企業全体の価値のことです。 自社の事業価値、事業に関連しない資産などの価値を全て含めた総合的な価値といえます。 M&Aや会社売却を検討する場合、自社がどの程度の評価を受けていくらで売却できるのか、経営者としては気になるポイントです。 特に非上場企業の場合、株価が市場で公開されていないため、簡単には売却の見込み額を算出することができません。 自社の価値が分からない場合には、純資産法やDCF法などを使って、企業価値評価(バリュエーション)を行います。 この記事では、企業価値、事業価値、株式価値の違いと関係性を解説します。 代表的な計算方法も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。 企業価値、事業価値、株式価値とは 企業価値とは 企業価値は、企業全体が有する総合的な価値を指します。企業価値を評価することは「バリュエーション」とも呼ばれ、事業内容、キャッシュフロー、株式、資産、負債などを包括的に考慮して行われます。 会社売却のプロセスでは、バリュエーションの結果が基になり、売り手と買い手が譲渡価格を交渉します。 企業価値を算出する方法には主に以下の2つがあります。 企業価値の算出式 ①企業価値 = 事業価値 + 非事業価値 ②企業価値 = 株式価値 + 有利子負債 企業価値と株式価値は混同されやすいですが、異なります。 株式価値は多くの場合、時価総額を意味しますが、企業価値は自己資本価値だけでなく、負債の価値や事業価値に含まれない資産なども考慮して評価されます。 そのため、バリュエーションを行う際には、株式の時価総額だけでなく、他の要素も考慮する必要があります。 関連記事 M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 事業価値とは 事業価値は、企業が有する事業の価値を指します。EV(エンタープライズバリュー)とも呼ばれます。 企業価値の大部分を占めるため、M&Aの際には、事業価値は特に重要視されます。 事業価値には、のれん(営業権)・商標権・特許権などの無形資産も含まれます。 既に説明した計算式の①から、「事業価値=企業価値ー非事業価値」という式が成り立ちます。 これは、企業全体の価値から事業とは関係のない資産を差し引くことで、事業単体の価値とみなすアプローチです。 株式価値とは 株式価値は、株式における価値を指します。 上場企業では、株価の時価総額が株式価値となりますが、非上場企業の場合、株価が公開されていないため、株の買い手と売り手が交渉して株価を算定しなければなりません。 既に説明した計算式の②から、「株式価値=企業価値−有利子負債」という式が成り立ちます。 これは、企業の総合的な価値から企業が抱える負債を差し引いた額を株式価値とみなすアプローチです。 有利子負債について 有利子負債とは、企業が返済しなければならない債務のことです。返済する際には利息を含めて支払わなければなりません。 例えば、銀行からの借入金や投資ファンドからの融資金などが該当します。 企業価値、事業価値、株式価値の算定方法 企業価値、事業価値、株式価値の関係性 企業価値・事業価値・株式価値の求め方をまとめると次のようになります。 企業価値 企業価値=事業価値+非事業価値 企業価値=株式価値+有利子負債 事業価値 事業価値= 企業価値 - 非事業価値 株式価値 株式価値=企業価値-有利子負債 非上場企業の場合、公開された株価が存在しないため、株式価値をもとに企業価値を算出することは難しいケースが多いです。 そのため、非上場会社の企業価値評価(バリュエーション)は、DCF法や類似会社比準法などを用いて、事業価値を計算することから始まります。 DCF法 DCF法(Discount Cashflow法)とは、将来発生するであろうフリーキャッシュフロー(FCF)をディスカウントすることにより、現在の価値に換算して、事業価値を導くアプローチです。 公認会計士などの専門家に企業価値評価を依頼した場合には、将来生み出されるお金に着目するこの手法が用いられることがあります。 DCF法では、まずはじめに「事業価値」を算定し、それに事業外資産を足して「企業価値」を求め、さらに有利子負債を差し引いて最終的な「株式価値」を算出するという方法がとられます。 実際の計算の流れとしては、3~5年分のFCFを予測した事業計画を作成し、加重平均資本コストと呼ばれる割引率を使って、将来の見込み収益を現在の価値に計算します。 関連記事 企業価値評価におけるDCF法とは?株主資本コスト、加重平均資本コスト(WACC)の求め方を徹底解説! 類似会社比準法 類似会社比準法とは、自社と事業内容等が類似する企業の特定の指標を用いて、自社を評価する手法です。 一般的に用いられる指標としては、EV/EBITDAマルチプル倍率、PER、PBR等があります。ここでは、EV/EBITDA倍率を使う場合の説明を行います。 EBITDAとは、日本語では「利息、税金、減価償却前利益」を意味します。会社の最終的な利益から、償却費と支払利息と税金を足し戻した利益のことで、会社の収益力を示す指標の一つです。 EBITDAは、「営業利益+減価償却費」で計算できます。 類似企業のEBITDAをもとに、EV/EBITDA倍率を求め、評価対象企業のEBITDAとかけ合わせることで事業価値が算出されます。 EV/EBITDA倍率とは、EV(事業価値)がEBITDAの何倍とされているかを表わす指標です。事業価値をEBITDAの何年分で賄えるかを表すものであり、簡易買収倍率とも呼ばれています。 計算方法の詳細は関連記事をご覧ください。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! 小規模の会社は年買法で譲渡価格が決まる? 小規模なM&A、会社売却では、株式の譲渡価格を決める際、会社の純資産に将来1~3年分の利益を足すなどといった簡便的な方法を用いることもあります(年買法)。 企業価値、事業価値、株式価値を高める要素 企業価値を高めるためには、事業価値をより高く評価することが第一に求められます。 その他にも、非事業価値の部分で、余計な支出を削減したり、リスクを低減させたりすることも重要です。 将来のキャッシュフロー 将来のキャッシュフローは、事業価値、企業価値、株式価値のベースであり、企業の収益性や成長性によって形成されます。 収益性の高い企業や成長性のある企業は、将来のキャッシュフローが増加する傾向があり、それに伴い企業価値も高まります。 長期にわたって確立された事業モデルで事業が安定している企業や、既存の顧客基盤が維持できると予想される企業は、収益性が高いと判断されやすいでしょう。 成長性が高いと判断される企業としては、新興市場での急速な市場拡大を実現している企業や、新しい技術を用いた事業を展開したり業務プロセスを効率化したりしている企業が挙げられます。 リスクが低い 将来的なリスクが低いと判断された企業は、高く評価される可能性が高いです。 業績を低下させる恐れのある市場リスクや業界リスクなどを基に、企業価値は決定されるでしょう。 市場リスク外部の経済状況や市場変動によるリスクのことです。景気後退や不況、為替変動などが企業の収益に影響を与える可能性があり、悪影響だと判断された場合には、企業価値が低く見積もられる場合もあります。 業界リスク特定の業界に関連するリスクのことです。業界全体の競争激化、法規制の変更などが将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。 資本コスト 資本コストは、企業が資金を調達する際に発生する負担や費用のことです。 資本コストが低い企業は、資金調達に関するコストが削減され、より多くの利益が残ると考えられます。資本コストの最適化は、企業の健全な財務状態と将来の成長において不可欠な要素となります。 資本コストを低くする主なポイントは次の3点です。 信用力向上企業の信用力が向上すれば、金融機関からの融資条件が改善され、資金調達のコストが低減します。そのためには、適切な財務管理や債務返済履歴の維持が不可欠です。 業績向上と収益の確保収益性を向上させ、健全な業績を維持することは、株主や債権者にとって信頼性のある企業であるとの印象を与えます。これが資本コストを低くする一因となります。 市場への透明性の提供投資家や金融機関に対して企業の財務状態や戦略について透明性を提供することが、企業評価の向上に繋がります。透明性が高まると、資金調達の条件が改善される可能性があります。 関連記事 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 M&Aの企業価値評価は専門家に相談を! M&Aの企業価値評価は、専門知識を持たずに適切な結論を導くのが困難な作業です。 自社にどれだけの価値があり、売却の想定価格がいくらなのか知りたい場合は、M&A仲介会社などに相談することをおすすめします。 --- ### M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/9724 - Categories: 会社売却の相場, 会社売却の流れ M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは?この記事ではM&Aの交渉のコツを伝授します!ハイボールやアンカリングなど売り手が注意すべきポイントについても丁寧に説明していきます。是非ご参考になさってください。 M&Aの価格交渉はどうする? M&Aの条件交渉のポイントは? この記事ではM&Aにおける価格交渉のポイントや、価格以外の条件交渉のポイント等を解説しています。 ハイボールやアンカリングなどは、ご存じでしょうか。この記事ではM&Aの交渉術についてお話していきます。 後継者不在・早期リタイア・経営不振等により会社売却をお考えの方や、親御さんから相続した会社の売却をお考えの方は、M&Aの交渉の進め方にお悩みをお持ちだと思います。 これからM&Aの条件交渉をおこなう方は、是非ご参考になさってください。 M&A価格交渉で失敗しない方法は? M&Aの価格交渉とは? M&Aの価格交渉とは、M&Aの対象となる会社や事業の価値について、売り手と買い手が話し合いをおこなうプロセスです。 M&Aの価格は、売り手と買い手の双方にとって重要な要素であり、交渉がうまくいかなければM&A成約までこぎつけることができません。 M&Aの手法は株式譲渡や事業譲渡など様々ですが、いずれの手法をとったとしても、価格交渉を有利に進めるためには「事前の準備」が重要です。 価格交渉の事前準備とは? 価格交渉をおこなう前に、自社の強みや弱み、M&Aの目的を明確にし、M&Aの市場動向や競合他社の動向を把握します。 そして、企業価値評価(バリュエーション)をおこない、売却価格について譲れないラインを明確にしておくことが必要です。 企業価値評価の方法はいくつかあります。 それぞれの方法の特徴やメリット・デメリットを理解した上で、自社に適した算定方法を活用しましょう。 関連記事 M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 M&A価格交渉のポイント①企業価値評価の方法3つ 実務で用いられている企業価値評価の手法としては、大きく分けて3つあります。 それは、コストアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチの3つの企業価値評価の手法です。 企業価値評価の方法 コストアプローチ例)簿価純資産法、簿価純資産法etc. インカムアプローチ例)DCF法etc. マーケットアプローチ例)類似会社比較法(EBITDAマルチプル法etc. ) 中小企業のM&Aの場合、時価純資産にのれん代(年間の営業利益の3~5年分)を加えた評価方法が用いられることも多いものです。 公認会計士やM&A仲介などに相談すれば、さまざまな企業価値の算定手法を参考にしながら、ケースに合った相場を計算してくれます。専門家の意見も考慮しながら、M&A価格の交渉のたたき台を準備できると安心ですね。 もしも企業価値評価をおこなった時点で、思ったよりも自社の企業価値が低いと感じた場合には、会社の魅力の磨き上げをおこない、企業価値の向上に努めるという対策も考えられます。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 M&A価格交渉のポイント②ハイボールに注意 M&Aの交渉において「ハイボール」とは、高い条件のことをいいます。 売り手としては、ハイボールによる機会損失に注意すべきです。 売り手の思惑とそのリスク M&Aの価格については、売り手はできるだけ高額で売りたいと考え、買い手側はできるだけ安く買いたいと考えます。 そのため売り手の中には、交渉の方法として、まずは高額で売却希望額を提示しておき、交渉の過程で段々と引き下げていけばよいと考える方は多いものです。 しかしこのような交渉方法には、リスクがともないます。 M&Aの価格交渉は、初手が非常に重要です。初回の価格提示において、買い手が想定する金額とあまりにもかけ離れた金額を提示してしまった場合、M&Aの機会自体を逃すリスクが高まります。 ハイボール過ぎる金額提示による「M&Aの機会損失」を回避するには、合理性のある企業価値評価にもとづいて、売却希望額を提示する必要があるでしょう。 M&A価格交渉のポイント③アンカリングに注意 M&Aにおける「アンカリング」とは、交渉の初期段階で、相手に対しておこなう印象付けのことです。 アンカーをおろすことで船が固定されるように、ある情報を提示することで交渉の水準を設定してしまうという交渉術が、アンカリングです。 コツを掴むことができれば「アンカリング」は有効な交渉方法になります。 しかし、アンカリングの使い方を間違えれば、自身の交渉が不利になります。 アンカリングの失敗例 たとえば、売り手側からM&A価格を8000万円と提示したとします。 この場合、たとえ買い手が「このM&Aにおける買収価格は『1億円』が適切だ」と考えていたとしても、あえて買い手から「8000万円では安いので、1億円で買いますよ」という打診はされないでしょう。 このケースでは、売主は自身にとって不利なアンカリングをおこない、得られるはずの2000万円の利益を失ってしまったといえます。 さらにデューデリジェンス(買収監査)によってリスクが顕在化した場合は、買い手から8000万円よりも低いM&A価格を打診され、安く買いたたかれる可能性もあります。 小括 最初の提示金額は、その後のM&A価格交渉を左右する非常に重要な意味を有するものです。 相手の出方をうかがいながら、条件の提示をしていくべきです。 また、不利な金額を提示しないようにするためにも、合理性のある企業価値評価をおこなうことは最低限必要といえるでしょう。 M&A価格以外も!条件交渉を有利に進めるには? 条件交渉のコツは? 交渉の場面では、自身にとって最高の条件と、絶対に譲れない最低限の条件を設定し、あらかじめ譲歩可能な範囲を決めておきます。 そして、相手の譲歩可能な範囲についても予想して、交渉にのぞみます。 こうすることで、お互いが譲歩できる範囲を意識できるので、条件のすり合わせがしやすくなり、交渉を円滑に進めやすくなるでしょう。 また、条件交渉をおこなうタイミングも重要です。 売り手としては、M&A条件交渉をうまく進めるために、これらの各段階に応じて話し合っておくべきことがあります。 関連記事 会社売却の流れを解説!手続きや手順の注意点は? M&Aにおける注意点とは?会社売却側・買収側のリスクや確認事項を解説 M&A条件交渉のポイント①トップ面談(条件交渉しない) トップ面談とは、売り手と買い手側のトップが対面することをいいます。 トップ面談は、M&Aについて具体的な条件交渉をおこなうものではなく、その後のM&Aの交渉を円滑に進めるために、将来のビジョンやシナジー効果について話し合うものです。 トップ面談の主眼は、M&Aの具体的な交渉に入る前段階として、経営理念の確認や信頼関係の構築をすることにあります。 トップ面談の目的 将来のビジョンを話し合う シナジー効果を確認し合う 信頼関係を構築するetc. 売り手側がトップ面談で気をつけること 売り手にとってトップ面談は、買い手側が自社の経営理念を理解してくれるか、自社を託すに値する相手かどうかを見極める機会となります。 一方で、売り手も、買い手側から吟味される立場にあります。 M&A成約を目指すには、まずはトップ面談において、買い手側に好印象をもってもらう必要があります。 時間の厳守、服装や髪形などの身だしなみ、言葉遣いなどの最低限のマナーには十分気を付けましょう。 また、買い手側から投げられる質問について、誠実にこたえる姿勢を忘れてはいけません。 受け答えが難しい内容については、M&A仲介を担当してくれているアドバイザーなどに相談してから後日回答するという対応もあり得るでしょう。 関連記事 M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? M&A条件交渉のポイント②基本合意(条件の大枠を決める) トップ面談をとおして買い手側がM&Aを進める意向を固めた場合、買い手側から売り手に対して、意向表明書が提出されます。 意向表明書には、M&Aを進めたい意向の表明、M&Aのスキーム、譲受希望価格、譲受日、デューデリジェンスの実施、留意事項等が記載されます。 買い手候補が複数いる場合、売り手は、複数の買い手候補の意向表明書を見比べて、M&Aの相手を絞る必要があるでしょう。 買い手候補の絞り込みができた場合、その後、基本合意の締結に入ります。 基本合意について 基本合意は、最終契約に至る前までの段階で合意した条件を記したものではありますが、独占交渉権などを除いて基本的には法的拘束力を生じないものです。 基本合意書に記載する条件(一例) M&Aの譲渡価格 附帯条件に関する合意(旧代表者の引継ぎ期間の有無、キーパーソンの継続勤務の有無etc. ) 買収監査(DD) 最終譲渡契約の締結日 費用負担 独占交渉権 基本合意書の効力 準拠法・裁判管轄etc. M&A条件交渉のポイント③DDへの協力姿勢を見せる デューデリジェンス(DD)とは、買収監査のことです。 M&Aの対象となっている会社について、M&Aをおこなうにあたって各方面にリスクがないかどうかを、買い手側がチェックするのが、DDです。 DDでは、財務、法務、税務、ビジネス等の各方面でのリスクのチェックがおこなわれます。 売り手としては、買い手側から開示を求められた情報については、誠実に対応し、調査に協力する姿勢を見せることが大切です。 また、DDにより発覚し、最終合意の締結のために何らかの対処が必要になるケースもあるでしょう。 売り手側に対処が求められる例 たとえば、チェンジ・オブ・コントロール条項(主要株主や会社運営主体が変更になった場合、取引を辞める権利を有する)について、DDが実施されるまで失念している売り手も多く、問題となるケースが少なくありません。 チェンジ・オブ・コントロール条項がある場合は、適切なタイミングで、取引先に承認を得る必要があります。 M&A条件交渉のポイント④最終合意(詳細条件の交渉) DD実施後、売り手と買い手側の双方が、M&Aをおこなう意思を固めることができたら、M&Aの最終合意書の締結に向けて、詳細条件の交渉をおこないます。 最終合意書は、基本合意書とは異なり、法的効果が生じるものです。 最終合意書には、M&Aを成功させるために必要な条件を記載します。 最終合意書に記載する条件(一例) M&Aの取引対象物(株式、事業etc. )・M&A価格 クロージングの実施方法 役員退職慰労金の支払い 対象会社の役員の処遇 売り手の義務(引継ぎ、競業避止義務etc. ) 買い手の義務(対象会社の従業員の雇用継続、個人保証・担保提供の解消etc. ) 契約の解除/表明・保証/誓約事項/損害賠償/秘密保持義務/公表/準拠法・裁判管轄etc. M&Aのスキームによって、記載すべき条件も変わってきます。 最終合意書は、M&Aを成功させるために特に重要な書面です。 可能であれば、法律の専門家である弁護士にチェックしてもらう等して、不備のないM&A契約書を作成しましょう。 関連記事 M&Aの失敗事例は約7割?M&Aの難しい点とは?実例は? M&A条件交渉を有利に進めるコツは? M&A仲介会社をうまく利用する? M&Aの価格交渉は、譲渡側企業と譲受側企業の双方にとって、非常に重大な関心事です。 M&A価格の決定は、最終的には、両者の合意によって決まります。 しかしその前提の準備が、価格交渉に大きく影響するものです。 M&Aの価格交渉を有利に進めるポイントは、適切な企業価値評価をおこなうことや、交渉術を駆使することです。 また、M&Aでは、価格交渉以外にも交渉すべき条件があります。 ですが、M&Aを成功させるにはどのような条件が必要なのか、どうやって交渉を進めるべきかについて悩まれる方も多いものです。 そのような方は、まずはM&A仲介会社の無料相談をうまく活用して、交渉のポイントを教えてもらうのが良いでしょう。 --- ### 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/manda/9942 - Categories: 企業価値 企業価値向上とは?M&Aの成功とどんな関係があるの?企業価値を高める5つの視点とは?この記事では会社売却をご検討中の方に向けて、高額売却を目指すために企業価値を向上させる5つの視点を解説していきます。是非ご覧ください。 企業価値向上とは? 企業価値を高めるメリットは? 企業価値を高める5つの視点とは? 企業価値向上は、企業にとって重要な経営戦略のひとつです。 企業価値を高めることができれば、潤沢な運転資金を得られる、金融機関の融資が通りやすくなるなどのメリットを企業にもたらします。 企業価値が高い会社については、売り手優位でM&Aを進められる可能性も高くなります。 それでは企業価値を高めるには、どうすればよいのでしょうか。 この記事では、企業価値を高めるための要素、企業価値向上のための対策について解説していきます。 ぜひ最後までお読みください。 企業価値向上とは? 企業価値向上とは?メリットは? 企業価値向上とは、企業価値を高めることです。 企業価値は、企業の資産価値や将来の収益力などを総合的に評価して決まります。 M&Aにおいて企業価値を高めるメリットは、買い手からの高い評価を得られること、ひいては高値で売却できる可能性が高まることです。 現在、M&A市場は売り手市場とはいわれていますが、当然のことながら魅力的な企業でなければ、買い手が見つかりません。 M&Aを成功させるためには、その前提として、現在の企業価値を把握し、企業価値を向上するための「磨き上げ」をおこなう必要があります。 企業価値向上の方法は? 企業価値を高めるには、まずは現在の企業価値を知ること、そして企業価値の評価方法にのっとって高い評価を得られるように「磨き上げ」をおこなうことです。 企業価値の評価方法には、大きく分けて3種類のパターンがあります。 すなわち、資産の価値を参考に算定するコストアプローチという評価方法、類似企業との比較で算定するマーケットアプローチという評価方法、収益を参考にして算定するインカムアプローチという評価方法の3つです。 企業価値評価の方法 コストアプローチ例)簿価純資産法・時価純資産法 マーケットアプローチ例)EBITDAマルチプル法 インカムアプローチ例)DCF法 そして、企業価値向上の方法・会社の魅力の「磨き上げ」の方法というのは、これらの企業価値の計算方法にかかわる要素を向上させるという方法になります。 具体的には、事業の収益性の向上、投資効率の向上、財務の最適化のほか、無形資産の把握・活用、エンゲージメントの向上に努めることが、企業価値向上のための方法になります。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 企業価値を高める5つの視点 ①事業の収益性の向上 事業の収益性が高まれば、企業の利益も増加し、企業価値は向上します。 事業の収益性を向上させるためには、売上高の拡大、原価率の低減、利益率の向上などの取り組みが必要です。 様々な取り組みが考えられますが、たとえば、売上高の拡大のためには、経営戦略の見直しをおこない、営業活動の強化による新規顧客の獲得、顧客満足度の向上による既存顧客の売上増加をこころみます。 また、原価率の低減や利益率の向上のためには、アウトソーシングによる業務の効率化、仕入れ先の集約によるコスト削減といった対策を講じることが考えられます。 ②投資効率の向上 投資効率を高めることも、企業の利益を増加させ、企業価値を向上させることにつながります。 投資効率の向上とは? 投資効率の向上とは、資産を有効活用するということです。 資産が効率的に売上高を生み出すことが企業価値向上に資するので、売上につながらない資産を保有しないことも投資効率向上のポイントになります。 投資効率向上の検討の際は、おもに貸借対照表の資産について確認をしていくことになるでしょう。 投資効率を向上させるためには、企業の流動資産と固定資産を見直します。 流動資産の見直し 企業の流動資産としては、未回収の債権や在庫などがあげられます。 売掛金の回収や在庫の処分を早期に実現できれば、会社のキャッシュフローが改善され、事業活動に再投資できます。 売掛金や在庫は企業にとってリスクになるので、回転率をあげることが、健全な経営をおこなう上での課題になります。 企業の固定資産としては、遊休不動産や不採算不動産などの収益を生まない不動産などがあげられます。 固定資産の見直し 都会の一等地に不動産を所有していても、有効活用できていないのであれば、無駄な資産になってしまいます。 これらの固定資産の見直しをおこなうことで、無駄な税金を減らすことや、売却益を事業活動にあてることができるので、企業の投資効率を向上させることができます。 ③財務の最適化 財務の最適化とは、財務状況の見直しをおこなうことをいいます。 財務状況が良好であれば、企業は将来にわたって安定した経営を続けることができます。 そのため、財務の最適化をおこなうことは、企業価値向上につながります。 財務の最適化でよくいわれることは、財務レバレッジ効果や、負債の節税効果をうまく活用するということです。 こうすることで、事業の収益性を向上させなくても利益を上げることができ、企業価値を高めることができます。 財務レバレッジ効果 財務レバレッジ効果とは、ROA(総資産利益率)が負債利子率を上回っている限り、負債の利用がROE(自己資本純利益率)を上昇させるという効果のことです。 要するに、銀行から融資を受けていたほうが、融資を受けない場合よりも、企業の利益率が高くなるケースがあるということです。 以下の事例では、ROAよりも金利が低いことを前提にしているため、銀行から融資をうけない場合の利益率(約7%)よりも、融資を受けた場合の利益率(約8%)のほうが高くなっています。 ▼ 銀行から融資を受けない場合 ・資本金 :5000万円・負債  :なし・営業利益:500万円・法人税率:23. 40%・ROA(総資産利益率):500万円÷5000万円=0. 1≒10%・税抜き後当期純利益:500万円×(1‐0. 2340)=3,830,000円・ROE(自己資本利益率):3,830,000円÷50,000,000円=0. 0766≒7% ▼ 銀行から融資を受けた場合 ・資本金 :5000万円・負債  :1000万円・金利  :5%・営業利益:600万円・支払利息を損金で計上後の所得:600万円-(1000万円×0. 05)=550万円・法人税率:  23. 40%・税抜き後当期純利益:550万円×(1‐0. 2340)=4,213,000円・ROE:4,213,000円÷50,000,000円=0. 08426≒8% 負債の節税効果 また、借入金の利息は損金算入できるので、その結果、課税対象となる所得をおさえる節税効果があり、税負担を圧縮することが可能になります。 これらの効果をうまく活用することができれば、企業価値を高めることができます。 注意点 ただし、ROAの低下や過剰な有利子負債によって、倒産のリスクが生じることもあるので、十分に注意する必要があります。 ④無形資産   無形資産は、目に見えない資産のことです。 無形資産には、技術、組織、ネットワーク、顧客、ブランド、のれん、ノウハウなど様々なものがあります。 これらの無形資産が、企業の業績に良い影響を与えている場合もあるでしょう。 しかし、実際にM&Aをおこなう際、無形資産は、一般的な企業価値評価方法によって考慮されにくい側面があります。 そこで、無形資産によって企業価値を高めるためには、まずは自社にどのような無形資産があるのか把握し、無形資産の活用方法を確認する必要があります。 そして、買い手とのM&A価格交渉においては、コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチの考え方をうまく活用して、買い手を説得できるよう準備しておく必要があるでしょう。 ⑤エンゲージメントを高める 従業員のエンゲージメントも無形資産の一種ととらえることができるでしょう。 従業員のエンゲージメントとは、従業員が企業に信頼をおき、貢献したいと思う意欲のことです。 エンゲージメントを高めることができれば、仕事にやりがいを持つことができるので、従業員のモチベーションアップや離職率の低下につながります。そうすれば、従業員個人のみならず企業全体の生産性が向上し、会社の業績アップも期待できます。 このようにエンゲージメントを高めることは、企業価値を高めることにも関係するものです。 エンゲージメントを高める方法 従業員のエンゲージメントを高めるためには、従業員に企業のビジョンを共有し、職場環境の調整や職務への満足度を高める必要があるでしょう。 エンゲージメントを高める方法 企業のビジョン・経営理念を共有 従業員の成果を認める・賞賛する 従業員のキャリアを支援 人事評価の透明性の確保 社内のコミュニケーションを活性化 ワーク・ライフ・バランスを推進etc. 企業価値を高めるための相談先は... M&A仲介の専門家に無料相談? 企業価値を高めるには、現在の企業価値を知り、収益性、投資、財務、無形資産、エンゲージメントといった要素に注目しながら、企業価値向上の対策を実践する必要があります。 しかし不慣れなM&Aの準備をひとりでおこなうことには、不安がつきものです。 そのようなとき、頼りになるのがM&A仲介の専門家です。M&A仲介の専門家のなかでも、いちばん気軽に相談できるのは、M&A仲介会社ではないでしょうか。 必要に応じて弁護士、公認会計士、税理士などの専門家を紹介してくれるM&A仲介会社も多いため、企業価値の算定などで悩んだ場合でも安心してM&Aを進められるでしょう。 信頼できるM&A仲介会社を見つけることが、M&Aを成功させるための第一歩といえそうです。 --- ### M&Aの契約書の種類や内容は?契約の流れに沿って解説! - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/9777 - Categories: 会社売却の流れ M&Aの契約書はどんなもの?契約の流れは?この記事ではM&Aで必要になる秘密保持契約書、基本合意書、査収契約書などの契約書の内容、サンプル、注意点を流れに沿って解説しています。会社売却などをご検討中の方は、是非お読みください。 M&Aの契約とは? M&Aで必要になる契約書とは? M&Aの契約の流れは? M&Aでは、秘密保持契約書、基本合意書、最終契約書の締結が最低限必要となります。 また、M&Aといっても株式譲渡や事業譲渡など様々なスキームがあるので、それらの手法にあわせた契約締結も必要です。 そのほか、大半の方はM&A仲介を利用することになるので、M&Aアドバイザリー契約の締結も必要になります。 この記事では、中小企業の事業承継をご検討中の方などに向けて、M&Aで必要となる契約の種類、契約書の記載内容、契約の流れ、契約締結のタイミングなどを解説していきます。 ぜひ最後までご覧ください。 M&Aの契約書とは?種類と内容を解説 M&Aの契約書の種類は?サンプルはある? M&Aには、3段階のフェーズがあります。まず初めに検討・準備のフェーズ、次に相手企業との交渉のフェーズ、最後にクロージングのフェーズです。 このようなM&Aの流れにおいては、おもに以下の4つの契約書が必要になります。 M&Aの契約書(一例) M&Aアドバイザリー契約書 M&Aの基本合意書 M&Aの最終契約書 M&Aの秘密保持契約書 M&Aのスキームが株式譲渡であれば、最終契約書は株式譲渡譲渡契約書になります。また、事業譲渡によるM&Aが成立した場合は、事業譲渡契約書の締結が必要になります。 M&A契約書のサンプル これらの契約書のサンプルについては、経済産業省のホームページでも公開されています(2024. 1. 22現在)。 専門的な用語が記載されていて難しいものですが、気になる方は、上部のリンクを確認してみてください。 M&Aのアドバイザリー契約書 アドバイザリー契約とは? M&Aをおこなう場合は、自社の企業価値を分析し、現在のM&A価格を算定し、企業価値を高めるための対策を講じたうえで、買い手企業とのM&A交渉をおこない、所定の手続きを踏んで、成約を目指すという流れになります。 しかし多くの場合、買い手探しに苦労したり、企業価値評価(バリュエーション)の方法やM&Aの手続きの進め方が分からないといったお悩みがあるのも事実です。 その場合、M&A仲介会社やM&Aアドバイザーのサポートを求めるケースが多いでしょう。 相談だけなら無料といったケースもありますが、より本格的なサポートを受けたい場合は、アドバイザリー契約を締結します。 アドバイザリー契約を締結すると、自社の企業価値向上についてアドバイスをもらえたり、シナジー効果が高い買い手を探してくれたりするので、M&Aをスムーズに進められる可能性が高まるメリットがあります。 アドバイザリー契約のメリット M&Aの企業価値評価をサポート M&Aの相手企業を探してくれるetc. 契約の規定内容 多くの場合、M&A仲介会社が契約書の書式を準備してくれるので、書面の内容をよく確認して問題がなければ契約の締結に応じることになります。 アドバイザリー契約の内容(一例) 目的 業務の範囲 報酬の種類 中間報酬 成功報酬 契約の有効期間 直接交渉の禁止 解除 賠償 合意管轄・準拠法etc. 契約の手数料 M&A仲介を依頼する場合は、委託先によって手数料が異なるので注意する必要があります。 M&Aのアドバイザリー契約を締結するときは、ニーズや費用に応じて、検討しましょう。 M&A仲介の態様には、両手取引(譲渡側と譲受側の双方のアドバイザーを兼ねる仲介)片手取引(譲渡側と譲受側のいずれかの専任アドバイザーになる仲介)、M&Aマッチングプラットフォームの提供など様々です。 一般的にみると、片手取引のほうが、仲介手数料が高額になる傾向があるでしょう。 なお、M&Aアドバイザリー契約で発生する可能性がある手数料としては、以下のようなものがあります。 アドバイザリー契約の費用(一例) 相談料アドバイザリー契約の締結前におこなうM&Aの相談の際に必要な費用。無料相談をおこなってくれることも多い。 着手金M&A仲介業務に着手してもらうために支払う費用。アドバイザリー契約の締結時に発生する。アドバイザリー契約を解約しても、返金されない。 中間報酬M&Aの交渉相手と基本合意を締結できたときに必要な費用。 成功報酬最終契約を締結できたときに必要な費用。 月額報酬M&Aの仲介業務について毎月発生する手数料。契約が終了するまで継続して支払う。 関連記事 M&A仲介手数料の相場はいくら?誰が払う? M&Aの秘密保持契約書 M&Aでは秘密保持契約書を締結することも一般的です。 秘密保持契約書とは、当事者が相互に開示する機密情報を第三者に開示しないこと、目的外利用しないことを誓約するための契約書です。 M&Aでは、企業の存続に関わる重大な情報を共有することになるため、その情報が不当に流出し、悪用されることを防ぐ必要があります。そのため、M&Aにかかわる当事者間においては、秘密保持契約を締結することが必須です。 秘密保持契約書の内容(一例) 秘密情報の定義 秘密保持義務の内容 情報開示が許される範囲 目的外使用の禁止とその例外 秘密情報の返還・廃棄 契約の有効期間 賠償 合意管轄・準拠法etc. 秘密保持契約書の締結の相手方 秘密保持契約書は、先ほどご紹介したアドバイザリー契約を締結する時や、買い手企業との交渉に先立って、締結します。 アドバイザリー契約書とともに秘密保持契約書を締結することで、M&A仲介業者から企業の秘密が漏れるリスクを防ぐことができます。 また、M&Aの相手方の候補となる企業との間で秘密保持契約を締結することも重要です。 買い手企業を探す段階では、企業の名前をふせて概略のみ記載したノンネームシートを用います。 その後、M&Aにふさわしい相手方があらわれた場合は、譲渡企業の詳細な情報が記載された企業概要書(IM・インフォメーション・メモランダム)という資料をもとに、お互いにとってシナジー効果の高いM&Aなのかなどを緻密に検討する段階に進みます。この段階では、企業秘密にも深く情報をあつかうことになるので、秘密保持契約を締結する必要があります。 秘密保持契約書のサンプル 秘密保持契約書のサンプルは、先ほどの経済産業省のホームページでも紹介されているほか、中小機構のホームページでも確認することができます(2024. 1. 22現在)。 専門家に相談なさる前に目を通しておきたいという方は、中小機構の「支援者向け事業承継支援マニュアル令和5年度版」の80~81ページに秘密保持契約書のひな型が掲載されているので、チェックしてみてください。 M&Aの基本合意書(基本合意契約書) 基本合意書とは? M&Aの基本合意書は、売り手企業と買い手企業の間で、最終契約に至る前の中間段階で締結する書面です。 基本合意書は、M&Aの対象、価格、スキーム、時期などの基本的な条件について合意が形成できたことを、確認する意味合いで作成されます。 締結のメリット①成約の動機付け 基本合意書は、基本合意契約書とも呼ばれることはあります。 しかし、通常は、独占交渉権、秘密保持義務、買収監査(デューデリジェンス・DD)の付与、裁判管轄、準拠法などの一定の条項を除いては、法的拘束力を生じません。(法的拘束力がある条項に違反した場合は損害賠償などの法的措置をとられる可能性はありますが、それ以外では法的責任は問われません。) とはいえ、法的拘束力はなくても、基本合意書を締結する意味はあるでしょう。なぜならば、基本合意書の締結が、売り手と買い手の双方を心理的・道義的に拘束し、M&A成約を目指す動機付けとなるからです。 締結のメリット②スケジュール管理 また、基本合意書には、M&Aのスキームを実行する日の目途、基本合意書の有効期間などについて記載されるので、M&A成約までのスケジュールを明確にすることができます。 この点は、後継者問題でお悩みの売り手や、退任を急ぐ売り手にとっては、とくにメリットを感じるものでしょう。 基本合意書の注意点 ただし基本合意書の締結は、買い手側にメリットが多いということも覚えておくべきです。 基本合意書に規定されることが多い独占交渉権は、売り手が他の買い手候補とM&A交渉をすることを禁止する条項です。 また基本合意書に規定されたM&A価格がアンカーとなり、その後のDDしだいで金額が下がることもあります。 基本合意書の締結は、実際の流れによっては省略するケースもありますが、多くの場合、避けては通れないものです。 売り手としては、基本合意書を締結する相手として、ふさわしい買い手がどうかを見極める必要があるでしょう。 基本合意書の記載内容 M&Aの基本合意書に記載される内容としては、次のような事項が一般的です。 基本合意契約書の内容(一例) 取引対象(株式、事業、資産etc. ) 譲渡価格 附帯条件(役員・従業員の雇用条件、ロックアップetc. ) デューデリジェンスの実施 最終契約の締結日 費用負担 公表 独占交渉権・買収監査 秘密保持義務 基本合意書の法的効力(有効期限、法的拘束力etc. ) 裁判管轄・準拠法 ※独占交渉権、秘密保持義務、有効期限、裁判管轄、準拠法などの条項は、一般的に法的拘束力を有する条項。規定内容によっては違約金を支払う義務が生じることもある。 M&Aの最終契約書 最終契約書とは? M&Aの最終契約書とは、M&Aの条件をまとめて実行するために締結する最終的な契約書のことです。 最終契約までの流れとしては、まず買収監査を終えた後に、売り手と買い手の双方が、M&Aを実行する意思を固めるというプロセスが必要です。 買収監査 買収監査は、買い手がM&Aを実行するか判断するために、対象会社の財務、法務、税務などに重大なリスクをかかえていないかについて詳細に調査すること。 通常、実際の調査については、公認会計士、弁護士、税理士などの専門家に委託する。 デューデリジェンス、DDともいう。 そして、双方がM&Aの成約に向けて、さらに詳細な条件交渉をおこないます。 条件交渉がまとまったら、最終契約を締結するという手順になります。 最終契約書は、M&Aに関する契約を履行するために締結するものになります。 そのため、M&Aを実施するにあたり、必ず必要になる具体的な条件を盛り込む必要があります。たとえば、株式譲渡の承認決議を経ること等です。 契約違反の効果 最終契約書の場合、基本合意書とは異なり、法的拘束力は全ての条項に生じることになります。 すなわち、終契約書に違反した場合、損害賠償請求や、M&A契約の解除をされる可能性が非常に高くなります。 最終契約書の記載内容 M&Aの最終契約書には、以下のような内容を規定することになります。 最終契約書の内容(一例) 取引対象(株式、事業、資産etc. ) 譲渡価格、支払方法 クロージングの実施方法 表明保証(譲渡対象に問題がないこと) クロージングの前提条件(株主総会決議、取締役会決議etc. ) クロージングにともなう誓約事項(ロックアップ条項、競業避止義務、従業員の勧誘禁止etc. ) 個人保証・担保提供の解消 賠償/解除/費用負担/公表/裁判管轄・準拠法etc. 最終契約書のひな形については、M&Aの手法ごとに紹介します。 次の目次にお進みください。 株式譲渡によるM&Aの流れと契約書 株式譲渡によるM&A契約とは?流れは? 株式譲渡とは、自身の保有する株式を譲渡することで、オーナー経営者としての地位も譲渡するというM&Aの手法のことをいいます。 中小企業の事業承継をおこなう場合、株式譲渡というM&Aの手法が代表的なスキームです。 基本的には株式譲渡は株式を売却すればよいものですが、中小企業の場合、株式に譲渡制限がついていることがほとんどでしょう。 その場合、株式譲渡によるM&Aをおこなうには、株主総会や取締役会の承認決議が必要になります。 流れとしては、TOP面談をおこない買収監査を終え、いよいよM&Aが現実味を帯びたという時点で株主からの譲渡承認請求をおこなうことになるでしょう。 最終譲渡契約書には、クロージングの前提条件として会社の承認決議を要することを記載しておく必要があります。 株式譲渡契約書の記載内容・注意点 株式譲渡契約書の記載する項目としては、前述のとおり、取引対象、譲渡対価、クロージングの条件など多岐にわたります。 具体的な規定方法としては、たとえば、株式譲渡の譲渡対価であれば、「金〇〇円(1株あたり金〇〇円)」などと記載しておくことになるでしょう。 また譲渡対価の支払いと引き換えに、銀行印・通帳、印鑑証明書、株券の交付をおこなうなどの条件も定めておく必要があるでしょう。 契約書のサンプル 株式譲渡契約書のサンプルについては、サイト上で公開されていることも多いものです。 ただし、案件ごとに重要なポイントに違いがある可能性もあります。 相手方との間でまとまった条件を不備なく規定しておくために、念には念を入れて契約書を作成したいとお考えの場合は、M&A仲介会社や弁護士に相談してみても良いでしょう。 株式譲渡の基本合意書、最終契約書(株式譲渡契約書)についても、経済産業省のホームページのほか、中小機構の「支援者向け事業承継支援マニュアル令和5年度版」の82~91ページでも紹介されています(2024. 1. 22現在)。 関連記事 事業譲渡と株式譲渡の違いは?目的・メリット・デメリットなど解説 事業譲渡によるM&Aの流れと契約書 事業譲渡によるM&Aとは?流れは? 会社の重要な財産の全部または一部の譲渡については、原則として、取締役会決議および株主総会の特別決議が必要となります。 これらの承認決議を経ることで、株式譲渡によるM&Aを実行することができるようになります。 事業譲渡契約書の内容 譲渡対象に関する規定 事業譲渡契約では、特に譲渡の対象となる事業の範囲については、具体的に細かく規定しておく必要があるでしょう。 また、資産、債権、債務のほか、従業員の雇用関係についての規定も必要です。 譲渡した事業に従事していた従業員が、引き続き業務に従事するには、M&Aの相手方企業への移籍について従業員個人の承諾を得ることと、事業譲渡契約書に従業員の処遇について明記しておくことが必要になります。 善管注意義務に関する規定 そのほか譲渡日までは引き続き事業を運営しておく必要があるので、買い手が損失を被らないように、事業譲渡の実行日まで善管注意義務が規定されることが一般的です。 損害賠償請求される可能性があるため、売り手としては善管注意義務に違反しないように注意する必要があります。 善管注意義務とは、一般的にその立場にある人であれば可能であろう注意を払うという義務です。 かりに事業譲渡の実行日までに何らかの損失がでてしまった場合、その判断の前提となる事実の認識に重要な誤りがあったり、意思決定の内容が企業の経営者として著しく不合理だったりするときは、善管注意義務違反に問われる可能性が生じます。 事業譲渡契約の注意点まとめ 譲渡の対象となる、資産・債権・債務の範囲を明確にする。 従業員の雇用関係について忘れずに規定する。 事業譲渡の実行まで善管注意義務に配慮する。 契約書のサンプル 一般的な契約書のサンプルを流用していると、そのまま鵜呑みにしてしまって、自身が注意しておくべきことについて認識できないこともあるでしょう。 契約締結の際には、不備のない契約書の作成は不可欠であるとともに、契約書の規定内容について十分に把握しておくことが重要です。 事業譲渡に関する基本合意書・最終契約書についても、経済産業省のサイト、および中小機構の「支援者向け事業承継支援マニュアル令和5年度版」の92~96ページで、サンプルを確認することができます。 M&Aの契約の流れ・契約書で悩んだときは M&Aをおこなう場合、M&Aアドバイザリー契約、基本合意、最終契約、秘密保持契約などの契約を締結する必要があります。 契約によって、契約の締結時期や、契約書の規定内容も違います。 昨今、中小企業のオーナーがM&Aによる事業承継をご検討されるケースが増えています。 人生において何度もM&Aをご経験される訳ではないので、不慣れな手続きに不安をお持ちの方も多いものです。 M&Aの契約の流れや契約書の作成でお悩みの際は、頼れる専門家に相談するというのが一つの手です。 M&A仲介会社であれば、必要に応じて契約書のひな型を提供してくれたり、専門家を紹介してくれたりするので、安心です。 M&Aの契約書で悩んだときは、弁護士に相談して一緒に作成できるケースもあるでしょう。 まずは無料のお問合せなどを活用して、頼りになるM&Aのパートナーを見つけてみてください。 M&Aを進めるうえでの注意点については「M&Aにおける注意点とは?会社売却側・買収側のリスクや確認事項を解説」の記事でまとめていますので、あわせてご覧ください。 --- ### 後継者不足の解決策はM&A?後継者問題の実態は… - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-15 - URL: https://atomfirm.com/manda/10006 - Categories: 後継者不足 後継者不足の解決策は?M&Aで後継者不足を解決した事例はある?後継者問題の実態は?この記事では、親族承継、社内承継、M&A(第三者承継)のメリット・デメリットの比較、解決事例を紹介しています。現在、後継者不足でお悩みの中小企業の経営者の方は是非ご覧ください。 後継者不足の解決策は? 後継者問題の実態は? 後継者問題の解決事例は? 後継者不足は、中小企業にとって深刻な問題です。 後継者がいない、または適任者がいないといった後継者問題が生じた場合、事業を廃業せざるを得ないケースも少なくありません。昨今、このような後継者不在による隠れ倒産が急増しています。 ですが事業の廃業は、経営者や従業員、取引先の今後の生活に大きな影響を与えるものです。 この記事では、後継者問題に悩む経営者の方に向けて、後継者不足の解決策、M&Aのメリット、後継者問題の相談先、後継者不足の解決事例などを解説しています。 ぜひ最後までご覧ください。 後継者不足の解決策 解決策①親族内承継(親族から後継者を指名) 後継者不足の解決策として、最も一般的なのが親族内承継でしょう。 親族内承継とは、親族の中から後継者を指名する方法です。 中小企業の経営者の場合、とくに実子に後を継がせたいと思うものです。しかし、実子が後を継がない選択をした場合、後継者問題が表面化します。 このような場合、経営者としては「実子でなくても、せめて自身の血縁者に後を継いでもらいたい」と考えるものでしょう。 親族で家業を切り盛りしているようなケースであれば、実子以外の親族を後継者とすることで、後継者問題を解決できる可能性があります。 ▼この解決策のメリット 事業のノウハウや伝統が継承されやすい 従業員の雇用が維持されやすい 事業の存続可能性が高まる ▼この解決策のデメリット 適任者がいない可能性がある 親族間のトラブルが発生する可能性がある 解決策②社内承継(社員から後継者を指名) 親族内承継の次にポピュラーな後継者不足の解決策が、社員承継です。 社員承継とは、社員から後継者を選んで事業を承継させる方法です。 日頃から社員の活躍に目を凝らし、優秀な人材に目星をつけておけば、いざという時に後継者として指名することも可能でしょう。 自社の内部事情にくわしく、経営能力も秀でているのであれば、実子などの血縁者を後継者にするよりも、事業を発展させてくれるかもしれません。 ▼この解決策のメリット 社員なので、早期に育成が可能 従業員のモチベーション向上につながる 事業の存続可能性が高まる ▼この解決策のデメリット 適任者がいない可能性がある 従業員間の不公平感が発生する可能性がある 解決策③第三者承継(M&A) 親族内承継や社員承継以外の後継者不足の解決策として、第三者への事業承継(M&A)があります。 M&Aとは、他の企業との合併・買収により、事業を承継する方法です。 M&Aの割合はどのくらい? 2023年の事業承継について、ある統計では、以下のような結果がでています。 M&Aによる事業承継は、全体の約20. 3%も占めており、後継者不足の問題を解決する有効な対策であることが分かります。 社内で後継者に昇格したケース約35. 5% 身内を後継者とするケース約33. 1% M&A(買収・出向・分社化)約20. 3% 2023. 11. 21 株式会社帝国データバンク「特別企画:全国「後継者不在率」動向調査(2023年)」https://www. tdb. co. jp/report/watching/press/pdf/p231108. pdf(2023. 12. 29現在)より数値を抜粋して整理した。 M&Aの手法 さて、中小企業がおこなうM&Aの手法のうち、代表的なものとしては株式譲渡があげられます。 多くの場合、中小企業の株式には譲渡制限がついており、同族経営に支障をきたさない工夫がされています。 とはいえ株主総会の承認決議があれば、非上場株式でも第三者に譲渡可能です。 経営ノウハウのある買い手を見つけて株式譲渡ができれば、後継者問題を解決できる可能性があります。 M&Aの注意点 M&Aの後は、新しい経営者による経営方針や事業内容の変更によって、売り手側企業の従業員が不安を感じたり、不満を持ったりする可能性があります。 社員は、今まで会社に尽くしてきてくれた仲間でもあり、M&A実施後の経営統合を成功させるために大切な人的資源でもあります。 そのため、M&Aの実施に際しては、従業員のその後の処遇についても十分配慮する必要があります。 また、従業員にM&A実施についての報告をおこなう際は、適切なタイミングで、丁寧な説明を心がけましょう。 ▼この解決策のメリット 後継者候補の育成は不要 事業の規模拡大や事業内容の転換も期待できる ▼この解決策のデメリット 株式譲渡の対価の算定が難しい 従業員が不満に思う可能性がある 解決策も提示?後継者不足の相談先は? ①公的機関:事業引継ぎ支援センター 後継者問題を解決するために、M&Aを検討している場合、まずは買い手とのマッチングが必要です。 中小企業のM&Aについて相談できる公的機関として、事業承継・事業引継ぎ支援センターという公的機関があります。 これは国が設置する公的相談窓口で、中小企業の事業承継に関する相談を無料でおこなってくれる公的機関です。 また、後継者となる人材が名簿登録されているので、後継者不在の中小企業から問い合わせをした場合、マッチングできそうな後継者候補がいるときは、お知らせしてもらえます。 ただしM&A実務について、企業価値の算定、条件交渉、契約書の作成などを専門家に依頼する場合は、手数料が発生するので注意が必要です。 ▼この解決策のメリット 公的機関なので安心感がある 相談料は無料 ▼この解決策のデメリット M&A実務のサポートには手数料がかかる 相談窓口が限られている ②民間:M&A仲介会社など 後継者問題を解決するための相談先として、民間のM&A仲介会社があげられます。 民間の相談先は、公的機関よりも専門的なサポートを受けられる場合も多いでしょう。 ただし、サポート内容や手数料はM&A仲介会社によって異なります。 ご自身のニーズにあったM&A仲介会社を選びましょう。 ▼この解決策のメリット 事業承継の専門家がサポートしてくれる 事業承継の実行までのスピードが早い 自分のニーズにあったサービスを選べる ▼この解決策のデメリット 費用が高額になることがある 両手取引の仲介の場合、買い手優位で成約に至る懸念がある 関連記事 事業承継の相談窓口は?事業承継成功の秘訣は専門家への無料相談? 後継者問題の実態は深刻? 後継者不足で廃業?後継者不在率は? 後継者不在率とは、事業の実態がある企業のうち、後継者が決まっていない企業の割合のことです。 後継者不在率は、近年、改善傾向にあるとはいわれています。というのも、帝国データバンクが発表した「後継者難倒産」動向調査によれば、6年連続で下がり、2023年の後継者不在率は53. 9%になりました。 ただ、事業承継の適齢期とされる60歳代の経営者の後継者不在率は、37. 7%にものぼるという数値も出ています。 これらのことからすると、まだまだ多くの方が後継者不足の問題に頭を悩ませているといえるでしょう。 高齢になればなるほど、病気や死亡により、後継者の教育がままならなくなります。 早期に後継者候補となる人材を見つけ出し、M&Aに踏み切る勇気も必要になるといえるでしょう。 関連記事 後継者不足の場合は廃業?倒産を防ぐ方法・解決策とは 後継者不足の原因は? 後継者不足の原因は、後継者育成の失敗や、後継者候補自身の辞退など様々です。 素質がないので継がせられない 実子に会社を継いで欲しいと思い、長い目で後継者教育に力を注いできた場合でも、経営の素質がなかったというケースもあるでしょう。 この場合、ほかにも目をかけている後継者候補がいなければ、後継者不足の問題が生じてしまいます。 後継者候補がみずから辞退 後継者候補として申し分ない人望や能力があるとしても、候補者側が辞退を申し出たために、後継者不足の問題が生じることもあります。 後継者となることに重圧を感じ、後継者になりたくないと考えるケースもあるのです。 たとえば以下のような事情が原因で、「自身が引き継いだ場合にうまく会社運営ができるのか」と不安になる後継者候補も多いものでしょう。 辞退の原因となる事情(一例) 経営者としての重い責任経営状態の維持・改善を図らなければならない重圧 個人保証を負いたくない 旧態依然とした経営方針についていけないetc. 後継者は、経営者としての責任や負担を負うことになります。後継者として会社を引き継ぐことは、ただ単に、事業のノウハウや伝統を継承するだけではありません。先代から継いだ会社の経営状態の維持あるいは改善を図る必要があります。 また、先代のオーナーの個人保証がはずれた場合、その後継者が会社の債務の保証人になるというリスクが発生する可能性があります。 そのほか、中小企業の多くは、旧態依然とした典型的なワンマン経営、古参社員との関係構築など組織としての課題が多いこともしばしばです。 後継者候補がこのような不安をいだく場合には、払拭してあげることが必要です。それが難しい場合には、M&Aによる事業承継を検討するのが良いでしょう。 後継者問題をM&Aで解決できた実例 後継者問題の解決事例① SRホールディングス(HD)が、後継者問題をかかえていた「グラフィック機材(株)」の株式を取得することで、子会社化した事案があります。 買い手企業であるSRHDは事業多角化を進めたい狙いがあり、このM&Aを進めたといわれています。 グラフィック機材側の雇用は維持され、社名や業務内容も変わらないという条件で、最終合意が締結されました。 物流や貿易、アパレル事業を傘下に持つSRホールディングス(HD、広島県福山市)は印刷関連業のグラフィック機材(岡山市)の全株式を取得し、21日に契約書を交わした。日本M&Aセンター(東京・千代田)が仲介した。グラフィック機材は後継者不在の課題を解決し、SRHDのもとで事業存続とさらなる成長を目指す。 2023. 9. 21 日本経済新聞 https://www. nikkei. com/article/DGXZQOCC210OA0R20C23A9000000/(2023. 12. 29現在) 後継者問題の解決事例② 三光産業が、後継者問題をかかえていた「ベンリナー(株)」の株式を取得することで、子会社化した事案があります。 ベンリナーは、欧米を中心に世界30カ国の販売チャンネルを保有していました。 これは、アジアから欧米への販売チャンネルを広げたいという三光産業のニーズに合致するものでした。 このM&Aについても、単なる後継者問題の解決策にとどまらず、双方にとって高いシナジー効果を得られるものになったといえるでしょう。 シールやラベルの印刷を手掛ける三光産業は22日、野菜調理器を製造するベンリナー(山口県岩国市)の株式全てを同日付で取得し、子会社にしたと発表した。買収額は7億6800万円。ベンリナーには後継者がいないため、三光産業の経営ノウハウを生かしてさらなる成長を目指す。 2022. 12. 22 日本経済新聞https://www. nikkei. com/article/DGXZQOCC221GY0S2A221C2000000/(2023. 12. 29現在) 関連記事 事業承継の失敗事例3選!成功事例を目指すための教訓とは... 後継者不足で頭を抱える経営者はM&Aを検討しよう 昨今、中小企業の後継者不足は深刻な問題となっていますが、第三者への事業承継が後継者問題の解決策となる可能性があります。 事業承継の方法としては、株式譲渡が考えられます。 しかし非上場企業の場合は特に、その株式の買い手となる第三者を自力で探すことに限界を感じるものでしょう。 M&Aを仲介してくれる公的機関や、民間のM&A仲介会社などをうまく活用して、M&Aの相手を見つけるのがおすすめです。 --- ### M&Aで会社を高く売る方法とは?買い手へのアピールポイントを解説 - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/10224 - Categories: 会社売却の相場 会社を高く売るためには、自社の強みや優位性を明確にし、買い手候補の企業に効果的にアピールして交渉していく必要があります。会社を高く売りたい場合は、M&Aの成約実績が豊富な仲介会社などの専門家を活用しましょう。 M&Aで会社売却を検討する場合、長年経営してきた会社を売却するのだから、なるべく高値で買ってほしいと考える方が多いでしょう。 会社を高く売るためには、自社の強みや優位性を明確にし、買い手候補の企業に効果的にアピールして交渉していく必要があります。 他にも、会社売却の適切な時期と方法を踏まえて交渉を進めることや、買い手企業にとってのシナジー効果など、会社を高く売るためには踏まえなければならないポイントが数多くあります。 会社を高く売りたいとお考えの方は、本記事の内容を参考にしてください。 会社を高く売る方法・ポイントは? 会社を高く売る方法・ポイントとしては「自社の強み・優位性を明確にする」「適切な売却時期と方法を選ぶ」「買収後のシナジーをアピールする」の3つが挙げられます。 自社の強み・優位性を明確にする 自社の強みや優位性を明確にすることで、買い手にとっての魅力的なポイントを把握することができます。 買い手は、買収した後の将来性を見据えて、投資判断をします。 自社にしかないユニークな強みを買い手候補に伝えることができれば、高い評価を得ることができ、売却額も高くなるでしょう。 例えば、自社の強み・優位性としては「高い市場でのシェア」や「独自の技術や特許」などが挙げられます。 市場シェア 自社が属する業界でのリーダーシップや高い市場シェアは、買い手にとって魅力的なポイントです。 たとえば、業界でのリーダーシップは競合他社に先駆けて新しい市場ニーズに対応できる能力を示しています。また、高い市場シェアは広範な顧客基盤を意味し、これにより買い手はすでに確立された信頼関係を活かして事業を拡大できるでしょう。 革新的な技術や特許 新しい技術や特許を持っていることは、買い手にとって非常に魅力的です。これにより、将来の成長のポテンシャルを強調し、M&A市場での競争上の優位性を築くことができます。 例えば、最新の技術動向や、保有する特許を活かして解決した具体的な課題について説明することで、技術力の高さや競争力を理解してもらいやすくなります。 これにより、技術的な強みが高く評価されるでしょう。 最新の技術トレンドに敏感で、先進的な製品開発に注力しているケースなどがあれば、積極的にアピールするべきです。 良好なブランドイメージ 良好なブランドイメージは、企業の価値を引き上げ、顧客との信頼関係を築く上で非常に重要です。高いブランド価値を持つ企業は、そのブランドを活かして製品やサービスを効果的に提供でき、M&Aの買い手にとっても重要な資産です。 例えば、最新の顧客満足度調査結果を通じて、自社製品やサービスに対する顧客の高い評価や満足度をアピールできます。また、過去の成功事例やブランド活用の事例を挙げ、企業がどのようにブランドを育み、市場で差別化してきたかを具体的に示すことが重要です。 これにより、買い手は売り手企業のブランドについて理解しやすくなり、ブランドイメージが良好だと評価されれば、会社を高く売れる要因となるでしょう。 安定した財務状況 M&Aの買い手は安定した財務状況を重視します。健全な財務状況は、買い手にとって安心感を与えるポイントです。適切な財務データの整備と公開は、企業の評価において重要です。 最新の財務報告書や収益性の向上に関する取り組みについて、買い手にアピールしていくことで、高く評価されるようになるでしょう。 優秀な人材 売り手企業に優秀な人材がいることで、M&Aの買い手は大きな魅力を感じます。強力な経営陣と組織文化があれば、買い手候補は興味を示すことでしょう。 たとえば、経営陣が業界で豊富な経験を持ち、成功を収めた実績があることは、企業の将来性に対する確かな指標となります。また、協力的でチームワークを大切にする組織文化により、スムーズで効果的な業務遂行が可能となり、成果に繋がります。 実際の成功事例や従業員の育成プログラムの実施など、具体的な事例をアピールすることで、人材のスキルや組織文化がどのように成果に結びついているかを分かりやすく伝えることができます。これにより、買い手は企業の人的資産が持つ価値を理解しやすくなるでしょう。 関連記事 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 適切な売却時期と方法を選ぶ どのタイミングで会社売却を進めるのかによっても、売却価格は大きく変わってきます。 買い手候補が新事業に投資している段階や、人員整理を進めている場合には、交渉まで進むことが難しいケースもあり得ます。 自社内で離職が相次いでいるような段階も、高額で売却することが難しくなるでしょう。 また、会社売却の方法については、株式譲渡で売却するのか、事業譲渡で売却するのかなど、方針を定める必要があります。 株式譲渡は自社の経営権を含めて、企業全体を売却する方式です。 事業譲渡は事業の一部もしくは全部を売却しますが、経営権は売り手の手元に残る方式です。 自社の状況や目標に合わせて、適切な売却方法を選ぶことが重要です。 関連記事 事業譲渡と株式譲渡の違いは?目的・メリット・デメリットなど解説 買収後のシナジーをアピールする シナジーとは、M&Aにおける相乗効果のことです。 売り手企業と買い手企業が統合することで、それぞれの企業が単独で事業を行うよりも大きな効果を生み出すことを意味します。 買主に提供できる付加価値を最大化し、具体的な計画と見込みを強調することにより、会社を高く売却できる可能性が上がるでしょう。 関連記事 M&Aのシナジー効果とは?シナジーの種類と分析まとめ 会社売却の流れ 会社売却の流れは大きく分けると、準備段階、交渉段階、クロージングの3段階に区別されます。 準備段階 ①利用するM&A仲介会社やアドバイザリーなどの業者を選定 M&A・会社売却の準備段階では、まずは利用するM&A仲介会社やアドバイザリーなどの業者を選定します。 自社の状況や周囲にアドバイザーが既にいるのかなどを総合的に考慮して、仲介会社を使うのか、アドバイザリーを使うのか、マッチングプラットフォームを使うのかを決めていきましょう。 ②企業価値の算定・書類の作成 担当アドバイザーが決まったら、企業価値を算定したり、買い手候補に提出する書面を作成したりします。 準備段階で必要となる主な書類 ノンネームシート(NN)企業名を特定せずに、売り手の業種、所在地、財務情報などの情報をまとめた書面 秘密保持契約書(NDA)事業や財務状況などの秘密を外部にもらさないことを約束する契約書 企業概要書(IM)売り手企業の情報を詳しく記載した書面 意向表明書(LOI)買い手候補の企業から、売り手企業に対して、会社売却の条件を記載した書面※LOIは買い手候補から送付される。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 交渉段階 ①トップ面談の実施 トップ面談とは、売り手と買い手のトップ同士が面談をおこなうことです。 準備段階を経て買い手候補を絞り込んだら、トップ面談を繰り返し行い、売却価格、支払条件、残留条件など基本的な条件を詰めていきます。 ②基本合意書(MOU)の締結 この条件が決まった段階で、基本合意書(MOU)を締結します。ここでは、買い手候補となる企業から「独占交渉権」についての条項を盛り込むよう要求されることが一般的です。 ③デューデリジェンス 基本合意書を締結したらデューデリジェンス(DD)を実施します。 DDとは、売り手企業の財務状況、事業内容、将来性などについて、詳細な調査を行うことで、買収監査とも呼ばれます。 DDは、買い手企業がM&Aを実行するかどうかの判断をくだすために、必須の手順です。 DDの結果、簿外債務が把握されてしまい、会社売却価格の見直しを提案されることもあります。最悪の場合、交渉決裂となるケースもあり得ます。 ④最終条件交渉 デューデリジェンスが終われば、最終条件の交渉に進みます。DDの結果として簿外債務やリスクなどが把握されてしまうと、価格や条件の修正を提案されることもあります。 クロージング 最終条件が決定したら、最終契約書(DA)を締結します。 この契約書には、売却価格や支払条件、残留条件など、合意されたすべての条件が具体的に記載されます。 最終契約書は基本合意書とは異なり、法的拘束力を持つ契約書です。契約に違反した場合は損害賠償責任が発生し、不備があれば後日紛争の原因となる可能性があります。 最終契約書は非常に重要であり、慎重な取り決めが必要です。契約書の内容は法的な拘束力を持つため、専門家のアドバイスを受けつつ、双方が十分に納得できる形で最終化していきましょう。 M&Aを進める場合の注意点については「M&Aにおける注意点とは?会社売却側・買収側のリスクや確認事項を解説」の記事で、くわしく解説しています。あわせてご覧ください。 会社を高く売りたいときには専門家に相談を 会社を高く売りたい場合は、M&Aの成約実績が豊富な仲介会社などの専門家を活用しましょう。 会社売却の初期段階から相談しておくことで、企業価値評価(バリュエーション)や買い手探しを、効率的に進めることができます。 なお、会社を高く売って、最終手取り額を増やしたい場合には、手数料や費用の安い業者を選ぶことも重要です。 費用負担が軽くなると、実績があまりなかったり、サービスが不十分だったりする可能性もありますが、まずは複数の業者と相談して、費用の見積もりを取ることをおすすめします。 --- ### M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/manda/9424 - Categories: 企業価値 M&Aにおける企業価値評価はバリュエーションとも呼ばれ、会社全体の価値や株式の価値を算出することを意味します。コストアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチの3つの手法を状況によって使い分け、自社に適したバリュエーションを行いましょう。 自分の会社を売却しようと考えた際、自社がどのくらいの企業価値になるのか気になることでしょう。 M&Aにおける企業価値評価はバリュエーションとも呼ばれ、会社全体の価値や株式の価値を算出することを意味します。 日本に存在する500万以上の会社のうち、99%以上が証券取引所に上場していない企業です。つまり、ほとんどの会社は、証券市場で株の売買がされていないということです。 非上場企業は、公開されている株価によって価値を評価することができないため、M&Aで会社売却を行う場合には企業価値評価が重要になるのです。 会社売却を本格的に進める前に、自社の企業価値を把握しておくと、買い手と価格交渉をスムーズに進めることができます。 自社の価値を査定するためには、事業計画や財務状況を調査、分析することが重要です。 この記事では、企業価値の評価方法や指標となる項目について解説します。 会社売却を進める前に、どのように自分の会社を評価すればいいのか分からない方は、最後までお読みください。 M&Aにおける企業価値とは? 企業価値とは、企業全体の経済的価値のことです。 会社の価値を表現する用語としては、他に「事業価値」「株主価値」などがあります。 企業価値は、事業から創出される事業価値に加えて、事業以外の資産価値などを含めた企業全体の価値を示しています。 企業価値を決める指標は? 企業価値を決める要素としては、業種・業界の成長性、従業員数、財務状況の健全性などをはじめ、多種多様な要因が複雑に組み合わさって決まります。 日本公認会計士協会の「企業価値評価ガイドライン」によると、次の5つの要因が企業価値評価に重要な影響を与えるとされています。 企業価値に重要な影響を与える要素 一般的要因 業界要因 企業要因 株主要因 目的要因 一般的要因 企業価値に影響を与える「一般的要因」とは、政治状況や経済状況、景気対策などの社会的要因を意味します。 経済全体の景気動向も企業価値に影響を与えるでしょう。 業界要因 業界の組織再編の動向や、類似する上場会社の株価動向などが業界要因となります。 属する業界が成長段階にあるのか衰退段階にあるのかも、自社の評価に影響を及ぼします。 同業他社の業績や経営戦略も、自社の企業価値を左右する要因になるかもしれません。 企業要因 自社の業種・業態や、収益性、財務状態などが企業要因です。 企業価値を評価する際には、この項目が最も注目されるでしょう。 損益計算書や貸借対照表などを使って、どのように自社が評価されるのか推定することも可能です。 詳細は「M&Aにおける企業価値の手法」(アンカーリンク)をご確認ください。 株主要因 株主構成や株式の種類や発行状況などの株主要因も、企業価値に影響を与えます。 株主との関係性に問題があれば、買い手側が買収に消極的になることもあるからです。 目的要因 企業価値を何の目的で評価するのかによって、着目すべき指標が異なります。 企業価値を評価する目的には、取引目的、裁判目的、処分目的、課税目的などがありますが、M&Aの場合は取引目的に該当します。 関連記事 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 M&Aにおける企業価値の評価方法 M&Aで会社売却を行う場合、企業価値を算定して、買い手企業と交渉を行わなければなりません。 自社を評価し、どの程度の価値があるのか定める方法としては、「コストアプローチ」「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」の3種類が一般的に使われます。 コストアプローチ コストアプローチとは、会社の資産や負債に着目して企業価値を評価する手法です。 主に中小企業のM&Aにおいて採用されています。 純資産法と年買法の2つが、コストアプローチの一般的な手法です。 純資産法 純資産法は、貸借対照表における資産と負債を基に、企業価値を算定します。 帳簿通りに計算する「簿価純資産法」と、時価を反映させて計算する「時価純資産法」の2つに分類されます。 簿価純資産法 簿価純資産法では、帳簿上の資産合計から負債を差し引いた額が企業価値となります。 数ある企業価値のアプローチの中でも、簡単に企業価値を算定できる一方で、簿価と現在の時価に開きがある場合には、適切な評価とならない可能性があります。 純資産法が使われる場合には、実務としては時価純資産法が一般的でしょう。 時価純資産法 時価純資産法は、「修正簿価純資産法」とも呼ばれます。 貸借対照表の資産と負債を時価で再評価することで、資産の時価を企業価値に反映できます。 具体的な手順としては、評価対象企業の資産と負債の時価を基にして、修正貸借対照表を作成します。そして、時価換算した資産の総額から時価換算した負債の総額を差し引いて企業の実質的な価値を導き出します。 ただし、時価純資産法では、のれん代や技術力などの無形資産や、将来の収益性は考慮されていません。そのため、のれん代や収益性を踏まえて企業価値を算定したい場合には、他の手法を使う必要があります。 年買法(年倍法) 年買法(年倍法)とは、時価純資産に技術やブランド力などの無形資産を加算することで、将来の収益性を考慮して企業価値を評価する方法です。 加算される無形資産は営業権(のれん)と呼ばれ、営業利益の3~5年分が加算されるケースが一般的です。 年買法は比較的簡単な計算方法を特徴としており、取引当事者が企業価値を直感的に把握し、合意しやすい点がメリットとして挙げられます。主に中小企業のM&Aで利用される企業価値の評価方法です。 営業権を営業利益の何年分にするかは、売り手・買い手間の交渉の中で協議し決定されますが、主観的な評価になりやすいというデメリットもあります。 営業権をどの程度考慮するかによって、年買法における企業価値は大きく異なるため、相手を納得させられるだけの材料を準備してM&Aの交渉に臨みましょう。 関連記事 M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? マーケット・アプローチ マーケット・アプローチは類似する会社や事業などに着目する企業価値の方法です。主に非上場企業の価値評価で用いられます。 マーケットアプローチには「マルチプル法」や「市場株価法」などがあります。 マルチプル法 マルチプル法は「類似会社比準法」とも呼ばれます。 評価対象会社と規模や事業等が類似する複数の上場会社を選び出し、それらの株価などを基に評価倍率(マルチプル)を算定します。 マルチプルと評価対象会社の特定の指標をかけ合わせることによって、企業価値を計算します。 マルチプルとして用いられる倍率としては、EV/EBITDA倍率、PBR、PERなどがあるでしょう。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! 市場株価法 市場株価法は、評価対象となる企業が株式市場に上場している場合に利用されます。 この方法では、株価をもとにして企業の価値を算出します。流動性があり、公正な取引が行われている市場では、最も客観的な評価手法といえるでしょう。 企業評価の際に使われる株価は、評価の基準となる日の前日の株価が使われる他、直近1ヶ月平均、直近3ヶ月平均、直近6ヶ月平均などが採用されることもあります。 株価の平均をとるのは、一時的な株価の変動などの影響を取り除くためです。 非上場会社の場合は、株価が分からないため、市場株価法で企業価値を算定することはできません。マーケットアプローチを使って非上場企業の価値を評価する場合には、マルチプル法を使うケースが一般的です。 インカム・アプローチ インカムアプローチは、評価対象会社から期待される利益に着目する評価方法です。 将来の収益獲得能力を価値に反映させやすく、会社特有のブランド力などを評価できるメリットがあります。 インカムアプローチの代表的な手法としては「DCF法」が挙げられます。 DCF法 DCF法は、将来のフリーキャッシュフローを現在の価値に換算して、事業価値を算定する手法です。DCF法の計算結果に対し、事業以外からの価値を加えることで企業価値や株価を導き出すことができます。 事業以外の価値としては、余剰現預金や、非事業用資産の負債時価などがあります。 DCF法で企業価値を評価する場合には、細かい事業計画を作り、将来キャッシュフローの予測を出さなければなりません。 関連記事 企業価値評価におけるDCF法とは?株主資本コスト、加重平均資本コスト(WACC)の求め方を徹底解説! M&Aで企業価値を高く評価するためには 自社の企業価値をなるべく高く評価するためには、複数のM&A仲介会社などを利用して、見積を比較するのが効果的です。 M&Aで会社売却をする際に、自社の評価を正しく行うためには、いくつかのアプローチを組み合わせて検討していく必要があります。 計算が簡単なアプローチだけを使って企業価値を評価してしまうと、実際の交渉の場で役に立たなくなる可能性があるでしょう。 専門家に相談せずに自力で企業価値評価を行うのは限界があります。無料相談などを活用し、納得のいくバリュエーションを行いましょう。 --- ### 企業価値評価におけるDCF法とは?株主資本コスト、加重平均資本コスト(WACC)の求め方を徹底解説! - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/manda/9450 - Categories: 企業価値 DCF法とは、インカムアプローチに分類される企業価値の評価方法の一つです。DCF法を使うことで、将来の業績を反映した企業価値の評価が可能になります。 DCF法とは、インカムアプローチに分類される企業価値の評価方法の一つです。 事業計画書や帳簿上の数値に基づいた将来の収益予測を、現在の価値に割り引くことで、企業価値を算出します。 DCF法では、将来の業績を反映した企業価値の評価が可能であり、比較的客観的な数値に基づいた評価ができるメリットがあります。一方、予測の困難性や割引率の設定の難しさなどがデメリットとなります。この記事では、DCF法の概要や計算方法を説明します。 DCF法の計算で用いられる重要な指標である「株主資本コスト」と「加重平均資本コスト(WACC)」の算出方法も紹介しています。 DCF法の計算方法を基礎から知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。 企業価値評価におけるDCF法とは 企業価値評価におけるDCF法は、企業価値を行う際の代表的な手法です。 客観的な数値に基づく計算手法であり、数ある手法の中でも合理的といわれることが多いDCF法ですが、実務上の欠点も抱えています。 ここでは、DCF法の基本的な考え方を説明し、メリットと注意点について解説します。 DCF法とは何か? DCF法とは、企業価値を計算する手法であるインカムアプローチの一つで、Discount CashFlowの頭文字をとったものです。 将来発生すると予想されるキャッシュフローをディスカウントすることにより、現在の価値に換算して、企業価値を算出します。 DCF法の計算の流れ フリーキャッシュフロー(FCF)の予測 株主資本コストの算定 加重平均資本コスト(WACC)の算定 継続価値(TV)の算定 現在価値(PV)の算定 株式価値の算定 FCFを割り引く際には、WACCと呼ばれる指標を用いて計算します。 DCF法による計算は、あくまで企業価値の計算方法の一つであり、他の手法で計算すると、異なる企業価値となることがあります。 どの計算方法を用いるべきかは、企業規模や業種・業界などにより、専門家の間でも見解が分かれます。 M&A仲介会社などに相談する際は、複数の会社を利用して、企業価値を見比べることをおすすめします。 DCF法のメリット 将来の収益など、目に見えないポイントを企業価値に含めることができることが、DCF法の大きなメリットです。 また、計算式が複雑で利用しなければならない指標が多いため、一定程度、合理的な計算方法であるともいわれます。 DCF法の注意点 DCF法の注意点は、将来の事業や収益については主観的な評価となってしまう点です。評価者によって価値が大きく異なる場合があります。 DCF法は事業価値を算出する際に、将来の収益性などを組み込むことができます。しかし、将来の事業を評価する際に、誰もが同じ価値評価になることはあり得ません。 信頼性のある計画や将来予測を作らないと、事業の価値を算出しても信用されない状況に陥ることがあるのです。 また、DCF法は計算が複雑なので、専門家でないと正しく評価できないことも難点です。 フリーキャッシュフローとは? DCF法の計算の流れ フリーキャッシュフロー(FCF)の予測 株主資本コストの算定 加重平均資本コスト(WACC)の算定 継続価値(TV)の算定 現在価値(PV)の算定 株式価値の算定 フリーキャッシュフローとは フリーキャッシュフロー(Free Cash Flow、FCF)は、企業が日々のビジネスで生み出した現金の流れを示す指標です。これは、設備投資や借金の返済などの必要な支出を差し引いた後の、企業が自由に使えるキャッシュを指します。 FCFは、「営業CF + 投資CF」で計算可能です。 簡単に言えば、FCFは、企業が得た利益の中で自由に使える資金のことです。これを使って新規事業への投資や株主への配当など、企業は自由に資金を投入していきます。 FCFが多いほど企業の財務状態は健全で、企業価値も高く評価されるケースが一般的です。企業のFCFがどの程度あるのかを確認することで、企業の財務状況の良し悪しを簡易的に把握することができるでしょう。 FCFが少ないかマイナスであれば、企業の資金繰りや収益性に問題がある可能性が高いです。 フリーキャッシュフローの予測方法 フリーキャッシュフローを予測する方法は、直近数年の売上の動向や固定費・変動費の変動率などを考慮して、予測損益計算書(予測P/L)と予測貸借対照表(予測B/S)を作成することが必要です。 このとき予測P/Lでは、通常のP/Lと同様に、営業利益率、当期純利益率などの指標を計算し、それをもとに予測B/Sを作成します。 予測P/Lと予測B/Sの作成には、合併に伴うシナジー効果などの要因も考慮した計画が重要です。過去の財務指標の傾向を参考にし、投資や人事計画などの事業計画も組み込むべきでしょう。 ただし、理想論だけでは買い手候補に見向きもされないため、十分に説得力のある財務諸表を作成する必要があります。 予測P/Lと予測B/Sの作成には多くのデータと高度な分析技術が必要です。 作業量が膨大なため、専門家に相談して進めましょう。 関連記事 M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? 株主資本コストとは? DCF法の計算の流れ フリーキャッシュフロー(FCF)の予測 株主資本コストの算定 加重平均資本コスト(WACC)の算定 継続価値(TV)の算定 現在価値(PV)の算定 株式価値の算定 株主資本コストとは 株主資本コストとは、企業が営業活動を行うにあたって調達した資金に必要とされるコストのうち、株主からの出資によって調達した資本に必要とされるコストのことです。 株主資本コストと、債権者から調達する負債にかかる負債コストを合わせて資本コストと言います。 株主資本コストは、加重平均資本コストを計算するために必要な指標となります。 株主資本コストの計算方法・計算例 株主資本コストを的確に算定する方法はありませんが、実務上はCAPMと呼ばれるモデルが一般的に用いられています。 CAPMとは、Capital Asset Pricing Modelの頭文字をとったもので、資本資産価格モデルと呼ばれます。 CAPMは、分散投資のリスク低減効果を反映した資産のリスクと期待リターンの関係式を表す均衡モデルです。 資産の期待リターンは、安全資産のリターンと市場全体の変動と連動したリスクへの見返り(リスク・プレミアム)の合計となります。 無リスク利子率には、M&Aにおいては長期国債の利回りが使われるのが一般的です。 株式ベータ値とは 株式市場が変化したとき、「株式のリターンが何パーセント変化するか」を表す指標です。 例えば東証株価指数(TOPIX)が1%変動した際に、対象会社の株式が1. 5%変動するのであれば、株式ベータ値は1. 5となります。 TOPIXに属する企業の株式ベータ値は、0. 5~1. 5の間にほとんど収まります。 上場企業の株式ベータ値はブルームバーグ社などにより公開されており、未上場企業の株式ベータ値を算出する際には、類似した上場企業の株式ベータ値を使用することが多いです。 株式市場全体の資本コストは、マーケットリスクプレミアムとも呼ばれ、市場全体の期待リターンから、リスクフリーレートを引いたものです。 TOPIXの期待収益率からリスクフリーレートを差し引いて算出する方法が最も簡易的です。 株主資本コストの計算例 リスクフリーレートを0. 6、株式ベータ値を1. 5、株式市場全体の資本コストを6と見積もった場合における、対象会社の株主資本コストは以下のように計算されます。 rE=0. 6+1. 5(6-0. 6)=8. 7 rF:0. 6 β:1. 5 rM:6 なお、CAPMを用いて算出した株主資本コストに対しては、サイズプレミアム(小規模企業リスクプレミアム)と呼ばれる調整が入ることが多いです。 CAPMで非上場会社を評価する場合、類似業種を営む上場企業のβ値を参照します。 しかし、いくら同じ業種とはいえ、企業規模の大きい上場企業よりも小規模な非上場会社のほうが、投資リスクは大きくなります。 そこで、小規模サイズに対応すべく、資本コストを3~10%ほど加算するという方式が採用されることが多いのです。 上記の例で3%のサイズプレミアムが加算されるとすれば、最終的な株主資本コストは11. 7%となります。 加重平均資本コスト(WACC)とは? DCF法の計算の流れ フリーキャッシュフロー(FCF)の予測 株主資本コストの算定 加重平均資本コスト(WACC)の算定 継続価値(TV)の算定 現在価値(PV)の算定 株式価値の算定 加重平均資本コスト(WACC)とは 加重平均資本コストは、債権者へのコストと株主へのコストを加重平均した、全体の資本コストのことです。資金全体を調達するのに、いくら必要になるのかを示した数値と言い換えられます。 英語ではWeighted Average Cost of Capital(WACC)と表記されます。 企業を経営するためには資金を調達する必要があり、主な方法は銀行からの融資と株主からの出資となります。 しかし、返済義務のある融資と返済義務のない出資では、資金調達のリスクが異なります。 この2つの異なるリスクを踏まえ、それぞれの資金調達に占める割合で全体のコストを加重平均した値が、加重平均資本コストです。WACCは、DCF法における割引率として用いられます。 加重平均資本コスト(WACC)の計算方法・計算例 WACCは、以下の計算方法によって算出されます。 上記の式のうち、右辺の「E / (E + D)」の部分が株主資本の占める割合を表し、「D / (E + D)」の部分が負債の占める割合を表しています。 それぞれの割合ごとに各コストをかけて、合計値を求めることで、資金調達全体に対して何%のコストが必要なのか算出することが可能となります。 例えば、投資家から1000万、銀行から2000万の資金を調達した場合、合計3000万円の資金となります。株主資本コストを11. 7%、銀行への利息を3%、実効税率を35%とした場合の計算例は以下の通りです。 加重平均資本コスト(WACC)の計算例 WACC =11. 7%×(1000/3000)+3%(1-35%)×(2000/3000) =0. 117×1/3+(0. 03×0. 65)×2/3 =0. 05199 =5. 2% E:1000万 D:2000万 rE:11. 7% rD:3% Tc:35% このモデルケースでは、資金調達に占めるコストの割合は、株主資本が11. 7%、有利子負債が3%となっています。しかし、それぞれの資金調達額が異なるため、合計して分割するだけでは、全体の資金調達にかかるコストの割合を算出することはできません。 銀行からの資金が33%、株主からの資金が66%になるため、全体の資金調達にかかるコストの割合を求める場合にも、資金調達の割合に応じた調整を行う必要があるのです。 なお、上記の式では、有利子負債の資本コストから実効税率分を差し引いています。 負債コスト(利息)を支払うと、その分利益が圧縮され、税金が減ります。つまり、会社が負担する負債の資本コストは税率分だけ減ることになるのです。 負債の利息は税務上の損金となり、節税効果があるため、この調整は「利息の節税効果」と呼ばれます。 上記の例では、借入金利が3%、実効税率が35%となるため、企業の実際の金利負担は1. 95%となります。 ここまでの計算により、DCF法で企業価値を計算する場合の割引率は5. 2%と算出されました。 DCF法の具体的な計算 DCF法の計算の流れを、以下の例をもとに確認していきます。 まずは、将来3年分のフリーキャッシュフロー(FCF)を見積もります。 FCFは、次のモデルケースを利用します。 モデルケース (単位:万円) 1年目2年目3年目それ以降売上高50000525005600056000売上原価30000315003300033000売上総利益20000220002400024000販売管理費15000160001700017000営業利益5000600070007000営業外500500500500EBIT5500650075007500税金引き当て2000230027002700税引き後EBIT3500420048004800減価償却費4000450050005000運転資本増減8008004000営業CF6700790094009800設備投資費4000400040004000FCF2700390054005800 加重平均資本コスト(WACC)を求める 加重平均資本コスト(WACC)は、株主資本コストをまずは求めて、負債コストと加重平均して計算します。 計算方法は「加重平均資本コスト」をご確認ください。 ここでは、WACCは5. 2%とします。 継続価値(TV)を求める モデルケースでは、3年目が事業計画の最終年度となるため、4年目以降は継続価値(Terminal Value)を計算しなければなりません。 DCF法では、企業は永久に継続するものと仮定され、FCFも同様に継続するものとみなされます。 継続価値(TV)を求めるため、予測期間以降のFCFは、継続成長モデルの公式で平均値を計算します。 モデルケースに当てはめると、次のような計算となります。経済成長率は0と仮定します。 TVの計算例 TV=5800/5. 2% =111,538(万円) 現在価値(PV)を求める 将来のFCFを年次ごとにそれぞれWACCで割り引いて、現在価値(PV)に換算します。 WACCは5. 2%です。 1年目のPV 2700÷(1+5. 2%)1 =2700÷1. 0052 =2686万円 2年目のPV 3900÷(1+5. 2%)2 =3900÷(1. 0052×1. 0052) =3859万円 3年目のPV 5400÷(1+5. 2%)3 =5400÷(1. 0052×1. 0052×1. 0052) =5316万円 4年目以降の合計額(TV)のPV 継続価値も、3年目までと同様、現在価値に割り引いて換算します。 TVのPV =111,538÷(1+5. 2%)3 =109,816 =10億9816万円 ここまでの計算を全てまとめると、次の表のようになります。 1年目2年目3年目4年目以降合計現在価値3859万円3859万円5316万円10億9816万円12億1377万円 よって、上記のモデルケースでDCF法を用いて計算した事業価値は「12億1377万円」と算定されます。 なお、上記の計算は、期末主義を採用しています。 期末主義とは、割り引く対象のFCF全てが1年のうち最後に発生するという考え方です。 年間を通じてFCFが平均的に発生しているため、1年の真ん中で通年のFCFが発生しているという考え方は、期央主義と呼ばれます。 期末主義を採用するのか、期央主義を採用するのかによって、現在価値の計算式が変わります。 変わる部分は、PV=Pt÷(1+WACC)tのうちの、t乗の部分です。 期末主義の場合は1年目に1、2年目に2、3年目で3を代入して計算しますが、期央主義の場合は1年目に0. 5、2年目に1. 5、3年目に2. 5を代入して計算します。 期末主義と期央主義のどちらを採用するかで、事業価値は大きく変わります。 自身の会社の事業形態や売上が拡大する時期などにより、計算式を使い分ける必要があるので注意してください。 まとめ DCF法は、事業価値算定の前提として、株主資本コストや加重平均資本コストなどの指標を算出しなければなりません。 また、企業価値の算定には、DCF法以外のアプローチ方法もあるため、複数の方式を組み合わせて評価するのか、どれか一つの算定方法で評価するのかも決める必要があります。 自社の企業価値評価(バリュエーション)をどのように進めるべきか迷った場合には、専門家への相談がおすすめです。 M&A仲介業者や公認会計士など、実務経験の豊富な専門家に問い合わせて、納得のいく企業価値評価を得てから、会社売却のプロセスを進めていきましょう。 --- ### 会社売却の税金は?M&Aで税金を節約するには? - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-04-03 - URL: https://atomfirm.com/manda/8767 - Categories: 会社売却の税金 会社売却の税金はいくら?M&Aで税金を節約するには?この記事は、会社売却をご検討中の方に向けて、株式譲渡と事業譲渡の税金の違い、節税対策について、徹底解説していきます。 会社売却の利益には税金がかかります。 会社売却の利益を新規事業や老後資金にまわしたい、後継者不在で会社売却をしたいと思っても、税金で思わぬ損をしたくはありませんよね。 会社売却といっても、株式譲渡と事業譲渡とでは税金の計算方法は異なります。 そこでこの記事では、会社売却の税金、M&Aの節税対策について解説していきます。 株式売却をご検討中の方は、ぜひ最後までお読みください。 会社売却の税金とは?M&Aの手法で税金は変わる? 会社売却をおこない利益がでた場合は、税金を支払う必要があります。 会社売却によって、いくら税金が発生するのかはM&Aの手法、会社売却の売り手の属性によって変わります。 会社売却をおこなうM&Aの手法が株式売却なのか、事業譲渡なのかによって、課税対象となる資産の内容が変わるので、税金のかかり方が変わるのです。 また、会社売却をおこなう主体が個人なのか、法人なのかによっても、税率が変わります。 1. 会社売却の税金①株式譲渡の場合 個人株主・経営者個人が株式売却をする場合 個人が保有する株式を売却する場合は、株式売却で得た利益(譲渡所得)に、所得税や復興特別所得税、住民税がかかります。 課税方式については、個人の場合は、申告分離課税です。 申告分離課税の場合、原則的には、事業所得や給与所得とは区別して、課税されることになります。 他の株式について譲渡損失がある場合は損益通算できますが、ほかの区分の所得と合算して課税金額が計算されることはありません。 株式の譲渡所得は、以下のような計算式で算出できます。 譲渡所得の金額=株式の売却代金-取得費* * 取得費=株式の取得価格+譲渡の際に必要な諸経費 取得費とは? ここでいう取得費とは、購入代金や購入手数料、購入時の名義書換料など株式を取得するために要した費用を指します。 創業者の場合、取得費は、会社を設立した際に出資した資本金の金額となります。 創業者を相続して株式を取得した場合、株式の取得費は「創業者である被相続人が株式を取得した際の金額」となります。しかし、その金額が不明であるときは、株式の売却金額の5%が取得費とされます(概算取得費)。 税金の計算 さて、上記の計算式で算出した譲渡所得の金額をもとに、所得税15%、復興特別所得税0. 315%、住民税5%(合計20. 315%)の税率で課税される場合、以下のような税額となります。 例1 オーナーが100万円を出資して、時価1000万円で株式売却をおこない、譲渡益900万円を得た場合 900万円が課税対象となり、税額は所得税・復興特別所得税・住民税あわせて182万8350円になる。 例2 オーナーだった親の株式を売却して、1000万円で譲渡した場合 親の株式の取得価格は不明であるところ、譲渡金額の5%が取得費とされるので、1000万円の5%である50万円が取得費となる。 株式の売却代金である1000万円から、取得費である50万円を差し引いた結果、譲渡益は950万円となる。 その結果、950万円が課税対象となり、税額は所得税・復興特別所得税・住民税あわせて192万9925万円となる。 法人株主・企業が株式売却をする場合 法人が保有する株式を売却する場合は、株式の譲渡所得に、法人税、法人住民税、法人事業税がかかります。 課税方式については、法人の場合は、総合課税です。 総合課税というのは、すべての所得を合算して税額を算定する方法のことです。 他の事業が赤字の場合は、譲渡益と合算して税額を決めることができるため、課税所得が圧縮されます。 株式譲渡の売却益の計算方法は、以下のとおりです。 譲渡益の金額=株式の売却代金-(株式の取得価格+譲渡の際に必要な諸経費) 実効税率は、各都道府県によって異なり、また外形標準課税の適用の有無でも異なりますが、およそ30%~35%が目安になります。 実効税率=(法人税率+法人税率×(地方法人税率+住民税率)+事業税率) ÷ (1+事業税率) 関連記事 非上場株式譲渡の税金とは?売却価格と税金の関係は? 注意点 利害関係のない第三者に対する株式譲渡の場合は、株式売却価格は適正な価格として認められやすいものです。 しかし利害関係のある人や企業などへ、株式売却をする場合は、時価との差額があまり大きくならないように、売却金額を決定すべきでしょう。 時価に比べて安価過ぎる場合は、贈与税や(寄贈による受贈益として)法人税が課されるおそれがあります。 株式譲渡による会社売却では、相場価格を意識して売却価格を検討していくことが大事です。 2. 会社売却の税金②自己株式取得の場合 はじめに 会社売却で株式譲渡の手法を用いるケースについて、株式を発行した会社に売却する(株式発行会社からみれば自己株式を買い取ることになる)というパターンも考えられます。 自己株式の取得の場合は、株主が会社役員や大株主であるときに、株式の譲渡益がみなし配当とされる可能性があります。 みなし配当とは、会社法上は剰余金の配当などに当たらないものの、税務上は配当金と同様にとりあつかうという制度です。通常の株式売却とは異なる税金がかかる可能性があります。 自己株式の取得により、その株式の発行会社から対価として金銭等の交付を受けた場合、その金額が資本金の金額を超えるときは、配当所得とみなされて税金が課されるというのが、みなし配当です。 株式の売却価格=出資金の払戻し+みなし配当の金額 出資金の払戻し=会社の資本金の額×(売却した株式数÷発行済み全株式数) 個人株主の場合 個人株主が株式発行会社に株式売却をおこなう場合、みなし配当として配当所得となります。 非上場株式の配当所得は総合課税、上場株式の配当所得は分離課税として、税金が課されます。 分離課税とされる上場株式の配当所得については、所得税が15%、住民税が5%の税率で課されることになります。 一方、総合課税とされる非上場株式の配当所得は、累進課税となるため、配当所得の金額が大きくなればなるほど、課される税金の金額も高額になります。所得税の税率は5%~45%となり、住民税は10%の税率で課税されることになります。 所得税の税率 課税される所得金額(円)税率控除額(円)1,000~1,949,0005%01,950,000~3,299,00010%97,5003,300,000~6,949,00020%427,5006,950,000~8,999,00023%636,0009,000,000~17,999,00033%1,536,00018,000,000~39,999,00040%2,796,00040,000,000~45%4,796,000 タックスアンサー(よくある税の質問)「No. 2260 所得税の税率」(令和5年4月1日現在法令等)を参考に編集。最新情報についてはご自身でご確認ください。 法人株主の場合 法人株主が株式発行会社に株式売却をおこなう場合、みなし配当は受取配当金となり、法人税がかかりますが、一定額を所得から控除することが可能です。 また、源泉徴収された金額を受け取ることになるので、その分、法人税額から控除することができます。 3. 会社売却の税金③事業譲渡の場合 個人事業主が事業譲渡する場合の税金 個人事業主が事業譲渡をする場合は、譲渡する資産の種類によって所得の区分が変わり、それぞれに応じた税金がかかります。 ⑴ 土地建物の譲渡 個人事業主が事業譲渡をする場合に、土地建物を譲渡したときは、譲渡所得(分割課税)が発生します。 土地建物の所有期間によって、長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれます。 長期譲渡所得とは、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものをいいます。 長期譲渡所得およびそれにかかる税金については、以下のような計算で算出することができます。 長期譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除税額=長期譲渡所得金額×15. 315%※(+住民税5%) 短期譲渡所得とは、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のものをいいます。短期譲渡所得およびそれにかかる税金については、以下のような計算で算出することができます。 短期譲渡所得=譲渡価額-(所得費+譲渡費)-特別控除税額=短期譲渡所得金額×30. 63%※(+住民税9%)     ※ 所有期間とは、土地や建物の取得日から引き続き所有していた期間のことをいう。相続や贈与により取得した場合は、原則として、被相続人や贈与者の取得日から起算する。※ 課税の対象となる譲渡所得の金額は、短期譲渡所得全額と長期譲渡所得の2分の1の合計額。短期と長期の両方の譲渡益が発生しているときは、先に短期の譲渡益から50万円を控除する。 ⑵ 棚卸資産の譲渡 事業所得者が、棚卸資産(商品、製品、半製品、仕掛品、原材料など)を譲渡した場合、事業所得(総合課税)となります。 不動産所得や雑所得などの区分と合計して、その合計額に税率をかけて税額を計算します。 ⑶ 減価償却資産の譲渡 使用可能期間が1年未満の減価償却資産、取得価額が10万円未満である減価償却資産(業務の性質上基本的に重要なものを除く)を譲渡した場合、その所得は事業所得または雑所得です。 また、取得価額が20万円未満である減価償却資産で、取得の時に「一括償却資産の必要経費算入」の規定の適用を受けたもの(業務の性質上基本的に重要なものを除く)を譲渡した場合、その所得は事業所得または雑所得です。 ⑷ 営業権の譲渡 営業権を譲渡した場合に生じる所得は、譲渡所得(総合課税)です。 営業権とは、事業のノウハウや特許など、会社売却価格で資産に上乗せする部分の企業価値のことです。事業譲渡の対価が資産総額(負債も承継する場合は資産総額と負債総額の差額)を超えた金額が、営業権とされます。 この営業権の譲渡は、譲渡所得(総合課税)となります。 短期譲渡所得の金額は、全額が総合課税の対象になります。長期譲渡所得の金額は、その二分の一が総合課税の対象になります。 譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除(50万円)* * 譲渡所得の特別控除の額はその年の長期の譲渡益と短期の譲渡益の合計額に対して50万円です。 ⑸ その他の資産の譲渡 譲渡所得(総合課税)となります。 企業が事業譲渡する場合の税金 法人が事業譲渡をおこなう場合は、事業譲渡の対価がその資産総額を上回ったとき、譲渡益として計上され、法人税等の課税対象となります。 総合課税になるため、赤字部門があれば譲渡益と相殺されます。 消費税 国内において事業者がおこなった資産の譲渡等については消費税が課されます。 ただし土地のような非課税資産には消費税は課されません。 なお営業権については課税資産としてあつかわれます。 印紙税 印紙税とは、文書にかかる税金のことです。購入した収入印紙を貼付することで、印紙税をおさめていることになります。 印紙税が発生するケースは、印紙税法に規定されており、1万円以上の不動産の売買契約書など様々です。 印紙税が発生するケース 1万円以上の不動産の売買契約書等 10万円以上の約束手形又は為替手形 5万円以上の売上代金の受領書や有価証券の受領書 関連記事 事業譲渡の税金は?消費税や法人税は利益の何%?お得なのは会社譲渡? 4. 会社売却の税金対策 役員退職金 オーナー株主が長期にわたり役員に就任していた場合は、役員退職慰労金を支給するという方法が、株式譲渡の税金対策につながるケースもあります。 退職慰労金は、税制上優遇措置が設けられています。 すなわち、退職所得は、退職金から退職所得控除を差し引いた金額に二分の一を乗じて計算されることになります。 退職所得=(退職金の金額-退職所得控除額)×1/2 ※なお、特定役員退職手当等に該当する場合(役員としての勤務期間が5年以下の場合)、二分の一を乗じる計算方法の適用はありません。 退職所得控除額 勤続年数退職所得控除額20年以下 40万円×勤続年数(80万円に満たない場合には80万円)20年超え800万円+70万円×(勤続年数-20年) そして、給与所得などの総合課税の対象ではなく、退職所得は(分離所得として)単独で税金が計算されるため、適用される税率の割合を可及的におさえることができます。 計算式としては、以下のようなものになります。 税額=退職所得×累進税率(最高税率約56%) さて、ここで実際にどのくらい節税効果があるのかについて、確認しておきましょう。 以下のケースでは、いずれも出資金(株式の取得費)が1000万円、売却時の企業価値が5000万円とした場合です。 通常の株式売却に比べて、退職慰労金をもちいることで、節税になることがわかります。 例1 通常の税額の場合 売却価格の5000万円から、取得費の1000万円を差し引いて、譲渡益は4000万円となった。 ※税率は20. 315%とする。 この場合の譲渡益の税額、手取りの金額としては以下のようになります。 譲渡益の税額譲渡益4000万円×税率20. 315%=812万6000円 手取り売却価格5,000万円-税金8,126,000円=41,874,000円 例2 退職慰労金で節税する場合 退職慰労金として1000万円を払い出し、株式売却代金は4000万円となった。社長の勤続は23年。売却価格である5000万円から、取得費の1000万円を差し引いて、株式の譲渡益は3000万円となった。 ※税率は20. 315%とする。 この場合の譲渡益の税額、手取りの金額としては以下のようになります。 譲渡益の計算譲渡価格5000万円-退職慰労金1000万円-株式の取得費1000万円=3000万円 退職慰労金の税金=1000万円-(800万円+70万円×(23-20年))=-10万円≒0円 譲渡益の税額譲渡益3000万円×税率20. 315%=609万4500円 手取り売却価格4000万円-税金609万4500円+退職慰労金1000万円=43,905,500円 退職慰労金の払い出しをおこなった場合、退職慰労金および譲渡益にかかる税額は609万4500円となります。 退職慰労金の払い出しをおこなった場合、それをおこなわなかったケースに比べて、手取りが約200万円程度あがるため、節税になります。 退職金スキームの注意点 節税につながるからといって、多額すぎる役員退職慰労金は、実務上、損金に算入してもらえないリスクがあります。 そうなってしまえば、本末転倒ですよね。 税法上、適正な役員退職慰労金の判断基準として「その役員や法人の業務に従事した機関、退職の事情、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし、その退職した役員に対する退職金として相当であると認められる金額」(法令70②)という基準があり、これは平均功績倍率法による計算が必要となるでしょう。 役員退職慰労金適正額=退職時の最終報酬月額×勤続年数×平均功績倍率 まとめ 会社売却の税金問題はM&Aの専門家に相談するのが一番? 会社売却には株式売却と事業譲渡の2通りがありますが、個人と法人では税金のかかり方が変わってきます。 株式譲渡 売り手個人株主法人株主税金所得税・復興特別所得税・住民税法人税等税率20. 315%約30%課税方式分離課税総合課税 事業譲渡 売り手個人事業主法人税金譲渡所得・事業所得・雑所得など法人税等・消費税税率所得税は5%~45%消費税は10%法人税等は約30%消費税は10%課税方式所得の区分による総合課税 せっかく会社売却をするのであれば、しっかりと税金対策をおこない、十分な利益を確保できるようにしたいものです。 会社売却の税金についてご自身でシュミレーションをしてみるのも良いですが、入念に情報を集めることも大事です。 会社売却を成功に導くために、弁護士や税理士、M&A仲介会社など、プロのアドバイスを受けることも検討してみてください。 --- ### バイアウトしやすい事業は?バイアウトとM&Aの違いは? - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-04-03 - URL: https://atomfirm.com/manda/8809 - Categories: その他 バイアウトしやすい事業とは?M&Aとの違いは?・・・収益性が高く、将来性がある事業はバイアウトしやすい事業です。バイアウトではなく、M&Aによる事業承継をご検討中の方は、頼れるM&A仲介を積極的に利用しましょう。 バイアウトしやすい事業とは? そもそも会社のバイアウトとは何? 会社売却とバイアウトの違いは? バイアウトとは、自社の役員や社員が、自己資本や融資などにより、自社の株式を買い取ることによって、経営権を取得するというスキームのことです。 たとえば、業績が悪化した場合などに、経営権を集約し、事業の再建を目指すような場合に、バイアウトは実施されます。 またバイアウトは「事業を売却して譲渡益を得る」というベンチャー企業の出口戦略として用いられることも多いものです。 この記事では、バイアウトしやすい事業や、バイアウト以外で会社運営から離れるM&Aの手法について解説しています。 ぜひ最後までご覧ください。 バイアウトとは?M&Aや事業売却との違いは? バイアウトとは? バイアウトは、自社の経営陣や社員が、自社の株式を買い取ることによって、経営権を取得するスキームを指します。 創業者が事業をセルアウト(Sell out/売却)するという意味で、「バイアウト」という言葉が用いられることもあります。 バイアウトの種類 買収の主体が誰になるかによって、バイアウトはいくつかの種類に分けられます。 バイアウトの種類 EBO MBO MEBO LBO 従業員が買収をする場合はEBO(エンプロイー・バイアウト)といいます。 経営陣が株式を購入する場合はMBO(マネジメント・バイアウト)といいます。 経営陣および従業員によるバイアウトは、MEBO(マネジメント・アンド・エンプロイ・バイアウト)といいます。 また、買収の対象となる企業の資産価値や将来のキャッシュフローを担保とし、借り入れをおこない買収資金にあてる手法を、LBO(レバレッジド・バイ・アウト)といいます。 LBOの場合、まずは買収の対象となる企業の株式の買い取りをおこなう会社(SPC・特別目的会社)が設立され、買収対象会社を担保に融資を受け、調達した資金によりすべての株式を買い取ります。 その後、SPCと買収対象会社の合併をおこない、買収対象企業の株式を非公開として、事業再建に取り組みつつ、融資の返済をおこなっていく流れになるでしょう。 バイアウトしやすい事業とは? バイアウトしやすい事業とは... バイアウトしやすい事業といえるためには、自社の役員・社員にとって、その会社の株式を買い占めたいと思えるような魅力的な事業であることが必須といえます。 バイアウトでは、後継者となるべき役員・社員が、退任しようとしているあなたから、あえて株式を買い取るわけです。 そのため、収益性、将来性なども加味したうえで、後継者となることが魅力的であると感じる事業でなければ、バイアウトは実現しません。 経営状態が安定しているか、他社にない強みがあるか、IT・環境など今後市場拡大が見込まれる事業かなどが、バイアウトしやすい事業かどうかを決める要素になるでしょう。 バイアウトしやすい事業①収益性が高い 収益性が高い事業は、買い手から高い評価を受けやすいため、バイアウトしやすい事業であるといえます。 収益性とは、売上高から費用を差し引いた利益の割合を表す指標です。 収益性が高い事業は、売上高に対して利益率が高いなどの特徴があります。 収益性が高い事業の特徴(一例) 売上高に対して利益率が高い 費用を効率的に管理している 競合他社よりも優れたビジネスモデルを有している このような特徴を持つ事業は、買い手にとって魅力的な投資対象となります。収益性の高い事業を買収することで、買い手は、短期間で利益を上げることが期待できるからです。 バイアウトしやすい事業②将来性がある 成長性が高い事業は、将来的にさらに収益性や価値が高まる可能性が高いため、バイアウトしやすい事業といえます。 成長性とは、売上高や利益の伸び率を表す指標です。成長性が高い事業は、新しい市場の開拓などの特徴があります。 成長性・将来性がある事業(一例) 新しい市場を開拓している 新製品やサービスを開発している 海外市場に進出している このような特徴を持つ事業は、買い手にとって新たな成長の機会を提供できるため、バイアウトの対象として検討される可能性が高くなります。 買い手探しの方法については以下の関連記事で解説していますので、ご確認ください。 関連記事 会社売却成功への道!M&A買い手探しの目的とポイントとは バイアウトしやすい事業③売上高が安定 売上高や利益が安定している事業は、投資リスクを低減できるため、買い手から評価されやすく、バイアウトしやすい事業といえます。 売上高や利益が安定している事業は、以下のような特徴があります。 売上高が安定している事業(一例) 顧客基盤が安定している 原材料や人件費などのコストが安定している 自然災害や社会情勢などの影響を受けにくい このような特徴を持つ事業は、買い手にとって投資のリスクが低いため、バイアウトの対象として検討される可能性が高くなります。 昨今ベンチャーキャピタル(VC)が増加しているので、バイアウトする側にとっては、バイアウトをするための資金調達がしやすい現状にあります。 上記のような要素を満たす事業であれば、買い手から良い評価を受ける可能性が高まります。会社を高く売る方法の詳細について確認したい方は、以下の関連記事をお読みください。 関連記事 M&Aで会社を高く売る方法とは?買い手へのアピールポイントを解説 バイアウトとM&Aの違いは?会社売却に適した方法は? バイアウトとM&Aの違いは? バイアウトは、自社の社員が自社株を買収することです。一方で、M&Aは、他社が自社株を買い占めたり、他社と経営統合したりします。 M&A(エムアンドエー)とは、Mergers and Acquisitionsの略です。M&Aは、文字通り、企業の合併と買収を意味します。2個以上の会社が、事業拡大や収益向上を目的として、合併や買収をおこなうことをM&Aといいます。 バイアウトとM&Aの違いは、自社の社員が買収をおこなうのか、他社が買収をおこなうのかという点になります。 バイアウトと売却の違いは? 会社売却は、創業者が投資した資本を回収するための手段です。その中にはバイアウトも含まれます。ですが、会社売却の方法はバイアウトだけではありません。 IPO(株式公開)や、非上場企業であっても社外の投資家・実業家への株式譲渡や事業譲渡をおこなうなど、会社売却の手法は様々です。 バイアウトの場合、経営陣や従業員が資金調達で苦労したり、SPC設立など手続き面が煩雑だったりと、課題もあるものです。 早期リタイアや、事業の立て直しを検討している場合は、社外にも目を向け、経営ノウハウのある企業・実業家への株式譲渡などを検討してみてもよいでしょう。 まとめ バイアウトしやすい事業とは、収益性が高い、将来性がある、売上高や利益が安定しているといった要素がそろっている事業です。 これらの要素がそろっている場合は、企業価値を高く評価してもらうことも期待できます。 バイアウトは、ベンチャー企業が利益をあげるための出口戦略として用いられるほか、事業承継の手法としても有益です。 ただし、早期リタイヤや、事業の立て直しを検討する場合、社外の第三者への会社売却のほうが簡便な場合もあります。 現在バイアウトや会社売却を検討されている方は、この記事でご紹介した「バイアウトしやすい事業の要素」を参考にしながら、企業価値を高めるための対策をたててみてもよいでしょう。 --- ### 会社売却後の人生はどうなる?会社売却で経営者・社員等のその後は? - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-04-01 - URL: https://atomfirm.com/manda/8818 - Categories: その他, 事業承継, 会社売却の流れ 会社売却後の人生はどうなる?社長、会社、役員、社員、取引先のその後は?会社売却の注意点やデメリットはある?会社売却をご検討中の経営者の方は、頼りになるM&A仲介に相談して、買い手を見つけて、会社売却を成功させましょう。 会社売却後の人生はどうなる? 会社売却で会社や社員のその後はどうなる? 会社売却は、オーナー経営者にとって、人生における大きな節目となる出来事です。 会社売却によって、オーナー経営者は多額の資金を得ることができ、新たな事業への投資や引退後の生活に充てることができます。 会社売却にはこのようなメリットがある一方で、会社を離れて第二の人生を歩むことになるため、不安を感じる・喪失感を抱くといった経営者も少なくありません。 この記事では、会社売却後のオーナーの人生、会社や社員等はその後どうなるのか等について解説していきます。 ぜひ最後までお読みください。 会社売却後の人生はどうなる? 会社売却のきっかけは?その後の人生は? 会社売却のきっかけは、人によって異なります。ですが、会社運営から離れることを考えたときに、会社売却に踏み切る点は共通でしょう。 たとえば、これ以上自身の力では会社の規模を大きくできないと感じた場合に、その事業・会社の経営から離れたいと考えて、第三者に会社を売却するというケースもあるでしょう。 また、引退をしたくても、後継者がいないようなケースも会社売却を考えるきっかけになります。 ほかにも、会社売却の利益を生活資金として、早期リタイアしたいというケースもあるでしょう。 企業価値が高い会社であれば、売却価額も高額になるため、リタイア後の生活資金の心配がなくなります。 関連記事 M&Aで会社を高く売る方法とは?買い手へのアピールポイントを解説 M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 会社売却後の人生①プライベートを充実させる 会社売却後の人生として、多くのオーナー経営者が選択するパターンが、プライベートを充実させることです。 会社売却をおこない、株主総会などで正式に退任が決まれば、会社経営から解放されることができます。 会社経営から解放されれば、これまでできなかった趣味や旅行など、プライベートな時間を充実させることができます。 なかには海外移住やされる方や、都会の喧騒から離れて自然豊かな街でスローライフを送る方もいるでしょう。 また時間的な余裕ができるので、ボランティアや社会貢献活動に取り組むこともできます。 会社のオーナー経営者として今までせわしなく働いてきた分、会社売却によりオーナーを退任した後は、余暇を存分に楽しむことができるのではないでしょうか。 会社売却後の人生②役員・顧問として引き続き会社に関わる 会社売却後も、役員や顧問として会社に関わるパターンもあります。このパターンは、会社への愛着が強く、会社に貢献したいというオーナー経営者に向いています。 役員や顧問として会社に関わる場合は、これまでの経験やスキルを活かして、会社に貢献することができます。また、会社経営の経験を活かして、傍らで見守りながら、後継者を育成する役割を担うこともできます。 また、自身としてはすぐにでも会社運営から解放されたいと考えていた場合でも、ロックアップ条項の縛りが生じることもあります。 ロックアップ条項とは、会社運営のノウハウなどの引継ぎのため、M&A成約後も、一定期間、勤務を続けなければならないというものです。この場合、否が応でも引き続き会社に関わる必要があります。 関連記事 M&Aで社長はどうなる... その後は退任や顧問?社員の待遇は? 会社売却後の人生③新規事業を立ち上げる 会社売却後、新たな事業を立ち上げるパターンもあります。このパターンは、新たなことに挑戦したいという意欲の高いオーナー経営者に向いています。 新たな事業を立ち上げる場合は、これまでの経験やスキルを活かして、新たなビジネスを展開することができます。また、新たな事業を通じて、社会に貢献することもできます。 経営から完全に離れるつもりで、会社売却をおこない、アーリーリタイアしたけれども、やっぱり新規事業の立ち上げにチャレンジしたくなったというケースもあるでしょう。 ただし会社売却をした場合、最終合意書には競業避止義務が規定されていることが多いものです。 競業避止義務がある場合、一定期間は、同種の業務や、同業他社に役務提供ができないなどの制限があるので、注意が必要です。 新規事業立ち上げとまではいかなくても、貯蓄や投資以外で収入を得ることや、孤独感を味わうことがないように、社会に出て働き続ける方も多いようです。 会社売却のその後はどうなる? 会社売却のその後、会社はどうなる? 会社売却後、会社は買い手側の経営方針に従って運営されることになります。 そのため、経営方針や社風、事業内容などに変化が生じる可能性があります。 具体的には、以下のようなものが挙げられます。 会社売却後の会社のその後 経営方針の変更 社風の変化 事業内容の拡大・縮小 新規事業の立ち上げ 人員の増減 etc. また、会社売却によって、買い手側のグループ会社として統合される場合もあります。この場合、会社名やロゴ、営業拠点などが変更される可能性があります。 会社売却のその後、役員はどうなる?役員報酬は? 会社売却後、役員の地位や役割も変化する可能性があります。 具体的には、以下のようなものが挙げられます。 会社売却後の役員のその後 役職の変更 報酬の減額 退職の勧告 また、役員報酬は、会社売却によって変化する可能性があります。具体的には、以下のようなものが挙げられます。 役員報酬の見直し 固定給の減少 インセンティブの見直し 退職金の減額 会社売却のその後、従業員はどうなる? 会社売却後、従業員の雇用も維持される可能性があります。 ですが、場合によっては、人員の削減や雇用形態の変更などの影響を受けるかもしれません。 具体的には、以下のようなものが挙げられます。 会社売却後の従業員のその後 雇用の維持 人員の削減 雇用形態の変更 勤務地の変更 給与の減額 関連記事  M&Aで従業員はどうなる?会社売却後の社員の雇用について解説 会社売却のその後、取引先はどうなる? 買い手側の意向 会社売却後であっても、買い手企業としては、取引先との契約は継続したいと思うのが一般的です。 買い手企業は、売り手企業の事業内容に魅力を感じて、会社売却に応じるものです。 そのため、通常であれば、買い手企業側から取引先を切ることは基本的には考え難いものでしょう。 とはいえ、社会情勢や財務状況等によっては、今後の取引がどうなるかは確約できません。 具体的には、以下のような変化も考えられます。 会社売却後の取引先のその後 取引先の変更 取引条件の変更 取引の停止 取引先の意向 一方、取引先としては、売り手企業との取引について、経営者の人柄を理由に取引をしていた可能性があります。経営者が変更になる場合、取引をやめると言われてしまう可能性もあるでしょう。 また、取引先にとっては、会社売却の知らせは寝耳に水で、その後どうなるのか非常に不安に思うことでしょう。 そのため取引先には、少なくとも、会社売却について十分な説明をおこなう必要があるといえます。 会社売却のその後の注意点?デメリットとは 会社売却には、「売却資金を得られる」「後継者不足の解決」などのメリットがある一方、注意すべきポイントも多いです。 ここでは、会社売却後の注意点・デメリットについて解説します。 会社売却による寂しさを感じる オーナーが感じる寂しさ 会社売却は、オーナー経営者にとって、人生における大きな節目となる出来事です。会社を離れて第二の人生を歩むことになるため、不安を感じる社長・喪失感を抱く経営者も少なくありません。 特に、会社経営に長年携わってきたオーナー経営者の場合、会社を自分の分身のように感じている場合もあります。そのため、会社売却によって、会社から離れることに寂しさを感じる人が多いようです。 会社売却によって、これまでの仲間や関係者と離れることになる場合もあります。そのため、人間関係の変化による寂しさや孤独感を感じる人もいるでしょう。 この場合、新たな目標や趣味をもったり、社会とのつながりを何らかのかたちで保つとよいでしょう。 相続人が感じる寂しさ 突然の不幸で親の会社を相続することになった場合に、自身が経営の右も左も分からない状態なのであれば、会社をたたむか、第三者に会社を譲るという選択肢に絞られるでしょう。 そして、会社を残したいと思う場合は、必然的に、第三者に譲るという選択肢一択となります。 しかし、第三者に会社売却をした場合は、親の大切な会社が他人の手に渡ってしまったことについて、喪失感を覚えるかもしれません。 統合プロセス(PMI)に気を配る必要性 会社売却後、買い手側と売り手側の会社は、統合プロセス(PMI・ポスト・マネジメント・インテグレーション)と呼ばれるプロセスを通じ、一つの会社として統合されます。 PMIでは、両社の経営方針や社風、組織体制、業務プロセスなどを統合する必要があります。 このプロセスがうまくいかないと、従業員のモチベーションの低下や、社員の不満につながる可能性があります。 そのため、会社売却後には、PMIを適切に進めることが重要です。PMIの進め方については、専門のコンサルタントなどに相談するという対応も考えられます。 またPMIの一環として、ロックアップ条項が効力を生じることも多々あります。 そのため、すぐには会社経営から離れられない可能性があるということを、覚悟しておく必要があります。 関連記事 M&AのPMIとは?PMIの手順は?売り手が協力すべきことは? 社員の冷遇・モチベーションの低下 会社売却後、従業員の立場や待遇が大きく変化する可能性があります。そのため、従業員の冷遇やモチベーションの低下が起こる可能性があります。 特に、以下のようなケースでは、従業員の冷遇やモチベーションの低下が起こりやすいです。 経営方針や社風が変わった場合 新たな役割や仕事内容が求められた場合 収入が減少した場合 左遷・転勤させられた場合 他社に買収されることを教えてもらえず疎外感をいだいた場合 従業員の処遇に関する対策 従業員の冷遇を防ぐには、TOP面談や条件交渉の際に、買い手企業との交渉が必要となるでしょう。 社員の処遇については、全従業員の雇用継続、全従業員の処遇(役職・給与)の継続を求めて、交渉をおこないます。 これらについては、成約時に締結する最終契約書にも落とし込んでおく必要があります。 モチベーション維持の対策 モチベーションの低下を防ぐためには、適切なタイミングでの情報開示が必要と言えるでしょう。 M&Aの情報を従業員に開示するタイミングは、M&Aの実行直後が一般的です。そして、とくに幹部や古株の社員には、迅速かつ丁寧な説明が必要となるでしょう。 とくに古参社員は会社の功労者であり、思い入れも他の社員より強いものなので、社長が自社の買収に応じたという事実は、非常にショックなことで、辞めてしまうケースもあります。 しかし、古参社員については、クロージング後の経営統合を図る場面で力を発揮してもらう必要があります。 また、買い手企業から「役員が退職していない」ことをクロージングの前提条件として提示されることもあります。この場合、役員が退職してしまうとM&Aが中止になるおそれがあるので、退職しないよう引き留める必要があります。 会社売却後の人生を充実させるには?  会社売却は、オーナー経営者だけでなく、会社、役員、従業員、取引先など、多くの利害関係者(ステークホルダー)に影響を与える重要な出来事です。 会社売却を検討しているオーナー経営者は、これらの影響について十分に理解した上で、決断を下すことが大切です。 中小企業のオーナーが後継者不在の場合、従業員の雇用の維持という課題もあるでしょう。会社を廃業すれば、取引先の経営に影響がおよぶことも予想されるケースもあります。 これらの課題を解決するために、会社売却を決めた場合は、会社にかかわる人たちそれぞれにとって良いM&Aとなるよう、条件交渉やPMIに努めることが必須といえるでしょう。 ただし、これらは会社売却先が見つかってからのこと。まずは買い手を探さなければなりません。 株式が非公開の場合は、市場取引がされていないので、上場会社の株取引よりも難しい傾向があります。 効率よく買い手を探すには、早期にM&A仲介会社に相談・依頼することも検討してみましょう。 --- ### 会社売却の相談先は弁護士?相談先の選び方と相談窓口一覧 - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-06-28 - URL: https://atomfirm.com/manda/8889 - Categories: 相談・仲介 会社売却の相談先は弁護士?相談先の選び方は?相談先の一覧はある?この記事では会社売却をご検討中の方に向けて、会社売却の相談先に関する情報を提供しています。…弁護士などの専門家のほか、国の設置する事業承継・引継ぎセンターという機関もあります。 会社売却の相談先としては、金融機関、M&A仲介機関、公認会計士や弁護士などの専門家のほか、国の設置する事業承継・引継ぎセンターという機関もあります。 この記事では、会社売却の相談先について、相談できる内容や特徴(メリット・デメリット含む)をまとめました。 会社売却の相談先を選ぶ基準についても解説しているので、参考にしてみてください。 会社売却の相談先の選び方 相談内容・役割で選ぶ 会社売却の相談先は、その相談内容から選ぶと良いでしょう。 たとえば、会社売却の全体の流れを相談したい場合は、M&A仲介を得意とする民間のM&A仲介会社や、公的機関への相談が適しています。 また、会社売却価格について相談したい場合も、M&A仲介業者への相談が考えられます。ただ、会社売却価格について、より精密な算定をおこなうには、会計知識が豊富な公認会計士に相談してみるのも良いでしょう。 このほか、会社売却のスキーム、法的手続き、書類作成などの法務について詳しく相談したい場合は、法律の専門家である弁護士への相談が適しています。 このように相談内容によって、適切な相談相手は変わります。 会社売却に関して何を相談したいのかを明確にすれば、おのずと相談先を選ぶことができるでしょう。 相談内容と相談先(一例) 相談内容相談先会社売却の相談全般M&A仲介機関会社売却価格の相談等公認会計士会社売却の法務の相談等弁護士 相談費用で選ぶ 会社売却の相談先を選ぶ際、相談費用も大切なポイントになるでしょう。 会社売却の相談費用は、相談先によって異なります。 また相談だけであれば無料であっても、実務を依頼する場合やM&Aが成約に至った場合などは、高額な手数料がかかることもあります。 相談費用をおさえて会社売却をおこないたい場合は、それぞれの相談機関のサービス内容や利用手数料を見比べて、相談先を選ぶ必要があるでしょう。 関連記事 M&Aの着手金とは?無料になる?相場や支払いの注意点まとめ M&Aの完全成功報酬はお得?メリット・デメリット・選び方まとめ 実際に選ばれている会社売却の相談先は? 会社売却に関する相談先については、事業承継の現状に関する各種アンケート調査結果等において公表されることがあります。 たとえば日本商工会議所の調査では、会社売却先を探す際の主な相談先について、取引金融機関が約半数を、次いでM&A仲介業者が約4割弱を占めています。そのほか、取引先企業や同業他社に相談するケースのほか、事業承継・引継ぎ支援センター、仕業、インターネットマッチング事業者などを活用する例も少なからずあるという調査結果がでています(2021. 3. 5 日本商工会議所「事業承継と事業再編・統合の実態に関するアンケート」調査結果 https://archive. jcci. or. jp/20210305kekka. pdf (2024. 1. 15現在))。 金融機関への相談が多い理由としては、金融機関であれば会社の経営状況を詳しく把握しており、相談料や着手金がかからないことが多いといった理由からでしょう。 ただし買い手探しは、その金融機関と取引のある相手から探すことになる等の懸念点も指摘できます。 各相談先にはメリットがある反面、デメリットもあります。 まずは相談先の特徴をつかんで、安心して会社売却を相談できる相手を探すことを優先すべきでしょう。 会社売却の相談先①弁護士等の専門家 弁護士(会社売却手続き・法務DDの相談) 弁護士相談では会社売却の法務が分かります。 会社売却の相談先として、弁護士は有力な選択肢です。弁護士は、法律の専門家として、会社売却に関する法務面のアドバイスやサポートを得意としています。 具体的には、以下の相談内容について、弁護士に相談することができます。 弁護士に相談できること(一例) 会社売却のスキームや手続き 法務DD(デューデリジェンス) 契約書周りのチェック(作成・レビューetc. ) 交渉のサポート 関連記事 M&Aの契約書の種類や内容は?契約の流れに沿って解説! M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? 弁護士の相談窓口 会社売却を弁護士に相談するには、「会社売却 弁護士」といった検索キーワードで、インターネット検索をおこない、相談したい弁護士を見つけて連絡をいれます。 M&A仲介を利用する場合は、必要に応じて、アドバイザーから弁護士を紹介してもらえることもあるでしょう。 弁護士との面談予約ができる、ひまわりほっとダイヤルもあります。 まずは窓口に連絡を入れ、企業名・業種・相談者氏名・住所・連絡先などを伝えます。その後、弁護士からの電話の折り返しがくるので、相談内容を伝え、相談予約をとります。 相談先連絡先弁護士事務所インターネットで「会社売却 弁護士」などのキーワード検索M&A仲介業者弁護士を紹介してもらう日本弁護士連合会【ひまわりほっとダイヤル】https://www. nichibenren. or. jp/ja/sme/about_himawari. htmlTEL:0570‐001‐240 弁護士相談の注意点・デメリット 必ずしもすべての弁護士事務所がM&Aをとりあつかっているわけではありません。 そのため、相談予約を入れる前に、弁護士の注力分野を確認しましょう。 またM&Aを得意とする弁護士であっても、企業価値の計算や事業計画の策定は守備範囲外ということもあります。 会社売却を成功させるためには、多角的な視点からの助言が効を奏するものです。 弁護士以外の専門家からもアドバイスをもらうことも、時には必要となるでしょう。 税理士(会社売却の税金・税務DDの相談) 税理士相談では、会社売却の税務・節税対策が分かります。 税理士は税務のエキスパートです。 税理士には、会社売却に伴う税金の種類や税額、税務対策などを相談することができます。 中小企業の会社売却では、株式譲渡のスキームを用いて会社売却が行われることが多いものです。 当然ですが、株式譲渡をおこなえば、その対価を受け取ることになるので、譲渡益につき税金が発生します。このような税金の対応や節税対策の実施など、会社売却の過程で生じた税務の問題を解決するために、税理士は活躍します。 また買い手側の税理士は、買収にあたって買収監査をおこなう際、税理士の手助けを借りることになるでしょう。 そしてDDの際、買い手側から売り手に対して照会事項があれば、今度は売り手側の税理士の対応が問題となります。 税理士に相談できること(一例) 会社売却の法人税、所得税、消費税などの対応 事業承継税制の対応 税務DDの対応 関連記事 非上場株式譲渡の税金とは?売却価格と税金の関係は? 事業譲渡の税金は?消費税や法人税は利益の何%?お得なのは会社譲渡? 事業承継税制とは?納税が猶予・免除される要件とメリット・デメリットを解説 相談窓口 会社売却を税理士に相談するには、「会社売却 税理士」といった検索キーワードで、インターネット検索をおこない、相談したい税理士を見つけます。 また、M&A仲介を利用する場合は、必要に応じて、アドバイザーから税理士を紹介してもらいましょう。 そのほか、日本税理士会連合会主導の仲介サービスもあります。これは顧問税理士をとおして利用できるサービスなので、必要がある場合は自社の顧問税理士に相談しましょう。 相談先連絡先税理士事務所インターネットで「会社売却 税理士」などのキーワード検索M&A仲介業者税理士を紹介してもらう日本税理士会連合会【担い手探しナビ】https://www. nichizeiren. or. jp/taxaccount/sme_support/jigyoshokeishien/ 相談の注意点・デメリット 税理士は、税務の専門家です。 しかし、日頃からM&A仲介をとりあつかう税理士でなければ、M&Aに関する税務について詳しく知らないという事態もありうるでしょう。 実際にM&Aをおこなう際、税理士に相談したいことが出てきた場合は、M&A仲介業者から紹介してもらう税理士に相談するという対応がお手軽です。 ほかにも、自身でM&Aに詳しい税理士を探すといった対応も考えられます。 公認会計士(会社売却価格・財務DDの相談) 公認会計士には、会社売却価格や会計等を相談できます。 公認会計士は、会計の専門家です。 公認会計士は、会社売却においては、売主側の会社売却価格の算定や、買主側の財務デューデリジェンス(DD)のサポートをおこなうことができます。 会社売却において売主の大きな関心事は、いくらで会社売却ができるかということだと思います。より高額の会社売却価格を目指すには、公認会計士の視点が欠かせません。 M&Aに強い公認会計士に相談できれば、事業の概要(商品の内容、客層、地域、従業員数等)や強み、経営資源を分析し、買収によるシナジー効果を踏まえたうえで、適切な会社売却価格を提案してくれるでしょう。 会社売却価格は、最終的には買収側との交渉によって決まりますが、その交渉の前提となるたたき台として、より説得的な金額を提示できるかどうかは公認会計士の腕次第といえるでしょう。 また、公認会計士は、買収側にとっては会計DDの相談ができる相手となりますし、売り手側にとっては会計DDにおける照会事項への対応や事前策の相談ができる相手となります。 公認会計士に相談できること(一例) 会社売却価格の算定(企業価値評価) 会計DDの相談 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 相談窓口 会社売却を公認会計士に相談するには、「会社売却 公認会計士」といった検索キーワードで、インターネット検索をおこない、相談したい公認会計士を見つけます。 また、M&A仲介を利用する場合は、必要に応じて、公認会計士を紹介してもらいましょう。 そのほか、日本公認会計士協会に相談するのも良いでしょう。 相談先連絡先公認会計士事務所インターネットで「会社売却 公認会計士」などのキーワード検索M&A仲介業者公認会計士を紹介してもらう日本公認会計士協会https://jicpa. or. jp/business/sme/information/2018/20180417jbg. html 相談の注意点・デメリット 公認会計士は会計の専門家です。 しかし、必ずしも全ての公認会計士がM&Aに精通しているとは限りません。 そのため、M&Aに強い公認会計士を自身で探すか、M&A仲介会社に公認会計士を紹介してもらうといった手段で、公認会計士を探す必要があります。 中小企業診断士(会社売却のコンサル・ビジネスDDの相談) 中小企業の経営全般についての相談相手として、中小企業診断士がいます。 中小企業診断士は、中小企業の経営課題に対応するための診断や助言をおこなう専門家です。 中小企業の経営課題のひとつには、事業承継・会社売却が含まれます。 中小企業診断士は、経営コンサルタントとして会社売却先のリストアップや、企業価値を高めるために改善の提案などをしてくれることが期待できます。 M&Aや会社売却に強い中小企業診断士に相談することができれば、会社売却について総合的な助言をもらうことができるでしょう。 相談窓口 会社売却を中小企業診断士に相談するには、「会社売却 中小企業診断士」といった検索キーワードで、インターネット検索をおこない、相談したい中小企業診断士を探します。 また、M&A仲介を利用する場合は、必要に応じて、中小企業診断士を紹介してもらうという方法も考えられます。 そのほか、中小企業診断士協会に相談する方法もあるでしょう。 また後述する事業承継・引継ぎセンターにも中小企業診断士が所属しているとされています。 相談先連絡先中小企業診断士公認会計士事務所インターネットで「会社売却 中小企業診断士」などのキーワード検索M&A仲介業者中小企業診断士を紹介してもらう中小企業診断士協会(中小企業診断士のご紹介)https://www. j-smeca. jp/contents/004_goshoukai. html事業承継・引継ぎ支援センターhttps://shoukei. smrj. go. jp/third_party_inherited_support. html 相談の注意点・デメリット 中小企業診断士は、中小企業の経営コンサルタントを生業とする専門家ではありますが、必ずしも全員が会社売却について経験豊富とは限りません。 中小企業診断士に相談する際は、会社売却の知識があるか、経験豊富かなどにも注意をはらって相談する必要があるでしょう。 会社売却の相談先②民間のM&A仲介 M&A仲介会社 M&A仲介会社は、会社売却の買い手探し(M&Aマッチング)や、会社売却の流れの各段階で必要な手続きをサポートします。 M&A仲介会社であれば、全国規模での買い手探しも実現できるため、効率よく買い手を探すことができます。 相談料や登録料無料のM&A仲介会社もあるので、手軽に利用できます。 また、会社売却価格の相談については公認会計士を紹介してくれたり、法的手続きのサポートでは弁護士を紹介してくれたりするので、自分で専門家を見つけてくる手間も省けます。 サービス内容は、M&A仲介会社ごとに異なるので、自身にあったM&A仲介業者を選びましょう。 相談の注意点・デメリット M&A仲介会社を利用する場合、成功報酬などの手数料のほか、オプションを申し込むとさらに利用料が高額になる可能性があります。 サービス内容や利用料をよく確認する必要があります。 また経験もスキルもないM&A仲介会社の横行について昨今、問題視されています。 M&A仲介会社は、M&Aが成約しさえすれば利益があがります。 そのため、売り手の希望や買い手のニーズを軽視して会社売却を進めてしまう担当者もいるといわれています。 そのような流れの中で、M&A支援機関登録制度ができました。 M&A支援機関登録制度というのは、より一層円滑かつ安心してM&Aをおこなえるよう、中小M&Aガイドラインを制定し、そのガイドラインを遵守しているM&A仲介会社のみを国のデータベースに登録するという制度です。 M&A仲介会社を選ぶ際の一つの目印として、M&A支援機関登録は活用できそうです。 制度データベースM&A支援機関登録制度(中小企業庁)https://ma-shienkikan. go. jp/search 金融機関 会社売却の相談先としては、日頃取引をしている銀行などの金融機関もあげられるでしょう。 地元の金融機関も、マッチングや手続きをサポートしてくれます。 金融機関に会社売却を相談するメリットとしては、財務の専門知識があるので企業価値の分析に優れており適切な会社売却価格を算定してくれること、取引企業の中から買い手を見つけてくれること等が考えられます。 また通常、無料相談できることが多く、気軽に相談できる点もメリットです。 相談の注意点・デメリット ただし地元企業の中から買い手を見つけるとなると、買い手候補となる企業の母数は必然的に少なくなります。 そうなると会社売却をしたい時期に買い手が見つかる保証はなく、買い手がなかなか見つからないという事態に陥ることもあるでしょう。 また、相談にとどまらず、会社売却の実務を専門家に依頼する場合には、手数料が高額になるおそれがあります。 会社売却の相談先③公的機関 事業承継・引継ぎ支援センター/商工会議所 会社売却の相談は商工会議所に相談することもできますが、商工会議所内に設置された事業承継・引継ぎ支援センターへの相談も有益です。 東京23区の場合は、商工会議所内に事業承継・引継ぎ支援センターが設置されています。 事業承継・引継ぎ支援センターは、経済産業省の委託を受けた商工会議所や県の財団等が実施する事業のことです。 事業承継・引継ぎ支援センターは、後継者の人材バンクを準備しM&Aのマッチングをおこなったり、事業承継について幅広く相談したりできる機関です。 事業承継・引継ぎ支援センターは、全国に47都道府県に開設されています。 事業承継・支援センターの連絡先(抜粋) 都道府県住所TEL北海道札幌市中央区北一条西2 北海道経済センター6F011-222-3111宮城県仙台市青葉区二日町12‐30 日本生命勾当台西ビル8F022-722-3884東京都千代田区丸の内3-2-2 丸の内二重橋ビル6F03‐3283‐7555愛知県名古屋市中区栄2‐10‐19 名古屋商工会議所ビル6F052-228-7117京都府京都市下京区四条通室町東入 京都経済センター7F075-353-7120大阪府大阪市中央区本町橋2-806‐6944‐6257福岡県福岡市博多区博多駅前2-9-28 福岡商工会議所ビル8F 092-441-6922 経済産業省「事業承継・引継ぎ支援センター連絡先一覧」より抜粋して作成。2024年1月12日現在の情報です。ご連絡の際は最新の情報をご確認ください。 日本政策金融公庫 日本政策金融公庫は、政府系金融機関であり、日本公庫に借入残高がある中小企業の売却をメインに、「事業承継マッチング支援」をおこなっています。 事業承継マッチング支援の利用料は基本的には無料ですが、デューデリジェンス、契約書の作成などをおこなう際、弁護士等の専門家の支援を受ける場合は、手数料が発生する可能性があります。 相談の注意点・デメリット 国が設置した機関に相談できるという安心感がある一方、民間業者のような充実したサービスを受けられるとは限らないという声もあります。 また、相談だけであれば無料ですが、実際に会社売却の実務を依頼する場合は費用がかかるので注意が必要です。 公的機関であっても、マッチングの相手を必ず紹介してもらえるとは限らないという点にも、注意が必要です。早ければ数か月で買い手が見つかることもあれば、数年単位になる場合もあるようです。 会社売却の相談先④顧問弁護士や取引先等 顧問弁護士・顧問税理士 会社売却の相談先として、自社の顧問弁護士や顧問税理士もあげられるでしょう。 顧問弁護士、顧問税理士とは、会社でおこる法律問題について、継続的に相談を受けてくれており、会社をサポートしてくれる弁護士や税理士のことです。 相談のメリット 会社売却の相談先として、顧問弁護士は心強い存在です。社内の事情に精通する弁護士がいることで、会社売却前の法務の磨き上げについて円滑な遂行が期待できます。 法務の磨き上げというのは、企業価値を高めて高額で会社を売却できるように、法的な面で不備がある場合に是正措置をほどこすというものです。 会社売却によって経営権を後継者に円滑に引き継ぐためには、場合によっては、後継者候補との交渉が始まる前にあらかじめ株式を集約しておく必要があるでしょう。 また法務デューデリジェンスに備えて、契約書、決議・登記・許認可、法令順守・コンプライアンス違反などを見直しておく必要もあります。 こういった法務の磨き上げについて、経験豊富な弁護士であれば、力になってくれる可能性があるでしょう。 同じく税務の磨き上げについては、顧問税理士が力になってくれる可能性があります。 相談するときの注意点・デメリット M&Aを得意としていない顧問弁護士や顧問税理士もいます。 そのような場合には、M&Aを得意とする外部の弁護士や税理士と連携しながら、会社売却を進めていく必要があるでしょう。 取引先への相談 取引先に会社売却を打診する場合、見ず知らずの相手ではないので、安心して会社を託すことができるというメリットはあるかもしれません。 しかし取引先への会社売却の打診は、情報漏洩のリスクをはらむものです。 たとえ後継者不在を理由とする会社売却であったとしても、会社の経営不振が疑われる事態に発展することもあります。取引先に不安感を与える可能性があるのです。 取引先に会社売却を相談する場合は、十分に相手を選ぶなど細心の注意が必要でしょう。 会社売却相談は弁護士が良い?M&A仲介会社が良い? たいていの方は会社売却に不慣れだと思います。 適切な相談相手が分からないまま、闇雲に相談をおこなえば情報漏洩のリスクが伴います。 ここで頼りになる相談相手が、M&A仲介会社です。 M&A仲介会社への相談には、会社売却全体の流れがつかみやすいというメリットがあります。 また会社売却の第一関門である「買い手探し」においても、全国規模で効率よく探すことができ、企業の情報漏洩にも細心の注意をはらってくれます。 たしかに、会社売却の法的手続きや契約書の作成などについては、弁護士に相談したほうが良いでしょう。また税務であれば税理士に、会計については公認会計士に個別相談したほうが良いといえます。 しかし、弁護士、税理士、公認会計士などの専門家をいちいち自分で探してくることは、大変な作業です。 ですがM&A仲介会社に相談すれば、通常、自分で専門家を探す必要はありません。必要に応じて、専門家を紹介してくれます。 会社売却でお悩みの方は、一度、M&A仲介会社への無料相談や問い合わせをしてみてはいかがでしょうか。 --- ### 売却しやすい事業の特徴と成功事例!売却しやすい事業とは? - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/8943 - Categories: 会社売却の流れ, 事業譲渡 売却しやすい事業とは?特徴や成功事例は?注意点はある?この記事では、会社売却・事業売却をご検討中の方を対象に、売却しやすい事業の特徴について徹底解説しています。 売却しやすい事業とは? 売却しやすい事業の特徴は? 会社売却の成功事例は?注意点は? 売却しやすい事業であるということは、とくに中小企業やベンチャー企業にとっては出口対策に困らないということです。 売却しやすい事業か否かは、業種・業界・需要と供給のバランスも重要になります。 この記事では売却しやすい事業の特徴と成功事例、売却しやすい事業になるための秘訣などをお伝えしていきます。 ぜひ最後までお読みください。 売却しやすい事業とは 今後市場拡大が見込まれる事業 今後も市場拡大が見込まれる事業は、売却しやすい事業といえます。 市場拡大により収益増が見込まれるので、買い手にとっては非常に魅力的な事業ということになります。 今後も市場拡大が見込まれる事業の一例としては、IT関連事業や介護事業などがあげられます。 これらの事業には、それぞれ新しい技術の開発、高齢化社会の流れのなかで、非常に高いニーズがあります。 買い手からすれば、これらの事業を運営するにあたって人手不足の解消や優秀な人材確保も課題となるので、売却しやすい事業といえます。 成功例①ツクイによるアカイエ買収 昨今、ICYを利用した介護事業が注目されていますが、介護事業・IT事業はまさに今後市場拡大が見込まれる業界でM&Aも盛んにおこなわれています。 実際に、IT事業・介護事業をいとなむアカリエが、2022年、ツクイホールディングスに対して株式譲渡をおこない、完全子会社になったという事例があります。 成功例②KDDIによるソラコムの買収 2017年、KDDIがIoTベンチャーであるソラコムの株式の過半数を取得して連結子会社化しました。 ソラコムの株式売却価格は200億円ともいわれています。 安定収入が期待できる事業 安定収入が期待できる事業は、売却しやすい事業といえます。 安定収入が見込まれる事業の一例としては、ビルメンテナンス業などがあげられます。 ビルメンテナンス事業は、建物の総合管理(機械設備などの点検・工事、ビルの清掃など)をおこなう業種です。 建物の総合管理では、電気、空調の工事などの周辺事業も取り込み、安定した収入を得られると予想できます。 オフィスビルなどはごまんとあるなかで、ビルメンテナンス業の需要は高く、売却しやすい事業といえるでしょう。 成功例③穴吹ハウジングによる建衛工業の買収 ビルメンテナンス業の売却に関しては、2020年11月8日、ビルメンテナンス業をおこなう建衛工業株式会社が株式売却をおこない、マンション管理業等をいとなむ株式会社穴吹ハウジングサービスの子会社になったという事例があります。 業界再編が激しい事業 調剤薬局、教育事業、食品製造、人材派遣などの業界では、業界再編が進んでいます。 教育事業では、塾同士のM&A、保育園同士のM&Aも盛んです。 新規算入や事業拡大のために、M&Aが活用されいます。 成功例④山崎製パン×神戸屋 食品製造業界では、2022年8月26日、神戸屋から山崎製パンに対して株式譲渡がおこなわれ、神戸屋の包装パンの製造販売事業を山崎製パンが事業承継することになったという事例もあります。 不動産などの資産がない会社の事業 不動産の価値は下落すると大きな損失を被る可能性が高いことから、事業売却では敬遠される傾向があります。 あくまでケースバイケースではありますが、M&Aの戦略として、先んじて不動産など事業に関係のない資産を売却しておいてもよいでしょう。 健全な会社運営をしている企業の事業 売却しやすい事業なのかどうかは、事業の内容も重視すべきです。しかし競合他社がいる場合は、より健全な会社運営をしている企業が選ばれるものです。 たとえば、財務状況として3期連続で赤字になっている、税金の滞納がある、粉飾決算をしている等の事情がある場合は、売却しづらくなる傾向があります。 赤字体質の事業の場合は、株式譲渡ではなく、負債を除いて事業譲渡をおこなうといったスキームでの事業承継を検討する必要があります。 また、個人頼みのノウハウではなくナレッジマネジメントが出来ている、取引先が多い、販売チャンネルが多い、社長が誠実である、他社にない強みがある等の特徴があれば、会社売却・事業売却はしやすいといえるでしょう。 健全な会社運営の特徴(一例) 赤字経営ではない 税金の滞納がない 粉飾決算をしていない ナレッジマネジメント 取引先が多い 販売チャンネルが多い 社長が誠実である 他社にない強みがある 関連記事 M&Aで会社を高く売る方法とは?買い手へのアピールポイントを解説 事業承継対策とは?中小企業の事業承継対策3つのポイントと支援機関 事業売却の際の注意点 事業を売却しやすくする方法 事業を売却しやすくする方法としては、事業売却における懸念点を払拭することや、企業価値を高めることなどがポイントになるでしょう。 事業売却における懸念点を払拭すること 帳簿上、不透明なお金がある場合には、売却の準備段階で是正しておく必要があります。 また赤字続きの場合には、赤字になっている理由を明確にし、将来、黒字転換するまでの事業計画を綿密にたてておくべきでしょう。 外部の第三者への事業承継を目指す場合はもちろんのこと、社内に事業承継させたい社員がいる場合も、その後の会社運営で支障をきたすことがないよう、財務・経理の適正化につとめるべきです。 会社売却の流れでは、遅かれ早かれ、デューデリジェンスが実施され、不透明なお金について指摘される可能性が非常に高くなります。 関連記事 M&Aのデューデリジェンスとは?調査費用は?事業譲渡はどうなる? 企業価値を高める努力をすること たしかし、事前に懸念点を払拭しておくことが非常に重要です。 しかしそれと同時に、自社の強みを把握して、企業価値を高める努力もしていく必要があります。 企業価値が高くなれば、売却価格をより高額に設定できる可能性がでてきます。 買い手候補が「M&Aによるシナジー効果が期待できる」と思えるように、企業価値を高めておくことは重要です。 関連記事 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 売却で市場価値を算定する際のポイントは? 市場価値を参考に、売却価格を設定することになりますが、非上場企業の場合はその会社の株式について市場取引がおこなわれません。 この場合、どうやって市場価値、売却価格を算定すればよいのでしょうか。 非上場企業の企業価値を評価する方法としては、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、コストアプローチの3つのアプローチがあります。 企業価値の3つの評価方法 マーケットアプローチ市場価格をベースに評価する方法例)類似会社比較法 etc. インカムアプローチ収益性をベースに評価する方法 例)DCF法 etc. コストアプローチ純資産をベースに評価する方法例)時価純資産法 etc. コストアプローチは、企業価値の算出方法が比較的簡便であるため、実務では多用されています。コストアプローチによる場合、具体的には、時価純資産に営業利益の3年~5年分を足した金額が、会社売却の相場とされるケースが多いでしょう。 売却価格の交渉の注意点 実際に売却価格を交渉する際は、自社の企業価値が正しく評価されているか吟味する必要があります。 また、買い手の提示した売却価格に異論があるときは、反論しながら交渉を重ねていけるとよいでしょう。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? まとめ 会社売却の相手が見つからずに困っている場合は、専門家に相談してみましょう。 第三者に事業承継をさせたい場合、スタートアップ企業を譲渡して譲渡益を得たい場合などは、まずは相手を探す必要があります。 会社売却の買い手探しで悩んでいる場合には、各自治体の相談窓口や、民間のM&A仲介会社などを利用するケースが一般的です。 特に仲介会社は数多くの案件を抱えているため、複数社に相談することで、多くの買い手候補と交渉できるかもしれません。 --- ### 事業譲渡手続きの流れは?会社譲渡の方法や手順を知ってスケジュールを立てよう - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-04-01 - URL: https://atomfirm.com/manda/8976 - Categories: 会社売却の流れ, 事業譲渡 事業譲渡手続きの流れは?会社譲渡の方法や手順は?スケジュールは?この記事では、事業譲渡・会社譲渡をご検討中の方に向けて、手続きの流れ、最適な手法の選び方を解説しています。 事業譲渡の手続きは?方法は? 事業譲渡の流れは?手順は? 事業譲渡のスケジュールが知りたい! 事業譲渡をして将来の老後資金を貯めたい、会社譲渡の譲渡益を新規事業にあてたい、あるいは相続した会社を売却したいなどとお考えの方はいませんか。 その場合、今後必要となる会社譲渡の手続き、手順などを正しく把握しなければなりません。 この記事では、会社譲渡のスケジュールを上手く立てられるように、事業譲渡の概要や、事業譲渡の手続きの流れなどを解説しています。 是非さいごまでご覧ください。 事業譲渡と簡易事業譲渡とは? 事業譲渡とは? 事業譲渡の定義 事業譲渡とは、株式会社が事業を取引行為として他に譲渡することです。 譲渡の対象が事業の全部または重要な一部に当たる場合は、譲渡する側の会社において、株主総会の特別決議による承認が必要になります。 事業の重要な一部とは? 事業の全部であればその判断は簡単だと思いますが、重要な一部というのは何を指すのでしょうか。 「事業の重要な一部」に該当するかどうかは、売上高・利益・従業員数等が事業全体の10%を超えるものかという量的基準、および会社の事業内容や沿革などから大きな影響があるかという質的基準によって判断されます。 事業譲渡の手続き 株主総会の特別決議で承認を受けるには、議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、かつその出席した株主の議決権の三分の二以上の賛成(賛成数)が必要になります。 簡易事業譲渡に当たる場合や、譲受会社が特別支配会社である場合などは、株主総会の特別決議は不要です。しかし、これらに該当しない場合に、株主総会の承認決議がないときは、その事業譲渡の効力は無効となってしまいます。 また、事業譲渡に反対する株主は、事業譲渡をする株式会社に対して、自分が保有する株式を公正な価格で買い取ることを請求できます。この反対株主による株式買取請求権を行使された場合は、会社は対応を余儀なくされます。 そのほか、事業譲渡にかかわる社員の雇用を維持するためには、譲渡先企業との交渉をおこなう必要があります。社員の同意が無ければ移籍はできないので、社員ごとに、移籍同意書を締結するといった手続きも必要です(民法625条参照)。 事業譲渡の手続き 株主総会の特別決議が必要 事業譲渡の対象とするかどうかは資産・負債ごとに個別に判断 反対株主の株式買取請求権がある 社員ごとに移籍の同意をとるetc. 簡易事業譲渡とは? 通常の事業譲渡では、株主総会の承認決議が必要となります。 しかし簡易事業譲渡に当たる場合は、株主総会の承認決議を省略して、事業譲渡が可能です。 簡易事業譲渡とは、「事業の全部」または「重要な一部の譲渡」について、譲渡する資産の帳簿価格が当該会社の「総資産の五分の一」を超えない場合(定款の定めにより五分の一を下回る割合を定めることは可能)には、株主総会の承認決議がなくても、事業譲渡の効力が生じるという手続きです(会社法467条1項2号)。 株式会社は、次に掲げる行為をする場合には、当該行為がその効力を生ずる日(以下この章において「効力発生日」という。)の前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならない。一 事業の全部の譲渡二 事業の重要な一部の譲渡(当該譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えないものを除く。) 会社法467条1項1号,同2号 通常の事業譲渡の手続きとの違い 簡易事業譲渡の場合、冒頭でもお話ししたとおり、通常の事業譲渡とは異なり、事業の全部または重要な一部の譲渡にあたるときでも、株主総会の特別決議が不要です。 これに加えて、簡易事業譲渡は(会社法468条の「事業譲渡等」に該当しないので、)反対株主の株式買取請求権は認められません。 簡易事業譲渡の手続き 株主総会の特別決議が不要 反対株主の株式買取請求権がないetc. 事業譲渡の手続きの流れは? 事業譲渡の手順は?スケジュールを確認 事業譲渡の手順は、次のようなスケジュールになります。 事業譲渡の手順 ① 事業譲渡の準備を開始する② 事業譲渡先を見つける③ 基本合意書の締結④ デューデリジェンス⑤ 取締役会決議⑥ 事業譲渡契約書の締結⑦ 株主への通知・公告⑧ 株主総会の特別決議⑨ 事業譲渡の効力発生 ①事業譲渡の準備を開始する 事業譲渡をおこなうか否か、事業譲渡をおこなう目的は何かを明らかにして、さまざまなM&Aのうちいずれの手法を選択するかを吟味します。 また自社の強みや、強化すべき点を検討し、現在の市場価値や将来性などを把握していきます。 ②事業譲渡先を見つける 事業譲渡をするには、譲渡先を見つけなければなりません。しかし、自力で事業譲渡先を見つけるのは、非常に時間と手間のかかる作業になるでしょう。 会社売却先・事業譲渡先を効率的に見つける方法としては、M&A仲介会社への依頼がおすすめです。 M&A仲介会社であれば、全国規模で譲渡先を探せるので、候補先の母数が増える分、好条件の相手に巡り合える確率も上がるでしょう。 ほかにも、銀行や商工会議所が、M&Aの仲介をしてくれるケースもあります。 仲介手数料の有無や、M&Aコンサル業の経験値、信頼できる譲渡先を見つけられる可能性などを加味して、相談相手を上手く見つけるのがポイントです。 関連記事 事業譲渡の仲介手数料・費用はいくらかかる? 会社売却の相談先は弁護士?相談先の選び方と相談窓口一覧 ③NDAの締結・基本合意書の作成 秘密保持契約書(NDA) 理想的な譲渡先にめぐり会えた場合は、これから進めていく事業譲渡契約について、譲渡会社と譲受会社の間で方針を話し合って行きます。 お互いにM&Aの話し合いのなかで知り得た情報を秘匿しあうことを約束するために、秘密保持契約(NDA)の締結も忘れずにおこないます。 基本合意書の締結 トップ面談(TOP面談)などを終え、事業譲渡の方針について話がまとまれば、基本合意書を作成します。 基本合意書には、譲渡対象事業の特定や、譲渡価格、調査事項などを記載します。 基本合意書の内容で、最終合意となる訳ではありませんが、たたき台となる大切な草案です。 事業譲渡について希望条件などがある場合は、この段階から提示しておいてもよいでしょう。 関連記事 M&Aの契約書の種類や内容は?契約の流れに沿って解説! M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? ④デューデリジェンス(DD) M&Aを進めるうえで、いわゆるデューデリジェンス(買収監査。通称DD)も非常に重要です。 デューデリジェンスとは、譲渡先企業が、M&Aに応じるかどうかの最終判断をくだすためにおこなう「調査」のことです。 デューデリジェンスはとくに専門的な判断が必要となるので、多くの場合、公認会計士や税理士、弁護士などの専門家に依頼することが多いでしょう。 注意点 売り手の注意点としては、デューデリジェンスの結果をもとに、買い手側から売却代金の値下げなどを要求されることがあるので、それに耐えうる反論を用意しておくことがあげられます。 また、決算書類の記載漏れなどが、信頼関係に影を落として、M&Aが決裂してしまうこともあります。そのため必要がある場合は、DDを行う前にフォローを施しておく必要があります。 関連記事 M&Aのデューデリジェンスとは?調査費用は?事業譲渡はどうなる? ⑤取締役会の決議 事業の全部または重要な一部の譲渡を行う場合は、取締役会を設置する会社では、取締役会での事業譲渡の承認決議が必要とされています(会社法362条4項1号)。 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。一 重要な財産の処分及び譲受け 会社法362条4項1号 取締役会の決議要件は、基本的には、決議に参加できる取締役の過半数が出席し(定足数)、かつ出席した取締役の過半数の賛成(賛成数)が必要になるというものです(会社法369条1項)。 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。 会社法369条1項 なお取締役会を設置しない会社では、2人以上取締役がいる場合、その過半数による賛成が必要です。 ⑥事業譲渡契約の締結 取締役会決議を経た後は、譲渡会社と譲受会社が事業譲渡契約を締結します。 事業譲渡契約では、通常、譲渡対象事業、譲渡期日、譲渡資産、対価およびその支払方法、財産移転手続、競業避止義務、従業員の引継ぎに関する事項、株主総会決議の期日などが記載されます。 事業譲渡契約の内容 譲渡対象事業 譲渡期日 譲渡資産 対価・支払方法 財産移転手続き 競業避止義務 従業員の引き継ぎ 株主総会決議etc. 事業譲渡や株式売却では、相場を意識した企業価値の評価が重要です。事業譲渡契約締結の段階は、売却価格の交渉ができる最終段階です。相場を参考にしつつも、将来性や強みを推して、買い手に希望する価額で取引に応じてもらえるよう説得していく必要があるでしょう。 また、譲渡会社の善管注意義務、事情変更による契約解除、契約に定めのない事項に関する協議義務などを規定することも多いでしょう。 関連記事 事業譲渡契約を解説!契約書を作る際のポイントとは? 事業譲渡の対価はどうやって決まるのか?計算方法は? 事業譲渡ののれんとは?営業権譲渡の流れや売却価格の評価方法は? 事業譲渡の税金は?消費税や法人税は利益の何%?お得なのは会社譲渡? ⑦事業譲渡の通知・公告 事業譲渡の効力発生日の20日前までに、事業譲渡をおこなうことについて、株主への通知や公告が必要です。 ⑧株主総会の特別決議 事業の全部または事業の重要な一部の譲渡(譲渡する資産の帳簿価額が譲渡会社の総資産額の五分の一(五分の一を下回る割合を定款で定めた場合はその割合)を超えるときには、原則として、譲渡日の前日までに株主総会の特別決議が必要になります。 一方、事業を譲受ける会社においては、事業の全部の譲渡の対価として、譲受会社の総資産の五分の一を超える財産を交付する場合は、譲受会社においても株主総会の特別決議が必要になります。 反対株主の株式買取請求 事業譲渡に反対する株主(反対株主)は、事業譲渡をする会社に対して、自身の保有する株式を買い取るよう請求できる権利(反対株主の株式買取請求権)を行使することができます。 事業譲渡をおこなう過程で、譲渡会社は、反対株主の株式買取請求権を行使されることがあるので、留意しておきましょう。 ⑨事業譲渡の効力発生 事業譲渡の効力が発生したら、事業譲渡契約に定めた財産の引き渡しなど、順次、履行する流れとなります。 事業譲渡以外の会社譲渡の手続きは? 事業譲渡以外の手続き①株式譲渡 株式譲渡は事業承継のための方法の一つです。株式会社においては、後継者に事業承継する場合、生前贈与、相続、会社売却(第三者への株式譲渡)の3つのパターンが考えられます。 同族承継ができない場合は、経営能力のある第三者を次世代の後継者として選び、株式譲渡の方法で会社のオーナーとしての地位を譲ることになるでしょう。 会社売却(株式譲渡)の方法 株式譲渡の流れとして、まず、買い手に株式譲渡をうけるに十分な資金の準備をしてもらう必要があります。 上場会社の場合は、証券取引所にて自由に株式を売却することができます。 一方、非上場会社の株式譲渡の場合は、譲渡制限付き株式であることが多く、株式譲渡については会社の承認決議が必要です。 中小企業の場合は、社長が自社の株式を保有し、譲渡制限をつけて、経営権を把握していることが多いでしょう。 非上場株式に譲渡制限がついている場合の株式譲渡の手順としては、まず取締役会や臨時株主総会の承認決議がおりた後、買い手と売却価格の協議をおこないます。そして代金支払いや株主名簿の書き換えなどの手続きを終えれば、株式譲渡が完了となります。 関連記事 株式譲渡の手続き・流れを徹底解説!会社の株式譲渡で必要な書類と注意点とは 事業譲渡以外の手続き②会社分割 会社分割とは、会社を事業ごとに分割して、別の会社に事業を承継させるM&Aの手法です。 会社分割の場合、譲渡企業に対して、譲受企業の株式を対価として交付する運用がなされることが多いものです。 事業譲渡と違って、会社分割では、現金で譲渡対価を受け取れない実情があります。 老後や新規事業のために資金調達をしたいなど、現金化が必要な場面では、会社分割は不向きな手続きといえるでしょう。 会社譲渡の手続きはどれが良い?選び方は? 株式譲渡が向いている場合 事業譲渡、株式譲渡、会社分割はいずれも事業承継する際の手法です。 会社のオーナーとしての地位を完全に譲渡したい場合や、譲渡益を現金で欲しい場合などは、事業譲渡や会社分割ではなく、株式譲渡を選択すべきでしょう。 また、株式譲渡は、他の手続きよりも簡便であるといわれています。 株式譲渡が向いている場合 オーナーの地位を譲渡したい 株式譲渡の対価を現金で欲しい 簡便な手続きで進めたいetc. 事業譲渡・会社分割について 事業譲渡を選択するメリットとしては、不採算事業がある場合、個別に資産や負債の譲渡を交渉できるため、買い手が見つかりやすいという点があげられます。 しかし、事業譲渡や会社分割の場合、会社そのものはその後も存続するため、会社運営から完全に開放されるためには、別途、会社の解散手続きをとる必要があります。 また、事業譲渡は諸々の手続きが複雑で、譲渡益を取得するまでに手間がかかります。会社分割も、株式が対価として交付されるため、譲渡益の現金化には時間がかかってしまいます。 まとめ M&Aの手法は一長一短です。 個別のケースにもよりますが、中小企業を譲渡する場合や、譲渡益の確保に主眼がある場合は、株式譲渡が最適なのではないでしょうか。 会社を存続させたいケースや、すべての譲渡益に変えるのではなく資産を会社に残しておきたいケースなどは、事業譲渡や会社分割が向いているでしょう。 関連記事 M&Aスキーム (手法)を比較!メリット・デメリット・手続きの違いを解説 会社譲渡の手続きで悩んだ場合の対策 会社譲渡の手続きで悩んだ場合の対策としては、たとえば以下の3つが考えられます。 3つの対策 ①ネットで調べる②書籍で調べる③M&A仲介会社を利用する ネットや本で分からない部分がある場合や、実際にご自身の事業がいくらで譲渡できるのかを知りたい場合などは、M&A仲介会社に相談してみてもよいでしょう。 --- ### 事業譲渡の金額・価格はいくら?事業価値の評価方法を解説! - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-04-01 - URL: https://atomfirm.com/manda/9043 - Categories: 会社売却の相場, 事業譲渡 事業譲渡の相場は、業種や規模、地域などによって異なります。例えば、ITや医療、製造などの業種は、相場が高い傾向があります。 事業譲渡の相場を調べるには、M&A仲介会社や金融機関などの専門家に相談するのがよいでしょう。 事業譲渡の金額はどうなる? 事業譲渡で高額の売却価格がつく場合とは? 事業価値の評価方法は? 事業譲渡・事業売却により、会社売却を行う場合、譲渡金額はいくらになるのでしょうか。 事業の価値を評価する際には、純資産法やDCF法など、複数の手法を組み合わせてバリュエーションを行うケースが一般的です。 この記事では、事業譲渡・事業売却を行う際の評価方法や価値算定について解説します。 ぜひ最後までお読みください。 事業譲渡・事業売却とは 事業譲渡とは 事業譲渡・事業売却は、会社売却の方法の一つです。 自社の事業の一部または全部を、他の企業に譲渡する取引のことを事業譲渡・事業売却といいます。 事業譲渡が向いているケース 事業譲渡によって売り手は、経営資源を主力事業に集中することが可能になります。また、場合によっては、後継者問題解決の糸口を見出せる可能性もあるでしょう。 事業譲渡では、会社全体を引き継ぐ「株式譲渡」とは異なり、経営権は譲渡側に残り、譲渡益は株主ではなく企業に入ります。 そのため、「経営再建のために今後も経営に携わりたい」「譲渡益を譲渡企業に入るようにしたい」といったニーズがある場合、事業譲渡がおすすめです。 関連記事 事業譲渡と株式譲渡の違いは?目的・メリット・デメリットなど解説 事業譲渡の留意点 事業譲渡にはメリットがある一方で、株式譲渡などに見られる包括承継が難しいという留意点もあります。 すなわち、事業譲渡の場合は、基本契約や賃貸借契約、従業員の雇用契約など、譲渡の対象となる資産や負債に関係する、あらゆる契約を個別に引き継ぐ必要があります。 個別に契約を引き継ぐことになるため、おのずと手続きは煩雑になります。 また、関係者へ説明は欠かせませんし、個別に承諾を得る必要が生じるケースも多く、時間と労力がかかります。 特に、譲渡対象の事業が、多くの資産や契約を抱えている場合、大きな負担となる可能性が高まります。 関連記事 事業譲渡手続きの流れは?会社譲渡の方法や手順を知ってスケジュールを立てよう 事業譲渡の金額・相場 事業譲渡とは、企業がその事業の一部または全部を、別の企業に譲渡する行為です。事業譲渡の金額は、譲渡される事業ごとの価値によって決まります。 事業譲渡の金額とは? 事業譲渡の金額は、売り手と買い手の合意によって決定されます。 まずは、売り手が自社の事業の価値を評価して、買い手に提示することから始めるのが一般的でしょう。 その後、買収監査の結果を踏まえて、さらに交渉を重ねるて事業譲渡の金額が決定されます。 事業譲渡の金額は、以下のような要素が考慮されることが多いです。 譲渡金額の考慮要素(一例) 事業の財務状況(売上高、利益、資産など) 事業の規模(支店数、社員数など) 事業の将来性(業種・業界、成長性、競争力など) 事業の収益性が高く、資産状況が良好であれば、高い事業価値で譲渡できる可能性が高いでしょう。 また、事業の規模は、支店や店舗の数や従業員数などで計られます。規模の大きい事業は、小規模な事業よりも高額で譲渡される傾向があります。 事業譲渡の相場とは? 事業譲渡の相場は、業種や規模、地域などによって異なります。 業種別に見ると、ITや医療、製造などの業種は、相場が高い傾向があります。 規模別に見ると、大企業の事業譲渡は、中小企業の事業譲渡よりも相場が高い傾向があります。 地域別に見ると、東京や大阪などの都市部は、地方部よりも相場が高い傾向があります。 事業譲渡の相場を調べるには、M&A仲介会社や金融機関などの専門家に相談するのがよいでしょう。 また、インターネット上でも、事業譲渡の相場に関する情報が公開されていることがあります。無料で計算できるサービスもあるので、適宜ご活用なさってください。 事業譲渡を検討する際の注意点 事業譲渡の相場を把握することは、事業譲渡を検討する際の重要なポイントです。しかし事業譲渡の金額を、相場だけで判断してしまうと、思わぬ損失を被る可能性があります。 事業譲渡の金額を決める際には、自社の事業の価値を正しく評価することも重要です。そのためには、事業の財務状況や将来性などを客観的に分析する必要があります。 また、事業譲渡の交渉では、相場だけでなく、買収者の経営戦略や事業へのコミットメントなども考慮する必要があります。買収者にとって魅力的な事業であれば、より高額の譲渡価格を目指すことができます。 事業譲渡を検討しているオーナーや経営者は、自社の事業の価値を正しく理解し、適切なタイミングで、適切な相手に事業譲渡を行うことが重要です。 事業価値の評価方法 事業価値を含めた企業全体の価値を評価することをバリュエーションと呼びます。 自社の事業にどの程度の価値があるのかを算定する一般的な方法としては、「時価純資産法」「DCF法」「類似会社比準法」の3つが挙げられます。 時価純資産法 時価純資産法は、企業の保有資産の時価総額と、負債の時価総額から企業価値を算出する手法です。 貸借対照表に記載されている簿価を時価で再評価し、修正貸借対照表を作成して計算するため、修正簿価純資産法とも呼ばれます。 貸借対照表の資産と負債を時価で再評価することで、簿価純資産法のデメリットを克服し、資産の時価を企業価値に反映できます。 評価対象企業の資産と負債の時価を基にして、修正貸借対照表を作成し、時価換算した資産の総額から時価換算した負債の総額を差し引いて企業の実質的な価値を導き出します。 DCF法 DCF法は、将来発生すると予想されるフリーキャッシュフローをディスカウントすることにより、現在の価値に換算して、企業価値を算定する手法です。 DCF法の計算の手順は次のようになります。 フリーキャッシュフロー(FCF)の予測 株主資本コストの算定 加重平均資本コスト(WACC)の算定 永続価値(TV)の算定 現在価値(PV)の算定 FCFを割り引く際には、WACCと呼ばれる指標を用いて計算します。 DCF方法の計算方法の詳細は、「企業価値評価におけるDCF法とは?株主資本コスト、加重平均資本コスト(WACC)の求め方を徹底解説!」の記事をご覧ください。 類似会社比準法 類似会社比準法は、同様の事業を営む他社の株価などを基にして評価倍率(マルチプル)を算出し、企業価値を評価する手法です。 マルチプル法とも呼ばれます。 マルチプルとして用いられる指標はEV/EBITDA倍率、PER、PBRなどがあります。 マルチプル法の計算式 企業価値=企業の特定指標×マルチプル(倍率)+(現預金-有利子負債) 関連記事 企業価値と事業価値、株式価値とは?それぞれの違いと関係性を解説! M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! 事業譲渡の成功のポイント・注意点 事業譲渡は、会社を売却するオーナーや経営者にとって、重要な決断です。 事業譲渡を成功させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。 事業の価値を高める 事業の価値を高めることにより、高額で事業譲渡できる可能性が高まります。 事業の価値を高める主な方法 事業の収益性を高める 事業の将来性や成長性を高める 事業のブランドや知名度を高める 事業の収益性を高めておくことで、売却時に高額で買い取ってもらえる可能性が高くなります。 事業の収益性を高めるためには、販売価格の引き上げ、原価の削減、業務の効率化等が考えられます。 事業の将来性や成長性も、買い手候補に企業価値をアピールするポイントとなります。 新規事業の展開や海外進出、新たな技術の開発などを行うことで、将来性を見込んでもらえる可能性が高まります。 企業価値評価(バリュエーション)を行い、納得のいく金額にならなかった場合は、会社をより成長させてから事業売却を検討してもよいかもしれません。 事業のブランド力や知名度を高める方法としては、 マーケティング活動の強化や広報活動の強化等が挙げられます。 関連記事 M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 売却しやすい事業の特徴と成功事例!売却しやすい事業とは? 買い手候補を増やす 買い手候補を増やすことで、事業譲渡の交渉において有利な立場を築くことができます。 買い手候補を増やす主な方法 M&A仲介会社に相談する 幅広い業種の買い手候補にアプローチする 事業譲渡の情報を広く公開する 業界団体や政府機関に相談する 事業譲渡で買い手候補を増やしたい場合、最も効果的なのは専門家への相談です。 M&A仲介会社などを利用することにより、自力で買い手候補に連絡をとって交渉するよりも、効率的に買い手情報を集めてもらえるでしょう。 関連記事 会社売却成功への道!M&A買い手探しの目的とポイントとは 交渉を有利に進める 交渉を有利に進めることで、事業譲渡の金額を高めることができます。 交渉を有利に進める主な方法 事業譲渡の交渉に慣れている専門家に相談する 事業の価値を明確にする 買い手候補のニーズを把握する 交渉の準備を万全にする 事業価値を明確に示す資料を準備する 事業譲渡で交渉を有利に進めたい場合、自社の事業が高く評価されるべきだと、説得力を持って説明できなければなりません。 事業価値の評価は、評価者によって大きく価格が異なる場合があります。 利用するM&A仲介会社や専門家によっても、事業価値の評価には差が出るものです。 そのため、複数の相談窓口に問い合わせて、ご自身が最も納得できる交渉の進め方をしてくれる専門家に依頼するのが良いでしょう。 関連記事 M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? 会社売却の相談先は弁護士?相談先の選び方と相談窓口一覧 まとめ 事業譲渡は、オーナーや経営者の人生において、大きな決断となるでしょう。成功するためには、事前の準備が重要です。 事業譲渡は、複雑な手続きを伴いますが、専門家に相談することで、スムーズに事業譲渡を実施することができるでしょう。 また、事業譲渡のタイミングは、事業の状況や業界動向などによって異なります。適切なタイミングで交渉することで、より高い金額で事業譲渡を実施できる可能性があります。 売却価格の設定でお悩みの際は、M&A仲介業者や公認会計士などのM&Aの専門家の知恵を拝借してみるのも良いでしょう。 --- ### 事業譲渡の税金は?消費税や法人税は利益の何%?お得なのは会社譲渡? - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/9071 - Categories: 会社売却の税金, 事業譲渡 事業譲渡の税金は?消費税や法人税は利益の何%?会社譲渡はお得?3つの税金対策とは?この記事では、事業譲渡・会社倍角をお考えの皆様に向けて、譲渡益にかかる税金を徹底解説しています。 事業譲渡の税金は? 事業譲渡の消費税や法人税は何%? 会社譲渡のほうが税金でお得? 事業譲渡をおこない利益があがれば、税金がかかります。 事業譲渡の税金としては、消費税や法人税があげられますが、いったい利益の何%を納税する必要があるのでしょうか。 この記事では、事業譲渡の税金の種類、税率、税金の観点からみてお得な会社譲渡との比較などを取り上げています。 ぜひ最後までご覧ください。 事業譲渡の税金①法人税(譲渡側) 事業譲渡の法人税とは? 事業譲渡の譲渡側(売り手側)の企業が納める税金には、法人税があります。 法人税とは、法人の企業活動により得られる所得に対して、課税される税金です。 売り手企業は、事業譲渡による利益を得た場合、法人税を納付する義務があります。 法人税額・税率 法人税は、譲渡益(所得)に、実効税率(企業が実質的に負担する法人税などの税額)である約34%を乗じることで計算ができます。 実効税率とは? 実効税率とは、法人の実質的な所得税負担率のことをいう。事業税の損金算入の影響を考慮したうえで、法人税、住民税、事業税の所得に対する税率を合計したもの。 譲渡益とは? 譲渡益とは、事業譲渡の売却額から、譲渡資産・負債の簿価純資産を差し引いた金額。 たとえば、A社が5億円で事業を売却した場合に、A社の簿価純資産が3億円のときは、事業譲渡によるA社の譲渡益は2億円となります。 この2億円に、法人の実効税率34%を乗じることで、事業譲渡の法人税等の税額が6800万円になることが分かります。 計算例 5億円-3億円=2億円 2億円×34%=6800万円 事業譲渡の税金②消費税(譲渡側・譲受側) 事業譲渡の消費税とは? 事業譲渡をした売り手企業が納める税金には、消費税もあります。 消費税とは、商品の販売やサービスの提供をした場合に、売上にかかる税金です。 事業譲渡による利益についても消費税がかかります。 売り手企業は、事業譲渡の際、売却額とともに10%の消費税を譲受側(買い手側)から徴収し、納税することになります。 消費税の負担 消費税を負担する側買い手企業 消費税を申告・納付する側売り手企業 消費税額・税率 消費税の税率は10%になります。 税額は、課税標準に税率をかけて計算します。課税標準とは、課税資産の譲渡等の対価の額のこと、つまり課税対象となる利益のことです。 たとえば、5億円で事業譲渡をおこなったとします。この5億円を課税標準とした場合、税率10%を乗じると、消費税額が求められます。このときの消費税の税額は、5000万円になります。 計算例 5億円×10%=5000万円 買い手側にとってお得な税金制度 なお、事業譲渡の買い手企業側が、消費税の確定申告をおこなう際、簡易課税の適用がなく、一定の要件を満たす場合は、仕入れ税額控除ができます。 その結果、還付金を受けられるケースもあります。 課税売上の消費税額よりも、課税仕入れの消費税額のほうが高い場合、すなわち自分が受け取った消費税よりも、支払った消費税のほうが多い場合、還付金を受けることができます。 仕入税額控除とは? 仕入税額控除とは、消費税を算出する際、課税売上の消費税額から、課税仕入れの消費税額を差し引くこと。 簡易課税とは? 簡易課税制度とは、中小事業者の負担に配慮する目的で、納付する消費税の計算方法を簡略化する制度のこと。 原則的な消費税の計算方法は、原則課税といい、これは、課税仕入れの消費税額により消費税額を計算することになります。 一方で、簡易課税は、実際の課税仕入れの消費税額ではなく、みなし仕入率を用いて納税すべき消費税額を簡単に計算することができます。 原則課税と簡易課税 原則課税による消費税額=課税売上の消費税額-課税仕入の消費税額 簡易課税による消費税額=課税売上の消費税額-課税売上の消費税額×みなし仕入率 消費税が課されない場合 事業譲渡の譲渡資産には、課税資産と非課税資産があります。消費税が課されるのは、課税資産についてのみです。 事業譲渡の消費税は、土地や有価証券などの非課税資産の取得にはかかりません。消費税は、課税資産の取得に対して、10%の税率で課税されます。 課税資産 有形固定資産(建物etc. ) 無形固定資産(特許権etc. ) 棚卸資産(在庫、商品etc. ) のれん代・営業権(ブランド、ノウハウ、組織etc. ) 非課税資産 土地 有価証券(株券etc. ) 債権 消費税の課税対象は、負債と課税資産を合算した差額ではなく、課税資産の金額です。 もっとも、負債を譲渡することで、事業譲渡の譲渡価格が低くなり、結果として消費税が低下するという節税効果はありうるでしょう。 事業譲渡の税金③不動産取得税・登録免許税(譲受側) 不動産取得税とは?税率・税額は? 事業譲渡で、買い手側が不動産を取得した場合、買い手側には不動産取得税や、登録免許税が課税されます。 まずは不動産取得税から確認していきましょう。 不動産取得税 不動産取得税とは、土地や建物を入手したときに、取得した者が支払う税金のことです。 税率・税額 不動産取得税については、原則としては、不動産の評価額に税率4%を乗じて計算します。 しかし、一定の要件を満たせば、税額の軽減を受けられます。 令和6年3月31日までに土地を取得した場合、税率は3%に軽減されるうえ、宅地であれば課税標準に1/2を乗じることができるといった軽減措置を受けることができます。 不動産取得税まとめ 通常税率特例措置建物固定資産税評価額×4%固定資産税評価額×1/6×4%土地固定資産税評価額×3%※1固定資産税評価額×1/6×3%宅地固定資産税評価額×1/2×3% ※2固定資産税評価額×1/6×3% ※1 本来は税率は4%になりますが、令和6年3月31日まで税額の軽減措置があり、税率は3%となります。※2 本来の税率は4%になりますが、令和6年3月31日まで税額の軽減措置があり、宅地等(宅地及び宅地評価された土地)を取得した場合、当該土地の課税標準額は価格の1/2となり、税率は3%となります。 登録免許税とは?税率・税額は? 登録免許税 登録免許税とは、土地や建物を入手した場合、所有権保存登記や移転登記等をおこないますが、この登記をする際にかかる税金が登録免許税です。 税額・税率 登録免許税については、令和8年3月3月31日まで、土地については1. 5%、土地以外の不動産については2%の税率で課税されます。 また、M&Aにより経営者から事業譲渡を受けた場合は、一定の要件のもとさらに不動産取得税や登録免許税が軽減される特例措置を受けることができます。 登録免許税まとめ 通常税率特例措置建物固定資産税評価額*2%固定資産税評価額*1. 6%土地固定資産税評価額*1. 5%ー宅地固定資産税評価額*1. 5%ー 会社譲渡との税金比較 会社譲渡(株式譲渡)とは? 会社譲渡・会社売却という場合、株式譲渡を指すことも多いでしょう。 株式譲渡とは、自身が保有する株式を、第三者に売却することです。 事業譲渡とは? 事業を売却すること。事業売却とも呼ばれる。 会社譲渡とは? 会社を譲渡すること。おもに株式譲渡を指す。場合によっては、事業譲渡や会社分割などを含むこともある。 株式譲渡は、中小企業のM&Aにおいて比較的よく用いられる手法です。 たとえば、中小企業のオーナー経営者が、M&Aによる事業承継を目的として、自身が保有する株式を後継者に譲渡するというようなケースがあげられるでしょう。 株式譲渡の対価は現金であり、その利益には税金がかかります。 関連記事 非上場株式譲渡の税金とは?売却価格と税金の関係は? 会社譲渡は税金がお得?税率は? 株式譲渡をおこない、その譲渡の利益を手にするのは、株式を発行した会社ではなく、株式を保有していた元の株主です。 株主がオーナー経営者個人であれば、株式譲渡の利益に対する税金は、オーナー経営者が納める必要があります。 株式譲渡により会社譲渡・会社売却をした場合は、株式の売却価格から取得費(あるいは売り手が会社の創業者であればその資本金の払込金額)を差し引いた売却益に対して、20. 315%の税金がかかります。 たとえば株式の売却価格が6億円、取得費が1億円の場合、株式譲渡の利益については1億157万5000円の税金がかかります。 計算例 (6億円-1億円)*20. 315%=101,575,000円 事業譲渡と会社譲渡の税金比較 事業譲渡の場合は、少なくとも、売り手側の会社に、事業譲渡の利益の約34%の税金がかかります。 そのうえ、事業譲渡の利益をオーナー経営者に還元しようとすると、配当や役員報酬、退職金などの方法を用いる必要があります。 そして、いずれの方法であっても、経営者への課税については避けて通れません。 非上場企業の株式の配当の税金 たとえば、非上場企業の株式の配当であれば、配当受取時に、20. 42%の税率で所得税が源泉徴収されるとともに、総合課税の対象として確定申告が必要になります。 他の所得もあれば、合算され、課税される所得金額は高額となる結果、所得税の税率は最大45%になります。 住民税もあわせれば、自分が手にする利益について、最大55%の税率で納税しなければなりません。 課税される所得金額(円)税率1,000~1,949,0005%1,950,000~ 3,299,00010%3,300,000~ 6,949,00020%6,950,000~ 8,999,00023%9,000,000~ 17,999,00033%18,000,000~ 39,999,00040%40,000,000~45% 国税庁HP「タックスアンサー(よくある税の質問)No. 2260所得税の税率」 に掲載された「所得税の速算表」の数値より抜粋して作成。最新の情報、詳細につきましてはご自身でご確認ください。 このように、事業譲渡の場合は、売り手企業において法人税等がかかる以外に、事業を手放した経営者がその譲渡益を手にする際にも税金がかかります。 これに対して、会社譲渡の場合は、株式を譲渡のときに20. 315%の税率で税金がかかるにとどまるので、事業譲渡と比べれば税額をおさえられます。 会社譲渡との比較 会社譲渡(株式譲渡)個人株主に対して20. 315% 事業譲渡法人に対して約34%※そのほか経営者が譲渡益を手にする際、経営者に税金がかかる 事業譲渡で利益をあげるには そもそも事業譲渡とは? 事業譲渡で利益をあげるにはまず、事業譲渡はどういうものなのか、メリット・デメリットは何なのかについて、知っておく必要があるでしょう。 そもそも事業譲渡とは、会社が営む事業の全部または一部を譲渡することです。 事業とは? 事業とは、一定の営業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産のこと。事業譲渡は、M&Aの手法の一つで、事業の全部または一部を他の会社に譲渡すること。 近年では、JA共済連の事業譲渡が大きなニュースになりました。 JA共済が温泉事業について、ホテル経営なども手掛ける不動産会社に譲渡するというニュースです。 全国共済農業協同組合連合会(JA共済連、東京都)が、「ホテル玉泉」(島根県松江市玉湯町)の事業を不動産事業などのサクセス・プロ(東京都)に譲渡することが18日、分かった。同ホテルを運営するJA共済連の子会社の株式を近く譲渡する方針。(中略)譲渡先のサクセス・プロは東京都心のオフィスビルやマンションを管理するほか、国内のホテルやゴルフ場などを運営しており、23年3月期のグループ売上高は320億円だった。 2024. 1. 24 YAHOO!JAPANニュース「JA共済連が「ホテル玉泉」を事業譲渡 東京の不動産会社に 従業員の雇用は維持、予約も受け付け」https://news. yahoo. co. jp/articles/64de9699200916bf2087478a301fdf1446f7a034(2024. 1. 26現在) 事業譲渡のメリット 売り手側のメリット 売り手にとっては、不採算事業のみ切り離して、他の企業に事業譲渡を行う場合、売り手企業としては収益の回復や財務の改善が図れます。 また、主力事業に注力できるようになるため、経営資源の効率化を図れます。 企業の経営再建を図るうえで、事業譲渡は売り手にメリットのある制度です。 買い手側のメリット 一方、買い手にとっては、必要な資産を選んで買収できること、簿外債務を引き継ぐおそれがないことなどがメリットになります。 会社の規模によっては、従業員の未払賃金などの簿外債務が多額にのぼり、譲受側にとって大きな負担になるからです。 関連記事 事業譲渡の対価はどうやって決まるのか?計算方法は? M&Aのメリット・デメリットは?売り手にメリットがあるM&Aとは 事業譲渡のデメリット 売り手側のデメリット 会社経営から完全に離れたい売り手にとっては、事業譲渡を実施した後に会社清算の手続きをとる必要があり、手続きが煩雑になるデメリットがあります。 また、M&Aの利益は会社に入ります。そのため、自身で譲渡益を使いたいと思っている経営者にとっては、配当や役員報酬を受ける手続きをとる必要がある上、課税されます。 買い手側のデメリット 一方、買い手にとっては、税制適格組織再編制度による税務上の優遇措置は適用されないことがデメリットです。 また、登録免許税や不動産取得税を支払ったり、消費税も負担しなければなりません。 事業譲渡で利益をあげる3つの対策 事業譲渡で売り手側が利益をあげるための対策としては、たとえば事業価値を高めること、適切な譲渡価格を設定すること、税金の対策を講じることの3つが考えられます。 1. 事業価値を高める 事業価値は、収益性の向上、資産の有効活用、コストの削減、ブランド力の強化などによって高めることができます。 事業価値を高めることができれば、事業譲渡による利益を多くすることができます。 事業価値の評価の方法としては、以下のような計算方法があります。 事業価値の計算方法 事業価値=譲渡事業の時価純資産額+譲渡事業ののれん代 ※時価純資産=貸借対照表の事業資産額を時価に換算した金額-負債を時価に換算した金額※のれん代=譲渡事業の直近の営業利益×1~5年分 あくまでも、これは一例にすぎません。 より緻密に事業価値を算定したい場合はM&A仲介会社や公認会計士などの専門家に相談してみましょう。 関連記事 事業譲渡ののれんとは?営業権譲渡の流れや売却価格の評価方法は? 2. 適切な譲渡価格を設定する 事業譲渡の譲渡価格については、市場の動向や買い手のニーズによっても変動します。 買い手に対してシナジー効果の高いM&Aであることを意識させることで、より高額の譲渡価格を設定できる可能性があがります。 適切な譲渡価格を設定することで、買い手が見つかりやすくなります。 関連記事 事業譲渡の金額・価格はいくら?事業価値の評価方法を解説! 3. 税金の対策を講じる 事業譲渡の譲渡益には、約34%の実効税率がかかります。 事業譲渡を実施した年度にあわせて、必要な経費を計上することで、利益を圧縮して法人税の節税をおこなうことが考えられます。 場合によっては、M&Aを得意とする税理士や、M&A仲介会社に、税金対策の相談をしてみても良いでしょう。 まとめ 事業譲渡では、法人税や消費税など、様々な税金が発生します。 これらの税金を事前に把握していないと、思わぬ税負担が生じてしまい、利益が大幅に減少してしまうこともあるでしょう。 事業譲渡とそれ以外のスキームの違いを把握して、適している手法を選択できるように、M&Aを進める前に、専門家に相談してみるのもおすすめです。 事業譲渡や、会社譲渡(株式譲渡)をはじめとするM&Aで問題になるのは、税金だけではありません。法的手続きや財務の是正、そもそも買い手探しの難航など、M&Aでは様々な問題が生じます。 難しい問題が生じたときには、適切な時期に、専門家の意見をもらうことが大切です。 M&Aに強い税理士、弁護士、公認会計士、M&Aアドバイザーなどの意見をもらって、M&Aを成功させましょう。 --- ### 非上場株式譲渡の税金とは?売却価格と税金の金額の関係は? - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/9234 - Categories: 会社売却の税金, 株式譲渡 非上場株式の譲渡にかかる税金は?売却価格と税金の関係は?この記事では、非上場株式のお考えの方を対象に、譲渡益にかかる税金について解説しています。株式の譲渡価格は当事者間で自由に決定できますが、税金のことも考えると、相場を意識した価格設定が重要です。 非上場株式譲渡の税金はいくら? 非上場株式の譲渡ではどんな税金がかかる? 個人株主が非上場株式を譲渡した場合、所得税・復興特別所得税・住民税あわせて20. 315%の税金をおさめる必要があります。 これらの税金の対象となるのは、売却金額そのものではありません。売却金額から非上場株式を取得するときにかかった費用(取得費)と、売却の際にかかった手数料(譲渡費用)などを差し引いた譲渡所得に、税金がかかります。 また、売却相場や時価を考慮せずに、譲渡価格を決めると思わぬ税金が課されて損をすることもあります。 この記事では、非上場株式の譲渡所得にかかる税金と、税金対策を見据えた売却価格設定などを解説しています。 ぜひ最後までお読みください。 非上場株式譲渡のメリットは?売却のほうが税金は安い? 非上場株式譲渡のメリット 非上場株式を譲渡したいと思うきっかけは、老後資金や新たな事業の資金調達、後継者の不在、株式を相続したけれども会社の運営ができないなど、その理由はさまざまです。 非上場株式を売却することで、多額の資金を得られるメリットや、後継者不在であっても会社そのものは存続していけるというメリットがあるでしょう。 株式譲渡のメリット 譲渡益が手に入る 後継者問題の解消 会社経営から離れることができる 会社の存続etc. 関連記事 M&Aのメリット・デメリットは?売り手にメリットがあるM&Aとは 非上場株式の税金... 相続より売却の方が安い? 非上場株式の株式売却(株式譲渡)の利益にかかる税金は、売り手が個人株主であれば金額にかかわらず20. 315%です。 一方、非上場株式を相続した場合は、相続人には10%から最大55%までの税金がかかります。 法定相続分に応じて取得した財産税率控除1,000万円以下10%ー1,000万円~3,000万円以下15%50万3,000万円~5,000万円以下20%200万5,000万円~1億円以下30%700万1億円~2億円以下40%1700万2億円~3億円以下45%2700万3億円~6億円以下50%4200万6億円~55%7200万 国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)「No. 4155 相続税の税率」を参考に作成。こちらは2023年3月28日現在の情報です。最新の情報については、ご自身でご確認ください。 非上場株式の価値が高ければ高いほど、相続税の税率は上がり、相続税は高くなります。 このように譲渡と相続とでは、税金に大きな違いがあります。 将来、後継者になるために非上場株式を取得する必要がある場合以外は、相続を待たずに、親の代で会社売却に踏み切ってもらうほうが税金を安くおさえられるケースもありそうです。 非上場株式の価値がどのくらいあるのかを把握したうえで、譲渡と相続のどちらのほうが税金面でメリットがあるのか検討を加える必要があります。 税金の比較 相続税相続税の税率は最大55% 譲渡益の所得税等個人株主の譲渡益の税率は20. 315% 非上場株式を譲渡したときの税金 非上場株式を譲渡する場合(個人株主) 税率 個人株主が非上場株式を売却した場合、所得税15. 315%(復興特別所得税を含む)、住民税5%、あわせて20. 315%の税金が、「譲渡所得」にかかります。 なお、非上場株式の譲渡所得は、一般株式等にかかる譲渡所得等の金額となり、申告分離課税とされるので、どれだけ譲渡所得が大きくても一律20. 315%の税率は変わりません。 譲渡所得 所得税・復興特別所得税・住民税が課税されるのは、非上場株式の「譲渡所得」です。 譲渡所得とは、譲渡金額(売却代金)から、必要経費(取得費・仲介手数料等の譲渡費用)を差し引いた金額のことです。 課税される譲渡所得とは? 非上場株式の売却代金-(取得費+譲渡費用)=譲渡所得 なお、非上場株式と上場株式の譲渡損益を通算すること(赤字と黒字を合算することで、利益を圧縮して節税すること)はできません。そのため、上場株式で損失がでている場合でも、非上場株式の譲渡所得の節税にはつながりません。 取得費 取得費とは、売却予定の株式を取得したときにかかった費用のことです。 創業者の場合は事業立ち上げにかかった資本金、創業者を相続した場合はその資本金の金額、非上場株式の譲渡を受けた場合はそのときに支払った対価などの金額が、取得費となります。 取得費が分からない場合は、売却代金の5%を取得費として計算することができます。 譲渡費用 譲渡費用とは、株式売却にかかる費用のことです。 上場株式であれば証券取引所の委託手数料、非上場株式であればM&A仲介会社の仲介手数料などがあげられます。 そのほかにも、印紙税、名義書換料なども譲渡費用に含まれます。 ◆個人株主の株式譲渡:計算式とシュミレーション ここまでの内容をまとめると、以下のような計算式で、非上場株式の譲渡所得にかかる税金を算出することができることが分かります。 非上場株式の譲渡所得・個人株主 譲渡所得の金額 =譲渡価格-必要経費(取得費+譲渡費用) 所得税(復興特別所得税を含む)の金額=譲渡所得の金額×15. 315% 住民税の金額=譲渡所得の金額×5% たとえば、譲渡価格3億2000万円、必要経費が2000万円の場合、個人株主が非上場株式を譲渡益したときににかかる所得税、住民税は以下のようになります。 計算 所得税の金額=(3億2000万円-2000万円)×15. 315%=45,945,000円 住民税の金額=(3億2000万円-2000万円)×5%=15,000,000円 非上場株式を譲渡する場合(法人株主) 法人株主が非上場株式を譲渡する場合、他の所得と合算されたうえで、その所得全体に対して法人税、事業税、住民税が課税されることになります。 非上場株式の譲渡益は、譲渡金額から必要経費を差し引いた金額になります。 法人の場合は、ほかの損益と通算したうえで、法人税等の税額が決まります。 法人税の実効税率は、通常、およそ30%~35%程度が見込まれます。 著しく低い売却価格・無償の株式譲渡の税金リスク 著しく低い価額での株式譲渡の注意点 譲渡所得が低ければ、税金の金額も小さくなります。 しかし、所得税逃れや相続税逃れのために、非上場株式の譲渡をおこなうと、みなし譲渡課税やみなし贈与課税をうけるリスクがあります。 つまり、時価よりも低額で譲渡した場合でも、時価で譲渡したものと同視され、時価を超える部分については贈与があったなどみなされ、税金が課されるということもあり得ます。 株式譲渡にかかる税金のルールは、その株式譲渡が個人株主間でおこなわれたものか、法人株主間か、個人株主から法人か、法人株主から個人なのかでも変わります。 非上場株式の譲渡について、必要経費が1億円、譲渡金額が2億円、時価が5億円というケースを想定して、どのような税金リスクがあるのかを解説していきましょう。 例題 必要経費:1億円*¹ 譲渡金額:2億円*² 時価  :5億円*³ *¹ 必要経費とは取得費や譲渡費用のことをいう。取得費とは、売り手が株式を取得する際にかかった費用をいう。譲渡費用には、M&A仲介会社の仲介手数料や、印紙代、名義書換料などが含まれる。*² 譲渡金額とは、売り手が株式を売却した際の価格をいう。*³ 時価とは、株式の時価をいう。 なお、わかりやすくお伝えするために、最大公約数的な考え方で、できる限り簡略化して説明していきます。税金には様々なルールがあります。個別のケースについて詳しく知りたい場合は、顧問税理士などに聞いてみてください。 個人株主同士の非上場株式の譲渡 売り手側(個人)の税金 個人株主間で非上場株式を譲渡した場合、売り手側の譲渡益には所得税がかかります。 上記の例の場合、所得税の課税対象は1億円(譲渡金額2億円-必要経費1億円)になります。 必要経費:1億円 譲渡金額:2億円 時価  :5億円 課税対象:1億円(=譲渡金額-必要経費) ただし低額譲渡に該当する場合は、譲渡による損失はなかったとみなされるため、損益通算はできません。 上記の例の場合、3億円の譲渡損(5億円で売却できるのに、2億円で売却してしまった場合に生じる、差額部分3億円の損失)が生じます。低額譲渡に該当する場合、この譲渡損はないものとして扱われるため、ほかの株式の譲渡益と通算できないというデメリットがあります。 買い手側(個人)の税金(みなし贈与課税) 非上場株式の譲渡先(買い手側の個人株主)については、時価と譲渡金額の差額である3億円(5億円-2億円=3億円)について贈与を受けたものと扱われる可能性があります。 この場合、みなし贈与課税がおこなわれ、贈与税が発生するリスクがあります。 個人株主から法人株主への株式譲渡(みなし譲渡) 売り手側(個人)の税金(みなし譲渡課税) 個人株主が法人に対し、「著しく低い金額」(所得税法59条1項2号)で株式を譲渡した場合、「みなし譲渡」にあたる可能性があります。 「著しく低い価額」とは? 「著しく低い価額」とは、「譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時における価額の二分の一に満たない金額」(所得税法施行令169条)をいう。 みなし譲渡にあたる場合、実際の譲渡金額ではなく時価による譲渡がおこなわれたとして、課税されることになります。 つまり、必要経費が1億円、譲渡金額が2億円、時価が5億円の場合、2億円ではなく5億円で株式譲渡をおこなったとして、所得税を払わなければなりません。 この場合の所得税の課税対象は、4億円(時価5億円-必要経費1億円)になります。 必要経費:1億円 譲渡金額:2億円 時価  :5億円 課税対象:4億円(=時価-取得金額) 実際に株式譲渡で得られた譲渡益は、譲渡価格2億円と必要経費1億円の差額である1億円であるはずです。しかし、みなし譲渡が適用された場合は4億円の譲渡益があるものとして課税されるため、本来よりも課税金額が増えるリスクがあります。 買い手側(法人)の税金 時価である5億円と譲渡金額である2億円の差額である3億円について、受贈益があるとして、法人税が課税される可能性があります。 法人株主から個人株主への株式譲渡 売り手側(法人)の税金 法人株主から個人株主への株式譲渡の場合、著しく低い価額で株式譲渡をしたときは、時価で株式譲渡したものとして扱われ、時価と必要経費との差額が譲渡益となり、法人税等の課税対象になります。 必要経費億円、譲渡金額2億円、時価5億円の場合、法人税の課税対象は4億円(時価5億円-必要経費1億円)になります。 必要経費:1億円 譲渡金額:2億円 時価  :5億円 課税対象:4億円(=時価-取得金額) 時価と譲渡価額の差額は、個人に対する給与や寄付金として扱われることになります。役員賞与や寄付金などは損金不算入となるケースに留意する必要があります。 買い手側(個人)の税金 時価と譲渡金額の差額である3億円(=5億円-2億円)について、給与所得や一時所得として課税される可能性があります。 法人株主同士の株式譲渡 売り手側(法人)の税金 売り手については、法人株主から法人株主への株式譲渡の場合、必要経費1億円、譲渡金額2億円、時価5億円であるときは、時価で譲渡したものとされ、時価と必要経費の差額である4億円(=5億円-1億円)について、法人税等が課税されます。 時価と譲渡金額の差額である3億円(=5億円-2億円)については、寄付金として扱われ、損益不算入の対象となります。 買い手側(法人)の税金 買い手側については、時価と譲受価格の差額について、受贈益として課税される可能性があります。 売却価格が時価よりも高額の場合、税金はどうなる? 個人株主同士の非上場株式の譲渡 個人株主から個人に対して、非上場株式が譲渡された場合に、その株式の売却価格が時価よりも高額であるときは、時価から必要経費を差し引いた部分には所得税等が課されます。所得税等の税率は、所得税・復興特別所得税・住民税あわせて20. 315%となります。 時価を超える譲渡益(譲渡金額-時価)については、買い手から売り手に対して贈与があったものとして、贈与税が課されるリスクがあります。 個人株主から法人株主への株式譲渡 個人株主から法人株主へ株式を高額譲渡した場合、時価から必要経費を差し引いた部分については、譲渡益があるものとして、所得税・復興特別所得税・住民税の課税対象となります。所得税等の税率は20. 315%となります。 時価を超える譲渡益(譲渡金額-時価)については、法人から個人への給与や寄付として扱われ、課税対象となります。給与所得であれば、税率は5%~45%です。累進課税となるため、所得金額が上がれば上がるほど、税率は高くなっていきます。 法人株主から個人株主への株式譲渡 法人株主から個人株主への株式譲渡を時価より高額で売却した場合、時価を基準とした譲渡益に法人税等が発生します。 また、時価を上回る譲渡金額については、買い手である個人株主から法人株主に対して、寄付があったとして扱われ、法人税等が課税される可能性があります。 法人税等の実行税率は、30%程度です。 法人株主同士の株式譲渡 法人株主から法人株主への株式の高額譲渡についても、時価を基準とした譲渡益に法人税等が課税される可能性があります。 さらに、時価を超える部分(譲渡金額-時価)については受贈益として扱われ、法人税等が課税される可能性があります。 非上場株式譲渡の税金で損しないためには? 売却価格の設定が重要! 譲渡価格は、当事者の合意で決めることはできます。しかし、税金のことも考えると、相場を意識した価格設定が望ましいでしょう。 非上場株式譲渡でかかる税金は、時価を踏まえて課税されることになります。 時価からはずれた売却金額では、非上場株式の売り手はもちろんのこと、買い手も不測の税金リスクを負うことになります。 非上場株式の譲渡価格の算出方法を押さえよう! 非上場株式の譲渡価格については、次のような方法で相場を計算することができます。 これらの計算方法を用いて、合理的な価格設定をしていくことが大切です。 譲渡価格の算出方法 コストアプローチ資産や負債に着目した算定手法例)純資産法、年買法  時価純資産額+のれん代 インカムアプローチ収益性に着目した算定手法 例)DCF法 マーケットアプローチ事業の類似するマーケットに着目した算定手法例)マルチプル法 中小企業の会社売却の場合、株式譲渡の手法がとられることが多く、その際の売却価格の算出方法については、コストアプローチが多用される傾向があります。 たとえば、コストアプローチのなかでも比較的ポピュラーな計算方法としては、簿価から時価に引き直した「純資産額」に、「経常利益」の数年分(のれん代)を加算して、売却価格を算定するという方法でしょう。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! 株式譲渡の相談先はどこ?専門家ごとの特徴とメリットを紹介 まとめ 非上場株式譲渡にかかる税金は、時価よりも著しく低い金額だったり、高額だったりする場合は、思わぬ税金が課されるリスクがあります。 時価を意識しない売却価格の設定は、売り手にとっても、買い手にとってもリスクの大きい株式売却となってしまいます。 よかれと思った判断が思わぬ事態を招かないように注意を払う必要があるでしょう。 --- ### M&Aのメリット・デメリットは?売り手にメリットがあるM&Aとは - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/9610 - Categories: その他, 事業承継 M&Aのメリット5選は?デメリット5選は?売り手にメリットがあるM&Aとは?売り手が選ぶM&Aの手法は?M&Aの相談先は?この記事では、M&Aをご検討中の中小企業のオーナーに向けて、有益な情報をお届けします。 M&Aのメリットは? M&Aのデメリットは? 売り手にメリットがあるM&Aとは? M&Aをおこなうと、売り手には、譲渡対価を得られることをはじめとして、様々なメリットがあります。 それでは、M&Aをおこなう際、売り手にデメリットはあるのでしょうか。 この記事では、M&A以外の事業承継の方法と比べながら、M&Aをおこなうことで売り手に生じるメリットやデメリットを解説します。 現在、M&Aをおこなうかどうか迷っている会社のオーナーの方にとって、参考になる内容をまとめていますので、ぜひ最後までお読みください。 M&Aの売り手のメリット メリット①M&Aの譲渡対価を得られる M&Aによる事業承継のメリットは、M&Aの対価を得られることです。 新規事業やリタイア後の生活資金、負債の返済などに譲渡対価をあてることができます。 M&Aの譲渡対価の使い道  新規事業 生活資金 負債返済etc. 親族内承継との比較 親族内承継は通常、贈与や相続によって事業承継がおこなわれるものですが、この場合、通常、譲渡対価を得ることはできません。 従業員承継との比較 また、従業員承継では通常、贈与や相続ではなく株式売却などの手法で事業承継がおこなわれます。この場合、従業員に譲渡対価を支払ってもらう必要があります。 しかし、従業員個人が、株式を買い取れるだけの資金を準備できるのかという資金源の問題もあります。 この場合、かりに低額で株式を売却したとしても、贈与とみなされて高額の贈与税が課される可能性もあるので、資金源の問題は解決しない可能性が高いでしょう。 関連記事 会社売却後の人生はどうなる?会社売却で経営者・社員等のその後は? メリット②企業の成長・企業の存続 M&Aによる事業承継のメリットは、自社の存続や、自社の成長につながることです。 廃業か、M&Aか 自身ではこれ以上企業を成長させることができず先行き不安がある場合、会社を廃業するという選択肢も思い浮かぶものでしょう。 しかし手塩にかけて育ててきた会社について、成長が見込めない、後継者がいない、先行き不安等の理由で廃業することになるのは、とても残念なことです。 M&Aにより、第三者に経営を引き継ぐことができれば、企業をたたまずに済むでしょう。 M&Aによる企業の存続・成長 企業の事業の一部の譲渡等のM&Aをおこなう場合、主力事業に経営資本を集中させて注力することができます。そのため、経営再建や自社の成長につながるメリットがあります。 売却対象となった事業についても、譲渡先企業において、成長を遂げる可能性もあるでしょう。 メリット③後継者問題の解決 M&Aによる事業承継のメリットは、後継者不在により親族内承継や従業員承継が難しい場合でも、後継者を見つけられることです。 後継者不在の原因 少子化で後継者がいない 後継者候補に会社を継ぐ意思がない 後継者教育ができなかった・素質がなかった 少子化で後継者がいない 昨今、少子化の影響による後継者不在が顕著です。 中小企業のオーナーが高齢にさしかかるころには、同じ会社で働いている従業員も高齢になっており、従業員の中から後継者を募ることも難しくなるパターンは多いでしょう。 後継者候補に会社を継ぐ意思がない また、個人保証のリスクや会社運営の重責等を理由に、後継者に会社を継ぐ意思がないといったケースもあります。 この場合、一定の要件を満たす場合、事業承継特別保証の制度を適用して個人保証をはずすこともできます。ですが、会社経営という重責はなくなりません。 後継者教育ができなかった・素質がなかった このほか、後継者争いが勃発した、後継者教育が不十分なまま先代が亡くなってしまったというケースでも、後継者不在の問題が顕在化します。 親族内承継をするにしても、従業員承継をするにしても、後継者教育は欠かせません。 うまく後継者教育ができるに越したことはありませんが、残念ながら後継者候補に経営の素質がなかったというケースもあるでしょう。 M&Aには、後継者を広く募集できるメリットがある このように後継者不在の原因は様々ですが、これらの後継者問題を解消できるのが、M&Aです。 M&Aは親族や従業員に限らず、後継者を探すことができるので、事業承継の選択肢を広げることができます。 メリット④従業員の雇用維持 M&Aによる事業承継のメリットには、従業員の雇用を維持できるということもあります。 自身としては会社をたたんでも良いと考えていた場合でも、従来から会社のために力を尽くしてくれた従業員の生活を守るために、会社の存続を望む経営者も多いものです。 M&Aと従業員の雇用維持の注意点 中小企業のM&Aでは、売り手企業から買い手企業に対して事業譲渡をするか、買い手企業に対して株式譲渡するといった手法が多用されます。 いずれの場合も、従業員の雇用維持を図ること自体は可能です。 ただし、従業員の雇用維持を図るためには、M&Aの内容に合わせて、特別な配慮が必要になるでしょう。 たとえば、M&A一般については、買い手企業との間ではM&A後の従業員の処遇に関する交渉といえるでしょう。 また、事業譲渡などのM&Aのスキームによる場合は、従業員ごとに移籍の同意を取り付ける手続きが必要になるケースがあります。 従業員の雇用維持 従業員の雇用維持雇用維持を図ること自体は可能 M&A一般従業員の処遇について交渉が必要 事業譲渡などのM&A従業員ごとに移籍の同意を取り付けるなど対応が必要etc. メリット⑤会社経営の責任・個人保証や連帯保証からの解放 M&Aによる事業承継をおこなった場合、それ以降に引継ぎ等がないときは、基本的には会社経営から解放されることになります。 高齢になり社長を退任したいと考える場合はもちろんのこと、突然の不幸で会社を相続した相続人もM&Aによって会社売却をおこなうことで、会社経営の責任から解放してもらえるメリットがあります。 また、M&Aによる事業承継のメリットには、個人保証・連帯保証からの解放もあげられます。 個人保証の負担から解放されれば、また新しい事業にチャレンジしやすい環境を調整できたり、引退後に安定した生活を送ることができます。 また将来相続人となる家族に、重い保証債務を負わせる心配を取り除くこともできます。 個人保証の留意点 M&Aをおこなったからといって、ただちに個人補償や連帯保証から解放されるとは限りません。 しかし会社の経営者という地位から離れることができれば、相応の手続きをとったり、交渉しだいで個人保証・連帯保証の負担から解放してもらえたりする可能性がでてきます。 M&Aの売り手のデメリット デメリット①M&Aの手間がかかる M&Aでは、親族内承継や従業員承継と比べて、後継者教育にかける時間をある程度省くことができるメリットがあります。 しかしその分、M&Aそのものの手間がかかるというデメリットもあります。 M&Aは段階を踏んで進めていかなければなりません。 買い手候補となる企業が見つかった後は、経営陣同士の対談(トップ面談)や、条件交渉、買収監査などの順を追って、M&A成約を目指します。 各段階における手続きは煩雑ですし、M&Aのスキームごとに法律上要求される手続きもあります。 これらは一朝一夕で実現できるものではなく、ある程度の時間がかかり、スムーズなM&Aでも約3ヶ月~半年はみておく必要があるといわれています。 M&Aで必要な手続き(一例) 買い手企業探し トップ面談 買い手企業との間で、M&Aの基本合意書を締結する 売り手企業の財務状況や経営状況を買い手企業に開示する M&Aの最終契約を締結する 対策 このようなデメリットを払拭するには、できるだけ早いうちからM&Aの準備にとりかかるという対策が考えられます。 M&Aをおこなうには、まずは買い手企業を探すことが必要です。M&Aをしたいと思ったタイミングで、運よく買い手が見つかる保証はありません。 そのため退任が現実味を帯びてきたら、可能な限り早いうちから計画的に、買い手企業探しに着手しましょう。 デメリット②M&Aの相手の選定に不安がある 親族承継や従業員承継であれば、そもそも企業文化を理解し、ある程度事業に理解のある人たちの中から後継者を選べるので、安心して事業承継できるメリットがあります。 このような安心感がないことも、M&Aのデメリットといえるかもしれません。 対策 売り手がこのようなM&Aのデメリットを払拭して、安心してM&Aによる事業承継をおこなうためには、交渉の初期段階で、買い手企業との信頼関係を築く必要があります。 買い手企業の吟味や信頼関係の構築においては、買い手企業探しの過程やトップ面談が重要になるでしょう。 経営理念を共有できる相手かどうか、また、それ以前にビジネスの場におけるマナーを心がけている相手かどうかなど、目を光らせてチェックすることが大切です。 関連記事 会社売却成功への道!M&A買い手探しの目的とポイントとは デメリット③売り手の希望よりM&A価格が低かった M&Aをおこなえば多額の譲渡益が手に入ると期待していたのに、「希望金額よりもM&A価格が低かった」というデメリットが生じることもあるでしょう。 M&A価格は、一般的な相場の出し方にしたがった計算結果をもとにして交渉をおこないつつ、最終的には売り手と買い手の合意で決まります。 買い手企業の考え方によって、M&A価格は左右されるでしょう。 たとえば、自社に弱みがある場合でも、買い手企業にそれを補う力があり、高いシナジー効果が生じる見込みがあるならば、M&A価格は高額になる傾向があります。そうでない場合は、低額になるということです。 対策 M&A価格をより高額にするために、売り手ができる対策としては、まずは事前準備です。相手方との交渉に入る前に、企業価値評価をおこない、現時点での相場を把握します。 そして、会社の魅力の磨き上げをおこなう必要があるでしょう。 会社の強みをさらに強化したり、デューデリジェンスで問題となりそうな不備を是正する措置を講じたりと、準備できることは沢山あります。 関連記事 M&Aで会社を高く売る方法とは?買い手へのアピールポイントを解説 デメリット④従業員・取引先が不安をいだく M&Aによって、売り手企業の従業員や取引先は、経営方針や事業内容の変更、雇用や取引の継続など、さまざまな不安を抱えることになります。 今後の従業員や取引先の生活を守るために、M&Aを選択されるケースもあるでしょう。 しかしそのような思いとは裏腹に、M&Aの実施をきっかけとして、従業員が退職したり、取引関係が解消されることもよくあります。 もしそのような事態が起きてしまえば、本末転倒です。 M&Aの決断が無に帰することがないように、十分配慮する必要があります。 取引先の動向とM&Aの関係 なお、中小企業の場合、社長同士のつながりに重きをおいて、取引を継続しているパターンも多いものです。 場合によっては、売り手企業とその取引先企業との間において、経営権の変更についての通知義務や契約解除を定める条項を締結しているケースもあります。 この場合、M&Aにより経営陣が変わることについて、取引先の理解を得られなければ、売り手企業と取引先の取引関係は解消されてしまいます。 ひいては、売り手企業と買い手企業の間にも影響が及び、M&Aが白紙に戻るリスクがあります。 社員とM&Aの関係 また、売り手企業に在籍するキーパーソン(事業承継に欠かすことができない従業員)の退職でも、M&Aが白紙に戻るリスクがあります。 キーパーソンは、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション、M&A後の統合プロセス)において、非常に重要な人的資源だからです。 対策 M&Aを成功に導くためには、従業員や取引先への十分な説明と情報提供を行い、不安を取り除くことが重要です。 具体的には、以下の点について説明を行う必要があります。 従業員・取引先への対応 M&Aの目的や背景 買い手企業の概要 M&A後の経営方針や事業内容 従業員や取引先への影響 このような観点からも、M&Aを成功させるためには、従業員や取引先に対して十分な説明を行い、納得してもらうことが非常に重要です。 関連記事 事業承継の失敗事例3選!成功事例を目指すための教訓とは... デメリット⑤経営から離れる寂しさ M&Aによる事業承継をおこなえば、売り手企業の経営者は、いずれは経営から離れることになるでしょう。 自ら望んで会社経営の責任から解放されたいと思いM&Aに踏み切ったものの、いざ経営から離れるとなると、さみしさを感じることがあるかもしれません。 これまで築き上げてきた事業や経営から離れることで、やりがいや充実感を失ってしまったり、居場所がないと感じてしまったりするからです。 対策 長年慣れ親しんだものを手放すときは、誰しも寂しさを感じるものです。 気持ちを整理するためには、まずは、ご自身が現在の会社を築き上げたことを誇りに思ってください。 そして、今までできていなかったことにチャレンジしてみると良いでしょう。 新しい趣味を見つけたり、旅行や学び、家族との時間を大切にするなど、第二の人生を充実させるためのチャレンジをしていってください。 売り手が選ぶM&Aの手法は? 事業譲渡によるメリット・デメリット メリット 事業譲渡というM&Aの手法については、株式譲渡よりもM&A価格が高額になりやすいというメリットがあります。 M&A価格が高額になるというのは、売り手にとって大きなメリットになり得るものです。 事業譲渡とは、会社の事業の全部または一部を、他の会社に譲渡するという取引行為をいいます。事業譲渡の場合、事業を切り分けて譲渡することができます。 そのため、負債がある部門を切り離して譲渡する合意ができれば、その分、高額で買収してもらいやすくなります。 また、株式譲渡と異なり、事業譲渡の譲渡対価については5年間かけて損金として経費計上できます。これは、買い手にとって大きな節税効果となるため、高額で買収してもらいやすくなります。 デメリット 事業譲渡による譲渡益については、そのまま全ての譲渡益が、経営者の手元に入ってくるというわけではありません。 事業譲渡の主体はあくまで、会社です。 事業譲渡の譲渡益は、会社に帰属します。 その後、自身がその譲渡益を利用するには、配当や会社清算、役員給与などの形で還元する必要があり、手続きは煩雑になります。 しかも、これらを受け取る際には、高額の税金がかかることが想定されます。 株式譲渡によるM&Aよりも、事業譲渡によるM&Aのほうが、自身の手元に残る利益が少なくなる可能性があります。 M&Aの利益にかかる税金 M&Aの手法譲渡対価の受取り方法税率株式譲渡譲渡益20. 315%*事業譲渡配当最大49. 44%事業譲渡会社清算最大49. 44%事業譲渡役員報酬最大55. 945% * 所得税、復興特別所得税、住民税を合計した税率 また、事業譲渡の手続きそのものも複雑であるため、売り手としては負担を感じやすいでしょう。 株式譲渡によるメリット・デメリット 中小企業のM&Aにおいて多用されるスキームとして、株式譲渡があげられます。 株式譲渡の場合、会社の株式を譲渡することで、会社のオーナーの地位を譲渡するというM&Aのスキームになります。 メリット 株式譲渡の主体は、株式を保有していた経営者自身です。自身が保有する株式を譲渡するので、その譲渡益は、自身が直接受け取ることができます。 譲渡益を他のビジネスにすぐに使いたい、自身のリタイア後の生活資金にしたいという場合は、すぐに譲渡益を手にできる株式譲渡のほうがメリットを感じることが出来るでしょう。 また、株式譲渡の手続き自体も、事業譲渡のような煩雑さがなく、売り手にとっては負担が小さいといえます。会社そのものを承継させることになるため、事業譲渡のように、あらためて許認可を受ける必要はありません。 譲渡益許認可事業譲渡会社に入る新規取得株式譲渡株主に入る引継ぎ可能     デメリット 株式譲渡の場合、事業譲渡とは異なり、負債を切り離して譲渡することはできません。 そのため、買い手は、売り手の簿外債務や偶発債務を引き継ぐことになるリスクがあります。 この場合、買い手としては、M&Aによるメリットを享受できない可能性が高まります。 このような事情から、事業譲渡に比べて、株式譲渡のM&A価格は低くなる傾向があります。 関連記事 事業譲渡と株式譲渡の違いは?目的・メリット・デメリットなど解説 M&Aの手法にかかわらず注意点はある? M&Aを成功させるためには、おおまかな流れの各段階について、注意すべきことを意識しておく必要があります。 M&Aの注意点については「M&Aにおける注意点とは?会社売却側・買収側のリスクや確認事項を解説」の記事でくわしく解説しているので、あわせてご覧ください。 デメリットを克服!売り手がM&Aを成功させるには? M&Aにはデメリットに勝るメリットがある! M&Aをおこない、経営権を手放すことになれば、多かれ少なかれ焦燥感をいだくというデメリットがあるでしょう。 しかしM&Aには、その焦燥感にまさるメリットがあります。 譲渡対価の獲得、自社の存続・成長、後継者問題の解消、従業員の雇用維持、個人保証からの解放など、M&Aは売り手にとって様々なメリットをもたらしてくれます。 M&Aは早期相談がポイント また、いちばんのネックとなるデメリットとしては、売り手がM&Aを成功させるためには、それなりの手間をかける必要があるということです。 自社の企業価値評価をおこない、譲渡価格をはじめとするM&Aの条件を買い手企業と交渉することは非常に重要です。 そしてその前提として、自社の経営理念を理解してくれて、安心して託せる買い手企業を見つけることは不可欠です。 このような手順を踏む必要があるため、M&Aは一朝一夕でできるものではなく、手間がかかります。 このように手間がかかるということは、時間もかかるということです。 そのため自社の事業承継について懸念がある場合は、できるだけ早期に、M&Aの準備にとりかかることが必須といえるでしょう。 M&Aの相談先はどこが良い? どうやって買い手企業を見つければ良いのか分からない、何から始めれば良いのか分からないといった場合は、M&A仲介会社に相談するのがおすすめです。 登録だけなら無料でできるM&A仲介会社もあるので、お得に効率良く買い手企業を見つけられるかもしれません。 また、いざという時、公認会計士や税理士、弁護士等を紹介してくれるM&A仲介会社もあります。自身で専門家を探すコストをカットできて便利です。 --- ### 非上場株式を譲渡するには?売却価格の決め方や手続きの注意点は? - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-04-16 - URL: https://atomfirm.com/manda/9148 - Categories: 会社売却の流れ, 株式譲渡 非上場株式を譲渡するにはどうしたらいい?この記事では、手続きの流れや売却価格の設定、注意点などについて解説しています。非上場株式の売却をご検討中の経営者の方など、是非ご参考になさってください。会社売却は早期に動き出すことが肝心です。買い手探しでお悩みの方はM&A仲介などを活用しましょう。 非上場株式を譲渡する方法は? 非上場株式の売却価格は?税金の金額はいくらになる? 非上場株式の譲渡手続きの注意点は? 非上場株式を譲渡するには、どのような手続きが必要なのでしょうか。 非上場株式の場合、証券取引所で取引されていないので、自身で売却価格を設定しなければなりません。相場を参考にしつ金額を設定し、その後、買収側と交渉を進めることになります。 また、非上場株式は多くの場合、譲渡制限がついています。譲渡制限つきの株式を売却するには、通常の会社売却手続きの流れに加えて、株式譲渡の承認決議などが必要です。 今回は、非上場株式の譲渡について、売却価格の金額の計算方法、必要な手続き、注意点、税金などを解説していきます。 非上場株式の譲渡を検討中の方は、ぜひ最後までお読みください。 非上場株式の譲渡とは 非上場株式とは? 非上場株式とは、東京証券取引所などの証券取引所に上場されていない株式のことです。 非上場株式によくある特徴とは? 日本の中小企業は、そのほとんどが非上場株式の株式会社(非上場企業)といわれています。 非上場株式は、多くの場合、株式に譲渡制限がついています。 譲渡制限付き株式とは、第三者に自由に譲渡できない株式ということです。 非上場企業では、経営者、役員、親族など一部の者だけが譲渡制限付き株式を保有するケースが多いでしょう。 そうすることで、会社にとって好ましくない第三者によって、株式が取得され、会社運営の主導権を握られるという心配を排除できるからです。 非上場株式は譲渡できる? ただし、譲渡制限がついている非上場株式であっても、まったく譲渡ができないというものではありません。 株式発行会社の承認があれば、第三者への譲渡手続きを進めることができます。 つまり非上場株式でも、譲渡はできます。 非上場株式を売却する理由 非上場株式の譲渡を決めるきっかけは? ご自身がリタイアを考えるタイミング、会社経営を続けられなくなったタイミングで、非上場株式の譲渡を決めるパターンが多いでしょう。 後継者の不在やリタイアをするには、廃業という選択肢もありますが、せっかく育ててきた会社をたたむには、それなりの決意が必要です。 また後継者不在のまま、子どもが非公開企業を相続したものの、自身では運営できないというようなケースもあるでしょう。大切なご両親が大きくした会社をたたむという選択は、子どもにとって非常に心苦しいものです。 さらに、会社をたたむという選択をした場合、今まで会社のために尽くしてくれた従業員の雇用を確保できなくなり、社員が露頭に迷うことになります。 これらの問題がある場合に、非上場株式を譲渡することができれば、これらの問題の解決を図れるのです。 関連記事 相続した非上場株式の評価額は?相続税は高い?売却できる? 非上場株式を譲渡するメリット いまお話ししてきたとおり、後継者不在の場合でも、非上場株式の譲渡をおこなえば、会社そのものを存続させることができ、従業員の雇用確保の可能性もでてきます。 ほかにも、経営状態が良好で将来性のある企業であれば、非上場株式の譲渡により多額の利益を得るなどのメリットが期待できます。 関連記事 M&Aのメリット・デメリットは?売り手にメリットがあるM&Aとは 事業承継問題とは?課題は後継者不在?解決策はM&A? 非上場株式を譲渡する際の注意点 譲渡先を探すときの注意点 非上場株式を譲渡するには、理想的な買い手が見つかるまで、根気よく探す必要があります。 非上場株式は、市場取引ができません。つまり、株式を譲渡できる相手を探すことが困難であるという問題があります。 これは、会社運営のために良かれと思って非上場株式にしたことが、裏目にでてしまい、かえって会社運営そのものが危ぶまれる事態といえるでしょう。 非上場企業では、経営陣の高齢化が進んだタイミングで、M&Aによる第三者への事業承継を検討し始めるパターンも多いものです。 そのため、経営陣の退陣までに間に合わず、さいごまで買い手が見つからずに廃業になるケースもあります。 そうならないためには、理想的な買い手を見つけるに、早期に動き出すことが肝心です。 関連記事 会社売却成功への道!M&A買い手探しの目的とポイントとは 譲渡先が見つかった後の注意点 そして、買い手が見つかったとしても、売却価格や社員の処遇などの交渉を地道におこなう必要があります。 売却価格の交渉 不採算事業がある場合は、株式売却の価格が低く見積もられるおそれがあります。 そのため、早期に何らかの対処をする必要があるでしょう。ご自身の企業にしかない強みを前面に出して、説得的にアピールし将来性を評価してもらうという方法もあるでしょう。 従業員の雇用条件の交渉 買収後、社員が左遷されたり、減給されたりすることもあります。 そのため、基本合意書の締結や最終条件交渉の場など、M&Aの流れの中で重要な局面では、慎重に交渉を重ねることが大切です。 その他 非上場株式の譲渡では、会社のオーナーの地位を完全に譲ることになります。 残しておきたい権限や資産などがある場合は、一部の事業を売却するにとどめるなど、株式譲渡以外のM&Aをおこなう必要があるでしょう。 関連記事 M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? M&Aで従業員はどうなる?会社売却後の社員の雇用について解説 非上場株式の売却の流れは? 一般的な会社売却の流れ(図解) 一般的な会社売却の流れは、以下のようなものになります。 この記事では、会社売却のなかで重要なポイントや、株式譲渡に特有の手続きを取り上げて解説していきます。 各手続きの特徴 会社売却の目的を確認・株式譲渡の意思を固める まずは、会社売却の目的や目標を明確にします。 株式売却のきっかけは、様々なものです。 譲渡益で老後資金や新たな事業資金を確保したい これ以上成長が見込めない会社を他人に譲りたい 後継者がいない 突然の相続で株式を取得したが自身では会社運営はできない このようなお悩みがきっかけになり、会社売却を検討する中小企業の経営者の方は多いものです。 しかし、いったん株式を売却してしまえば、あらためて株式を取得できない限り、会社のオーナーになることはできません。 株式売却を進めるまえに、今一度、株式売却の目的を確認しましょう。 会社売却の候補をしぼる 株式売却をおこなうには、非上場株式を譲渡できる相手を見つける必要があります。 売却先の見つけ方としては、自社独自のネットワークで探し出すという手法には限界があるうえ、情報漏洩のリスクも高いでしょう。 お手軽な方法として、M&A仲介業者への依頼やマッチングサイトへの登録という方法が考えられます。 公的機関がおこなっているマッチングサービスを利用するのも、ひとつの選択肢です。 たとえば、各都道府県に事業承継・引継ぎ支援センターという機関があります。 買い手探しのツール(一例) 自社独自のネットワーク M&A仲介業者・M&Aマッチングサイト 公的機関を利用するetc. 民間企業のM&A仲介会社も沢山あるので、いろいろな仲介会社を見比べて利用しやすいところに依頼するという方法もよいでしょう。 実際に、M&A仲介会社に登録した後は、売却候補先のリスト(ロングリスト、ショートリストetc. )を参照しつつ、買い手候補をしぼることになります。 ノンネームシートを作成・提示 買い手候補をしぼることができたら、ノンネームシート(NN)を作成して、相手方に提示します。 NNは、業種、所在地、財務情報、社員数などの企業の概要について、具体的な企業名を特定されない程度にまとめた書面です。 NNは、情報漏洩のリスクがあるため、可能な限り抽象化して記載する必要があります。 その一方、買い手候補に、自社との株式譲渡によるM&Aに興味をもってもらえる程度に具体的な情報を盛り込む必要もあります。 ノンネームシートの注意点 抽象化情報漏洩のリスクを回避する目的で、抽象的に記載する必要がある 具体化買い手候補に興味を持ってもらうために、アピールできるポイントを具体的に記載する必要がある NNは、この2つポイントのバランスをとりながら、十分に吟味して作成する必要があるでしょう。 NNの作成ができたら、M&A仲介会社をとおして、NNを相手に提示し、株式譲渡に応じる意思があるかを確認します。 秘密保持契約(NDA)の締結 会社売却の準備段階では、売却先候補に対して、自社の事業や財務状況などの秘密を開示しなければなりませんが、どれも重要な機密情報です。 そのため、知った秘密を外部にもらさないことを約束する「秘密保持契約」を締結する必要があります。 秘密保持契約書では、企業間で開示された情報の扱いについてのルールや、万が一情報漏洩した場合の当事者の責任の内容などが規定されます。 ネット検索をしてみると、秘密保持契約書のひな形もでてきます。 会社売却についてM&A仲介業者や専門家に依頼している場合は、通常、書面の準備もおこなってくれるでしょう。 企業概要書(IM)の提示 秘密保持契約を締結したら、いよいよ企業概要書を、売却先候補に対して提示する段階となります。 企業概要書とは、会社の事業内容、業績、会社売却の理由、将来の事業計画など売却したい会社の情報を記載した書面です。 売却先候補に、会社売却の話をうけたいと思わせるためには、会社の強みが伝わる魅力的な企業概要書を提示することが必須です。 基本合意書の締結 中小企業のM&Aでは、買手候補と売り手企業のトップ面談において、両者の意向が一致した場合、会社売却の基本的な条件(売却価格、支払条件、残留条件など)について、暫定的に取りまとめることになります。この暫定的な取りまとめの内容を、書面に落とし込んだものが、基本合意書です。 売り手側が注意すること 基本合意書では、買手候補と売り手企業の双方が、交渉継続の意思があることを表明しあいますが、買い手側がデューデリジェンス(買収監査)を実施する権利や独占交渉権を獲得するという条項を締結することも多いでしょう。 この場合の多くは、売り手は買い手の買収監査に協力する義務や、他の買い手候補との交渉を禁じられるという法的効果が発生します。 その他の注意点 なお、基本合意書に記載された売却条件については、基本的には、法的拘束力は生じませんが、その後の条件交渉のたたき台となるものです。 スムーズに進めるためには、ある程度具体的な条項を、基本合意書に記載しておいても良いでしょう。 関連記事 M&Aの契約書の種類や内容は?契約の流れに沿って解説! デューデリジェンス(DD・買収監査)の実施 デューデリジェンスとは、買手候補が、売り手企業の財務状況、事業内容、将来性などについて、詳細な調査を行うことです。 デューデリジェンスでは、買手候補は、売り手企業の価値を評価し、最終的な条件交渉を行うための情報を収集します。 関連記事 M&Aのデューデリジェンスとは?調査費用は?事業譲渡はどうなる? 最終条件交渉 デューデリジェンスのあとは、売り手企業と買手候補が契約締結に向けて、最終的な合意を図るための条件交渉をおこないます。 基本合意書で合意した条件、企業同士の面談、デューデリジェンスなどの内容を踏まえて、詳細な条件交渉をおこないます。 買い手側の視点 買い手からは、デューデリジェンスの内容に基づく提案がされる場合があります。 たとえば、デューデリジェンスの結果、簿外債務が把握されてしまい、会社売却価格の見直しを提案されたり、リスク低減策の実施を求められたりすることがあるでしょう。 売り手側の視点 売り手側としても、会社売却の対価、社員・経営陣の処遇など、希望する詳細条件をつめる最後の交渉となります。 ここまで育ててきた愛着のあるご自身の会社ですから、最後まで粘り強く交渉を行うべきです。売却金額の交渉もそうですが、大切な従業員の処遇、大事な取引先との関係性、経営者の引退条件などについても、真剣に交渉をしておく必要があります。 最終条件交渉では、会社売却がお互いにとって有益なものになるように、双方が譲歩しつつも、お互いに納得できる条件をまとめることが重要です。 最終契約の締結 売却価格、支払条件、残留条件など、すべての条件について合意が成立したら、最終契約を締結します。 株式譲渡の場合は、株式譲渡契約書を締結することになるでしょう。 株式譲渡契約書では、譲渡価格全額の決裁が完了したことや、株式発行会社への通知をすること、株主名簿の書き換えを請求することなども記載されることが多いです。 非上場株式の譲渡が問題になるM&Aでは、譲渡承認がなされることを譲渡の条件となることを合意しておくことも多いでしょう。 譲渡制限つき非上場株式を売却するための手続きは? ①譲渡制限の有無を確認する 譲渡したい非上場株式が、譲渡制限付きの場合、売却するには会社法に規定された手続きを履践する必要があります。 そのため、非上場株式の売却を検討している場合は、まずは譲渡制限つき株式なのかどうかを確認する必要があります。 ②株式譲渡の承認請求・承認決議 非上場株式(譲渡制限付き株式)の譲渡では、株主が株式譲渡承認請求書をだし、受け取った株式発行会社で株主総会や取締役会を開催します(会社法139条1項)。 会社法139条1項の内容 取締役会設置会社の場合取締役会を開催する 上記以外の会社の場合株主総会を開催する そして株主総会または取締役会で株式譲渡承認請求書について検討をおこない、承認するか否かを決定します。 株式譲渡を承認するか否かを決定した場合、原則として、承認請求の日から2週間以内に、譲渡承認請求者に対して決定内容を通知しなければなりません(会社法139条2項)。 承認請求の日から2週間以内に通知できなければ、たとえ不承認決議をしていたとしても、譲渡を承認したものとみなされます(会社法145条1号)。 非公開株式の譲渡について不承認決議となった場合は、その会社または指定買取人が対象株式を買い取ることになります。 非公開株式の譲渡について承認決議がなされた場合は、次のステップに進むことができます。 ③株式譲渡契約の締結 株式譲渡契約の締結をおこないます。 会社の株式を、売主から買主に対して譲渡するという内容の契約を締結します。 これは、いわゆるM&Aにおける「最終契約」の締結といわれる過程です。 ④決済などのクロージング手続き M&Aにおけるクロージングとは、売却手続きを完了させることです。 会社売却成約となれば、会社売却代金の支払い手続き、株式譲渡や事業譲渡の引き渡し手続きなどをおこない、経営権の移転が完了し、クロージングとなります。 クロージングまでのステップは、どれをとっても会社売却にとって重要なポイントとなります。 各ステップの目的や内容を理解し、適切な対応をすることで、円滑に会社売却を進めていきましょう。 ⑤株主名簿の名義書換 株式譲渡が完了したら、すみやかに株主名簿の書き換えが必要です。 非上場株式について、譲渡契約を締結し、売却代金を受領したら、株式譲渡の手続きそのものは完了ですが、株式名簿の書き換えが必要です(会社法133条1項)。 株主名簿の書き換えがないと、新しい株主が、会社や第三者に株主としての権利を主張できなくなるおそれがあるので、困ってしまいます。 株主名簿の書き換えは、株主にとって重要な対抗要件です。 M&Aで非上場株式を売却するときの譲渡価格は? 第三者に非上場株式を譲渡し、M&Aによる事業承継をおこなうような場合には、非上場株式の売却金額が、経済的に合理性のある金額となるようにたたき台となる譲渡価格を算定し、当事者間で交渉を重ねることになるでしょう。 この場合、簿価純資産法、時価純資産法、年買法、DCF法、類似企業比準法(EBITDAマルチプル法)などの計算方法で、非上場株式の譲渡価格を算定します。 簿価純資産法・時価純資産法・年買法による金額計算 簿価純資産法、時価純資産法は、純資産法(純資産方式)に分類されます。 純資産法は、帳簿上の純資産を基準にした企業価値の算定方法です。純資産の額から総負債の額を控除して、株価の算定をおこなうという計算方法が、純資産法です。 実務で多用されているのは、帳簿上の純資産をもとにする簿価純資産法よりも、時価に着目した時価純資産法などでしょう。 また、中小企業のM&A実務では、年買法も多用されます。 年買法とは、純資産に、年間の営業利益の3年~5年分程度を上乗せして売却価格を算出する方法です。 純資産法の考え方をとりいれながらも、将来の収益性も考慮しながら、非上場株式の売却金額を算定するのが、年倍法です。 計算が分かりやすいことから、中小企業のM&Aにおいては、年買法もよく用いられます。 EBITDAマルチプル法による金額計算 EBITDAマルチプル法は、類似企業比準法のひとつです。 類似企業比準方式とは、上場している類似企業を参考にして比準割合から株価を求める算定方法のことです。 M&Aでは、EBITDAマルチプル法も多用されています。 EBITDAマルチプル法 比較対象として適切な上場会社が複数ある場合は、市場の動向を反映させた価格算定が可能となります。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 DCF法による金額計算 DCF法は、収益方式の一種です。 収益方式とは、会社の利益やキャッシュフローをもとに株価算定をおこなう算定方法です。 収益方式でいうキャッシュフローとは、税引き後の純利益に原価償却費を加算し、資本支出額(事業の継続に必要な不動産、設備等の所得に要する金額)を控除した金額をいいます。 DCF法とは、将来獲得するキャッシュフローを現在価値に割り引いて、株式価値を算出する方法です。 M&A実務ではこれらの算定方法のいずれか一つを参考に譲渡価格を決めるのではなく、総合的に参照しながら、相手方と譲渡価格の交渉をおこなっていきます。 それぞれの算定方法をうまく引き合いに出しながら、交渉をおこなうことがポイントです。 関連記事 企業価値評価におけるDCF法とは?株主資本コスト、加重平均資本コスト(WACC)の求め方を徹底解説! 親族などに非上場株式を譲渡するときの計算は? 親族間や、社長と従業員の間での非上場株式の譲渡については、株式の譲渡先が純然たる第三者とはいえないので、通常は、税法基準で譲渡価格を計算することになるでしょう。 税法基準では、株主の属性や、会社の種類・規模等に応じて、純資産価額方式、類似業種比準方式、配当還元方式などの評価方法を選択して、譲渡する金額を決めることになります。 類似業種比準方式による金額計算 類似業種比準方式は、大会社の同族株主が保有する株式の評価に用いられる計算方法です。 計算式は「類似業種の株価×(A+B+C)÷3×斟酌率×(1株あたりの資本金額÷50円)」となります。* ※A:評価会社の1株当たりの配当金額÷類似業種の1株当たりの配当金※B:評価会社の1株当たりの利益金額÷類似業種の1株当たりの年利益金額※C:評価会社の1株当たりの純資産価額÷類似業種の1株当たりの純資産価額※斟酌率:大会社0. 7、中会社0. 6、小会社0. 5 配当還元方式による金額計算 配当還元方式というのは、過去2年間の配当金額の平均額を10%の配当利率で割り戻し(還元し)て、元本である株式の価額を求める方法です。 ※1株あたりの年配当金=(直近2年間の配当金総額の合計÷2)÷(直前金の資本金÷50円) 1株当たりの年配当金額が2円50銭未満のものや、無配のものでは、2円50銭とされています。 少数株主が取得した株式は、会社規模にかかわらず、配当還元方式をつかって評価することになります。 類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式による金額計算については、「自社株評価とは?簡易計算できる?自社株評価の3ステップ」でくわしく説明しているので、あわせてご覧ください。 非上場株式を譲渡したときの税金 非上場株式を個人株主が時価で譲渡する場合 個人株主が非上場株式を譲渡した場合、申告分離課税となり、所得税の税率は15. 315%となります(原則として譲渡所得の所得税率は15%ですが、2013年から2037年まで復興特別所得税として2. 1%上乗せされています。)。 また、非上場株式の譲渡益については住民税もかかりますが、住民税の課税額は、非上場株式の譲渡益の5%となります。 合計すると、20. 315%の税率で税金がかかることになります。 非上場株式を法人株主が時価で譲渡する場合 法人株主が非上場株式を譲渡した場合、総合課税方式により、他の所得と通算のうえ課税されることになります。 所得金額に応じて、多くの場合、約30%程度の法人税が課される可能性はあるでしょう。 著しく低い価額・無償の株式譲渡 非上場株式を時価の二分の一未満の著しく低い価額で譲渡した場合や、無償で譲渡した場合は、みなし譲渡所得などにあたり、税法上、損をしてしまう可能性があります。 たとえば経営者個人が保有する株式を、経営者個人から第三者へ譲渡する場合、著しく低い価額で株式譲渡をした場合、譲渡損失がないとされ、損益通算ができず、税制対応で不利益が生じる可能性があります。 一方、株式譲渡を受けた相手も、贈与税が課されてしまうおそれがあります。 またオーナー個人が、法人に対して非上場株式を譲渡する場合に、著しく低い金額で株式譲渡をした場合は、みなし譲渡にあたり、時価と取得価額との差額について所得税が課されてしまいます。 売却価格が時価よりも高額の株式譲渡 時価よりも高額の株式譲渡では、売り手には譲渡益のほかに、買い手からの贈与があるとして、贈与税が課されるリスクがあります。 たとえば、個人株主から個人へ株式譲渡をする場合に、譲渡価額が時価よりも高額になるときは、まず、時価と取得価額との差額が譲渡益となり、所得税がかかります。 そして、譲渡価格から時価を差し引いた金額については、買い手から贈与を受けたものとして扱われ、贈与税がかかる可能性があります。 関連記事 非上場株式譲渡の税金とは?売却価格と税金の関係は? 非上場株式の譲渡・売却手続きの指針 売却価格と税金について注意を払う 非上場株式の譲渡では、売却価格と税金について注意を払うことは、最も大切な事項のひとつです。 非上場株式をどうにかして譲渡したい、売却できれば価格は安値でもかまわないという姿勢だと、売り手も買い手も税金の面で損をすることがあります。 また、高額で売却できることになったからといって、相場からあまりにもかけ離れた売却では、思わぬ税金が課されてしまい、かえって損をすることになるでしょう。 非上場株式を譲渡する場合は、相場を参考にした適切な売却価格の設定が必須です。 譲渡手続きが難しくて悩んだときは... 非上場株式の譲渡では、譲渡制限株式を譲渡するための会社法上の手続きが必要になります。 また非上場株式の売却価格についても、相場を参考にしつつ、適切な価額で譲渡できれば、思わぬ税金を課されて悩むリスクを軽減できます。 しかし非上場株式の譲渡先がうまく見つからない、売却価格が分からない、譲渡手続きが難しいという問題もあるでしょう。 そのようなときは、非上場株式の譲渡をあつかうM&Aのプロに相談しながら、株式売却を進めていくのはいかがでしょうか。 --- ### M&Aで社長はどうなる…その後は退任や顧問?社員の待遇は? - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/manda/9840 - Categories: その他 M&Aによって会社売却をした会社の社長については、一般的には、退任するケースが多いといわれています。しかし、経営統合の観点から、買収側の顧問や役員として、買収後も経営に参画するケースがあります。 M&Aで会社売却をした社長は、その後どうなる? M&Aで売り手側企業の社員は、その後どうなる? M&Aによって会社売却をした会社の社長は、その後どうなるのでしょうか。 売り手側の企業の社長は、一般的には、M&Aの後は退任するケースが多いといわれています。 中小企業の事業承継では、社長自身、高齢などの理由から退任に前向きな場合も多いでしょう。 しかし、経営統合の観点から、買収側の顧問や役員として、買収後も経営に参画するケースがあります。 また、M&Aによって会社売却をした会社の社員の待遇も気になるところです。社員については、一般的には、買収側の労働条件に準じることになるため、給与や福利厚生などの面で変化が生じる可能性があります。 本記事では、M&Aで社長がどうなるのか、その後のキャリアパスや社員の待遇について、詳しく解説します。 是非さいごまでご覧ください。 M&Aで社長・会社役員はその後どうなる? 社長の待遇は何で決まる? M&Aによって会社売却をした会社の社長の待遇は、一例として次のような要素によって決まります。 社長の待遇が決まる要素(一例) M&Aの契約内容 買収側の経営方針 現社長の資質や貢献度 M&Aの契約内容 M&Aにより社長が退任することや社長の退職金、役職の変更などについては、M&Aの最終契約(株式譲渡契約書etc. )に記載されている内容によって変わります。 最終契約の内容は、デューデリジェンス(DD)の実施後、売り手側と買い手側の詳細な条件交渉の中で決めていきます。 関連記事 M&Aの契約書の種類や内容は?契約の流れに沿って解説! 買収側の経営方針・現社長の資質や貢献度 買収側の経営方針、現社長の資質や貢献度によっても、現社長が退任するかどうかや、退任後の待遇が左右されることもあります。 たとえば、買収される側の社長が、すぐにでも退任したいと考えていた場合でも、買収側が、引継ぎのためにも一定期間、M&Aの実施後も会社にとどまってほしいと考えているときは、すぐに現社長が退任することは難しいでしょう。 現経営陣を刷新するよりも、社長を残留させたほうが、その後の経営統合を円滑に進められると買収側が判断した場合は、社長の待遇は良いものとなります。 社長が退任するケース 買い手側から退任を求められる場合 M&Aで社長が退職するケースは、一般的に多いといわれています。その理由は、経営権が買収側に移行するため、買収側の経営方針を実現するために、現社長の退任が求められることが多いからです。 例えば、買収側が、現社長の経営方針と異なる経営方針を掲げている場合、現社長の退任は不可欠となります。また、買収側が、現社長よりも優秀な経営者を招聘したい場合も、現社長の退任が検討されます。 みずから退任を希望する場合 また、そもそも中小企業のM&Aでは、会社売却をした会社の社長自身が、退職を希望しているケースも多いでしょう。オーナー経営者が高齢となり、もとから後継者を探してM&Aに臨むケースでは、クロージングに向けて社長職からの退任手続きを進めることになります。 社長や役員がM&Aによって退任することになった場合は、最終契約書で「売主は、クロージングの日までに、次の取締役及び監査役がクロージング日付で対象会社の取締役及び監査役を辞任する旨の辞任届を、買主に対して提出する。」旨の条項を規定します。 社長が顧問になる・残留するケース M&Aによって会社売却をした会社の社長や役員が、買い手企業の顧問になるケースもあります。 買収側が、PMI(M&Aによるその後の統合効果を最大化するための経営統合のプロセス)において、キーマンとなる人物の経営ノウハウや経験を活用したいがため、社長や役員などを残留させることがあります。 この場合、いわゆるキーマン条項が、最終契約書に規定されます。 キーマン条項とは、具体的には「〇〇は、買主の事前の承諾を得ることなく、対象会社の取締役を任期満了前に辞任しないものとし、また、任期満了時に対象会社の取締役として再任されることを拒否しないものとする。」というような条項です。 会社売却をした社長に求められる対応 キーマン条項を遵守できない場合、企業価値が下がり、M&A価格が低下するおそれがあります。また、M&Aそのものが中止になる可能性も生じます。 M&A実施後に残留したくない場合はまず、クロージングまでに引継ぎを終えたいことを打診して、M&A契約の条件交渉をおこなう対応が考えられます。 それでも残留を避けられない場合に、M&Aを実施したいときは、買収企業と、何年間であれば残留できるのか、どのくらいの報酬があれば続投が可能なのかといった条件交渉をおこなう必要があるでしょう。 M&Aで従業員はその後どうなる? M&A後の従業員の待遇 従業員の場合も、企業価値を高めるノウハウを担う者の場合、キーマン条項がもうけられることがあります。該当する従業員は、一定期間、買収された後も会社に残り、仕事に従事する必要があります。 一方、キーマン条項の対象とならない従業員については、その後どうなるのでしょうか。 その答えとしては、M&Aの手法によって、雇用関係が左右されるということがえるでしょう。 関連記事 M&Aで従業員はどうなる?会社売却後の社員の雇用について解説 株式譲渡によるM&A 株式譲渡によるM&Aとは、オーナー経営者が後継者に対して、自身が保有する株式を売却するとともに、会社の経営者の地位を譲るといったM&Aの手法のことです。 株式譲渡によるM&Aが実施された場合は、従業員の否応なく、買収側の企業に雇用関係が引き継がれます。 株式譲渡によるM&Aでは、基本的には、買収企業との間でも基本的には従前どおりのお給料で働くことができます。 留意点 しかし、一定期間を経て、買収企業の給料体系に移行させられる可能性もあります。また、お給料に変動がなくても、部署移動や転勤のリスクがあるでしょう。 たしかに、M&Aによる事業承継を実施すれば、従業員の雇用維持ができる可能性はあります。しかし現実問題として、必ずしもその後の従業員の待遇が保証されるわけではありません。このことは、社長として肝に銘じておく必要があります。 関連記事 事業譲渡手続きの流れは?会社譲渡の方法や手順を知ってスケジュールを立てよう 非上場株式を譲渡するには?売却価格や手続きは? 事業譲渡によるM&A 事業譲渡とは、売り手企業の事業の全部または一部を、買い手側企業に買収してもらうというM&Aの手法のことです。 事業譲渡をおこなうことで、売り手企業には、主力事業に注力できる、譲渡益を経営再建の元手にするなどのメリットがあります。 M&Aに関係する事業にたずさわっていた従業員は、買収先企業への移籍を打診されることになるでしょう。 この場合、従業員が同意したときに限り、買収先の企業に移籍することになります。 留意点 そしてM&Aが実施された場合に、その後、買収先の企業へ移籍した社員に適用される規定は、基本的には、買収先企業の労働契約になるでしょう。 給与規定や退職金規定など、買収先企業ともとの企業との擦り合わせが必要な場合は、交渉が必要になります。 関連記事 事業譲渡手続きの流れは?会社譲渡の方法や手順を知ってスケジュールを立てよう 事業譲渡と株式譲渡の違いは?目的・メリット・デメリットなど解説 会社売却をした社長に求められる対応 M&Aによって会社売却をした会社の社長は、従業員の不安を解消するために、以下の対応が求められます。 社長の対応(一例) 従業員等への丁寧な説明 買収側と雇用条件を交渉 従業員のモチベーション維持 従業員等への丁寧な説明 従業員は、M&Aによって、自身の雇用や待遇がどうなるか不安を感じています。そのため、社長は、買収の理由や目的、買収後の事業計画などを丁寧に説明する必要があります。 M&Aに関する従業員への説明は、原則として、M&Aの最終契約を締結した直後です。 M&Aの情報流出により、M&Aがとん挫してしまうこともあるので、説明のタイミングには十分注意する必要があります。 M&Aの説明の際は、社内の不公平感が生まれないような方法で、全体公表をおこなう必要があります。 ただしその一方で、会社役員など社内の重要なポストにいる人物に対しては、全体公表よりも前に、口外禁止を条件に、M&Aの事実を伝えておくという配慮も必要でしょう。 買収側と雇用条件を交渉 M&Aが実施されたその後、従業員が同じ雇用条件で仕事ができるように調整しておくことも重要です。 場合によっては、ブランド力などのみに着目したM&Aでは、買収先企業が、買収された企業の社員を早くもリストラ対象に選んでいる悪質なケースもあるでしょう。 買収される側の企業の社長としては、買収側の企業ときちんと交渉をおこない、最終契約書に雇用維持に関する条項を落とし込んでおく必要があります。 たとえば、「買収側の企業は、クロージング後〇年間、対象会社の従業員の雇用を維持し、現状の雇用条件を維持するものとする。」といった条項を、最終契約書の中に盛り込むことになるでしょう。 従業員のモチベーション維持 買収後のビジョンを提示することで、従業員に希望を与え、モチベーションを維持させることも重要です。 企業文化の違いや慣れない仕事への不満、突如として推し進められる経営統合への戸惑い、勤務地や部署移動などによる事実上の待遇の悪化など、M&Aの実施後に、従業員のモチベーションが下がる要因は様々です。 従業員のモチベーションが下がれば、大量離職や業務が回らなくなるなどのおそれが生じるほか、従業員自身がその後リストラの対象になるおそれも生じます。 従業員の雇用維持のためにM&Aを決断した社長であれば、従業員と買収後のビジョンを共有する機会をもうけることが特に重要です。 そして、買収側の企業がM&Aにふさわしい相手かどうか、自社の社員を大切にあつかってくれる相手かどうかなどを見極める必要があるということは、言うまでもありません。 社長がM&Aを行うメリット 後継者不在... その後の心配を解消できる 多くの社長にとって、会社を築き上げ、経営してきた人生は、大きな誇りと充実感をもたらします。しかし60代にもなれば、体力や気力の衰えを感じ始め、将来について改めて考える時期が訪れます。 そしてその時になって初めて、後継者不在の問題を直視することになるのです。 中小企業では、近年、後継者不在により黒字であっても廃業を選択する企業が多いといわれています。 東京商工リサーチの統計によれば、2023年の後継者不在率は61. 09%にのぼり、はじめて60%をこえたとされています(2023. 11. 14 東京商工リサーチ「2023年「後継者不在率」調査」(2024. 1. 24現在))。 親族内承継や従業員承継ができない場合、M&Aによる事業承継を検討する必要があります。 M&Aによって後継者を見つけることができれば、自分の会社を後世に残せる可能性が生まれます。 また、今まで尽くしてきてくれた従業員の雇用を守れる可能性があります。 後継者が見つかれば廃業しなくて済むので、取引先に廃業による迷惑をかけずに済みます。 関連記事 後継者がいない会社は61%!跡継ぎがいない会社の実態と選択肢まとめ 後継者不足の解決策はM&A?後継者問題の実態は... M&A後の人生を謳歌できる M&Aをおこなうことで、趣味を見つけて楽しんだり、家族との時間を増やしたりすることができるでしょう。 これまで仕事に明け暮れ、忙しい日々を過ごしてきた経営者の中には、M&Aにより代表取締役の地位から離れ、その後の人生を謳歌したいと考える社長もいます。 また、若手の実業家のなかには、早期リタイアを考えているケースがあります。自分の立ち上げた会社をある程度まで大きくしたら、その後はM&Aをおこない、売却益を得て、悠々自適な生活を送る人もいるでしょう。 M&Aの対価を次の事業や負債返済に使える 社長には、会社売却をすることで、M&Aの対価を資金源にできるというメリットがあります。 M&Aの対価は、新たな事業への投資の資金にできます。 また、自社では事業拡大が望めない場合に、会社売却をすることで、主力事業に集中して資金投入することができます。 ほかにも、会社に負債がある場合は返済にあてるなどして、経営再建の元手にすることもできるでしょう。 M&Aで会社の先行き不安を解消できる 社長には、M&Aをおこなうことで、会社の先行き不安を解消できるというメリットがあります。 業績の悪化や、自分ではこれ以上会社を大きくできないといった見通しなどにより、会社の先行きが不安な場合もあるでしょう。 会社の企業価値評価が高い段階であれば、経営ノウハウのある第三者が、M&Aに応じてくれる可能性が残っています。 会社の存続や、従業員の雇用を守るためには、不安をかかえたまま自身で経営するよりも、M&Aを実施して第三者に事業承継するほうが良いケースもあるでしょう。 社長の個人保証をはずしたい 社長には、M&Aをおこなうことで、個人保証から解放される可能性があります。 中小企業では、社長が会社の個人保証をすることが特に多いものです。 しかし、経済的リスクの不安があるままでは、自身の老後に不安がともないます。また、自分が亡くなった後、相続人に個人保証の重い責任を負わせるリスクもあります。 こういった不安があることから、M&Aをおこない、個人保証から解放されたいと考える社長も多いでしょう。 そのためには、M&Aの相手方との条件交渉の際に、社長の個人保証をはずし、買収側に引き継ぐ点についても、忘れずに話し合いをおこなう必要があります。 関連記事 会社売却後の人生はどうなる?会社売却で経営者・社員等のその後は? M&Aで社長が覚悟すべきこと 社長職から離れる寂しさがある 社長は、M&Aをおこなった場合、その後、社長職から離れる寂しさを感じるというデメリットについて、覚悟する必要があります。 M&Aによって会社売却をすると、多くの場合、社長は会社を離れることになります。 長年築き上げてきた会社を手放す寂しさは、想像以上に大きいものです。 その後を見据えた対処法 社長職から離れる寂しさをまぎらわすためには、前を向いて、第二の人生をスタートさせることが大切です。 趣味や家族との時間を大切にするほか、新たな事業にチャレンジしたり、社会貢献活動に取り組んだりするのも良いでしょう。 場合によっては、顧問などの役職でM&Aの後も残留できるケースもあるので、相手企業に打診してみてもよいかもしれません。 M&A後の寂しさへの対処法(一例) 新たな事業を立ち上げる 社会貢献活動を行う 顧問や役員として、引き続き会社に関与する 安定的な収入源がなくなる 社長は、M&Aをおこなった場合、その後、安定的な収入源がなくなるというデメリットも、覚悟する必要があります。 社長職を離れると、役員報酬などの安定的な収入源がなくなります。 その後を見据えた対処法 M&Aの対価はその後の生活資金になりますが、それだけでは不安が残る場合は、社長職の経験を活かして、再就職先を探してみても良いでしょう。いままで社長として経営にたずさわってきた経験を活かし、コンサルティングなどをおこなうことも考えられます。 さらに、社長の経験にこだわらず、新しい仕事にチャレンジしてみるという選択肢もあるでしょう。 買収側企業から、残留を打診された場合は前向きに検討することで、一定期間、一定の収入を得られます。 また、M&Aの対価を活用して、投資をおこなうという社長もいるでしょう。 収入源の確保(一例) 仕事を探す社長の経験を活かして、コンサルティング、講演、執筆などの活動を行う新しい仕事にチャレンジしてみる 顧問や役員として、報酬を得る 投資をおこなうetc. M&Aの前に、企業価値を高めておく 社長は、M&Aを有利に進めるために、企業価値を高める努力をすることについて、覚悟する必要があります。 良い条件で会社売却をするためには、M&Aに向けて企業価値を高めることが重要です。 企業価値を高めることで、M&A価格が高額になることが見込まれます。これは、その後の社長の資金源を増やすことにもつながります。 その後を見据えた対処法 企業価値を高める方法としては、以下のような視点があります。 企業価値を高める方法(一例) 収益性の向上 事業の成長 財務体質の改善 ガバナンスの強化 M&A仲介会社はM&Aに関するノウハウの蓄積があるので、買い手がつきやすい会社売却価格のあたりをつけてくれるでしょう。 より緻密な企業価値評価を求めるのであれば、公認会計士への相談がおすすめです。 また、財務改質の改善は税理士が、ガバナンスの強化や法務についてはM&Aに強い弁護士が得意とする分野になるでしょう。 無料相談を受けられるケースもあるので、そのような機会もうまく活用することがポイントです。 M&A成約までの道のりを安心して歩んでいくためには、自社にあったアドバイザーの存在が不可欠です。 関連記事 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 M&Aで会社を高く売る方法とは?買い手へのアピールポイントを解説 M&Aをするとその後どうなる?社長に今必要な行動 M&Aは、社長にとって大きな決断です。 退職を迫られる、買収先企業での残留を求められるなど、その後の展開は、M&Aを実施してみなければ誰にも分かりません。 役員や従業員の雇用条件の交渉がどうなるかも、買収先企業の経営方針にも左右されることなので、実際にM&Aの交渉をおこなって初めて分かるものです。 このため大きな不安がつきまとうのは、当然のことです。 一方で、M&Aは社長にとっても、社長が今まで育ててきた会社にとっても、新たな可能性をひらくチャンスでもあります。 社長として今必要な行動はまず、自社のM&Aの相手方としてふさわしい企業を選定することです。 M&A成約は、買い手なしには実現できません。 買い手探しでお悩みの場合は、信頼できるM&A仲介会社などに相談してみてください。 --- ### M&Aスキーム (手法)を比較!メリット・デメリット・手続きの違いを解説 - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/manda/9876 - Categories: その他, 事業譲渡, 株式譲渡 M&Aスキーム(手法)を比較!メリット・デメリットは?この記事では、株式譲渡、事業譲渡、会社分割、合併、株式交換・株式移転、第三者割当増資についてその特徴を徹底解説!M&Aをご検討中の方は是非ご覧ください。 M&Aのスキームとは?どんな手法がある? 株式譲渡というM&Aスキームのメリットは? 事業譲渡というM&Aの手法のデメリットは? M&Aスキーム(手法)は、大きく分けて、株式取得(株式譲渡etc. )、事業譲渡、会社分割、合併、資本提携の5つに分類できます。 それぞれのM&Aスキームには、メリット・デメリットがあります。M&Aの目的にあわせてスキームを選ぶ必要があります。 この記事では、それぞれのM&Aスキームの特徴を比較できるように、メリット、デメリット、税法上の取り扱い、法務上の留意点などを整理しました。 ぜひ最後までご覧ください。 M&Aスキーム(手法)の基礎知識 M&Aスキーム(手法)とは? M&Aとは、Mergers and Acquisitions(合併と買収)の略称で、会社や経営権の取得を意味します。 M&Aスキームとは、売り手側と買い手側がM&Aをおこなうために選択する手法のことです。 たとえば中小企業が、後継者不在のためにM&Aをおこなう場合などは、株式譲渡というM&Aスキームが多用されます。 M&Aスキーム(手法)一覧 M&Aスキームは、株式譲渡だけではありません。 M&Aスキームは大きく分けて、株式取得、事業譲渡、会社分割、合併、資本提携があります。 株式譲渡は株式取得に分類されるM&Aの一種です。 M&Aスキーム(手法) 株式取得株式譲渡、株式交換、株式交換、第三者割当割当増資etc. 事業譲渡 会社分割新設分割、吸収分割 合併新設合併、吸収合併 資本提携 よく使われるM&Aの手法は? 中小企業で実施されているM&Aスキームとしては、事業譲渡、株式譲渡が主流といえそうです。 ※ 2017. 11 三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱「成長に向けた企業間連携等に関する調査」(2021. 1. 23現在)を参考に作成。 狭義のM&Aスキーム(手法) これらのM&Aスキームのうち、株式取得、事業譲渡、会社分割、合併については、「狭義のM&A」と呼ばれます。「狭義のM&A」というのは、M&Aの本来的な意味に限定した場合のM&Aスキームを指します。 M&Aスキームは本来、会社の経営権を伴う買収、合併を意味します。そのため、買収の手法である株式取得、事業譲渡、会社分割および、合併が「狭義のM&A」と位置づけられます。 広義のM&Aスキーム(手法) 広義のM&Aでは、上記の狭義のM&Aスキームに加えて、提携も加わります。 資本提携 資本提携(資本業務提携)とは、2社以上の会社が、株式の持ち合いをおこなうなどして、協力関係を築き、事業の成長を目指すという経営戦略です。 狭義のM&Aと比較した場合、資本提携は会社の経営権が移転しない点に、狭義のM&Aとの違いがあります。 しかし、資本提携と狭義のM&Aスキームを比較した場合、株式を持ち合うなどして資本参加している共通点があります。 そのため、資本提携もM&Aスキームの一つとして整理することができます。 資本提携は、株式の移動などの資本投入がなされるため、より強固な協力関係を築けるメリットがあります。 業務提携 企業提携には、業務提携という類型もあります。 業務提携とは、経営資源を出し合って協力関係を築き、事業の成長を目指すという経営戦略のことです。 業務提携には、販売提携、技術提携、共同開発提携、生産提携といった類型があります。 資本提携と比較した場合、業務提携は株式の持ち合いなどによる資本参加をしない点に、魏資本参加との違いがあります。 業務提携は、資本提携と比べた場合、資本投入がないので提携が解消されやすいというデメリットがある一方、資本提携ほど多大なコストがかからないので柔軟かつ早期の連携が可能というメリットがあります。 M&Aスキーム(手法)は比較で選ぶ M&Aスキームには、メリット・デメリットがあるため、対象企業の状況やM&Aの目的に合わせて、スキームの特徴を比較しながら最適なものを選ぶことが重要です。 会社の経営権を譲り渡したいのであれば株式譲渡を選択することになるでしょうし、一部の事業を切り離したいのであれば事業譲渡を選択することになるでしょう。 さてここから、代表的なM&Aスキームについて確認していきましょう。 M&Aスキーム(手法)①株式譲渡 株式譲渡とは? 株式譲渡とは、売り手側が保有する株式を、買い手側に売却するというM&Aスキームです。 たとえば中小企業の場合、オーナー経営者が自社の株式を保有したうえで、取締役として経営権を掌握しているケースが多いものです。 この場合に、中小企業のオーナー経営者が、後継者に対して事業承継をおこないたいのであれば、株式譲渡というM&Aスキームが選択されることが多いでしょう。 M&A│株式譲渡の流れ・手続き 仲介会社に相談 企業価値評価(バリュエーション)・マッチング トップ面談 基本合意書の締結 デュ―デリジェンス 株式譲渡契約の締結 取締役会・株主総会 PMI(経営統合) 株式譲渡は、他のM&Aスキームと比較すれば手続きは簡単であるといえそうですが、忘れてはいけない手順もあります。 株券発行会社の場合は、株券の引き渡しをおこなう必要があります。また、株主が権利行使をするには、株主名簿の書き換えが必要になります。 関連記事 株式譲渡の手続き・流れを徹底解説!会社の株式譲渡で必要な書類と注意点とは 売り手側のメリット・デメリット 売り手側のメリット(一覧) 株式譲渡というM&Aの手法を選択することについて、売り手側には以下のようなメリットがあります。 譲渡益を自分が受け取れる 課税金額を低額にできる 比較的早期にM&Aを実行できるetc. メリット①譲渡益を自分が受け取れる 自身が保有する株式を譲渡した場合、その対価は、自身で受け取ることができます。 これは他のM&Aスキームと比較した場合に、株式譲渡を選択する決め手となる最大のメリットといっても過言ではないでしょう。 他のM&Aスキームは、資金調達を目的とするM&Aには不向きです。 たとえば事業譲渡の場合、譲渡益が法人に帰属するので、自身が譲渡益の利益を享受するには、会社からの配当や退職金として受け取る必要があります。 メリット②課税金額を低額にできる また、事業譲渡の場合は譲渡益自体に法人税がかかります。株式譲渡による譲渡益の税率は20. 315%です。 一方で、事業譲渡の譲渡益にかかる税率については、少なくとも、法人税の実効税率である約34%程度を覚悟しておく必要があります。 株式譲渡の税金 社長個人が保有する株式を譲渡した場合 所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0. 3125% 合計すると20. 315%の税率で税金がかかる 事業譲渡の税金 事業譲渡の利益は会社に帰属するので、法人税がかかる 法人税の実効税率は約34%程度 社長個人が譲渡益を獲得したい場合は、さらに税金がかかる メリット③比較的早期にM&Aを実行できる また、株式譲渡は株主が変わるだけで、対象会社の資産などに変更が生じません。そのため、他のM&Aスキームと比べた場合、比較的短期間で実行できるというメリットもあります。 手続きや税金のことを考えると、他のM&Aスキームよりも株式譲渡のほうが使いやすい手法といえるでしょう。 売り手側のデメリット 株式譲渡というM&Aの手法を選択することについて、売り手側には以下のようなメリットがあります。 不採算事業があると、譲渡益が低額になる 負債が多いと、買い手が見つからない 持株比率によっては円滑な事業承継ができないetc. 譲渡対価は、企業の資産や収益性などの要素をもとに算定されます。不採算事業がある場合や、負債が大きい場合などは、譲渡対価が低額になるというデメリットが想定されます。 また、そもそも負債をかかえた会社の株式については、買い手が見つからないという事態も想定できます。 そのほか、事業承継を目的にする場合は、後継者の持ち株比率に注意する必要があります。 安定した経営権を握るためには、株主総会の特別総会の特別決議を単独で可決できるよう、2/3以上の持株比率が必要になります。 持株比率が低ければ、株式譲渡をおこなっても、円滑な事業承継ができないデメリットが生じます。 関連記事 株式譲渡の費用とは?手数料はいくら?株式譲渡の税金も解説 買い手側のメリット・デメリット 買い手側のメリット 買い手側が株式譲渡に応じるメリットとしては、会社をそのまま引き継ぐことができることです。 そのため、株式譲渡の場合は、他のM&Aスキームと比較して、譲渡対象となる会社への影響が少なく、事業拡大や新規事業の展開に集中できる環境が早期に整いやすいでしょう。 買い手側のデメリット しかし、株式譲渡の場合、株主総会承認決議が得られなければ、株式譲渡を受けることができないというデメリットがあります。 また、株式譲渡の場合、株式会社に簿外債務(帳簿に記載がない債務)を引き継ぐリスクもあります。 株式譲渡についてのまとめ 株式譲渡は、後継者不在を理由とする中小企業の事業承継で活用しやすいM&Aスキームです。 株式譲渡には、手続きが簡便であるというメリットがあります。しかし、デメリットもあるため、株式譲渡を行う際には、十分な検討と準備が必要です。 株式譲渡を成功させるためには、M&A仲介会社や、有資格者からアドバイスをもらえると安心です。 買い手探しや全体的なコンサルティングについては、M&A仲介会社が得意とする分野です。また、企業価値評価などは公認会計士、税務対策は税理士、株式譲渡契約書などを始めとする契約書のチェックは弁護士に相談すると良いでしょう。 無料相談に応じてくれる場合もあるので、上手に活用して、M&Aの成功を目指しましょう。 関連記事 M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? M&Aスキーム(手法)②事業譲渡 事業譲渡とは? 事業譲渡とは、企業が営む事業の全部または一部を他の企業に譲渡するM&Aスキームのことです。 M&A│事業譲渡の流れ・手続き 仲介会社に相談 企業価値評価(バリュエーション)・マッチング トップ面談 基本合意書の締結 デュ―デリジェンス 取締役会決議 事業譲渡契約の締結 株主総会の特別決議 事業譲渡の効力発生 事業とは、一定の営業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産のことを指します。 具体的には、無形の財産・債務、人材、組織、ノウハウ、ブランド、取引先などが事業に含まれます。 関連記事 事業譲渡手続きの流れは?会社譲渡の方法や手順を知ってスケジュールを立てよう 売り手側のメリット・デメリット 売り手側のメリット 事業譲渡というM&Aの手法を選択することについて、売り手側には以下のようなメリットがあります。 経営再建に向いている 譲渡益が高額になる 買い手が見つかりやすい 事業譲渡では会社全体ではなく、特定の事業だけを売却できます。したがって、これ以上成長する見込みのない事業は譲渡し、主力事業に経営資本を集中させることができます。 事業譲渡では、譲渡益は会社が受け取ることになるため財務の健全化が見込めます。事業譲渡は、経営再建をおこなうための環境調整がしやすいM&Aスキームといえるでしょう。 また、不採算事業を切り離して特定の事業のみを譲渡することもできます。そのため、事業譲渡の方が高額での会社売却がかなう、買い手が見つかりやすいといったメリットもあるでしょう。 売り手側のデメリット 事業譲渡というM&Aの手法を選択することについて、売り手側には以下のようなデメリットがあります。 負債が残るリスクがある 従業員の転籍がうまくいくとは限らない 法的規制が多岐にわたる デメリット①負債が残るリスクがある 事業譲渡は経営再建に適したM&Aスキームである一方、不採算事業のみが自社に残ることになり、経営再建どころではなくなるリスクもあります。 デメリット②従業員の転籍がうまくいくとは限らない 事業譲渡をおこなう場合、買い手企業に従業員の雇用関係を引き継ぐと定めたときは通常、個別に転籍の同意を取り付ける義務が課されます。 しかし、場合によっては従業員から反感を買ってうまくいかないこともあるでしょう。 経営統合を進めるうえでキーマンとなる従業員が転籍に同意してくれない場合、従業員の大半が転籍に同意してくれない場合などは、事業譲渡自体がとん挫してしまう、事業の売却益が下がってしまうといったリスクが考えられます。 デメリット③法的規制が多岐にわたる 事業譲渡をおこなう場合、基本的には、取締役会決議や株主総会の特別決議が必要である旨法律で規定されています。 また、事業譲渡をおこなった場合、売り手側には法律で競業避止義務が課されます。その結果、売り手企業は、同一市区町村などで一定期間、同様のビジネスをおこなうことが禁じられます。 関連記事 事業譲渡の対価はどうやって決まるのか?計算方法は? 事業譲渡ののれんとは?営業権譲渡の流れや売却価格の評価方法は? 買い手側のメリット・デメリット 買い手側のメリット 事業譲渡について、買い手企業には、必要な事業、従業員、取引先などを考慮して、買収したい事業のみを選択できるメリットがあります。 そのため、負債を避けて、低コストで新規事業に着手することができます。株式譲渡のように、簿外債務を引き受けるリスクは、基本的にはありません。 買い手側のデメリット しかし、上記のようなメリットがある分、事業譲渡の譲渡対価は高額になりやすく、買収するための資金の準備に苦労することもあるでしょう。 また、従業員や取引先については、株式譲渡のように何もしないで引き継がれるのではなく、個別に契約を締結する必要があります。 許認可についても引き継ぐことができないため、あらためて許認可申請が必要になります。そのため、譲渡を受けた事業について、スピーディーに引き継ぐことができない可能性があります。 事業譲渡についてのまとめ 事業譲渡は、企業の経営戦略を実現するために有効な手段ですが、譲渡する事業の資産や負債の評価が難しいことや、譲受会社との調整が必要な場合があることに注意が必要です。 事業譲渡をおこなう際も、十分な検討と準備をしましょう。 関連記事 M&A仲介とは?FAとの違い、M&Aでの役割を解説! M&Aスキーム(手法)③会社分割 会社分割とは? 会社分割とは、1つの会社を2つ以上の会社に分けることをいいます。 会社分割は企業再編や、事業の売却、提携の手段として使われます。 会社分割には、新設分割、吸収分割があります。 また、分割型分割と分社型分割という分類もできます。 会社分割の種類 吸収分割吸収分割会社がその事業について有する権利義務の全部又は一部を、既存の会社(吸収分割承継会社)に承継させるもの。 新設分割新しく会社を設立して、権利義務の全部または一部を承継させるもの。 会社分割の類型 分社型分割承継会社から交付された分割会社の株式の対価が、分割会社に交付されるもの。 分割型分割承継会社から交付された分割会社の株式の対価が、分割会社の株主に交付されるもの。 つまり、会社分割には少なくとも、吸収分割、新設分割、分社型分割、分割型分割の組み合せにより、4通りの類型があるということです。 分社型分割分割型分割吸収分割分社型吸収分割分割型吸収分割新設分割分社型新設分割分割型新設分割 中小企業では、分社型新設分割をおこなった後、新設分割会社の株式を譲渡することで、新設分割会社の経営権を後継者に譲渡するというM&Aスキームが用いられることもあるでしょう。 売り手側のメリット・デメリット 売り手側のメリット このM&Aスキームを用いることで、一部の事業を切り離して、承継させることができる点で、事業譲渡と同様の効果を得ることができます。 しかし会社分割の場合は、権利義務を包括的に承継することになるので、譲渡対象の事業ごとに承認を得たり、従業員ごとに移籍の同意をとるなどの手間を省略することができるメリットがあります。 売り手側のデメリット 会社分割というM&Aスキームのデメリットとしては、債権者保護手続きを実施しなければならない点で、時間やコストがかかる点があげられます。 会社分割で必要になる手続きには、以下のようなものがあります。 M&A│会社分割の流れ・手続き 分割契約・分割計画の作成 事前の開示 株主総会による承認 債権者保護手続 登記 会社の債権者の利益を害するおそれがある場合、債権者を守るための手続き(債権者保護手続)を踏む必要があります。 会社分割の場合は、資産や債務が変動するので、債権者の利益を害するおそれがあり、債権者保護手続が必要です。その結果、少なくとも1ヶ月間程度、会社分割について異議を述べる機会を債権者に与える必要があります。その間は、会社分割の手続きを進めることはできません。 そのほか、会社分割では、M&Aのクローズにおいて、登記をすることになりますが、通常、登記は司法書士に依頼するので、費用がかかります。 買い手側のメリット・デメリット 買い手側のメリット 会社分割により、買い手側は承継する範囲を限定できるというメリットがあります。 また、ケースによってはのれん代は、承継会社の経費として計上できることがあります。つまり、5年間かけて、のれん代を損金算入できるため、節税のメリットがあります。 買い手側のデメリット ただし一方で、移転対象事業に不動産が含まれている場合、不動産取得税と登録免許税を課税される可能性があります。 会社分割を実施すれば、すべてにおいて必ず節税効果が得られるというわけでも無さそうです。 会社分割についてのまとめ 会社分割は、事業のスリム化や効率化、事業の承継を図るために用いられる有効な手段です。 しかし、分割に伴う手続きや費用が発生することや、分割後の経営に影響を与える可能性があることに注意が必要です。 M&Aスキーム(手法)④合併・株式交換・株式移転・第三者割当増資 合併 会社の合併とは、2つ以上の会社が契約によって1つの会社になることです。 合併は、グループ企業の再編などの場面で用いられるM&Aスキームです。 M&A│合併の流れ・手続き 合併契約書を締結 事前の情報開示 株主総会の承認決議 反対株主などの株式買取請求 債権者保護手続き 合併の効力発生 合併には、吸収合併と新設合併があります。 合併の種類 吸収合併合併をおこなう会社のうち、一社のみ残して、他の会社は存続会社に吸収されて消滅するというスキーム。 新設合併新しい会社を設立して、合併する会社の権利義務のすべてを新設会社に承継させて、もとの会社はすべて消滅するというスキーム。  メリット 合併をおこなうことで、組織構造がシンプルになり、迅速な意思決定が可能になります。 また、子会社同士の合併により、企業の経営の効率化を図れるというメリットも考えられます。 ほかにも、合併により、競争力の強化による収益力向上や、既存事業の強化や新記事業の展開など事業の拡大に寄与することが期待できます。 デメリット たとえグループ企業であっても、会社ごとに独自のルールや企業文化は形成されているものです。そのため多かれ少なかれ合併にともなう社内ルールの統合は、難しいものでしょう。 また、合併により従業員が増加することになるため、人員配置の課題は避けられません。 合併というM&Aスキームを実施すること自体のコストや手間のほかにも、組織統合や人員配置などの課題があるということを認識しておく必要があります。 合併についてのまとめ 合併は、企業の成長や経営の効率化を図るための有効な手段です。なお、実務では、吸収合併と新設合併を比較した場合、吸収合併のほうが多用されるM&Aスキームといえます。 新設合併では、新しく設立された会社に許認可や免許を引き継ぐことができないため、新たに申請をおこなう必要があります。一方、吸収合併では、消滅会社の事業を包括承継できるので、この点を捉えると、吸収合併のほうが使い勝手が良いM&Aスキームといえそうです。 ただし、新設合併、吸収合併のいずれのスキームを選択する場合でも、合併にはコストや人事・組織の統合などのデメリットも伴うため、慎重に検討する必要があります。 株式交換・株式移転 株式交換・株式移転とは、ある株式会社が、他の株式会社の100%子会社(完全子会社)となるM&Aスキームです。 株式交換の場合は、既存の会社が、完全親会社(子会社のすべての株式を保有する会社)となります。 株式交換の流れ・手続き 株式交換契約の締結 事前の情報開示 株主総会の承認決議 反対株主などの株式買取請求... --- ### 親の会社を相続したらどうすればいい?会社相続を相談できる窓口とは - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/manda/10385 - Categories: 会社売却の流れ, 会社相続 相続した親の会社の株式は売却することが可能です。M&A仲介会社やM&Aアドバイザリーなどに相談してみましょう。 親の会社を相続した場合、経営権がどうなるのか知りたい 相続した親の会社をM&Aで売却できるのか知りたい 相続税対策としてM&Aで会社売却すべきなのか 家族に急な不幸があり、いきなり相続が始まってしまうと、納税や書類の手続きなど、数多くの不安が押し寄せることでしょう。 特に、被相続人が経営者だった場合、会社との関係がどうなるのか、税金はいくら納める必要があるのかなど、通常の相続よりも考えるべきことが多いです。 この記事では、親の会社を相続した場合に経営権を引き継ぐ方法や、相続した会社を売却する方法について解説します。 会社を相続するとはどのようなことなのか、具体的なイメージができていないこともあるかもしれません。いざ会社を相続する段階になって戸惑うことのないように、早い段階から基本的な知識を得ておくことが大切です。 親の会社を相続するとは 親が所有していた株式のみを相続 親の会社を相続するとは、親が保有していた会社の株式を受け継ぐことを意味します。 会社の資産や経営者としての立場などは、当然には相続しません。 会社の財産は経営者の個人的な財産や所有物ではないため、経営者が死亡しても、法人自体や法人の財産は相続の対象にはなりません。 経営者としての地位は相続しない 被相続人が経営者へ就任しても、その地位を相続することはありません。これらの地位は、会社と経営者との間の委任契約によるものであるため、当事者の死亡によって契約関係は消滅します。 親から経営者としての立場も引き継ぐ場合には、会社の株主総会で承認を受ける必要があります。 会社の財産は相続しない 会社の財産は、会社の所有物であるため相続の対象にはなりません。 一方、親が個人事業主であった場合は、事業に関する資産は事業主の所有物となります。よって、事業主が死亡した場合は、事業に関する資産すべてが相続の対象となります。 個人事業主を相続する場合は、まず事業資産を相続して後継者の所有物としたうえで、死亡した前経営者の廃業届を出し、後継者が開業届を出すことで相続が完了となるでしょう。 被相続人の違いによる相続対象 法人経営者個人事業主会社の財産相続の対象外相続の対象経営者としての地位相続の対象外-株式相続の対象相続の対象 親の会社を相続して引き継ぐ方法 親の会社を相続して引き継ぐ手順は、まず自社株を相続して株式の名義変更を行い、次に株主総会の承認を経て代表としての地位を取得します。 親の会社を相続する大まかな流れ 相続の開始 株主名簿の書き換え 代表者としての地位を取得 ①相続の開始(自社株の取得) 会社の相続は、被相続人である前経営者が保有していた株式を相続することから始まります。 上場企業の株式であれば、株価が公開されているため、取得額を簡単に見積もることができますが、非上場企業の株式の場合は、理論株価を別途計算しなければ、株価は分かりません。 また非上場株式は多くの場合、譲渡制限がついており、株式保有者が誰かに売りたいと考えても、自由に売却することができません。 しかし、相続の場合は例外的に、会社の譲渡承認決議がなくても、相続人に非上場株式を移転させることが可能です。 関連記事 相続した非上場株式の評価額は?相続税は高い?売却できる? ②株式名簿を書き換える(自社株の名義変更) 会社の株式を取得したら、株主名簿を書き換えましょう。 相続であっても非上場株式の移転が完了したら、株主名簿の書き換えをしなければなりません。株主名簿に名前がなければ、自身が株主であることを会社やその他第三者に対抗できなくなり、株主としての権利行使に支障が発生します。 ③代表としての地位を取得する 株式を相続し、株主名簿を書き換えたら、株主総会を開いて代表取締役の地位に就くための決議を得る必要があります。 もっとも通常の場合、株主からの了承を得た上で代表取締役に就任するケースがほとんどです。株主総会で反対意見が出てきて、論争になることは滅多にありません。 後継者が全株式を相続した場合、会社の規模が小さければ、株主総会を開催せず「みなし決議」で手続きが完了することもあります。 「みなし決議」は、株主の全員が書面などによって同意したときに、提案を可決する決議があったとみなす制度です(会社法319条)。 代表の地位を取得する際の注意点 会社の経営権を取得するには、最低でも過半数の議決権を獲得する必要があります。 可能であれば、特別決議を単独で可決できる3分の2以上を獲得することが望ましいでしょう。 また、相続人が複数存在する場合には、相続により議決権が分散してしまう懸念があります。 会社の経営に影響が出てしまう懸念がある場合には、先代経営者からの生前贈与を受けるか、株式譲渡を通じた事業承継を選択するべきです。 ④その他の手続き 株式を相続して代表取締役に就いたら相続手続きは一応済んだことになりますが、実際にはほかにも細かい手続きが必要になります。 例えば、法人名義の銀行口座の代表者を変更するなど、金融機関での手続きが必要になります。ほかにも、許認可が必要な事業なら、許認可の代表の変更手続きなども必要です。 取引先に代表取締役が変わったことを通知し、主要な取引先なら直接出向いてあいさつする場合もあります。 親の会社を相続した場合の相続税 相続税は株価によって変わる 会社を相続し、親の保有していた株式を取得すると、相続税が課されます。 相続税は、引き継ぐ財産が多ければ多いほど多額になり、累進課税で、最大55%課税されます。 相続税の税率は以下の通りです。 相続税早見表 法定相続分に応じた取得金額税率控除額1,000万円以下10%ー3,000万円以下15%50万円5,000万円以下20%200万円1億円以下30%700万円2億円以下40%1,700万円3億円以下45%2,700万円6億円以下50%4,200万円6億円超55%7,200万円 相続税の計算についての詳細は「相続税の税率がすぐ分かる!|計算方法や各種控除も解説」をご覧ください。 相続前の株式譲渡は節税になる場合もある 株式価格は常に一定ではないため、株価が高騰しているタイミングで相続が発生すると、高額な相続税がかかる場合があります。 一方、株価が比較的低い段階で株式譲渡することによって、相続の対象となる財産の合計額が低くなり、結果的に相続税を引き下げる可能性があるでしょう。 他にも、株式譲渡後の配当金は相続人のものになるため、株式の名義を早く変更していれば、相続の対象となる財産の合計額が低くなり、相続税の節税につながる場合があります。 なお、株式譲渡であれば、譲渡益について、所得税・復興特別所得税・住民税が売り手側に課せられますが、全てあわせても、税率は20. 315%にとどまります。買い手の税負担はありません。 生前に株式譲渡すべきか、そのまま(先代の保有)にしておいて相続すべきか、どちらを選択した方がよいかは、対象となる財産の合計額によって変わります。 とはいえ、適正な価額で譲渡できなければ、結果として贈与税がかかるなど不利益を被る可能性もあります。身内への譲渡の場合も株式の評価に注意をはらう必要があります。 相続した親の会社を売却できる? 相続した親の会社を売却することは可能です。 親などの被相続人の事業とは全く無関係な仕事をしていた場合、相続人に経営の知識が全くなく、会社を引き継ぐ意思もないケースはよくあります。 経営者であった親が突然亡くなってしまうと、これからどうしていいか分からず、売却しようと考え始めるでしょう。 ここでは、相続した株式の株価算定方法について説明します。 相続した株式の株価を確認する(上場企業) 上場企業の株式は市場で取引されているので、市場株価が株式の価値となります。ただし、上場企業の株価は日々変化するので、どの時点の株価を採用するかが問題です。 上場株式を相続した場合に、どの時点の株価を採用するかは「財産評価基本通達」に規定があります(168~172)。 具体的には、以下の4つの株価のなかから最も低いものを採用します。 平均値は、各営業日の終値の平均です。 親が亡くなった日の終値 親が亡くなった月の株価の平均 親が亡くなった前月の株価の平均 親が亡くなった前々月の株価の平均 相続した株式の株価を確認する(非上場企業) 非上場企業の株式には市場価格がないので、会社の資産や売上、営業利益などの情報から株式価値を見積もることになります。 非上場企業の株式価値は、純資産法や年倍法、類似会社比準法などのアプローチを使って評価するケースが一般的です。 株式を相続した後継者が同族株主でない場合は、配当還元方式といった特殊な評価方法を使うこともあります。 非上場企業の株式価値評価は専門的で難しいので、M&A仲介会社や公認会計士などの専門家に依頼する方が多いです。 関連記事 非上場株式を譲渡するには?売却価格や手続きは? 相続した株式を売却する流れ 買い手探し・条件交渉 相続した株式を売却する場合には、買い手候補がいないのであれば、まずM&A仲介会社やマッチングプラットフォームなどを利用して、買い手探しを行わなければなりません。 買い手候補が見つかり次第、売却条件を交渉していきます。 既に紹介したような株式評価方法を用いて、自力で交渉することも可能ですが、納得のいく金額で株式譲渡を行いたければ、M&A仲介会社などを活用すべきでしょう。 また、買い手との間では、秘密保持契約などを締結する必要があります。 その他、相手に開示する必要のある書類なども整理しなければなりませんが、専門家に相談することにより、この手間を大幅に省くことができます。 関連記事 会社売却成功への道!M&A買い手探しの目的とポイントとは 譲渡承認請求 株式の譲渡先や譲渡内容が決まったら、会社に対して譲渡承認請求を行います。非上場会社の株式には、譲渡制限がついていることがほとんどです。 相続した株式を第三者に譲渡・売却する場合には、会社の許可を取らなければなりません。 取締役会・株主総会での承認・通知 譲渡承認請求を受けた会社は、株主総会や取締役会を開催します(会社法139条1項)。 株式譲渡を承認するか否かを決定した場合、原則として、承認請求の日から2週間以内に、譲渡承認請求者に対して決定内容を通知しなければなりません(会社法139条2項)。 承認請求の日から2週間以内に通知できなければ、たとえ不承認決議をしていたとしても、請求は可決されたとみなされます(会社法145条1号)。 譲渡承認決議が不承認となった場合は、対象株式の買い取りを承認請求書に記載していれば、会社または指定買取人によって買い取ってもらうこともできます。 株式譲渡契約の締結 譲渡人と譲受人との間で株式譲渡契約を締結します。 譲渡人と譲受人のそれぞれが記名・押印します。また、株券発行会社の場合は上記に加えて株券の交付が必要になります。 株式譲渡契約書には、譲渡価格全額の決裁が完了したことや、株式発行会社への通知をすること、株主名簿の書き換えを請求することなども記載されることも多いです。 無償で株式を譲渡する場合には、「株式贈与契約書」を締結します。 なお、株式譲渡契約書・株式贈与契約書は、法律上は締結する必要はありません。 特に、親族や知人に譲渡・贈与する場合などは、信頼関係を構築できていると考えて、口頭のやりとりだけで譲渡してしまうケースもあるかもしれません。 しかし、株式譲渡実行の有無や、譲渡後の株主名簿書換請求などを第三者への対抗要件として書面に残しておいた方がいいでしょう。そうすることで、後々トラブルが発生した際に対応が可能となります。 株主名簿の書き換え 非上場株式について、譲渡契約を締結し、売却代金を受領したら、株式譲渡の手続きそのものは完了ですが、株式名簿の書き換えが必要です。 株主名簿の書き換えをしておかないと、会社や第三者に対して、買い手が株主としての権利を主張できなくなるおそれがあるからです。 株主名簿の書き換えは、株主にとって重要な対抗要件となるため、株式譲渡が完了したら、すみやかに株主名簿の書き換えが必要です。 会社相続について相談可能な窓口とは? 相続した会社を適正に引き継ぎたい場合 相続した会社を正しく引き継ぎ、経営者としての地位を得たい場合には、弁護士や司法書士、金融機関や自治体の相談センターなどに相談してみましょう。 例えば、弁護士や司法書士に相談すれば、相続人が複数人いる場合に、株式の全部を後継者が取得するための方法を教えてもらえるでしょう。 他にも、金融機関や取引先に対してどのような事後処理をしなければならないのかなど、アドバイスをもらうことができます。 どの相談窓口も、初回の相談は無料で実施していることが多いですが、実際に事務処理を依頼する場合には、費用が発生するケースが大半です。 相続した会社を売却したい場合 相続した会社を売却したい場合は、M&A仲介会社やM&Aアドバイザリーなどに相談してみましょう。 M&Aの成約までを業務内容としている専門業者であれば「早く買い手候補を見つけて株式を手放したい」「なるべく高い金額で売却したい」など、売り手側のニーズに合わせて適切な対応をしてくれます。 費用形態は、業者によって変わります。 依頼したタイミングで着手金が発生する業者もいれば、成約まで全て終わった段階で費用精算を行う業者もいます。 初回の無料相談などでは、費用の見通しについて確認するべきでしょう。 --- ### 事業承継税制とは?納税が猶予・免除される要件とメリット・デメリットを解説 - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/manda/10054 - Categories: 会社売却の税金, 事業承継 事業承継税制とは、会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産について、贈与税や相続税の納付が猶予・免除される制度です。 子供や孫など、親族に経営権を譲って事業承継をしたり、従業員や役員に事業承継したりする場合、後継者にはどれくらい税金が課せられるのでしょうか。 事業を引き継いだ後の負担が重いと、後継者候補としても決心ができず、誰も跡を継いでくれないというケースもありえます。 事業承継税制は、事業を引き継ぐ後継者が税負担を軽減できる制度です。 特に法人の事業承継税制は、一般措置と特例措置に分かれており、特例措置の要件を満たせば税負担がより軽減されます。 事業承継税制の概要、利用できる要件、節税効果などについて、確認していきましょう。 事業承継税制とは 事業承継とは 事業承継とは、現在のオーナー経営者が引退し、次の経営者(または親会社となる法人など)が事業を引き継ぐことを指します。 事業承継には以下の3タイプがあります。 親族内承継 社内承継(親族以外の役員・従業員への承継) 第三者承継(親族・従業員など以外の第三者への承継) 親族内承継では、自社株や事業用資産がオーナー経営者から後継者に贈与・相続されます。社内承継では、社内の後継者への贈与や譲渡(売却)が行われます。 第三者承継は、M&Aの形態となることが一般的でしょう。M&Aの場合、他の法人や第三者の個人に自社株や事業資産を譲渡することになります。 関連記事 事業譲渡と株式譲渡の違いは?目的・メリット・デメリットなど解説 事業承継税制とは 事業承継税制とは、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以下「円滑化法」。)にもとづいて、会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産について、贈与税や相続税の納付が猶予・免除される制度です。 事業承継税制を利用することで、多額の税金を一括で納める必要がなく、経営の継続や事業拡大に集中することができます。 事業承継税制は、一般的に親族内承継・社内承継で活用されるため、第三者承継(M&A)で利用することはありません。 事業承継税制の種類 法人版事業承継税制:会社を対象とした事業承継税制 個人版事業承継税制:個人事業を対象とした事業承継税制 事業承継税制の目的 事業承継税制の目的は、中小企業の事業承継を円滑に進め、中小企業の存続と発展を図ることです。 通常、相続や贈与に際しては、取得した資産に対して一定の税金がかかります。親をはじめとした先代経営者から、自社株を贈与・相続された場合にも、株価に応じた税金が課せられます。 多額な相続税や贈与税が後継者にとって大きな負担となることが、事業承継の大きなハードルとなっていました。 このような状況を解消し、国として事業承継を強く推進するために、2009年の税制改正で事業承継税制が創設されました。 事業承継税制を利用することで、自社株式にかかる相続税・贈与税の支払いが猶予されたり、一部が免除されたりします。これにより、後継者は負担を軽減でき、事業を引き継ぎやすくなります。 中小企業は、後継者不足や経営者の高齢化などにより、事業承継が円滑に進まないケースが多くあります。事業承継税制は、このような課題を解決し、中小企業の持続的な成長を支援する制度です。 事業承継税制で納税が免除されるケース 事業承継税制は、納税猶予を受けてから5年間は、毎年税務署に届け出・報告を行わなければなりません。 その後は3年に一度の報告となり、事業承継税制の取消自由に該当しない限りは、納税猶予を受け続けることができます。 そして、後継者(2代目経営者)が死亡して相続したり、次の後継者(3代目経営者)に贈与したりすると、猶予されていた税額が免除されます。 法人版事業承継税制とは 法人版事業承継税制の概要 法人版事業承継税制とは、後継者となる受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合の税制です。 一定の要件を満たすと、その非上場株式等にかかる贈与税・相続税の納税が猶予されます。 法人版事業承継税制の適用を受けるためには、円滑化法にもとづく認定を受けたり、申請書を提出する必要があり、その窓口となるのは会社の主たる事務所がある都道府県です。 各都道府県のお問合せ先については、国税庁「認定・申請等に関する窓口について」をご確認ください。 法人版事業承継税制の特例措置と一般措置 法人版の事業承継税制は、特例措置と一般措置の形式にさらに分類されます。 特例措置の要件を満たせば、納税猶予となる対象株式数が増えたり、相続税の納税猶予割合が100%になったりするなど、メリットが大きいです。 法人版事業承継税制の特例措置の認定を受けるためには、「特例承継計画」を令和6年(2024年)3月31日までに提出する必要があります。 「特例承継計画」とは、株式等を承継するまでの期間における事業計画、後継者が株式等を取得した後の5年間の事業計画等を記載した計画で、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けたものをいいます。 法人版事業承継税制で猶予される税金 法人版事業承継税制が適用されると、非上場株式などの全てもしくは一部が納税猶予されます。 贈与税の場合は100%納税が猶予されますが、一般措置における相続税については80%までしか納税猶予されません。 特例措置と一般措置の主な違い 特例措置一般措置計画特例承継計画が必要不要期間制限2027年12月31日までの贈与・相続なし対象株数全株式全株式の最大2/3贈与税100%猶予100%猶予相続税100%猶予80%猶予 ※「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし」より作成※特例承継計画の提出は2024年3月31日まで可能(2024年2月現在) 法人版事業承継税制の要件 会社の要件 法人の事業承継を行う場合に事業承継税制を受けるためには、会社が次の要件を満たしている必要があります。 会社の主な要件 非上場の中小企業である 風俗営業会社でない 資産管理会社でない 中小企業の定義は、中小企業基本法2条及び政令によって定められています。業種に応じて、資本金又は従業員の数により分類されています。 中小企業の定義 資本金従業員製造業その他3億円以下300人以下ゴム製品製造業3億円以下900人以下卸売業1億円以下100人以下小売業5000万円以下50人以下ソフトウェア・情報処理サービス業3億円以下300人以下旅館業1億円以下200人以下その他サービス業5000万円100人以下 風俗営業会社とは、性風俗関連特殊営業を営む会社であり、ソープランドやデリヘルなどが典型例です。風俗店の事業承継では、事業承継税制の適用はありません。 資産管理会社とは、資産を所有・管理することだけが目的の法人です。 中小企業庁によると、資産管理会社は資産保有型会社と、資産運用型会社の2種類に分類されています。 資産保有型会社とは、有価証券や現金・預金等の特定の資産の保有割合が総資産の70%以上の会社をいい、資産運用型会社とは、これらの資産からの運用収入が総収入の75%以上の会社をいいます。 資産管理会社は節税目的で設立されるケースが大半となり、事業承継税制の適用外となります。 後継者、先代経営者の主な要件(贈与税) 後継者の主な要件 贈与時に会社の代表権がある 贈与日に、18歳以上である 贈与日まで、引き続き3年以上の会社役員である 贈与によって、総議決権数の過半数を保有する※複数の後継者で50%を超えても可 贈与によって、筆頭株主となる 贈与を受けた後継者が法人版事業承継税制を利用する場合、一般措置であれば1人の後継者しか制度を利用できませんが、特例措置に該当すれば3人までの後継者が事業承継税制を利用できます。 特例承継計画に記載された後継者が2人又は3人であり、特例措置を希望する場合、まず総議決権数の10%以上の議決権数を保有している必要があります。 そのうえで、他の後継者を除いた親族よりも、多くの議決権数を保有しなければなりません。 以下のモデルケースを用いて説明していきます。 モデルケース 後継者A:30% 後継者B:15% 後継者C:10% 同族関係者D:12% 同族関係者E:7% このケースの場合、後継者Aと後継者Bは特例措置の対象となります。 しかし、後継者Cは同族関係者Dよりも持ち分割合が低いため、特例措置の対象外となってしまいます。 先代経営者の主な要件(贈与税) 会社の代表権を有していた 贈与の直前において、総議決権数の過半数を保有かつ筆頭株主だった 贈与の時において、会社の代表権を有していない 後継者、先代経営者の主な要件(相続税) 後継者の主な要件 相続税の事業承継税制の後継者要件は、贈与税と原則変わりません。 贈与税の要件と比べると、相続開始の翌日から5か月以内に会社の代表者となる必要がある点と、年齢の規定がない点が特徴です。 後継者が複数人いる場合は、後継者ではない親族よりも多くの持ち分を保有する必要があります。 先代経営者の主な要件 相続税の事業承継税制の先代経営者要件は、贈与税と原則変わりません。 担保提供 納税が猶予される贈与税額、相続税額、及び利子税の額に見合う担保を、税務署に提供する必要があります。 法人版事業承継税制の場合、この制度の適用を受ける非上場株式等の全てを担保として提供することができます。 株式評価額が、担保額に満たない場合でも、納税が猶予される贈与税額及び利子税の額に見合う担保の提供があったものとみなされます。 法人版事業承継税制について、より詳細な情報を確認したい方は中小企業「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし」をご確認ください。 法人版事業承継税制の要件比較 会社の主な要件 贈与相続株式非上場企業非上場企業規模中小企業中小企業業種風俗営業会社・資産管理会社以外風俗営業会社・資産管理会社以外 後継者の主な要件 贈与相続地位贈与時に会社の代表者である贈与の日まで引き続き3年以上会社の役員だった相続開始の翌日から5か月以内に会社の代表者となる年齢贈与時に18歳以上規定なし保有株数①贈与によって、筆頭株主となる②贈与によって、総議決権数の過半数を保有する①相続によって、筆頭株主となる②相続によって、総議決権数の過半数を保有する一般措置後継者1人まで後継者1人まで特例措置後継者3人まで①総議決権数の10%以上を保有②他の後継者を除いた親族よりも、多くの議決権数を保有後継者3人まで①総議決権数の10%以上を保有②他の後継者を除いた親族よりも、多くの議決権数を保有 ※特例措置の後継者は、特例承継計画に記載する必要あり。 先代経営者の主な要件 贈与相続地位会社の代表者だった贈与時に、代表者ではない会社の代表者だった保有株数贈与開始の直前で①筆頭株主だった②総議決権数の50%超を保有していた相続開始の直前で①筆頭株主だった②総議決権数の50%超を保有していた 個人版事業承継税制とは 個人版事業承継税制の概要 個人版事業承継税制は、個人事業の後継者が事業を引き継ぐ際にかかる相続税や贈与税を軽減するための制度です。 一定の条件を満たせば、事業用資産の承継の際にかかる相続税や贈与税の納税が猶予されます。 この税制の対象となるのは「特定事業用資産」で、先代が事業に利用していた一定の資産に限定されます。 個人版事業承継税制で猶予される税金 個人版事業承継税制では、相続税も贈与税も、取得した特定事業用資産の100%が猶予されます。 特定事業用資産とは、先代が事業に利用していた資産のうち、贈与や相続が発生した年の前年度分の「青色申告書の貸借対象表」に記載された、次の資産を指しています。 特定事業用資産とは 宅地等(400㎡まで) 建物(床面積800㎡まで) 2以外の減価償却資産で次のもの 固定資産税の課税対象とされているもの 自動車税・軽自動車税の営業用の標準税率が適用されるもの その他一定のもの(一定の貨物運送用及び乗用自動車、乳牛・果樹等の生物、特許権等の無形固定資産) 個人版事業承継税制の要件 個人版事業承継税制を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。 後継者、先代経営者の主な要件(贈与税) 後継者の主な要件 贈与の時点で18歳以上である 円滑化法の認定を受けている 贈与まで引き続き3年以上にわたり、特定事業用資産に係る事業に従事していた 贈与税の申告期限において、開業届出書を提出している 贈与税の申告期限において、青色申告の承認を受けている 特定事業用資産に係る事業が、資産管理事業・風俗営業に該当しない 先代経営者の主な要件 (贈与者が先代事業者である場合) 廃業届出書を提出済み(贈与税の申告期限までの提出見込みを含む) 贈与があった年、前年及び前々年の確定申告書を青色申告書で提出 (贈与者が先代事業者以外の場合) 先代事業者の贈与の直前において、先代事業者と生計を一にする親族である 先代事業者からの贈与後に特定事業用資産の贈与をしている 後継者、先代経営者の主な要件(相続税) 後継者の主な要件 円滑化法の認定を受けている 相続開始の直前において、特定事業用資産に係る事業に従事していた※先代事業者等が60歳未満で死亡した場合を除く 相続税の申告期限において、開業届出書を提出している 相続税の申告期限において、青色申告の承認を受けている(見込みを含む) 特定事業用資産に係る事業が、資産管理事業・風俗営業に該当しない 特定事業用宅地等について小規模宅地等の特例の適用を受けていない 先代経営者の主な要件 (被相続人が先代事業者) 相続開始の年、前年及び前々年の確定申告書を、青色申告書で提出 (被相続人が先代事業者以外) 相続開始の直前において、先代事業者と生計を一にする親族である 先代事業者の相続後に開始した相続に係る被相続人である 担保提供 納税が猶予される贈与税額、相続税額、及び利子税の額に見合う担保を、税務署に提供する必要があります。 個人版事業承継税制の要件比較 後継者の主な要件 贈与相続年齢贈与の日において18歳以上規定なし認定円滑化法の認定を受けている円滑化法の認定を受けている開業贈与税の申告期限において、開業届出書を提出している相続税の申告期限において、開業届出書を提出している確定申告贈与税の申告期限において、青色申告の承認を受けている相続税の申告期限において、青色申告の承認を受けている(見込みも含む)職種贈与まで引き続き3年以上にわたり、特定事業用資産に係る事業に従事していた相続開始の直前において、特定事業用資産に係る事業に従事していた業種資産管理事業・風俗営業以外資産管理事業・風俗営業以外その他特記事項なし相続した特定事業用宅地等について小規模宅地等の特例の適用を受けていない 先代事業者の要件 贈与相続廃業届廃業届出書を提出済み※贈与税の申告期限までの提出見込みで可規定なし確定申告贈与があった年、前年及び前々年の確定申告書を青色申告書で提出相続開始の年、前年及び前々年の確定申告書を、青色申告書で提出 事業承継税制のメリット 税金が猶予・免除される 事業承継税制の適用を受けると、贈与税・相続税の納税が猶予されます。そのため、多額の税金を一括で納める必要がなくなります。 そして、後継者が事業承継してから会社を経営し続けていれば、死亡して再び相続したり、生前に再び贈与したりする時には、猶予されていた税額が免除となります。 つまり、後継者(2代目)から次の後継者(3代目)に株式を承継した際に猶予された税額が免除されるのです。これは、事業承継税制の最大のメリットといえるでしょう。 本来であれば1代目から2代目に株式を承継した際に贈与税や相続税を支払い、2代目から3代目に株式を承継する際に再度贈与税や相続税を支払います。 つまり、事業承継する都度贈与税や相続税を支払う必要がありますが、事業承継税制を適用すれば、代々その贈与税や相続税の支払いが猶予・免除されるため、事業を継続している限り支払う必要はありません。 しかし、後継者が、承継後に事業が終了したり株式売却をしたりすると、利息分を含めて猶予されていた税額全てを収めなければなりません。 事業の継続・成長につながる 事業承継税制の適用を受けると、後継者が事業を継続・成長させるための資金を捻出しやすくなります。そのため、事業の継続・成長につながる可能性が高まります。 たとえば、事業承継税制の適用を受けることで、後継者が事業承継のために必要な設備投資や人材育成に資金を充てることができます。これにより、事業の競争力を高め、事業の継続・成長につながる可能性があります。 事業承継税制のデメリット 「特例措置」の適用期限 法人版の事業承継税制における特例措置を希望する場合、「特例承継計画」を提出できる期限が定められています。 2024年(令和6年)3月31日までに、都道府県に「特例承継計画」を提出できなければ、特例措置を受けることはできなくなります。 ※2024年2月現在 上記の期限を超えると、事業承継税制の特例措置に申し込むことができなくなります。 自社株式の贈与・相続の発生が見込まれる場合は、早めに作成しておくのがおすすめです。 なお、特例措置の適用を受けられるのは2027年(令和9年)12月31日までに行われた贈与または相続です。 2028年以降に贈与または相続によって事業承継税制対象資産を取得しても、特例措置の適用を受けることはできません。 贈与は先代経営者と後継者とで、タイミングを計ることができるかもしれませんが、相続はいつ生じるか分からないので、うっかりして期限を越えてしまわないよう注意が必要です。 特例承継計画の提出と認定申請が必要 特例承継計画に記入すべき事項はあまり多くありませんが、「後継者が株式を取得するまでの経営計画」や「後継者が株式を取得した後5年間の経営計画」などを記載する必要があります。 また、税理士などの「認定経営革新等支援機関」の指導と助言を受けなければなりません。 特例承継計画の作成と認定を希望する場合は、専門家に相談することで、計画の作成や認定申請の手続きを支援してくれるため、安心して進めることができます。 納税猶予の条件を守る必要がある 事業承継税制の認定後も、定期的に都道府県や税務署へ報告しなければなりません。 納税猶予開始期間から5年間は毎年都道府県と税務署に報告等が必要で、5年経過後は3年に一度税務署に届出を行う必要があります。 これらの報告等を期限までに行わなかった場合は、猶予されている贈与税・相続税の全額と利子税を納付する必要が生じます。 関連記事 事業承継の相談窓口は?事業承継成功の秘訣は専門家への無料相談? まとめ 事業承継税制は、中小企業の事業承継を円滑に進めるための重要な制度です。 事業承継を検討している方は、事業承継税制の利用を検討してみてはいかがでしょうか。 --- ### 事業譲渡の対価はどうやって決まるのか?計算方法は? - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-04-03 - URL: https://atomfirm.com/manda/10494 - Categories: 事業譲渡 事業譲渡の対価とは、事業譲渡の際に支払われる代金のことです。事業譲渡の対価は、主に事業の価値を評価することで決まります。 事業譲渡は会社売却の方法の一つで、事業の一部または全部を買い手企業に譲渡することをいいます事業譲渡はあくまで事業を売却する形式であるため、会社の経営権は売り手に残ったままになります。 事業を拡大するために資金調達が必要な場合や、不採算事業を切り離したい場合などに事業譲渡は採用されることが多いです。 この記事では、事業譲渡を行った場合の対価の評価・計算方法について解説していきます。 事業譲渡の対価とは? 事業譲渡の対価とは、事業譲渡の際に支払われる代金のことです。 事業譲渡の対価は、主に事業の価値を評価することで決まります。 事業価値の評価ポイント 事業の将来性 事業の収益性 事業の資産価値 事業に付随するノウハウやブランド価値 事業譲渡の対価は、類似の事業の取引事例を参考にして決められることもあります。そのため、相場を把握しておくことが重要です。 事業譲渡の対価は、最終的には、譲渡側と譲受側の双方の合意によって決まります。 そのため、双方の立場を考慮して、適切な対価を設定することが重要です。 事業譲渡の対価を決める際には、上記の点を参考にして、適切な対価を設定するようにしましょう。 事業の価値を評価する方法 事業価値や非事業価値、負債などを総合的に考慮して、企業全体の価値を評価することをバリュエーションと呼びます。 事業価値は、企業価値の中のほとんどを占めていることが多いため、バリュエーションの中で最も重要な過程です。 ここでは、代表的な3つのバリュエーション手法をご紹介します。 関連記事 M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 コストアプローチ コストアプローチは、企業の純資産に着目した企業価値の評価方法です。 事業の収益性や将来性などを考慮せず、貸借対照表に記載されている帳簿価格の情報から企業の価値を評価するため、評価者によって結果が大きく変わらないメリットがあります。 しかし、コストアプローチは、あくまで企業全体の価値を推測する方法です。 事業価値を算出する場合には、企業価値から非事業価値を差し引くことで、大まかな推測値を導き出すことができます。 簿価純資産法 簿価純資産法は、貸借対照表に記載されている純資産から負債を差し引くことで、企業価値を算出する方法です。 しかしこの方法では、不動産や保有株式などの時価が反映されないため、コストアプローチを採用する場合、一般的には時価純資産法が利用されます。 時価純資産法 時価純資産法は、企業の保有資産の時価総額と、負債の時価総額から企業価値を算出する手法です。 評価の流れとしては、評価対象企業の資産と負債の時価を基にして、修正貸借対照表を作成します。 そして、時価換算した資産の総額から時価換算した負債の総額を差し引いて、企業の実質的な価値を導き出します。 貸借対照表の資産と負債を時価で再評価することで、資産の時価を企業価値に反映できます。 インカムアプローチ インカムアプローチは、将来発生するであろう収益に着目し、その予測値を事業価値とする手法です。 代表的なものとして、DCF法、収益還元法、配当還元法などがあります。 ここではDCF法の概要について、説明します。 DCF法 DCF法は、将来発生すると予想されるフリーキャッシュフローをディスカウントすることにより、現在の価値に換算して、企業価値を算定する手法です。 DCF法による事業価値の評価を行う場合には、予測される将来のフリーキャッシュフローを加重平均資本コスト(WACC)と呼ばれる指標を使って割り引きます。 DCF法の計算方法の詳細は、「企業価値評価におけるDCF法とは?株主資本コスト、加重平均資本コスト(WACC)の求め方を徹底解説!」をご覧ください。 マーケットアプローチ マーケットアプローチは、類似する事業を行う他社の時価総額を比較したり、過去の事例などを基に事業価値を評価したりする手法です。 代表的なものとして、マルチプル法や市場株価法などがあります。 非上場企業の事業価値評価では、一般的にマルチプル法が利用されています。 マルチプル法 マルチプル法では、規模や事業等が類似する複数の上場会社を選び出し、それらの株価などを基に算出した評価倍率(マルチプル)を、評価対象会社の特定の指標をかけ合わせることによって、事業価値を計算します。 マルチプルとして用いられる倍率としては、EV/EBITDA倍率、PBR、PERなどがあるでしょう。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! 事業譲渡の対価を交渉する際のポイント 事業譲渡の対価は、代表的な計算方法はあるものの、最終的には譲渡側と譲受側の双方の合意によって決まります。そのため、買い手候補となる企業と交渉を進めていく必要があります。 相場を把握する 事業譲渡の対価は、類似の事業の取引事例を参考にして決められることもあります。各ケースによって、売却価格は大きく変動することが多いですが、ある程度は相場を把握しておくことも重要です。 相場を把握することで、譲受側が妥当な対価を提示しているかどうかを判断することができます。 相場を把握する方法としては、以下のようなものがあります。 事業価値の相場を把握する方法 類似の事業譲渡の事例を確認する M&A仲介会社などの専門家に相談する 関連記事 事業譲渡の金額・価格はいくら?事業価値の評価方法を解説! 譲受側のメリットを理解する 事業の買い手(事業譲受側)は、事業譲渡によって以下のメリットを得ることができます。 買い手にとってのメリットを理解することで、相手が納得する対価を提示しやすくなるでしょう。 買い手にとっての事業譲渡のメリット 既存の事業を拡大できる 買収する事業を選べる 負債や債務を引き継がないで済む 売り手が売却する事業を選べるように、買い手も自社に欲しい事業を選択することができます。必要な資産・負債だけを選んで買収できるため、簿外債務を引き継ぐリスクを回避できるのも事業譲渡のメリットです。 一方、企業全てを包括的に譲渡する株式譲渡では、買い手としてはリスクがある程度は残ります。 事業譲渡の交渉の進め方 事業譲渡の交渉では、譲渡側と譲受側の双方が納得できる結果を出すことが重要です。 双方の立場を尊重し、譲歩できるポイントを探りながら、交渉を進めていきましょう。 --- ### 会社売却成功への道!M&A買い手探しの目的とポイントとは - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/manda/10134 - Categories: その他 買い手探しを行う場合は、業種や規模、地域などを総合的に検討していきます。また、自社の目的や状況なども考慮して、最適な買い手候補のターゲットを設定することが大切です。 M&A・会社売却を検討する場合、企業価値評価(バリュエーション)が完了してから、本格的に買い手探しを始めることになります。 会社売却を行う経営者としては、自分の会社を買ってくれる相手がいるのかと不安になることでしょう。 この記事では効果的な買い手探しの方法をご紹介します。 M&A・会社売却における買い手探しとは? 買い手探しとは M&A・会社売却における買い手探しとは、売り手企業が事業を引き継いでもらえる買い手企業を探すための活動のことです。 会社売却を検討する場合には、知人・友人や取引先、マッチングプラットフォームに登録している候補者など、多くの買い手候補を見つけるようにしましょう。 買い手探しを行い、複数の候補を挙げておくと、売り手企業は、自社を最も高く評価してくれる買い手を見つけることができます。これにより、M&A・会社売却の成功につながりやすくなるでしょう。 買い手探しの目的 M&A・会社売却において、買い手を見つける作業は初期段階で非常に重要です。買い手を見つける際には、具体的な目的を設定し、潜在的な買い手企業のニーズを理解した上で、自社の魅力を積極的にアピールしていきましょう。 関連記事 会社売却の流れを解説!手続きや手順の注意点は? M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 M&A買い手探しのターゲティング 買い手探しを行う際には、まず買い手候補企業をターゲティングする必要があります。ターゲティングとは、自社にとって最適な買い手候補企業を絞り込むことです。 買い手候補企業の情報などを検討する 買い手候補企業をターゲティングする際には、業種や規模、地域などを総合的に検討していきます。また、自社の目的や状況なども考慮して、最適な買い手候補のターゲットを設定することが大切です。 例えば、会社売却によって経営から離れて、売却益を手に入れたい場合は、規模が大きく経営基盤が安定している企業をターゲティングするとよいでしょう。 買い手企業の業種業種は、買い手候補企業の基本的な情報です。自社の事業内容と親和性、シナジー効果の高い業種の企業をターゲティングすることで、M&A・会社売却の成功率を高めることができます。 買い手企業の規模規模は、買い手候補企業の経済力や体力を表すものです。自社の規模とバランスの取れた規模の企業をターゲティングすることで、M&A・会社売却後の経営統合をスムーズに行うことができます。 買い手企業の地域地域は、買い手候補企業の拠点の所在地です。自社と近い地域の企業をターゲティングすることで、M&A・会社売却後の経営統合を円滑に進めることができるでしょう。 買い手候補企業のニーズを把握する 買い手候補企業のニーズを把握することも、M&Aの買い手探しでは重要なポイントです。 相手が何を求めているのかを正しく理解することで、自社の強みや資産を効果的にアピールすることができます。 買い手候補企業のニーズを把握する方法としては、以下の方法があるでしょう。 買い手候補企業のWebサイトやIR資料から読み解く 買い手候補企業の経営者や担当者にヒアリングする 買い手候補企業のニーズを把握するためには、積極的に情報収集を行うことが大切です。 M&A買い手探しの具体的な方法 M&A仲介会社に買い手探しを依頼する M&Aの買い手探しは、M&A仲介会社に依頼する方法が最も効率的に進められる方法です。M&A仲介会社は、買い手候補企業の情報を豊富に保有しており、買い手探しのプロセスをサポートしてくれます。 M&A仲介会社に買い手探しを依頼するメリット 買い手候補企業の情報を豊富に保有している 効率的に買い手探しを行うことができる M&Aの専門知識を持つスタッフが買い手探しをサポートしてくれる M&A仲介会社は、会社売却側、会社買収側の両方の情報を豊富に持っています。 自力で買い手探しを行うより、仲介会社を利用した方が、遥かに効率的に買い手候補を見つけられるでしょう。 買い手候補が見つかった後、実際に交渉したり、契約書を作ったりする際のサポートも依頼できるので、最初から安心して任せられるのも大きなメリットです。 M&A仲介会社に買い手探しを依頼するデメリット 仲介手数料が発生する 納得のいく売却価格にならない可能性がある M&A仲介会社を利用する場合には、仲介手数料をはじめとした費用が発生します。 会社によって、着手金が必要なのか、成功報酬制なのかは変わりますので、初回相談などで料金体系を確認しておきましょう。 また、M&A仲介会社は売り手と買い手の間に立って、取引を進める形態のサービスです。 そのため、担当者が成約を急いでしまえば、納得のいかない売却金額で成約を迫られるケースもあり得ます。 じっくりと買い手と交渉し、納得のいく金額になるまで買い手探しをしたいのであれば、片方当事者だけを担当するM&Aアドバイザリーなどを利用するのも選択肢の一つです。 しかし、アドバイザリーは仲介に比べると成約まで時間がかかりやすく、費用が高額になりやすい形態のサービスとなるため、注意が必要です。 関連記事 M&A仲介とは?FAとの違い、M&Aでの役割を解説! M&A仲介手数料の相場はいくら?誰が払う? 金融機関に買い手候補を紹介してもらう 金融機関に紹介してもらう方法により、買い手探しを行うこともできます。銀行などの金融機関は、融資先企業の情報を持っているため、買い手候補企業として有望な企業を紹介してもらえます。 金融機関に買い手候補を紹介してもらうメリット 買い手候補の経営状況などを把握することができる 買い手候補に信用がある 金融機関との関係が良好であれば、取引のある企業を買い手候補として紹介してもらえる可能性があります。 金融機関が紹介する企業である以上、基本的には信用情報に問題はないでしょう。 金融機関に買い手候補を紹介してもらうデメリット 紹介可能な企業が限られてしまう 金融機関から買い手候補の紹介を受ける場合、買い手候補が金融機関と取引のある企業に限定されます。 そのため、仲介会社などの専門家を利用するときほど、紹介企業数は多くないでしょう。 SNSやWebサイトを活用して買い手を探す SNSやWebサイトを活用する方法は、買い手候補企業を自ら探す方法です。SNSやWebサイトには、買い手候補企業の情報が公開されている場合があります。 SNSやWebサイトで買い手を探すメリット 無料で買い手探しを行うことができる 買い手候補企業のニーズを直接把握することができる SNSやWebサイトで買い手を探すデメリット 買い手候補企業を探すのに時間がかかる 買い手候補企業の信頼性を判断することが難しい場合がある M&A買い手候補企業にアプローチする際のポイント 自社の魅力をアピールする 自社の魅力を効果的にアピールすることで、買い手候補企業の興味を引きつけることができます。自社の強みや資産、M&Aによって買い手候補企業にどのようなメリットをもたらすことができるのかを明確に伝えましょう。 具体的なアプローチ方法としては、「詳しい企業概要書や資料を作成する」「買い手候補企業の経営者や担当者と面談する」等の方法があるでしょう。 自社の魅力をアピールする際には、次の点に注意が必要です。 客観的なデータや事実に基づいてアピールする 買い手候補企業の視点に立ってアピールする 自社を過大評価しすぎない 客観的なデータや事実に基づいてアピールすることで、買い手候補企業からの信頼を得ることができます。 また、買い手候補企業の視点に立ってアピールすることで、買い手候補企業のニーズに沿ったアピールを行うことができます。 さらに、自社を過大評価しすぎないことで、買い手候補企業との信頼関係を築くこともできるでしょう。 関連記事 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? M&Aの買い手探しは専門家に相談を! M&Aの買い手探しは、会社売却の手続きの中でも重要なプロセスです。 買い手候補を効率よく探すためには、M&A仲介会社やアドバイザリーなど、専門家に相談するのがおすすめです。 買い手探しが終わり、候補となる企業や資産家と交渉する際には、相手のニーズを的確・具体的に把握し、自社の魅力を明確にアピールしていきましょう。 --- ### 事業承継の失敗事例3選!成功事例を目指すための教訓とは… - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-15 - URL: https://atomfirm.com/manda/9397 - Categories: 事業承継 事業承継の失敗事例は?事業承継で成功事例を目指すには?この記事では、後継者不在でお困りの中小企業の経営者の方などを対象にしています。事業承継を成功させるための教訓をまとめたので、是非ご参考になさってください。 事業承継の失敗事例は? 事業承継で成功事例を目指すためには? この記事では、事業承継の失敗事例を紹介しながら、成功事例を目指すための教訓をまとめています。 近年、中小企業では、後継者不在による廃業が相次いでいます。ご子息・ご息女に会社を継がせたくてもそれが難しい場合などは、第三者への事業承継という方法もあります。 現在、後継者問題や事業承継でお悩みの方は、この記事を是非ご参考になさってください。 1. 事業承継の失敗事例① 失敗事例(後継者が見つからない) 事例 ある老舗の食品製造会社では、経営陣の高齢化により後継者問題が深刻化していた。 経営者のAさんは、長男に事業を継承するつもりでいたが、断られた。次男には経営の資質がない。従業員や取引先にも、後継者候補はいない。 Aさんは、M&Aによる事業承継を考えるようになった。友人にそのことを相談した矢先、Aさんは高齢のため他界した。 ▼ ひとこと解説 後継者不在は、中小企業の事業承継における最大の課題の一つです。 中小企業の場合は、実子を後継者とする、有能な社員の中から後継者を指名する、後継者となるべき方を外部から会社に招くなどの対応をとることが多いでしょう。 しかし適任者がおらず、これらの対応ができない場合に、廃業を回避したいときは、M&Aによる第三者承継を検討する必要があります。 M&Aによる第三者承継の良いところは、後継者を育成するために長い時間をかけたり、多くの手間をかけたりする必要ないということです。 ですが、会社を買収してくれる相手を見つけるための、最低限の時間や手間がかかります。 早期に行動にうつさなければ、いつまで経っても事業承継の相手が見つからず、結局、事業承継が失敗に終わるというケースもあるでしょう。 成功事例にするには?失敗事例の教訓① 教訓 多数の後継者候補を育成する M&Aによる事業承継をおこなう場合でも、時間に余裕をもって買い手探しを始める M&Aによる事業承継をおこなう場合、M&A仲介をおこなう機関を活用し、効率よく買い手探しをおこなう ▼ 補足 後継者不在は事業承継の失敗を招く大きな原因となります。 後継者不在の問題を解消するには、まずは、早期に後継者の育成に取り組むことが重要です。 後継者の育成過程では、後継者候補の能力や意欲を把握し、適切な支援をおこないましょう。 また、後継者育成がうまくいかなかった場合は、代わりに後継者となる第三者を見つける必要があります。 2023年の統計では、80歳代でも後継者不在率が23. 4%にのぼるという結果がでています(帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2023 年)」https://www. tdb. co. jp/report/watching/press/pdf/p231108. pdf(2024. 1. 5現在))。 とくにご高齢の経営者の方の場合、病気などで現場で働くことができなくなってしまう可能性もあります。 万一の場合にそなえて、できるだけ早期に事業承継のプランを立てておく必要があるでしょう。 M&A仲介機関をうまく活用することで、事業承継の相手を、効率よく探していくことも大切です。 後継者候補が見つかった後は、事業承継の詳細条件についての話し合いが待っているので、出来る限りスピーディーに対応できるとよいでしょう。 関連記事 後継者がいない会社は61%!跡継ぎがいない会社の実態と選択肢まとめ 2. 事業承継の失敗事例② 失敗事例(事業承継の交渉決裂) 事例 中小企業のA社の社長Xさんは、M&A仲介会社に相談したところ、譲渡先候補としてB社が見つかった。 しかし期待していたB社とのTOP面談では、財務状況ばかり質問されて不快になった。Xさんは自分の大切な会社をB社に売却して良いのか不安を覚え、条件は絶対に譲歩したくないと思った。 その後、DDを経て、最終的な条件交渉に入ったが、やっぱり話がまとまらない。結局、B社とは交渉決裂。A社の事業承継の相手探しは振り出しに。 ▼ ひとこと解説 事業承継において、条件交渉は重要なポイントです。 譲渡価格、株式比率、事業計画、従業員の雇用維持など諸々の条件交渉がまとまらなければ、交渉決裂となり、M&Aは成約に至らず、事業承継に失敗することになります。 交渉とは、お互いに譲歩できる点を見出しながら話し合いを進めるもの。相手への配慮や、雰囲気作りも大切です。 成功事例にするには?失敗事例の教訓② 教訓 早い段階から、経営理念やビジョンの共有をおこなう 安く買いたたかれないよう、自社の企業価値を分析し、自社の強みをアピール 相手が重視している点を見極め、譲歩できるポイントを探す ▼ 補足 売り手と買い手との間で、経営理念やビジョンの共有が不足していたことも、交渉決裂の原因の一つになり得ます。 TOP面談では、細かい財務状況の確認よりも、お互いのビジョンや、どのようなシナジー効果が期待できるかといった点について、まずは話し合います。ビジョンを共有できない相手だと分かったのであれば、その時点で、交渉をやめれば良いでしょう。 M&Aは、経営統合にかかわる重要な判断であり、相手を打ち負かすような交渉はご法度です。 信頼関係を構築しながら、お互いが重視している点、譲歩できる点などを見出して、条件交渉をおこなっていく必要があります。 関連記事 会社売却の流れを解説!手続きや手順の注意点は? 3. 事業承継の失敗事例③ 失敗事例(社員や取引先の反感を買う) 事例 A会社の社長であるXさんは、「廃業したら従業員や取引先に迷惑がかかる」と考え、第三者であるYさんに、会社を売却することにした。 しかし、自分の会社の社員や取引先には、きちんと説明しなかった。そのせいか、社員や取引先は経営方針や処遇などに不安を感じ、反発を示した。 その後、取引先からは「経営者が変わったのであれば、取引は辞める」と言われてしまった。古参の社員は、多くが退職の意向を示した。 結局、M&Aのクロージングができず、会社売却はとん挫することに。 ▼ ひとこと解説 これ以上会社を大きくできない、年齢的にもリタイアしたいといった場合、会社を廃業するという選択肢もあります。 しかし、それでは従業員の雇用が維持できません。また、取引先にも迷惑がかかることになります。 この場合の打開策としては、M&Aは有効です。 ただし、単にM&Aの成約に至ればよいというものではなく、従業員や取引先の納得を得ることが重要です。 この事案のような結末になってしまっては、本末転倒。 会社にとっても、M&Aによるシナジー効果で成長を遂げるどころか、業績悪化で赤字転落・廃業が危ぶまれる状況に陥ってしまうでしょう。 成功事例にするには?失敗事例の教訓③ 教訓 社員や取引先は不安・不満を抱くものである 適切なタイミングで、社員に対して十分な説明をおこなう 適切なタイミングで、取引先からの理解を得る ▼ 補足 事業承継は、企業にとって大きな変化を伴うものです。 そのため、社員や取引先が不安や不満を取り除いてあげられるよう、手を尽くす必要があります。 社員や取引先に周知するタイミングが遅い場合、事業承継に対する不安や不満を十分に解消できない可能性があります。 事業承継を社員に知らせるタイミングについては、一般的には、M&A契約締結後、できる限り早いタイミングで事業承継の事実を公表すべきといわれています。 また、社員への公表については、社内の重要なポストにある古参社員から周知させていくなどの配慮が必要な場合もあるでしょう。 また、取引先に対しても、適切なタイミングで事業承継の事実を伝える必要があります。 事業承継をする売り手側の企業と、取引先との間で締結している契約のなかで、COC条項(会社の経営権が移動する場合に、取引先に通知する等の義務を定めた条項)がある場合は特に注意が必要です。 関連記事 事業承継の相談窓口は?事業承継成功の秘訣は専門家への無料相談? 事業承継で失敗したくない!成功事例になるには? 事業承継の失敗事例3選はいかがでしたでしょうか。 事業承継の成功事例を目指すために、最も大切だと思われる教訓について、最後に整理しておきましょう。 教訓3選 後継者を見つけるために早く行動をおこすこと 事業承継のビジョンを共有を共有すること 社員や取引先への説明もきちんとおこなうこと ただし、これらは事業承継を成功させるための秘訣であって、これだけが全てではありません。 事業承継の成功事例の仲間入りを果たすためには、複雑な手続きや、事業承継の進め方のコツについて、もっと詳しく知ることが必須です。 ですが、それを自分一人で調べるのは、とても骨の折れる作業でしょう。 あなたが事業承継を成功させたい場合には、頼りになる専門家の助言を受けるのが近道といえます。 事業承継について無料相談をおこなっているM&A仲介会社などもあるので、まずは話を聞いてみるのはいかがでしょうか。 M&Aが成功した実例については、「M&Aの事例を紹介!会社売却(事業譲渡・株式譲渡)の成功事例とは」の記事もご覧ください。 --- ### 事業承継対策とは?中小企業の事業承継対策3つのポイントと支援機関 - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-04-01 - URL: https://atomfirm.com/manda/9518 - Categories: 事業承継, 後継者不足, 相談・仲介 事業承継対策とは?3つのポイントとは?事業承継の支援機関は?この記事では、中小企業の売却をご検討中の経営者の方に向けて、事業承継対策のポイント、支援機関について解説しています。是非ご参考になさってください。 事業承継対策とは? 事業承継で対策すべきポイントは? 事業承継対策を相談できる支援機関は? この記事では、事業承継対策のポイントについて解説しています。 中小企業では、事業承継対策を講じることができずに、廃業に至るケースも多いものです。 この記事では、事業承継で対策が必要になるポイント、事業承継の支援機関等を解説しています。 ぜひ最後までご覧ください。 事業承継に必要な対策とは? 事業承継とは? 事業承継とは、現在の会社の経営者が退任し、後継者に事業を引き継ぐことをいいます。 事業承継の方法には、親族内承継、従業員承継、M&A等があります。 事業承継の方法 親族内承継経営者の実子や親戚に、事業承継すること。 従業員承継社内の役員や従業員に、事業承継すること。 M&A経営者の親族や社員以外の相手に、事業承継すること。 親族内承継や従業員承継が難しい場合、M&Aによる第三者承継が選択されるケースも増えているようです(2023. 12. 13 東京商工会議所 「「中小企業の経営課題に関するアンケート」調査結果について」)。 関連記事 親族内承継とは何か?子や孫に事業を承継する方法と流れを解説 従業員承継とは?会社を譲る方法・メリット・デメリットまとめ 事業承継対策①後継者問題(教育・後継者不在の対策) 事業承継において重要な課題は、後継者問題です。 後継者がいない、決まっていないという問題は、事業承継ができるかどうかに関わる深刻な問題です。 実際に、中小企業に対するアンケート調査では、後継者が決まっているとこたえた60歳代の経営者は48. 7%、70歳代の経営者でも66. 2%にとどまっています(中小企業庁「2023年版 中小企業白書」)。 経営者の影響力を維持したいという気持ちや、死亡を連想させるので不吉だから考えたくないといったことから、事業承継の対策は先送りになりがちです。 しかし退任が目前に迫ってきた段階で、急いで後継者教育にとりかかることには、かなりのリスクが伴います。 実際に後継者教育をおこなったところ経営者としての資質が無かった、後継者候補となる者から事業承継を断られてしまった等の問題が発生する可能性があるからです。 そのため、後継者問題に対する対策は、できる限り早期に開始する必要があります。 具体的な後継者問題への対策としては、以下のようなものになります。 親族内承継・従業員承継を希望する場合 対策 後継者候補を選定し、経験と知識を習得させる リーダーシップを学ばせる 経営理念をたたきこむ 親族や社員から後継者を選定した場合、会社の各部門に従事させ、経験と知識を習得させます。 その後、役員等の責任のある地位に就かせることにより、リーダーシップを発揮できる環境を与えます。 そして、経営者みずから、後継者候補に対して、会社の経営理念をたたきこむ等の指導もおこなっていきます。 いうまでもなく、これらの対策を実行できる時間を確保することは非常に重要です。 M&Aをおこなう場合 対策 経営理念を理解してくれる買い手を見つける M&A仲介業者や国の支援機関を活用して、効率良く買い手を探す 親族や社員から後継者候補を選定できない場合M&Aによる事業承継を検討しなければなりません。 中小企業の場合は、手続きの簡便さから、株式譲渡にM&Aが実施されることが多いでしょう。 M&Aの場合は、後継者教育の時間や手間はかかりませんが、経営理念を理解して事業承継に応じてくれる会社の買い手を見つける必要があります。 将来にわたって会社を存続させるためには、後継者候補探しは慎重におこないたいところです。 とはいえ、後継者候補が見つかった後は、買収監査(DD)や詳細条件のすり合わせ等をおこなう必要があるので、後継者候補探しだけに長い時間を費やすわけにもいきません。 そのため、M&A仲介業者や国の支援機関などを活用して、効率的に事業承継の相手方を探す必要があるでしょう。 関連記事 会社売却成功への道!M&A買い手探しの目的とポイントとは M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? 事業承継対策②親族・取引先・従業員の理解 後継者問題を解決できたとしても、事業承継を円滑に進めるためには、関係者の理解が欠かせません。事業承継の関係者には、親族・取引先・従業員がいます。 親族の理解を得る まず親族の理解を得るためには、事業承継の必要性や、後継者候補の能力等を説明し、理解を得るようにします。 親族間で経営権の争いが生じないように、親族の意向や経営方針を十分に確認して進める必要があるでしょう。 取引先の理解を得る 取引先の理解を得るためには、事業承継後も取引関係を継続していきたいことを丁寧に説明して、理解を得るようにします。 とくに中小企業の取引では、社長同士の個人的なつながりを重視して取引をおこなっている場合も多いものです。 そのような中で、M&Aによる事業承継をおこない、経営者が変わってしまったら、取引先から取引停止を告げられてしまうという事態も想定されます。 この場合、事業承継は失敗に終わる可能性が高まるでしょう。 たしかに、事業承継に関する無用な情報漏洩は避けたいところではあります。しかし、情報開示ができる段階になったら即座に、取引先に丁重な説明をする必要があるでしょう。 そして、後継者の代においても信頼関係を維持できるよう、最大限の力を尽くすべきです。 従業員の理解を得る 従業員の理解を得るためには、事業承継後も雇用や待遇を守ることを説明し、理解を得るようにします。 親族内承継やM&Aによる事業承継の場合、社員のモチベーション低下につながるおそれがあります。 これを回避する対策としては、事業承継の手続きとの兼ね合いもありますが、できる限り早期に丁寧な説明をおこなうことです。 また事業承継の後も、新しい経営者のもとで従来どおりの待遇を継続できるよう調整をおこない、その旨を従業員に伝えて安心してもらう必要があるでしょう。 従業員は、従来から会社に尽くしてきてくれた仲間であり、これからの事業を支えてくれる人的資源でもあります。 事業承継を成功させるための対策として、従業員の理解を得ることも欠かせません。 事業承継対策③「見える化」と「磨き上げ」 事業承継を成功させるためには、現状の「見える化」をおこないます。 そして、事業計画の策定等により、会社の魅力の「磨き上げ」をおこなうという対策も非常に重要です。 会社の魅力の磨き上げは、後継者候補に会社の魅力を伝えるために必要不可欠な過程です。 「磨き上げ」のメリットは? 会社の魅力の磨き上げをするメリットは、後継者候補に「魅力的な企業である、後継者になる価値の高い企業である」と認識してもらえることです。 その結果、売り手側にとっては、親族や社員が後継者を辞退する、M&Aの相手が見つからないなどの事態を回避できる可能性があがります。 また、後継者となる第三者にとっても、メリットはあります。強みを理解したうえで事業承継をおこなうため、あやまって強みを切り捨ててしまいシナジー効果を享受できないといった事態を回避することができます。 事業承継を成功させるための対策して、会社の魅力の磨き上げは、売り手側・買い手側の双方にとって不可欠と言えるでしょう。 そもそも「磨き上げ」とは? 「磨き上げ」 弱点を補強する例)会社の会計・法務などの不備を是正する 強みを強化する例)他者にない知的財産を育てるetc. 会社の魅力の「磨き上げ」とは、簡単にいえば、後継者になりたくなるような良い会社にするということです。弱点を補強し、強みを強化することで、より魅力的な会社にすることができます。 具体的な「磨き上げ」の内容としては、会計帳簿や法務における不備があれば是正するという対策を講じることが考えられます。 また、目に見えない知的資産(人材、技術、ブランド、ネットワーク、組織力、経営理念等の経営資源のこと)を磨き上げることも、企業価値の高い評価につながります。 現状の把握を踏まえたうえで、将来の収益性や成長性の見通しを立てることで、会社の魅力を磨き上げていくことができるでしょう。 事業承継計画の策定 会社の魅力の磨き上げをおこなっていくうえで、事業承継計画の策定・事業承継計画書の作成は欠かせないものでしょう。 事業承継計画書は、中長期の経営計画・事業承継を達成するためのロードマップとなるものです。 step1 事業承継計画を作成するにあたっては、会社の経営資源の状況、経営リスク、株式の保有状況、後継者候補の有無、後継者教育あるいはM&Aの進展状況、法定相続人および相互の人間関係・株式保有状況、相続財産の特定・相続税額の試算といった現状の把握をおこないます。 step2 そして中長期的な経営ビジョンや事業承継の具体的な時期を設定し、それらを達成するための具体的な対策を練ります。 step3 これらの情報を事業承継計画書に落とし込みます。 補足 事業承継計画書の書式は、中小機構のホームページからダウンロードすることができます。 事業承継の専門家やM&A仲介会社に相談している場合は、そのような支援機関が準備してくれることもあるでしょう。 関連記事 事業承継型M&Aの磨き上げとは?磨き上げの目的や対象を解説! 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 事業承継対策の支援機関は?支援制度は? ⑴事業承継・引継ぎ支援センター(M&A仲介) 事業承継対策には、専門的な知識やノウハウが必要となります。事業承継の支援機関を活用することも、事業承継を成功させる対策のひとつといっても過言ではないでしょう。 事業承継対策の支援をしてくれる機関には、税務や法務の有資格者のほか、総合的なサービスを提供してくれるM&A仲介機関があります。 たとえば公的な相談窓口でいえば、国が全国47都道府県に設置している「事業承継・引継ぎ支援センター」という機関があります。 事業承継・引継ぎセンターは、中小企業・小規模企業に対して、親族内承継の事業承継計画策定、従業員承継やM&A承継の課題解決に向けた助言・情報提供、後継者不在の企業に後継者候補を引き合わせるマッチング等のサービスをおこなっています。 事業承継・引継ぎ支援センターの連絡先(一例) 郵便番号住所電話番号北海道060‐0001札幌市中央区北1条西2丁目北海道経済センター6階011‐222‐3111東京都100‐0005千代田区丸の内3-2-2丸の内二重橋ビル6階03‐3283‐7555大阪府540‐0029大阪市中央区本町橋2‐806‐6944‐6257沖縄県900‐0015那覇市久茂地1‐7‐1琉球リース総合ビル5階095‐941‐1690 ※2024. 1. 9現在の情報です。詳細につきましては、「中小機構 事業承継・引継ぎポータルサイト」のホームページ(https://shoukei. smrj. go. jp/)等でご確認ください。 メリット 事業承継・引継ぎセンターは、国が設置している機関ということで安心感もあり、相談だけであれば無料です。事業承継のはじめの一歩としては、気軽に利用することができます。 注意点 ただし注意点としては、事業承継・引継ぎセンターの利用であっても、単なる相談を超えて、事業承継の実務を依頼する場合には、利用料が発生することがあるという点です。 事業承継対策の視点 なお民間のM&A仲介でも相談については、無料で対応してくれる機関はあります。 そのため、事業承継・支援センターも含め、複数のM&A仲介機関に相談し、仲介手数料やサービス内容を見比べ、実際に無料相談を活用するなどしたうえで、自身にあったM&A仲介業者を選ぶのがよいのではないでしょうか。 ⑵事業承継税制 事業承継税制とは、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下「円滑化法」といいます。)にもとづいて、会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産について、贈与税や相続税の納付が猶予されるという制度です。 事業承継税制には、法人版事業承継税制と、個人版事業承継税制があります。 法人版事業承継税制とは? 法人版事業承継税制とは、後継者となる受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合に、その非上場株式等にかかる贈与税・相続税について、一定の要件のもと、納税が猶予される制度です。 また、法人版事業承継税制では、後継者の死亡等の事情が発生すれば、納税が猶予されている贈与税や相続税については、免除されることになります。 法人版事業承継税制の適用を受けるには、円滑化法にもとづく認定を受けたり、申請書を提出する必要があり、その窓口となるのは会社の主たる事務所がある都道府県です。 各都道府県のお問合せ先については、国税庁「円滑化法の認定等に関する窓口について(法人版)」をご確認ください。 個人版事業承継税制とは? 個人版事業承継税制とは、個人事業の事業承継を促進するために、一定の要件のもと、事業用資産の承継の際にかかる相続税や贈与税の納税が猶予されるという制度です。 また、個人版事業承継税制でも、後継者の死亡等の一定の事由が発生すれば、猶予されていた税金の納税が免除されます。 なお個人版事業承継税制の対象となるのは、特定事業用資産です。 これは、先代が事業に利用していた一定の資産で、贈与や相続等のあった年の前に青色申告書の貸借対象表に計上されていた資産に限られます。 個人版事業承継税制の適用を受けるにも、円滑化法にもとづく認定を受けたり、申請書を提出したりする必要があり、その窓口となるのは先代の経営者の主たる事務所があった都道府県になります。 各都道府県のお問合せ先については、国税庁「円滑化法の認定等に関する窓口について(個人版)」をご確認ください。 より詳しく知りたい方は、「事業承継税制とは?納税が猶予・免除される要件とメリット・デメリットを解説」の記事もご覧ください。 事業承継税制についてのコメント 事業承継税制は、中小企業の後継者の税金の負担を減少させるメリットがあります。 しかしその一方で、デメリットもあります。適用期限があること、認定を受けるための申請手続きが必要となること、認定を受けられた場合でも一定期間ごとに都道府県と税務署に報告する必要があること等、要件や手続きが複雑で難しいというデメリットです。 たとえば、事業承継税制による特例措置を受けられる期限については、現行の制度では、2027年(令和9年)12月3日までにおこなわれた贈与または相続とされています。 そして特例の認定を受けるためには、特例事業承継計画を令和6年(2024年)3月31日までに提出する必要もあります。(なお、2024年(令和6年)4月1日以降は、すでに提出した特例承継計画の変更は可能です。) 事業承継税制を活用するには、まずは制度の概要やメリット・デメリットをよく理解する必要があるでしょう。 必要があれば、事業承継対策を支援する機関等のプロに相談してみるとよいでしょう。 ⑶事業承継対策に役立つ支援先一覧 事業承継の支援機関としては、以下のようなものが挙げられます。 民間のM&A仲介会社・M&Aマッチング買い手探しや手続きのサポート 事業承継・引継ぎ支援センター買い手探しや手続きのサポートhttps://shoukei. smrj. go. jp/relative_inherited_support. html 中小企業庁事業承継に関する情報発信、事業承継引継ぎ補助金などの支援をおこなう。https://www. chusho. meti. go. jp/zaimu/shoukei/index. html 商工会議所中小企業の相談・中小企業関連施策に関する情報提供。http://www. jcci. or. jp よろず支援拠点中小企業基盤整備機構が主導する活動支援。中小企業の経営に関する相談が可能。https://yorozu. smrj. go. jp 弁護士M&Aの手法選択、株式譲渡契約書等の法的書面作成。相続・生前贈与・遺言の対応。http://www. nichibenren. or. jp 税理士税務対策の相談。株式譲渡の譲渡益にかかる税金や、相続税の対策等を相談できる。http://www. nichizeiren. or. jp 公認会計士企業価値の評価・デューデリジェンス等の経営・財務のサポートが可能。http://www. hp. jicpa. or. jp 司法書士商業登記・法人登記・中小企業のアドバイスが可能。http://www. shiho-shoshi. or. jp 行政書士許認可の承継等の事業承継に必要な手続きのサポートが可能。http://www. gyosei. or. jp 中小企業診断士事業承継・中小企業の経営課題のコンサルティングを行う。会社の魅力の磨き上げにかかわる助言も可能。http://www. j-smeca. jp 金融機関等事業承継に関する資金調達の相談が可能。 関連記事 事業承継・引継ぎ補助金のすべて|M&Aで活用できるお得な補助金とは... 事業承継対策を成功させる相談先は? 事業承継の対策を練るには多角的な視点が必要不可欠です。 どこに相談するのが正解なのかは一概には言えず、ケースバイケースです。 ただし専門家の視点を取り入れる機会があるならば、それを活用しない手はありません。 懇意にしている専門家に相談する、M&A仲介業者の無料相談するなどしながら、事業承継の対策を立てて行きましょう。 事業承継対策で遅れをとらないためには? 事業承継対策で遅れをとった場合、後継者不在で廃業になる、生涯にわたり会社の個人保証や債務の負担から解放されないといったリスクを抱えることになります。 事業承継対策で遅れをとらないためには、今すぐ動き出すことが大切です。 親族や社員で後継者候補が見つからない場合は、M&Aによる事業承継を考える必要があります。 ですが事業承継の相手は、一朝一夕には見つかりません。 まずはM&A仲介会社や、事業承継・支援センターの無料相談等を利用して、事業承継対策の第一歩を踏み出してみましょう。 --- ### 会社の経営者をもうやめたいと思ったらどうする?経営をやめる場合の3つの対応方法とは - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-04-01 - URL: https://atomfirm.com/manda/9673 - Categories: その他 経営者をやめたいものの、後継者不足で悩んでいる場合にはM&A(会社売却)を検討してください。自社に買い手がつかないと考えていても、専門家に相談することで、高く評価してもらえる場合があります。 経営をもうやめたいと思ったら、会社の経営者はどうすればいいのでしょうか。従業員がいて取引先との関係もある以上、思い立ってすぐに経営をやめることは難しいものです。 「後継者がいないので今後が不安」「赤字続きなので廃業したい」など、経営から離れたいと考えるきっかけは様々あるでしょう。 しかし、長年経営して育ててきた会社を廃業してしまうのは、もったいない選択です。 M&Aによる事業承継を行うことで、これまでの資産や事業を後の世代に残すことができるかもしれません。 自社の価値に自信がない場合であっても、まずは専門家に会社売却について相談してみましょう。 経営者をやめたいと思う主な理由 経営者をやめたいと思う理由は、人によってさまざまです。よく挙げられる理由としては、以下のようなものがあります。 経営者をやめたいと思う主な理由 経営状態・業績が良くない 心理的な重圧から解放されたい 後継者がいない 会社を売ってお金にしたい 経営状態・業績が良くない 会社の業績が悪化する理由は様々です。 景気の変動や競争激化などによって、経営環境が厳しくなっているケースや、技術革新や企業を取り巻く状況の変化に追いついていないケースなどがあるでしょう。 業績がよくない要因の中でも、外部要因が大きいと自社でコントロールできる部分は少なくなります。このような状況下では、経営者をやめたいと考えてしまう方が増えるでしょう。 ちなみに、企業が廃業するケースとしては、黒字企業の休廃業が過半数を超えています(2023年の東京商工リサーチの調べによる)。 つまり、経営状態が悪いから廃業するというケースよりも、高齢でもう企業経営ができないケースや、後継者が見つからないために廃業するパターンが多いのが実情です。 心理的な重圧から解放されたい 日々の業務に伴うストレスや責任の重圧から解放されたいと感じることも、経営者をやめたいと思う理由の一つです。 企業の成功や失敗に常に影響を与える立場であるため、経済的な不安や孤独感などが重圧となってしまうことがあります。 これらの要因が複合的に組み合わさり、モチベーションが低下すると、経営者をやめようと考えてしまうでしょう。 後継者がいない 企業を承継してくれる後継者がいないと、経営者をやめて、会社をたたもうと考える人もいるでしょう。 後継者不足は、中小企業にとって深刻な問題です。 子供や孫が承継を希望していなかったり、従業員や役員に適する後継者候補がいなかったりすると、経営者をやめて自分の代で会社を終わらせようとする場合があります。 しかし、後継者が身近にいないのであれば、廃業ではなく、M&Aなどの代替方法を検討すべきです。M&Aの専門家であれば、ネットワークを駆使して幅広い分野から後継者候補となる企業や個人を見つけてくれる可能性があるからです。 関連記事 後継者がいない会社は61%!跡継ぎがいない会社の実態と選択肢まとめ 後継者不足の解決策はM&A?後継者問題の実態は... 会社を売ってお金にしたい 自社の業績が良好な場合、買い手から高く評価されている内に売却してお金を得ることを目的に、経営者をやめようとする人もいます。 ベンチャーやスタートアップなどでは、起業した時点から売却することを考えている経営者も増えてきています。 この場合も、M&A仲介会社などに相談して、可能な限り売却額を上げていくように交渉していく必要があるでしょう。 関連記事 会社を作って売りたい!ベンチャー起業でイグジットを成功させるために M&Aで会社を高く売る方法とは?買い手へのアピールポイントを解説 経営者をやめたい場合の主な対応方法 親族内承継 親族内承継は、経営者の子をはじめとした親族に会社の経営を引き継ぐ形式の事業承継です。 事業承継の手法の中でも、最も一般的な事業承継ですが、M&Aが広まるにつれて、親族内承継を行う経営者は減少傾向にあります。 2022年の事業承継における親族内承継の割合は34%です。 ※2022年 中小企業白書第2-3-20図より作成 また、親族内承継を行う場合は、候補者の選定や教育など、長期間にわたる準備が必要となります。 経営者としての経験が浅い人を後継者にする場合は、5~10年ほどかけて教育するのが一般的です。 事業承継は、先代の経営者が健康なうちから計画的に進めなければなりません。 親族内承継のメリット 社内外から心情的に受け入れられやすい 信頼できる家族に事業を承継できる安心感がある 相続等により財産や株式を一括で移転できる(所有と経営の一体的な承継が期待できる) 親族内承継は、親族が事業承継に積極的であれば最も成功しやすい事業承継といえるでしょう。仲介会社などに高額の費用を払う必要もなく、後継者の金銭的な負担も抑えられます。 特に、自分の子供に引き継いでもらいたいと考える経営者にとっては、親族内承継により安心してリタイア後の生活を送ることができるかもしれません。 しかし、親族の中に後継者候補がいない場合や、承継を断られてしまった場合などは、従業員に事業承継を行うか、第三者に承継するしかありません。いずれも難しい場合は、廃業を迫られることとなります。 親族内承継のデメリット 後継者に適した人物がいるとは限らない 後継者候補が多いと、親族間で経営権を争うリスクがある 個人保証をめぐる問題がある 親族という理由だけで後継者に指名しても、経営者として素質がなければ、事業承継後に業績が悪化する可能性があります。 また後継者を親族の中から探す場合、複数の候補者がいるケースがあるでしょう。 候補者が多ければ多いほど、候補者同士が経営権を争うリスクが高くなります。 また、中小企業では、経営者が融資を受ける際には、自らが保証人となったり、担保を提供したりすることがよくあります。 もし現経営者が後継者に経営権を譲る場合、これらの個人保証を外す必要がありますが、後継者がその個人保証を継ぐだけの資金力を持っているとは限りません。 また、後継者が経営の実績がない場合、個人保証の変更が難しいこともあり、円滑な経営譲渡が難しくなる場合があります。 関連記事 親族内承継とは何か?子や孫に事業を承継する方法と流れを解説 社内承継 社内承継は、親族以外の経営陣や従業員に経営権を譲渡する形式の事業承継です。 経営陣が承継する場合をマネジメント・バイアウト(MBO)、従業員が承継する場合をエンプロイー・バイアウト(EBO)といいます。 2022年の中小企業白書によると、事業承継における社内承継の割合は33. 9%です。親族内承継とその割合はほとんど変わりません。 社内承継のメリット 経営能力のある人材を見極めてから承継できる 従業員であれば経営方針等の一貫性を保ちやすい 社内の適任者に承継させるため、社内外の関係者に受け入れてもらいやすい これまで一緒に働いてきた従業員の中から後継者を決めるため、性格や考え方、能力などを吟味して誰に承継するかを決められるのは大きなメリットでしょう。 自社の業務内容や、取引先との関係などを熟知している役員や従業員であれば、スムーズに経営を引き継ぐことができます。 社内承継のデメリット 抜本的な経営面の改善が難しい 資金面での後継者の負担が重い 個人保証の引継ぎが必要となる 従業員承継も親族内承継と同様、先代の経営手法が踏襲されるケースがよくあります。抜本的な経営面の改善は難しくなる可能性が高いです。 社内承継の場合は、資金面に関する後継者の負担が大きく、後継者候補に株式取得等の資金力が足りないケースが少なくありません。 また、社内承継においても、個人保証の引継ぎが必要になるケースがあります。 関連記事 従業員承継とは?会社を譲る方法・メリット・デメリットまとめ バイアウトしやすい事業は?バイアウトとM&Aとの違いは? 第三者承継(M&A・会社売却) 第三者承継は、M&Aによる事業承継のことです。親族や従業員以外の者に会社売却を行い、経営権を譲渡します。 M&Aを身売りと捉えるマイナスイメージが減り、有用性が社会的に認知されるにつれて、実施される件数は増えてきています。 2022年の中小企業白書によると、事業承継における第三者承継の割合は27. 8%です。 少子高齢化などにより、子供や孫、従業員などを後継者にできない企業は今後も増えていくことが予想されます。第三者承継はこれからも広まっていくでしょう。 第三者承継のメリット 後継者不足の問題を解決できる 売却益を得られる 従業員の雇用を維持できる 第三者承継では、マッチングポータルや仲介会社を利用することで、承継の候補企業を幅広く探すことができます。 これにより、後継者不在を解決できる可能性が高まります。 M&Aによる第三者承継を行うと、売却益を得られるのも大きなメリットです。 税金はかかりますが、手取り額を元手に新たにビジネスを始めたり、生活資金にしたりできます。 廃業する場合でも、残った事業資産を売却すれば相応の資金にはなりますが、一般的に第三者承継の方が得られる利益は大きくなるでしょう。 廃業を選択した場合、そこで働いていた従業員は新たな職を探さなければいけませんが、事業承継の場合は経営者が代わるものの、従業員はそれまでの仕事を続けられます。 引き継ぎ相手によっては、譲渡後の方が待遇が改善する場合もあるでしょう。 第三者承継のデメリット 買い手探しが難しい場合がある 売却益には税金がかかる 取引先との関係性が悪化する可能性がある 仲介会社への費用が発生する 第三者承継を行う場合、売り手優位の業種や業界であれば、買い手は比較的見つかりやすいといえます。しかし、業績が悪化して経営が厳しい場合のM&Aは、簡単には買い手が見つからないこともあるでしょう。 複数のM&A仲介会社に登録して、どのくらいの候補企業が見つかるかを確認してみましょう。 また、M&Aで、事業内容や契約内容に大幅な変更が発生すると、取引先から苦情が入ったり、最悪の場合、取引が停止されたりする可能性があります。 M&Aの買い手は、既存の取引先からの収益なども含めて、企業価値を評価している場合もあります。取引先との関係は会社売却後も良好なものになるよう努めなければなりません。 関連記事 M&Aのメリット・デメリットは?売り手にメリットがあるM&Aとは 会社売却成功への道!M&A買い手探しの目的とポイントとは M&Aの売り手市場はいつまで?売り手のメリットは?事業承継の動向は 経営をやめるべきか迷ったら専門家に相談! 経営者をやめてリタイアしたいと思ったら、まずは親族内承継か社内承継を検討することでしょう。 しかし、親族に候補者がいなかったり、後継者候補となる従業員がいても家族が反対していたりして、事業承継が進まないケースも多いです。 親族や従業員への承継が難しくても、会社売却であれば承継の候補者が見つかるかもしれません。 M&Aの市場は、買い手候補となる企業が増えています。 自社に買い手がつかないと考えていても、専門家に相談することで、想像以上に評価してもらえる可能性もあります。 長年育ててきた会社の廃業を選択する前に、M&Aの専門家に相談してみてください。 --- ### M&Aで従業員はどうなる?会社売却後の社員の雇用について解説 - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/10535 - Categories: その他 原則として、会社売却の後も従業員の雇用契約は継続されます。ただし、会社売却に伴う従業員の雇用状況は、売却スキームや買収企業の事業計画によって変わります。 M&Aで会社売却を行った場合、自社の従業員・社員はどうなるのでしょうか。 後継者が不在でもう経営を続けられない場合などに、M&A・会社売却が利用される場面が増えてきました。 経営者としては、長年一緒に仕事をしてきた仲間だった従業員・社員に対する会社売却の影響が気になるかもしれません。 この記事では、会社売却をした後の従業員・社員の雇用、給与、待遇などについて解説します。会社売却後の社員のモチベーションを下げないためのポイントも紹介していますので、これから会社売却を考えている経営者の方はぜひ参考にしてください。 M&A・会社売却後も雇用は維持されるのか? 会社売却に伴う従業員の雇用状況は、売却スキームや買収企業の事業計画によって変わります。原則として、会社売却の後も従業員の雇用契約は継続されます。 ここでは、M&A・会社売却の代表的手法である株式譲渡と事業譲渡にそれぞれ分けて説明していきます。 株式譲渡とは、発行済みの株式を第三者に売り渡すことで、経営権を譲渡する方式です。売主側は、売却後に経営にかかわることは原則ありません。 事業譲渡は、事業の一部もしくは全部を切り出した会社売却の方式です。株式譲渡と異なり、売却した後でも、自身の経営権が手元に残ります。 関連記事 M&Aスキーム (手法)を比較!メリット・デメリット・手続きの違いを解説 株式譲渡の場合 株式譲渡によって会社売却を行ったとしても、従業員・社員が解雇されることはありません。 理由としては、「労働法により解雇が難しい」「従業員・社員を含めて企業価値が評価されている」「譲渡契約に雇用の維持が条件と定められている」などが挙げられます。 労働法により解雇が難しい 株式譲渡では、経営者が入れ替わるだけで、会社と従業員の間の雇用契約は維持されたままになります。労働法上、会社が労働者を解雇するためには「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です(労働契約法16条)。 そのため、解雇できるケースがかなり限定されているのです。 従業員・社員を含めて企業価値が評価されている M&Aで買収を行う多くの会社は、従業員を含めた売り手企業の資産を評価した上で、株式譲受を決めています。 そのため、わざわざ元の企業の従業員を解雇してまで新しい人材を登用するケースはほとんどありません。 譲渡契約に雇用の維持が条件と定められている 売り手企業の経営者は、会社売却後も自社の従業員が雇用されたままの状態であることを希望するものです。 株式譲渡契約を締結する際に予め雇用維持を条件にしておけば、経営から離れた途端、一緒に働いてきた従業員・社員が解雇される事態を防ぐことができます。 ただし、買い手企業の事業計画や経営方針の変更によって、従業員の雇用に影響が生じる可能性はあります。 例えば、買収企業が事業の再編や人員削減を行う場合、解雇されずとも退職を促されるような事態がありえますが、上記の理由によりほとんどあり得ないケースといえるでしょう。 事業譲渡の場合 事業譲渡による会社売却の場合、従業員は、買い手企業に転籍することになります。 転籍による場合、従業員はいったん売り手企業を退職し、買い手企業と改めて雇用契約を結びます。 転籍に従業員が同意した場合、雇用は維持されることになります。 「事業譲渡先の企業は好きではない」「事業譲渡されるなら転職したい」など、従業員が転籍に同意しない場合には、雇用は維持されません。 また、譲受企業側が「自社の勤務条件に同意する者だけを雇用する」という対応をすることも許されています。 そのため、転籍先の給与や待遇に納得がいかずに同意できないという場合には、雇用は維持されないことになるでしょう。 関連記事 M&Aで退職金はどうなる?事業譲渡や株式譲渡の役員退職金も解説 事業譲渡と株式譲渡の違いは?目的・メリット・デメリットなど解説 会社売却の基本的な流れ M&A・会社売却の基本的な流れは以下の通りです。 買い手企業の選定では、M&Aアドバイザーの助言を受けながら、自社の事業や経営状況に合った候補企業を探します。 交渉段階では、売却価格や条件などについて相手方と交渉を行います。買い手企業と売却企業の間で、雇用契約の継続や給与・待遇の変更などについて、合意する必要があるでしょう。 その後、売買契約を締結し、売却金額を支払うことで、会社の譲渡は完了となります。 非上場企業で株式に譲渡制限がかかっている場合などは、最終譲渡前に株主総会や取締役会の承認を受けなければなりません。 関連記事 会社売却の流れを解説!手続きや手順の注意点は? 株式譲渡の手続き・流れを徹底解説!会社の株式譲渡で必要な書類と注意点とは M&A・会社売却後の従業員の給与や待遇 会社売却後の給与・待遇 株式譲渡の場合 株式譲渡による会社売却の場合には、従業員の給与や待遇が変更されることは一般的にはありません。 しかし、買収企業の給与体系が年俸制である場合、売却企業の月給制の従業員は、年俸制に変更される可能性があります。 給与のほかにも退職金や福利厚生、勤務条件なども、会社売却によって変更される可能性があります。 ただし、労働契約法9条の「労働契約の合意」に基づいて、従業員の同意なしに、労働契約の内容を一方的に変更することはできません。 そのため、買収企業が従業員の給与や待遇を変更する場合は、従業員の同意を得る必要があります。 事業譲渡の場合 事業譲渡による会社売却の場合には、新たに譲渡先の企業と雇用契約を締結することになるため、給与や待遇が変更される可能性があります。 雇用を維持したい場合には、譲渡先の企業が示す条件に同意する必要があるので、最悪の場合、従来の給与水準よりも低くなってしまう恐れもあるでしょう。 しかし、転籍の条件に不満を持った従業員が大量に離職するなどの事態が発生すると、買い取った事業がうまく進まない問題が起きるでしょう。 そのため、最初は従来の水準に近い条件で契約を行い、時間をかけて待遇が変わっていくケースもあります。 買い手企業としては、事業を買い取った目的を達成するため、従業員・社員には大きな不満を持たずに働いてほしいと思うものです。そのため、従来の水準で契約したいと希望する従業員を即座に切り捨てることは珍しいでしょう。 会社売却後の退職金の扱い 株式譲渡の場合 株式譲渡による会社売却の場合には、雇用契約の内容は変更されていないため、元々所属していた企業の制度が原則として適用されます。 株式譲渡では、経営者が変わっていたとしても、契約自体は変更されていないからです。 しかし、退職金の積み立て・支払い方法の変更について、雇用契約の変更を依頼される場合はあるかもしれません。 買い手企業の退職金制度が従来の制度と異なる場合、退職金の支払い条件も変更される可能性があります。 事業譲渡の場合 事業譲渡による会社売却で、従業員が転籍に同意した場合、譲渡企業との雇用契約は消滅し、買い手企業と雇用契約を結びます。 この場合、従業員の退職金は次のいずれかのパターンで支払われることが多いです。 売り手企業が雇用契約消滅(退職)時に清算して、従業員に支払う 買い手企業が引き継ぐ 1の場合は、通常の自己退職による退職金の支払いと同じです。 2の場合は、売り手企業が従業員に退職金を直接支払うのではなく、買い手企業が引き継いで、買い手企業に転籍した後に定年を迎えたり転職したりする場合に支払う方法です。 売り手企業は事業譲渡時における退職金相当額を買い手企業に渡すか、事業譲渡の金額から該当する金額分を差し引いて対応します。 M&A・会社売却後の従業員のモチベーションを維持するために M&A・会社売却の目的や意義の説明 会社売却は、経営陣にとって大きな決断であると同時に、従業員にとっても不安や疑問を抱きやすいものです。 会社売却によってモチベーションが下がり、従業員が離職してしまうような事態に陥ると、 売却後のスムーズな事業運営が難しくなります。 このような状況を防ぐためにも、なぜ会社売却という決断が下されたのか、その目的や意義を経営者から従業員に説明するべきでしょう。 早期に従業員に情報を共有する M&A・会社売却の情報は、可能な限り早期に従業員に共有する必要があります。情報公開が遅れたり、不透明な状況が続いたりすると、従業員の不安や憶測が膨らみ、モチベーション低下に繋がる可能性があります。 もっとも、買い手との交渉段階では、情報漏洩の恐れがあるため、社内への公表は控えるべきです。しかし、M&Aが成約したのであれば、できるだけ早い段階で従業員に伝えるべきでしょう。 従業員の不安や疑問に丁寧に答える M&A・会社売却は、従業員にとって大きな変化であり、様々な不安や疑問を抱くのは当然です。経営陣は、従業員からの質問や意見に対して丁寧に耳を傾け、誠実に答える必要があります。 M&A・会社売却後の従業員のモチベーション維持には、経営陣による丁寧なコミュニケーションが不可欠です。 上記のポイントを参考に、従業員の不安や疑問に寄り添い、安心して働ける環境を整備しましょう。 --- ### 事業譲渡の仲介手数料・費用はいくらかかる? - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/manda/10546 - Categories: 事業譲渡, 会社売却の費用, 相談・仲介 事業譲渡を行う際に発生する費用・仲介手数料としては、相談料や着手金、成功報酬などがあります。事業譲渡の費用・手数料を抑えたい場合には、複数のM&A仲介業者から見積もりを取得しましょう 事業譲渡による会社売却を行う場合、M&A仲介会社を利用するケースが一般的でしょう。 買い手企業との条件がまとまり、無事にM&Aが成約となると、仲介会社に対して手数料を支払わなければなりません。 この記事では、事業譲渡を行う場合に必要となる手数料の種類と金額について解説します。 事業譲渡の費用・仲介手数料 事業譲渡の費用・仲介手数料とは 事業譲渡を行う際に発生する費用・仲介手数料としては、相談料や着手金、成功報酬などがあります。 仲介会社によって、着手金をとらない完全成功報酬制だったり、毎月一定額の支払いが必要になったりするなど、料金体系が変わります。 自社の状況や最終的に負担することになる見込み額を基に、どの業者を選択するかを決めましょう。 事業譲渡の費用・仲介手数料の内訳 相談料事業譲渡に関する相談に対して、M&A仲介業者が請求する費用です。無料相談を実施している業者が多いですが、費用が発生する場合も少なくありません。 着手金M&A仲介業者と業務委託契約を締結した際に支払う費用です。着手金は、成功報酬の一部として充当される場合もありますが、返金されない場合もあります。 月額報酬(リテイナーフィー)M&A仲介業者に継続的にサービス提供を依頼する場合に支払う月額費用です。成功報酬とは別に発生するため、事業譲渡が長期化する場合は大きな負担となる可能性があります。 中間報酬事業譲渡の過程において、一定の成果が達成された段階で支払う費用です。基本合意書が締結された段階で支払うケースが一般的でしょう。成功報酬の一部として充当される場合もありますが、返金されない場合もあります。 成功報酬成功報酬とは、事業譲渡の最終契約締結後に支払う費用です。仲介手数料の大部分を占める最も大きな費用となります。成功報酬は、売却価格を元に、レーマン方式と呼ばれる計算によって算出されます。 関連記事 M&Aの着手金とは?無料になる?相場や支払いの注意点まとめ M&Aの完全成功報酬はお得?メリット・デメリット・選び方まとめ レーマン方式とは レーマン方式とは、売却価格の範囲に応じて手数料の割合が変動する手数料の方式です。規模の小さいM&A(5億円まで)では、売却価格に5%の手数料率を乗じて計算された金額が、成功報酬となります。 一般的なレーマン方式の割合 5億円まで・・・5% 5億円超~10億円まで・・・4% 10億円超~50億円まで・・・3% 50億円超~100億円まで・・・2% 100億円超・・・1% 仮に取引価格を10億円とすると、以下のようになります。 取引価格 手数料率成功報酬5億円まで 5% 2500万円5億円超~10億円まで 4% 2000万円 5億円までの成功報酬と、5億円から10億円までの成功報酬の合計4500万円が、レーマン方式による成功報酬金額となります。 事業譲渡の費用・仲介手数料の相場 事業譲渡の費用・仲介手数料の相場 事業譲渡の費用・仲介手数料は、事業規模や譲渡価格、業種によって大きく異なります。 M&A仲介会社を利用した場合の、事業譲渡費用・手数料の一般的な相場は以下のとおりです。 事業譲渡の費用・手数料の相場 相談料:1万円前後 着手金:50~200万円前後 中間報酬:成功報酬費用の10%~30%前後 月額報酬:月額50万円~100万円前後 デューデリジェンス費用:50~200万円前後 成功報酬費用:売却価格×5%程度 相談料については、初回無料にしている業者が多いです。 着手金や中間報酬、月額報酬は、完全成功報酬制であれば必要ありません。 もちろん、売却額が100億円を超えるなど、規模の大きい事業譲渡になれば、仲介手数料も高額になります。 しかし、上記の相場はあくまで参考の金額です。 なお、成功報酬費用は、その名のとおりM&Aが成立しなければ支払う必要はありません。M&A仲介会社の収益源のほとんどは、この成功報酬費用となるため、仲介会社はいかにM&Aを成立させるかが重要になります。 事業譲渡の費用・仲介手数料を抑えるための方法 事業譲渡の費用・手数料を抑えたい場合には、複数のM&A仲介業者から見積もりを取得しましょう。 M&A仲介会社によっては、着手金不要にしていたり、月額報酬制を取り入れたりしています。自社にとって最適な業者を選ぶためには、複数の業者に同じ条件で相談し、見積もり内容を詳細に確認することが重要です。 関連記事 M&A仲介手数料の相場はいくら?誰が払う? 事業承継の費用・手数料の相場は?承継方法別に解説 事業譲渡で発生するその他の費用 事業譲渡には、仲介手数料以外にも、弁護士費用、デューデリジェンス費用、税金など、状況によっては様々な費用がかかります。 これらの費用は、事業の規模や譲渡価格、業種によって大きく異なるため、事前にしっかりと把握しておくことが重要です。 弁護士費用 弁護士費用は、契約書の作成や法務調査など、法務的な手続きに必要な費用です。M&A仲介会社を使っていれば、基本的に契約書の作成までサービスに含まれているため、別途負担することはありません。 M&A仲介会社を利用せず、友人や知人との間で事業譲渡を行う場合などは、契約締結については、弁護士を利用することをおすすめします。 事業譲渡で弁護士に依頼する主な理由は、契約書の内容に不備があり、成約後にトラブルが起こるのを防止するためです。 事業譲渡における弁護士費用の相場は、依頼する事務の範囲によりますが、50万円~100万円前後になることが多いでしょう。 デューデリジェンス費用 デューデリジェンス(DD)は、事業・財務・法務・人事など、買い手側の企業が売り手側の企業を徹底的に監査することです。DDは事業譲渡後のトラブルを防止するために重要な役割を果たします。 DDは一般的には買い手側が対応することになるため、売り手がこの費用を負担することは少ないでしょう。 事業譲渡の税金 法人税 事業譲渡によって譲渡益が生じると、売り手側には法人税の支払いが求められます。 法人税・地方法人税・法人住民税・事業税等があり、総合すると税率は約30%前後となります。 近年は法人税率を引き下げる動きが見られますので、今後の動向次第では法人税率が大きく変動する可能性もあります。 また、課税資産に対して課せられる消費税とは異なり、売却益が赤字だった場合は課せられません。 消費税 課税資産に対して課せられる税金です。ブランドや将来の収益力をもとに算出したのれん代も、課税資産の対象となります。 納付する消費税額は、土地や有価証券、債権を除いた資産の総額に対して、10%を乗じた金額です。 なお、消費税の納付者は売り手側ですが、実際には買い手側が負担します。買い手側は消費税を加えた金額を売り手に支払い、売り手側が税務署に納税します。 不動産取得税 不動産を取得した際に課せられる税金です。事業譲渡の買い手側が負担するのが一般的です。 取得する事業内容に高額な土地や建物が含まれていたり、対象となる不動産の数が多い場合などは、不動産取得税も高額になるでしょう。 登録免許税 不動産の所有権移転登記の際に課せられる税金です。 事業譲渡の買い手側が負担するのが一般的で、譲渡後に土地や建物の所有者が変わったことを公示するために、法務局に申請・納税します。 関連記事 事業譲渡の税金は?消費税や法人税は利益の何%?お得なのは会社譲渡? --- ### 後継者がいない会社は61%!跡継ぎがいない会社の実態と選択肢まとめ - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/10888 - Categories: 後継者不足, 事業承継 後継者がいない会社はどうすればいい?後継者不在の実態は?跡継ぎを探す方法は?相談先は?この記事では、後継者不足でお悩みの中小企業の経営者の方などを対象に、後継者がいない会社の選択肢、実体、相談窓口などを解説していきます。是非ご覧ください。 後継者がいない会社はどうすればいい? 跡継ぎがいない会社はどうなる? 後継者がいない会社が跡継ぎを探す方法は? 後継者がいない会社の経営者の方は、跡継ぎ問題に頭を悩ませてしまいますよね。 このまま廃業してよいものか、廃業を回避できる選択肢はないものか、考えを巡らせている方も多いと思います。 この記事では、そのような中小企業の経営者の方を対象に、後継者がいない会社の実態、跡継ぎがいない会社がとれる選択肢、跡継ぎ問題の相談窓口などを解説します。 ぜひ最後までご覧ください。 後継者がいない会社の実態 後継者がいない会社の割合は? 東京商工リサーチの調査結果によると、後継者不在率は年々増しています。 具体的には、2019年は55. 61%、2020年は57. 53%、2021年は58. 62%、2022年は59. 90%、2023年は61. 09%の企業において後継者が不在であるという調査結果がでています。 そして、2023年度についてみると、経営者が60代の企業の後継者不在率は46. 18%、70代は30. 5%、80歳以上は23. 83%という結果がでています。 また、後継者不在の企業のうち、未定・検討中と回答した割合が一番多く48. 16%、次いで、経営者が設立・交代して浅い又は若年者であるため承継先が未定と回答した割合が45. 82%でした。会社売却や譲渡の方針を持っているのは全体のわずか0. 2%です。 後継者不在の企業が希望する事業承継先(2023年) 2023. 11. 14 東京商工リサーチ「「後継者不在率」が初の60%超え 円滑な廃業実務の見直しも必要~ 2023年「後継者不在率」調査 ~」(2024. 2. 9現在)で公表されているデータをもとに作成。 この記事を読んでくださっている方の中にも、後継者問題の解決方針が決められず、二の足を踏んでいる経営者の方もいるのではないでしょうか。 後継者がいない会社はその後どうなる? 後継者が現時点でいない場合は、早急に親族内承継や社内承継などを検討すべきでしょう。 それでも後継者が見つからない場合は、社外から後継者を採用するという方法が考えられます。 また、さいごまで後継者不在が解消できない場合は廃業という選択肢が現実味をおびることとなるでしょう。 関連記事 後継者不足の解決策はM&A?後継者問題の実態は... 後継者がいない会社の跡継ぎは... 選択肢5つの特徴を解説 選択肢①親族内承継 現在、後継者がいない会社であっても、将来的には、親族内承継によって跡継ぎをたてることは可能かもしれません。 親族内承継とは、経営者が自分の子どもや孫など親戚に会社を引継がせて、会社運営をまかせる方法です。 親族内承継をするには、親族の中から早急に後継者候補を選定する必要があります。 メリット 親族内承継のメリットは、スムーズな事業承継が可能という点にあります。血縁関係があることから、後継者以外の親族や従業員の信頼や理解を得やすいのが親族内承継です。 また、企業文化や風土の継承が容易であることも親族内承継のメリットといえるでしょう。 デメリット 親族内承継のデメリットは、親族であるというだけで、必ずしも後継者に必要な能力、経験、意欲をもっているとは限らないという点です。適性のない親族が後継者として事業承継した場合、経営悪化や事業存続の危機につながるリスクがあります。 また、誰を後継者に選定するかによって、親族間で感情的な対立がおきて、その後の会社運営に悪影響を及ぼすおそれもあります。 そのほか、根本的な問題として、そもそも跡継ぎとなれる親族がいない場合は親族内承継はできません。一般的に、後継者教育には3年かかるといわれており、そのような時間的余裕がない場合なども、親族内承継は難しいものでしょう。 注意点 親族内承継の注意点は、後継者候補となる親族のモチベーションアップのために会社の魅力を可能な限り高める必要があることです。 また、後継者教育を早期から計画的におこなう必要があることも、親族内承継の注意点といえるでしょう。 関連記事 親族内承継とは何か?子や孫に事業を承継する方法と流れを解説 選択肢②従業員承継 現在、親族内に跡継ぎがいない会社でも、従業員承継という方法で後継者問題を解決できる可能性があります。 従業員承継とは、役員や従業員が会社経営を引き継ぐ方法です。 従業員承継には、会社の経営権だけを引き継ぐ形態のほか、経営権とあわせて会社の資産も引き継ぐ形態があります。 前者の形態、すなわち役員や従業員が社内で昇格し、経営権だけを引き継ぐ方法について、内部昇格と呼ぶこともあります。 メリット 従業員承継のメリットは、親族内承継よりも後継者候補の選択の幅が広がることです。 後継者を社内から選定することになるので、承継後も業務の円滑な遂行が期待でき、社内や取引先からの理解を得やすいという点も、従業員承継のメリットでしょう。 また、従業員の中から後継者が選定されるということで、キャリアパスとして昇進をイメージしやすくなり、従業員のモチベーション向上にもつながるメリットがあります。 デメリット 従業員承継のデメリットは、そもそも社内に後継者候補となる人材がいない場合は、跡継ぎ問題を解決できないという点にあります。 また、親族内承継と同様、適切な人材がいたとしても、後継者として育成する時間や労力がかかるという点も従業員承継のデメリットです。 注意点 従業員承継・内部昇格を成功させるには、事前にしっかりと準備することが重要です。 ある程度の時間的余裕をもって、後継者となる人材の育成を計画したり、社内評価制度を整備したりするなどの課題をクリアする必要があるでしょう。 関連記事 従業員承継とは?会社を譲る方法・メリット・デメリットまとめ 選択肢③外部招聘 後継者がいない会社の跡継ぎ問題を解決するための選択肢として、外部招聘(がいぶしょうへい)という方法が考えられます。 外部招聘は、社外から経営の知識・経験が豊富な人材を招いて、会社の後継者として採用する方法です。 メリット 外部招聘のメリットは、親族内承継や社内承継ができない場合に、跡継ぎがいない会社の後継者問題を解決できる点にあります。 また、最初から経営の知識・経験が豊富であるため、経営者として育成する時間はさほど必要ないというメリットもあります。 デメリット 外部招聘のデメリットは、社内での十分な理解が得られなければ親族や社員との間に摩擦が生じ、会社運営が危ぶまれる点にあります。 また、会社の規模や業種によっては、前職までの経歴を生かすことができず、会社運営に力を発揮できないおそれがあるでしょう。 注意点 外部招聘をする場合は、親族や社員への十分な説明をおこなうことが大切です。 外部招聘の対象となる人物が、自社とマッチできる人材かどうか、自社の経営者として適性のある人物かどうかという点を、見極めることもポイントです。 選択肢④M&A 親族内承継、従業員承継、外観招聘などが難しい場合、M&Aが後継者問題の解決に役立つ可能性があります。 M&Aとは、企業の合併や買収を意味します。親族や従業員以外の第三者に会社を売却し、会社の運営を引き継いでもらうという方法が、M&Aです。 買収と聞くとイメージがよくないかもしれませんが、友好的な買収も多くあり、自らの意思で会社売却をおこなう経営者も多いものです。 近年では、中小企業の事業承継を目的としたM&Aが盛んに実施されています。 メリット M&Aのメリットは、親族や従業員に限らず、幅広く後継者を募ることができるため、後継者不足による事業存続の危機を打開できる可能性が高い点にあります。 近年では、M&A仲介業者や専門家による支援も充実しており、スムーズな後継者探しを実現できる可能性が高いでしょう。 また、新たな経営者のもとで事業が成長できる可能性や、従業員の雇用維持の可能性を残すことができる点も、M&Aのメリットです。 そのほか、M&Aの買い手側から、M&Aの対価を受け取ることができるので、将来の生活資金や新規事業立ち上げのための資金などにあてることができます。 デメリット M&Aのデメリットは、必ず跡継ぎを見つけられるとは断言できない点にあります。 会社に魅力がなければ買い手はあらわれません。また、売却価格をはじめとするM&Aの各種条件について、買い手側と折り合いがつかなければ、M&Aの成約には至りません。 また、企業文化の違いによる摩擦などが生じる懸念も、M&Aのデメリットとしてあげられます。 譲渡側企業の従業員の雇用を維持できたとしても、譲受側企業の文化についていけないことで、圧力を感じることもあるでしょう。加えて、勤務地の変更などの事実上の不利益をこうむるケースもあるようです。 関連記事 M&Aのメリット・デメリットは?売り手にメリットがあるM&Aとは M&Aで従業員はどうなる?会社売却後の社員の雇用について解説 注意点 M&Aを成功させるためには、自社の企業理念をよく理解してくれ、かつ誠意をもった対応をしてくれる買い手を見つける必要があります。 M&Aは、親族内承継や従業員承継などとは違い、後継者教育にかかる時間はおさえられますが、M&Aの相手探しに時間がかかるので注意が必要です。 M&Aの交渉では、譲れない条件がある場合、早期に提示して、話し合いをしておく必要があるでしょう。後出しジャンケンでは交渉が不利になる可能性がある点にも、注意が必要です。 また、中小企業の場合、株式譲渡によるM&Aが多用されますが、その法的手続きや契約書作成についても、不備なく進められるよう注意をはらう必要があります。 適宜、弁護士やM&A仲介業者のアドバイスをもらうとよいでしょう。 関連記事 M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? 選択肢⑤廃業 廃業とは、会社をたたむことです。 後継者がいない会社の経営者が、一生懸命跡継ぎを探したところ、その甲斐もなく最終的に廃業を選択するというケースも、当然のことながら存在します。 メリット 廃業のメリットは、社長としての重責から解放される点にあります。後継者教育をおこなう時間、気力、体力などがない場合は、廃業という選択肢にメリットを感じるものでしょう。 また、廃業を前向きにとらえる場合、廃業は、社長も従業員も新しいスタートを切るための機会になるといえるのではないでしょうか。 デメリット 廃業のデメリットは、従業員の雇用喪失につながる点です。事業承継ができれば、従業員の失業を回避できる可能性はありますが、廃業になれば、解雇するしかありません。 また、廃業により会社がなくなることで、地域経済へ少なからず影響がおよぶことも考えられます。 そして、その企業しか持ちえない独自の技術や、ノウハウが失われるというデメリットも、廃業にはあります。 注意点 廃業をする場合も、タイミングの見極めが非常に重要です。経営状態がきびしい中で廃業を選択した場合では、負債が多く清算できず、廃業ではなく倒産になるケースもあります。 また、廃業すれば会社の存続はかないません。育ててきた会社を消滅させることが惜しいと感じるなら、廃業という選択をする前に、後悔しないかどうかもう一度考えてみてください。 廃業が適切かどうか、M&Aによる事業承継の可能性があるかといった判断には、判断の基礎となる情報を収集することや冷静な決断が必須です。 M&Aの専門家などの意見も考慮したうえで、落ち着いて判断をくだすようにしましょう。 関連記事 廃業よりもM&A会社売却の方が利益になるのか?後継者がいない場合はどちらを選択すべき? 後継者がいない会社が跡継ぎを探す方法 後継者問題の相談できる窓口は? 後継者がいない会社がM&Aによって跡継ぎを探す場合、以下のような相談窓口があります。 後継者問題の相談窓口 M&A仲介業者への相談 M&Aポータルサイトの活用 士業に相談例)公認会計士、税理士、弁護士、行政書士、中小企業診断士etc. 業界団体への相談例)日本商工会議所etc. 自治体の支援制度の活用例)事業承継・引継ぎ支援センターetc. 参考になるサイト例)中小企業庁 財務サポート「事業承継」etc. サービス内容や利用手数料などを見比べて、相談しやすい窓口を活用してみてください。 M&Aの相談窓口について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考になさってください。 関連記事 M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? 跡継ぎを探すための最善の準備とは? 後継者がいない会社が、M&Aによって跡継ぎを探すためには、M&Aの相手があらわれるような魅力的な会社に磨き上げることがポイントです。 企業価値を高めるための対策を立てて、実行することが最善の準備といえるでしょう。 企業価値を高めるためには、現状の企業価値を知ることも大切です。 M&A仲介会社の無料相談なども活用しつつ、現状の把握と企業価値向上に努めましょう。 まとめ 後継者がいない会社は、株式公開(IPO)をおこなう方法も考えられますが、中小企業では現実的ではないでしょう。 自社のことを大切に考えてくれる買い手を見つけて、M&Aによる事業承継を目指すのがおすすめです。 後継者不在でお悩みの場合は、この記事でもご紹介した相談窓口に問い合わせるなどして、跡継ぎ問題を解決していきましょう。 --- ### 事業承継の相談窓口は?事業承継成功の秘訣は専門家への無料相談? - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-04-01 - URL: https://atomfirm.com/manda/9314 - Categories: 事業承継, 相談・仲介 事業承継の相談窓口(一覧)は?各即断先のメリット、注意点、特徴は?この記事では、事業承継について無料相談できる窓口を紹介しています。事業承継をご検討中の方は是非参考にしてみてください。 事業承継の相談窓口は? 事業承継は無料相談できる? 事業承継を相談するメリットは? 事業承継の相談窓口としては、税理士や弁護士などの専門家、M&A仲介会社などがあるでしょう。 なかでも、M&A仲介業者に相談する場合、無料で専門的な仲介サービスを受けられるケースがあります。 各相談先のメリット・デメリット・サービス内容を見比べて、うまく活用することが事業承継の成功の秘訣です。 この記事では、事業承継の相談先、各相談先の特徴などを解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 事業承継の相談窓口一覧 事業承継を検討している場合の相談窓口としては、以下のようなものがあります。 無料相談ができるケースも多いので、うまく活用して、事業承継の準備を進めていきたいところです。 事業承継の相談窓口 内容相談先(一例)コンサルティング・マッチング事業承継・引継ぎ支援センター売却価格の算定など日本公認会計士協会税金対策・事業承継税制など日本税理士連合会契約書類の作成など日本弁護士連合会行政手続など日本行政書士会連合会コンサルetc. 中小企業診断士M&A仲介業者コンサル・融資銀行政府系金融機関 それでは、これらの事業承継に関する相談窓口の特徴について、解説していきましょう。 事業承継を無料相談できる国の相談窓口 事業承継・引継ぎ支援センター 事業承継・引継ぎ支援センターでは、事業承継に関する無料相談が可能です。 事業承継・引継ぎ支援センターは、国が47都道府県に設置する公的相談窓口です。地域の商工会議所が主導して、事業承継や引継ぎに関する相談・支援をおこなっています。 特徴 事業承継・引継ぎ支援センターでは、事業承継の候補先を見つける手助けをしてくれたり、事業承継を進める計画策定、助言などをおこなってくれます。 事業承継の候補先については、事業を譲り受けたい方、会社を買いたい方を集めた人材バンクがあり、適宜、後継者候補を紹介してくれます。 経営者本人はもちろん、親族や従業員など、誰でも相談することができます。 なお民間のM&A仲介会社を利用しつつ、セカンドオピニオンとして事業承継・引継ぎ支援センターを活用するという相談方法も可能です。 事業承継・引継ぎ支援センターのメリット 無料相談できる 公的な機関が運営しているため、安心して相談できる 地域の商工会議所が運営しているため、地域に密着した相談を受けられるetc. なお事業承継・引継ぎ支援センターには、中小企業診断士、金融機関OB、税理士、公認会計士、弁護士、税理士などが在籍しています。 必要に応じて、契約書作成、株価算定、税務上のアドバイスなどの実務を任せることも可能です。 相談の注意点 相談料は基本的に無料です。 しかし専門家に実務を任せる場合は、一定の手数料が発生することがあるので注意が必要です。 事業承継を無料相談できる民間の相談窓口 公認会計士 公認会計士は、事業承継の相談先として、もっとも身近な存在のひとつでしょう。 公認会計士は、企業価値の算定や、事業承継に関する会計の専門知識について相談できる専門家です。 相談できる内容(一例) 事業承継にともなう企業価値評価 事業承継に関係する会計の知識etc. 事業承継にともなう企業価値評価 事業承継においては、事業承継の対象となっている会社や事業について、その譲渡価額を適切に算定することが必須です。 帳簿上の資産額のみならず、自社の強みなどを、適切に譲渡価額に反映するためには、会計の専門的な知識が必要となります。 事業承継に関係する会計の知識 また、会計帳簿上に不明確なお金の流れがある場合、事業承継をしたくても買い手との交渉が決裂する、安く買いたたかれるといったリスクが生じます。 ですが、公認会計士に企業価値の評価を算定してもらうことができれば、あらかじめ不利な点を洗い出せる可能性があります。 公認会計士に相談することで、自社の問題点に対して改善策をほどこしてから、M&Aに乗り出すことが出来るでしょう。 はじめての事業承継であっても、このように公認会計士の専門的なアドバイスがあると、大変心強いものです。 相談の注意点 ただし、公認会計士であれば誰もが事業承継を得意としているわけではありません。そのため、相談や依頼をする際は、事業承継に精通した公認会計士を選ぶ必要があります。 一方で、いくら専門性が高くても、相性が悪ければその後の相談がつらくなってしまいます。実際に実務を依頼をするときは、公認会計士との相性も確認しましょう。 税理士 税理士も、事業承継による利益を最大化するための相談先として、代表的な存在のひとつです。 税理士は、事業承継にともなう税務について相談できる専門家です。 相談できる内容(一例) 事業承継に関係する税務の知識 税金の対策etc. 事業承継にともない、所得税、住民税、法人税などが発生します。 事業承継の形式によっては、贈与税や相続税が発生することもあり、事業承継税制の知識も必要になります。 場合によっては、税金対策となる事業承継のスキームについても相談できる可能性があるでしょう。 無料相談などを活用して、税理士のアドバイスを確認することで、自信をもって事業承継の手続きを進めていけるのではないでしょうか。 相談の注意点 税理士についても、すべての税理士が必ずしも事業承継に詳しいけではありません。 税理士を選ぶ際は、事業承継に関する業務経験や、知識で選べると良いでしょう。 弁護士・司法書士・行政書士 弁護士・司法書士・行政書士は、法律に関する専門家です。 そのため、事業承継に関する法律問題の相談に最適です。 相談できる内容 事業承継に関する契約書の作成 M&Aの手続きに関する相談 事業承継に先立って、法務の弱点を指摘・是正 登記手続き 行政手続きetc. 弁護士は、法律問題に関する専門家であり、事業承継に関する契約書の作成や、事業承継に伴う法的なトラブルの解決などの法務について、支援をすることができます。 取引先との契約書や社内のコンプライアンスなど、法務にまつわる弱点について洗い出し、是正措置を講じることを得意とするのも弁護士です。そのような弱点を補う措置を講じることで、事業の売却価格をより高額にできる可能性があがります。 司法書士も法務に精通しており、事業承継をおこなう際に適切なアドバイザーとなれる可能性があります。登記実務は、おもに司法書士にまかせることになるでしょう。 行政書士は、行政手続きに関する専門家であり、事業承継に関する許認可の取得や、事業承継に伴う行政手続きの代行などの支援もできます。 相談の注意点 ただし、これらの専門家についても、注力分野が異なる可能性があります。事業承継に明るい専門家を選んで、相談することができれば、より安心できるでしょう。 中小企業診断士 事業承継に詳しい中小企業診断士も、事業承継の専門家の一人といえるでしょう。 中小企業診断士には、事業承継の後継者を探すサポートや、事業承継の計画を策定などの業務を任せることができます。 注意点 中小企業診断士についても、全員が事業承継を熟知しているわけではありません。相談するのであれば、事業承継の実務に詳しい中小企業診断士が良いでしょう。 中小企業診断士は、民間のM&A仲介業者や、公的機関に所属していることが多いものです。 そのため、それらのサービスを受けるなかで、紹介された中小企業診断士に相談するとのいうのも、一つの手でしょう。 金融機関 地元の金融機関でも、事業承継に関する無料相談を実施してくれる場合があります。 事業承継に必要な資金調達や助言・支援を受けられる金融機関は、事業承継の相談先として重要な役割を果たしています。 金融機関に相談できる内容は、事業承継計画の策定や事業承継後の経営支援などです。 注意点 ただし金融機関は、あくまでも融資を目的とする相談に重点があります。 そのため融資をともなわない事業承継については、相談を実施してくれない可能性などがあります。 M&A仲介業者・コンサルティング会社 M&A仲介業者・コンサルティング会社は、M&Aによる事業承継を検討している場合に、有益な相談窓口となります。 特徴 M&A仲介業者・コンサルティング会社は、M&Aに関する豊富な知識や経験を有しています。 M&A仲介業者に相談すれば、M&Aによる事業承継の具体的な進め方や、買い手候補の選定、交渉、契約書の作成など、さまざまなサポートを受けることができるでしょう。 M&A仲介業者への相談が向いている場合 また、今まで見てきたような専門家(税理士・公認会計士・弁護士・行政書士・中小企業診断士などの仕業)に直接相談するのは、堅苦しい感じがして躊躇してしまうという方もおられるでしょう。 そういった場合には、民間のM&A仲介会社への相談がおすすめです。 親しみやすい担当者のもとで事業承継の準備を進めながら、必要に応じて、専門家によるサービスを受けることができるので、気軽にサービスを利用できます。 M&A仲介の種類 なおM&A仲介業者には、様々な種類があります。 事業承継をしたい側と、売り手又は買い手のいずれかの専任となるM&A仲介(片手取引)や、事業を譲り受けたい側の両方の意見を聞きながら手続きを進めるM&A仲介(両手取引)、マッチングのためのプラットフォームの提供と手続きのサポートに徹する仲介などです。 仲介業者によって提供されるサービス内容や、M&A仲介手数料は変わるため、よく見比べて相談先を選びましょう。 たとえば、着手金だけでも、両手取引よりも片手取引の方が、仲介手数料は高くなる傾向があります。 両手取引の場合は、売り手・買い手の両方から手数料を回収できます。一方、片手取引は売り手・買い手のいずれかからしか回収できません。そのため、片手取引のほうが、仲介手数料の料金設定が高額になる傾向があるのです。 もっとも手数料をおさえられるのは、マッチングプラットフォーム型のM&A仲介でしょう。 マッチングプラットフォーム型のM&A仲介の場合は、登録手数料は無料で、M&A成約時やオプションの申し込み時に手数料が発生するという内容が多いものです。 M&A仲介の形態 仲介方法内容手数料の負担片手取引売り手か買い手のどちらかの専任大両手取引売り手・買い手両方の取次をおこなう中マッチング・M&Aマッチングのプラットフォームを提供・M&Aの手続きをサポート小 関連記事 M&A仲介手数料の相場はいくら?誰が払う? M&Aによる事業承継を無料相談するメリットは? 後継者不在の場合は相談すべき? 後継者不在の場合は、M&Aによる事業承継を無料相談するメリットがある場合と言えるでしょう。 昨今、中小企業では事業を次世代に引き継ぐことができず、隠れ倒産に至るケースが増えています。 実子に会社を譲ること(親族内承継)を希望していても、後継者不在の問題に直面する中小企業は少なくありません。 実子には会社運営の資質がない、経営者としての手腕は十分なのに会社を継いでくれないなどの問題があるためです。 実子が難しい場合は、従業員の中から後継者を指名するという手段も考えられます。しかし、従業員個人の資力では、会社の全株式を取得できず、会社のオーナーたる地位を譲ることができないケースも多いものです。 このように親族内承継、従業員への承継のいずれも難しい場合には、M&Aによる事業承継が選択肢となります。 関連記事 後継者不足の解決策はM&A?後継者問題の実態は... 相続で事業承継が問題になる場合も相談すべき? 相続で事業承継が問題になる場合も、無料相談するメリットがあるでしょう。 たとえば、突然の不幸によって親の会社を相続することになったケースなどです。 親の会社を相続したものの、自分では会社運営ができないといった場合もあるでしょう。 この場合、第三者に事業承継をすることで、親の会社をたたまずに済みます。 また、後継者候補となる親族や社員がいるケースにおいても、場合によっては、第三者への事業承継も視野に入れても良いでしょう。 スムーズに事業承継ができるに越したことはありませんが、内部対立を招くなどの支障があるときは、M&Aによる事業承継を考えても良いといえます。 関連記事 親の会社を相続したらどうすればいい?会社相続を相談できる窓口とは M&Aによる事業承継を相談するメリットは? 事業承継には様々なメリットがあるため、事業承継を成功させるために専門家に事業承継の相談をするメリットも大きいといえるでしょう。 事業承継のメリット 会社を存続させられる 従業員の雇用を維持できる 譲渡益を得られるetc. 身内に事業承継できない場合、会社をたたむという選択肢もあります。しかし、事業承継をあきらめるのは非常にもったいないことです。 経営ノウハウのある第三者を見つけられれば、会社をこれからも存続できる可能性が高まります。 会社を存続できるということは、この先の従業員の雇用を確保でき、思い入れのある会社や事業を次世代に受け継ぐことができるというメリットがあります。 また、会社売却・事業売却によって、多額の譲渡益を得られる可能性もあります。 譲渡益が手に入れば、退任後の生活資金や投資、第二の人生を豊かに過ごすための資金として活用できるメリットがあります。 事業承継を相談する意義 事業承継の相談は、事業承継を成功させるために欠かせない要素です。 事業承継には、後継者が必要です。事業承継を成功させるためには、適切な手順を踏むことも大切です。 たとえば、M&A仲介業者に相談をすれば、いちから後継者を育成する手間はかからないうえ、事業承継の候補者の母数も増えるため、効率よく、後継者探しができます。分からない手続きについても、相談できます。 このように、事業承継を相談することは、事業承継を成功させたいと思う人にとって、メリットをもたらすものなのです。 関連記事 M&Aのメリット・デメリットは?売り手にメリットがあるM&Aとは 事業承継対策とは?中小企業の事業承継対策3つのポイントと支援機関 事業承継のデメリットはある? 事業承継のデメリットとは? 事業承継は、会社を存続させるために必要なプロセスです。しかし、事業承継には、以下のデメリットがあります。 事業承継のデメリット 後継者候補を探す手間・時間がかかる 後継者候補との間で経営方針や雇用などの条件交渉が必要 税金やM&A手続きなどの専門知識が必要 事業承継のデメリットは「相談」で解決? これらのデメリットを回避するためには、早期に事業承継の準備を始めることが重要です。具体的には、以下のような対策が考えられます。 対策 できるだけ早く後継者探しを開始する 事業承継計画を策定する 専門家のサポートうける 「後継者候補を探す手間・時間」の対策 後継者候補を探すには、手間や時間がかかります。希望条件に合う買い手がすぐに見つかる保証はないからです。 この対策としては、できるだけ早く後継者探しを開始するということです。 「経営方針などの条件交渉」の対策 後継者候補を早めに決めることができれば、その後の経営方針の調整に多くの時間をあてることも可能になります。 そして、スムーズに事業承継ができるように、事業承継計画を策定します。そうすれば、事業承継の全体像を把握でき、後継者側との話し合いや必要な準備を進めやすくなるでしょう。 「専門知識」への対策 また、専門的な知識について不安がある場合は、専門家のサポートを受けることです。 そうすれば、専門家の有する知識やノウハウを活用して、事業承継を適切に進めることが出来るでしょう。 事業承継の無料相談の注意点は? 無料相談できないものもある? 事業承継の相談は、無料相談を受け付けている機関も多くあります。しかし、すべてが無料というわけではありません。 公的な相談先の場合 公的機関では、事業承継の基礎的な知識や情報提供を目的とした相談が無料であることが多いです。 また、専門家への相談も無料で受けられるケースもあります。 しかし、実務を依頼する場合には、手数料がかかることが一般的です。 弁護士などの士業の専門家の場合 弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、行政書士などの専門家については、初回は無料相談できるケースはあります。 しかし、その後正式に依頼しなければそれ以上の相談はできないというパターンが多いです。 M&A仲介の場合 M&A仲介会社への相談についても、M&Aマッチングサイトへの登録、一般的な相談、基本的な手続きのサポート、簡単な書類作成のサポートは無料で受けられることが多いでしょう。 しかし、より複雑な相談内容については無料ではおさまらないこともあります。 無料相談の範囲は、M&A仲介会社によって異なるため、事前に確認しておくことが大切です。 まずは無料相談から始めてみよう 事業承継を成功させるためには、複数の無料相談の機会を活用したり、必要に応じて有料相談も利用するなどして、さまざまな視点からアドバイスを受けることが大切です。 そして事業承継の相談は、しかるべき相談相手に対して、早期に相談をすることが大切なポイントです。 無料相談を受け付けている機関も多くあるので、まずは無料相談を受けてみることをおすすめします。 具体的な相談先としては、事業承継・引継ぎ支援センター(各都道府県に所在)や、M&A仲介会社などです。 これらの機関に相談に行けば、総合的なアドバイスをもらえるとともに、必要に応じて専門家を紹介してもらえるでしょう。 また税理士・公認会計士、弁護士・行政書士、中小企業診断士、金融機関などの無料相談を受けられるのであれば、あわせて活用しても良いでしょう。 無料相談では、事業承継の基礎的な知識や情報提供を受けることができます。 事業承継で悩んでいる方は、まずは無料相談を受けてみてください。 なお、相談内容によっては、無料相談の範囲外もあります。M&A仲介サービスを利用する場合は、無料相談は可能なのか、無料相談の範囲はどこまでかなどをよく確認しましょう。 --- ### M&A・会社売却の仲介手数料の相場はいくら?売り手買い手のどちらが払うのか? - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-12 - URL: https://atomfirm.com/manda/10606 - Categories: 相談・仲介, 会社売却の費用 M&Aの手数料には、着手金、中間報酬、成功報酬などがあります。合計費用は、成約となった会社売却の価格や業者の形態によって変わります。初回相談の際に確認してみてください。 M&A・会社売却の仲介手数料の相場は? M&A・会社売却の仲介手数料は売り手が払うの? このような疑問をお持ちではありませんか。 会社売却や事業売却などを行う場合、M&A仲介会社を利用する方がほとんどです。 実際にM&Aが成約となり、会社を売却する場合には、どの程度の手数料を仲介会社に支払う必要があるのでしょうか? この記事では、M&A・会社売却の仲介手数料について解説していきます。 M&A・会社売却の仲介手数料とは?相場は? M&A・会社売却の仲介手数料の内訳は? M&A仲介会社の手数料については、相談料、着手金、中間金、成功報酬などがかかります。 M&A・会社売却の仲介手数料①相談料の相場 相談料とは、正式な依頼をする前に、M&A・会社売却に関する相談をした際に、仲介会社に支払う手数料のことです。 M&A仲介会社によっては無料相談の場合もありますが、数万円程度の相談料がかかる場合もあります。 M&A・会社売却の仲介手数料②着手金の相場 着手金とは、M&A仲介会社に、M&Aに関する業務委託契約を締結する際に支払う手数料のことです。 着手金が無料の場合もありますが、案件によって金額は上下します。 M&A仲介の着手金としては、50万円から500万円程度がよくある相場といえるでしょう。 なお着手金は、実際に案件を依頼する際に必ず支払わなければならない費用なので、結果として成約にいたらなかったとしても返金はされません。 M&A・会社売却の仲介手数料③中間金の相場 中間金とは、売り手企業と買い手企業が基本合意書を締結した時点で支払う費用です。 中間金については不要の場合もありますが、成功報酬の10%~20%程度支払うケースも多いので、依頼する場合はきちんと確認しておきましょう。 なお中間金についても、M&Aが成約まで至らなくても返金されないという扱いが一般的です。 M&A・会社売却の仲介手数料④成功報酬の相場 成功報酬とは、M&Aの最終契約締結後に支払う費用のことです。 一般的には、取引金額をもとにレーマン方式を用いて算定されることが多いでしょう。 レーマン方式は、取引金額に応じて手数料が変動する計算方法で、買収金額の何%といったような設定になっています。 基準となる金額が5億円の場合、5億円×5%=2,500万円がレーマン方式の手数料となります。 基準となる金額手数料率5億円以下の部分5%5億円超10億円以下の部分4%10億円超50億円以下の部分3%50億円超100億円以下の部分2%100億円超の部分1% レーマン方式は分かりやすい報酬体系になっているため、成功報酬の見通しがつきやすいものといえます。 なおレーマン方式とあわせて、最低手数料が設定されていることもあります。 関連記事 M&Aの価格相場は?いくらで売れる?価格の決定要因と目安について M&Aの完全成功報酬はお得?メリット・デメリット・選び方まとめ M&A・会社売却の仲介手数料は誰が払う? 両手取引の場合 M&A仲介会社が売り手と買い手を同時にサポートをするというようなM&A仲介取引は、「両手取引」となります。 この「両手取引」の場合は、売り手と買い手の双方が、同じM&A仲介会社に対して、M&A仲介手数料を払うことになります。 この場合、M&A仲介会社は、売り手と買い手の双方から仲介手数料を受け取ることができるので、仲介手数料が比較的低額に設定されているケースが多いでしょう。 なおM&A仲介において、買い手が売り手企業のデューデリジェンスを実施する場合は、一般的には買い手企業が負担することが多いでしょう。 関連記事 M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? 片手取引の場合 売り手には売り手専属の専門家がつき、買い手には買い手専属の専門家がつくというような「片手取引」のケースもあるでしょう。 この「片手取引」の場合は、双方がそれぞれのM&Aアドバイザーに対して、M&A仲介手数料を払うことになります。 たしかに片手取引の場合は、相手と共通のM&Aアドバイザーからの提案をうけることにともなう懸念を払拭できるメリットはあります。 しかしその代わりに、仲介手数料が高額になる傾向があるといえます。 関連記事 M&A仲介とは?FAとの違い、M&Aでの役割を解説! M&A・会社売却の仲介手数料をおさえるには? M&Aの仲介を業者に依頼する場合は、サービス内容が充実すればするほど手数料があがるという傾向があるでしょう。 M&Aの仲介手数料をおさえたい場合は、M&A仲介業者ではなく、M&Aマッチングサイトやプラットフォームに登録して、買い手を見つけるという方法が適しています。 M&Aのマッチングを目的としたプラットフォームでは、売り手については登録無料で利用できるものが多いので、気軽に低コストで、買い手を探すことができます。 M&Aの相手をネットで探すことが出来れば、地元企業に限られないので、全国規模で効率的に買い手を探すことができるというメリットもあるでしょう。 M&A仲介で悩んだら・・・ 会社売却を成功させるためには、タイミングも重要です。 一番時間を割きたいのは買い手探しなので、M&A仲介については早期に検討をおこない、ご自身にあったサービスを提供してくれるM&A仲介会社を選びましょう。 --- ### M&Aの失敗事例は約7割?M&Aの難しい点とは?実例は? - Published: 2024-02-09 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/10675 - Categories: その他, 事業承継, 会社売却の流れ, 会社売却の相場, 後継者不足 M&Aの失敗事例とは?失敗事例は約7割?難しい点とは?失敗事例の実例は?M&Aの失敗事例を理解することで、M&Aを成功に導くための対策を立てることができます。現在、M&Aによる事業承継をご検討中の方など、是非参考になさってください。 M&Aの失敗事例とは? M&Aは難しい?失敗事例は全体の約7割? M&Aを成功させるには?失敗事例にならないための対策とは... この記事は、現在、会社売却やM&Aを検討されている中小企業の経営者の方などを対象に、M&Aの失敗事例、失敗の原因、M&Aを成功させるための対策などを解説していきます。 ぜひ最後までご覧ください。 M&Aは難しい?失敗事例の確率は? M&Aの失敗事例とは? M&Aの失敗事例としては、M&Aをこころみたものの、M&A成約まで至らなかったケースがあげられます。 また、M&Aの成約ができた場合でも、予想に反して利益が得られなかったケースも、M&Aの失敗事例ということができるでしょう。 M&Aの7割が失敗事例? M&Aが失敗する原因のひとつに、後継者不在という問題があります。 東京商工リサーチのデータでは、2023年の後継者不在率は、61. 09%で、はじめて60%を超えたという結果がでました。 また、ちまたでは、M&Aの失敗率は約7割ということがよくいわれています。 これは一説には、2013年に実施されたデロイトトーマツコンサルティング株式会社の「M&A経験企業にみるM&A実態調査(2013年)」に由来するものといえるでしょう。 すなわち、この調査では、M&Aの成功を目標達成度が80%を超えることと定義した場合に、M&Aの成功率は36%(約3割)、失敗率は64%(約7割)という結果がでています。 ですが、M&Aはデメリットばかりではありません。 後継者問題を解決できたり、新規事業のための資金やリタイア後の生活資金を獲得できるメリットがあります。 M&Aの失敗事例から教訓をまなんで、成功を目指すことがポイントです。 関連記事 M&Aのメリット・デメリットは?売り手にメリットがあるM&Aとは M&Aの失敗事例①相手探しで失敗 M&Aの相手探しが難しい理由 M&Aの相手探しは、M&Aの成功確率を大きく左右する重要なステップです。 しかし、以下のような理由から、適切な相手を見つけるのは容易ではありません。 M&Aの相手探しでの失敗(一例) M&A対策に動き出すのが遅い 効率良くM&Aの相手探しができていない 企業文化の違いなどでM&Aが難しい M&A対策に動き出すのが遅い 中小企業の多くは、経営者が60歳を過ぎても、後継者が不在である割合が多いといわれています。 ですが、M&Aをおこないたいと思ったときにすぐ後継者候補が現れるとは限りません。 いつかは後継者が見つかるだろう、自分はまだ元気だから会社は大丈夫といったような楽観的な考え方では、いざという時に困ることもあります。 後継者候補を探しているうちに、経営者が逝去されてしまい、内紛によって企業の活気が失われ、廃業となってしまうケースもあるのです。 効率良くM&Aの相手探しができていない 親族や社内に後継者候補がいないから、M&Aによる第三者承継について早々から取り組んでいる場合もあるでしょう。 しかし、効率良くM&Aの相手探しができなければ、時間ばかりが経過していってしまいます。 またM&A仲介会社と契約を締結する場合、月額報酬を請求されることもあり、コストが多額にのぼることもあります。 関連記事 会社売却成功への道!M&A買い手探しの目的とポイントとは 企業文化の違いなどでM&Aが難しい やっと巡り会えた買い手候補であっても、企業文化の違いなどでM&Aが難しい場合もあります。 TOP面談において、経営ビジョンが共有できない相手や、ビジネスマナーに疑問がある相手の場合、その後交渉を継続しても、M&Aを上手く進められない可能性が高いでしょう。 M&Aの相手探しで失敗しないための対策 M&Aを成功させるには、早期にM&Aの相手探しを始めるとともに、M&Aの相手探しの媒体についても検討するという対策が必要です。 地域の商工会議所や銀行に相談している場合は、M&Aの相手がその地域に限定されてしまい、買い手の候補者の母数が限定されます。そのため、全国規模でマッチングができるM&A仲介業者の利用も検討してみると良いでしょう。 ただし、M&A仲介業者のなかには、月額報酬がかかるところもあるので、手数料については要確認です。 関連記事 M&A仲介手数料の相場はいくら?誰が払う? M&Aの失敗事例②交渉で失敗 M&Aの交渉が難しい理由 M&Aの交渉では、M&A価格(買収価格)や支払い条件など、さまざまな要素について合意する必要があります。 しかし、以下のような理由から交渉が難航し、失敗につながるケースがあります。 M&A交渉の失敗(一例) M&Aの価格設定が難しい例)企業価値が低かった。DDで問題が発覚。 信頼関係の破壊例)情報漏洩。 交渉経験の不足・契約書の不備例)必要な条件を提案できていなかった。 M&A価格の設定が難しい 売り手側はM&Aの価格をより高額に設定しようとする一方、買い手側はより低額でM&Aを実行したいと思うものでしょう。 企業価値に対する評価は売り手側と買い手側で対峙するものです。 収益力があり、他社にない強みがある企業の価値は高いものです。また、需要が高ければ、M&Aの価格も高額に設定しやすいものでしょう。 一方、負債が多い、需要が低いといった場合には、M&Aの価格を高額に設定することは難しいかもしれません。 また、デューデリジェンス(買収監査・DD)において、会計・税務・法務などに何らかの弱点が発覚した場合も、M&A価格を高額にすることは難しいでしょう。 関連記事 会社はいくらで売れる?会社売却価格の計算方法、相場を解説 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! 信頼関係の破壊 多くの場合、M&Aについての情報は、最終契約の締結までは口外を禁じられます。情報漏洩は、社内外の不安をあおります。 ひいては、M&Aの買い手側の信頼を破壊してしまうことにつながり、M&Aの失敗につながるリスクがあります。 また、自分勝手な交渉も、M&Aの相手方との信頼関係を破壊してしまい、M&Aの失敗につながります。 M&Aの条件がほぼ固まった時点で、それを反故にするような提案をして、信頼関係が破壊されることもあります。 譲れない条件については、タイミングを見計らって提案しておくことが重要です。 交渉経験の不足・契約書の不備 M&Aの交渉経験が不足している場合、有利に交渉を進めることは難しいかもしれません。 M&Aの交渉は、売却価格だけではありません。 手元に残しておきたい資産があったのに、その旨を買い手側に告げるのが遅くなり、後出しジャンケンになった場合、買い手側が譲らない可能性はあります。 また、雇用の維持、会社の形態の維持、個人保証の解除など、売り手側が重視したい点についても、契約書に落とし込んでおかなければ、譲受側に遵守させることが難しいものです。 関連記事 M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? M&Aの契約書の種類や内容は?契約の流れに沿って解説! M&Aの交渉で失敗しないための対策 失敗事例にならないためには、M&Aの実務経験のある専門家に相談・依頼をするといった対策が考えられます。 M&A仲介会社や、ファイナンシャルアドバイザーの無料相談を受けてみるという方法があります。 また、企業価値評価(バリュエーション)については、公認会計士が得意とするところでしょう。 また、M&Aの情報サイトなどでも、交渉のコツなどを紹介されています。ご自身でも、M&Aの実務に関する情報収集や研究を怠らないことが大切です。 関連記事 M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 M&Aの失敗事例③クロージングで失敗 M&Aのクロージングが難しい理由 M&Aのクロージングは、M&Aの最終段階です。 M&Aを実行するための条件を達成する必要があります。 売り手側としては、以下のようなクロージングの条件を達成できないことで、M&Aの失敗につながるリスクがあります。 クロージングの失敗(一例) 株主総会の特別決議での承認 キーマン条項の遵守 COC条項に関する遵守事項 株主総会の特別決議での承認 たとえば、株式譲渡によるM&Aをおこなうとします。この場合、株式を譲渡する側は、効力発生前日までに株主総会の特別決議による承認を受ける必要があります。 キーマン条項の遵守 また、クロージングの条件として、キーマン条項が締結されることがあります。 キーマン条項とは? 事業を継続するうえで重要となる特定の役員や従業員に、M&A後も残ってもらうことを確約させる条項。 キーマン条項が締結された場合は、キーマンとなる役員や従業員をつなぎとめることができて初めて、M&Aの成約にこぎつけることができます。 COC条項に関する遵守事項 COC条項とは、経営陣が交代すれば取引解消可能といった内容などの取り決めのことで、売り手側とその取引先との間で締結していることがあります。 この場合、M&Aを実行すれば、売り手側の経営者が変更になるので、取引先から取引を打ち切られる可能性があります。そのため、買い手側は安心してM&Aを実行できません。 そこで、クロージングの条件として、売り手側が「M&Aを実行しても取引条件を維持すること」について取引先の承諾をとることを義務付けるという規定をもうけることがあります。これがCOC条項に関する遵守事項です。 もし、売り手側が取引先から承諾を得られなければ、M&Aが中止になる可能性もあります。 関連記事 M&Aで従業員はどうなる?会社売却後の社員の雇用について解説 M&Aのクロージングで失敗しないための対策 このようなクロージングでの失敗を防ぐためには、関係者とのコミュニケーションを十分にとることが必須です。 そして、適切な時期に、M&Aについて関係者に十分な説明をおこない、理解してもらえるように手を尽くす必要があります。 ここまで見てきた以外にも、M&Aで失敗しやすい点はあります。M&Aの注意点については「M&Aにおける注意点とは?会社売却側・買収側のリスクや確認事項を解説」の記事でも紹介しているので、併せてチェックしてみてください。 M&Aは買い手の方が難しい?譲受企業の失敗事例3選 費用対効果が見合わない 買い手側の失敗事例としては、M&A価格を見誤ることで、ねらった費用対効果が得られないケースが考えられます。 すなわち、費用対効果が得られないというのは、投資した金額を回収するのにかなりの時間を要したり、結局投資金額を回収できなかったりといった事態に陥るリスクがあるということです。 M&A価格で失敗する原因 買い手側がM&A価格を見誤るケースとしては、ひとつには、どうしてもM&Aを成約にもっていきたいと思わせるような動機付けがある場合をあげることができます。 M&A成約の動機付け 自社以外にも複数の買い手企業の候補がいる場合 譲渡側企業に高い価値を見出している場合etc. このような場合、M&A成約を目指したいがため、売り手側の収益力に見合わないM&A価格に応じてしまうということがあり得ます。 のれん代の評価額で失敗 また、M&Aの価格で評価が難しいのは、のれん代です。 のれん代について適切な評価ができなければ、減損損失として計上しなければならないリスクがあります。 のれん代とは? のれん代とは、M&Aの買収価格と、売り手側企業の純資産額の差額のこと。技術、ノウハウ、商標権などの無形資産を評価する場合に、のれん代が評価される。 減損損失とは? 減損損失とは、企業が保有する資産の価値が、当初取得した価額よりも下落した際に計上する損失のこと。減損損失は、将来その資産から得られる収益が当初見込んでいたよりも少なくなると判断された場合に発生する。 M&A後に、買収側企業がのれんの減損損失を計上した失敗事例としては、以下のようなものがあります。 コミカミノルタアメリカのアンブリー・ジェネティクスを買収。2023年3月期にのれんの減損損失を計上。 日本郵政オーストラリアのトール・ホールディングスを買収。2017年3月期にのれんの減損損失を計上。 東芝アメリカのウエスチングハウスを買収。2016年3月期にのれんの減損損失を計上。 キリンホールディングスブラジルのスキンカリオールの買収。2015年12月期にのれんの減損損失を計上。 関連記事 事業譲渡ののれんとは?営業権譲渡の流れや売却価格の評価方法は? 財務リスク・簿外債務を見抜けなかった 買い手側の失敗事例としては、譲渡企業側の財務状況が悪く、M&A後にさらに業績が悪化してしまうケースがあげられます。 また、M&Aをおこなう前に、譲渡側企業の簿外債務を見抜けず、経営統合(PMI)の過程で、多額の債務が発覚するという失敗事例もあります。 M&A後に、買収企業側が不正会計などの財務リスクを負った失敗事例としては、以下のようなものがあります。 LIXILドイツのグローエと子会社ジョウユウを買収。LIXILは、ジョウユウの不正会計等を取り込むことで約600億円の損失を被った。 シナジー効果が高くなかった 買い手側の失敗事例としては、M&Aによるシナジー効果を見誤ったために、損失をこうむるケースがあげられます。 譲渡側企業と譲受側企業の事業の整合性や、企業文化の違いから経営統合がうまくいかず、シナジー効果が生まれないこともあります。 また、時代の流れにあったサービスを提供できない場合、期待したシナジー効果が生じないこともあるでしょう。 M&A後に、買収側企業がシナジー効果を得られなった失敗事例としては、以下のようなものがあります。 セブン&アイホールディングスニッセンを子会社化。2016年2月期に通信販売事業において約84億円の営業損失をだした。 まとめ M&Aは、企業にとって大きな可能性を秘めた戦略ですが、同時に多くのリスクを伴います。 この記事では、売り手側目線・買い手側目線双方からの失敗事例を紹介してきました。 これらの事例から学びとった失敗要因を参考に、M&Aの難しさを理解し、慎重な検討と準備をおこなっていきましょう。 --- ### M&A仲介とは?FAとの違い、M&Aでの役割を解説! - Published: 2024-02-07 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/10580 - Categories: 相談・仲介 M&A仲介とは、売り手企業と買い手企業の間に業者が入り、双方の条件調整や交渉をサポートするサービスです。M&A仲介会社を利用することで、スムーズなM&Aを実現することができるでしょう。 M&A仲介とは? FA・アドバイザリーとの違いは? M&A仲介は実際に何をしてくれるの? このような疑問をお持ちではありませんか。 会社売却や事業売却などをしたいと考えていても、自身で買い手を見つけるのは困難な場合が多いです。そこで便利なサービスが、M&A仲介です。 この記事では、M&A仲介について、その仕組みを解説していきます。最後に登録料無料で買い手を探せるサービスについてもご紹介します。ぜひ最後までお読みください。 M&A仲介とは? M&Aとは? M&Aとは、Mergers and Acquisitions(合併と買収)の略称です。2つ以上の企業が1つになったり、ある企業が他の企業を買収したりすることを指します。 M&Aには大規模なものから、同族企業の事業売却などの小規模なものまで、様々な形態があります。 しかしすべてのM&Aに共通する要素としては、売り手と買い手が存在することです。 スムーズなM&Aができるかどうかは、売り手と買い手をつなぐ適切な仲介役がいるかどうかも重要になるでしょう。 M&A仲介とは? M&A仲介とは、売り手企業と買い手企業の間でM&Aを成立させるために、仲介業者が間に立ち、双方の条件調整や交渉をサポートするサービスのことです。 M&Aは複雑な手続きを伴うため、専門的な知識や経験がなければ、スムーズに進めることは困難です。 また、根本的な問題として、会社売却をしたいと思っても、自身で買い手を見つけることが困難という問題があります。 そこで、M&Aの譲渡先を探したいと判断した場合、M&Aの仲介業者、融資を受けている銀行や地域の商工会議所などに相談し、成約までサポートしてもらうという流れがよくあるパターンです。 M&A仲介の方法としても、さまざまな種類があります。 売り手と買い手の仲立ちをするかたちで仲介する方式(両手取引)、売り手と買い手のいずれかの専属アドバイザーとなる方式(片手取引)、売り手と買い手のマッチングに重きをおいた方式(プラットフォームの提供)などです。 M&Aのニーズとは? M&Aの一例として会社売却を例にとってみると、売り手としては、新事業立ち上げの資金を確保したい、早期リタイア後の生活資金にあてたいなどの目的を持っているケースが多いです。 ほかにも、昨今では、突然の不幸により親御さんの株式を相続したけれども、ご自身では会社運営が困難という方が、会社売却をご検討されるケースもよくあります。 ご自身の代で会社を解散させてしまうのは、とても苦しい選択です。しかしM&Aをおこなえば、経営手腕のある第三者の手によって、ご親族が立ち上げた事業を存続させられる可能性がでてきます。 一方、会社売却について、買い手側からみれば買収ということになります。事業拡大や事業多角化などの目的で、買い手にはM&Aのニーズがあることも事実です。 ですが売り手と買い手が出会えなければ、M&Aは成立しません。M&A仲介は、M&Aのニーズをかなえるために役立つツールになるものです。 関連記事 第三者承継の方法は?メリットは?3つの注意点も解説! M&A仲介とFAとの違い M&Aの成功には、専門的な知識と経験を持つパートナーの存在が不可欠です。 M&A仲介は、売り手と買い手の双方と契約を締結し、双方の利益を考慮しながらM&A成立を目指す専門家です。情報収集や相手先との交渉など、M&A全般の業務をサポートし、費用は成功報酬型が一般的です。 FAはM&Aアドバイザリーの一種と定義されることが多いです。 M&Aアドバイザリーとは、売手または買手のどちらか一方と契約を締結し、その側の利益の最大化を目指す専門家のことです。 FAとして活動する会社としては、外資系銀行、銀行、証券会社等が挙げられます。 M&AにおけるFAは、戦略策定や財務評価など、専門的なアドバイスを行います。報酬に加え、顧問料などを受け取るケースもあります。 M&A仲介とFAはどちらにすべき? M&A仲介は、双方の利益を調整しながら円滑なM&Aを進めたい場合に適しています。一つの業者が両当事者を調整するため、成約までのスピードが速いのも特徴です。 一方、FAは、より専門的なアドバイスを求め、自社の利益を最大化したい場合に適しています。 M&A仲介とFAの主な違い M&A仲介FA担当売り手・買い手の両方売り手・買い手のどちらか成約までスピード速い時間がかかる M&A仲介を利用するメリット 買い手探しを効率よく進められる M&A仲介会社は、長年にわたって培ってきた豊富なネットワークを活用し、自社のニーズに合致した買い手企業を効率的に探し出すことができます。 次の3つのポイントが特に大きなメリットとなるでしょう。 幅広い候補先・非公開案件 M&A仲介会社は、公開情報には掲載されていない潜在的な買い手企業を含め、幅広い候補先を紹介してくれます。自社だけで買い手を探す場合と比べて、より多くの選択肢を検討できるでしょう。 非公開案件は、市場に出回る前にM&A仲介会社を通じて紹介されることが多く、競争が少なく有利な条件で交渉を進められる可能性があります。 的確なマッチング M&A仲介会社は、売り手企業の事業内容、経営理念、財務状況などを詳細に分析し、最適なM&Aになるようマッチングします。単に規模や業種だけでなく、企業文化や経営陣の相性なども考慮してくれる業者もいるでしょう。 迅速な対応 M&A仲介会社は、買い手企業とのパイプを活かして、迅速な面談や情報交換の場をセッティングしてくれます。自力で買い手候補と連絡を取る場合と比べて、関係構築にかかる時間を大幅に短縮できるでしょう。 関連記事 会社売却成功への道!M&A買い手探しの目的とポイントとは 企業価値を正しく評価してくれる M&A仲介は、M&Aの専門知識と経験に基づいて、企業価値を客観的に評価し、適正な価格でのM&Aを実現します。 企業価値評価(バリュエーション)には、類似会社比準法、DCF法などがありますが、いずれも計算が複雑であり、専門的な知識・ノウハウが求められます。 他にも、財務状況や業界動向の分析などを行う必要があるため、自社の企業価値を正しく算出したいのであれば、M&A仲介会社を利用することをおすすめします。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説 各種契約書の作成を代行してくれる M&A仲介会社は、弁護士などの専門家と連携し、これらの契約書の作成を代行します。契約書の内容を詳細に確認し、企業にとって不利な条項を排除することで、契約上のリスクを回避することができるでしょう。 関連記事 M&Aの契約書の種類や内容は?契約の流れに沿って解説! 難しい交渉をスムーズに進めてくれる M&A交渉は、複雑で難航するケースが多くあります。M&A仲介会社は、売り手と買い手の希望や条件などを丁寧に調整し、双方が納得できる条件で交渉を進めてくれます。 ただし、業者によっては迅速な成約を重視するあまり、希望通りではない条件での契約を強く勧めてくる場合もあるようです。話し合いや相談が進まないようであれば、別の専門家に相談して、契約の条件が妥当か確認するべきでしょう。 M&A仲介会社を使うメリット メリットデメリット自分で対応仲介手数料がかからない買い手が見つからないM&Aの手続きが複雑で難しいM&A仲介会社全国規模で買い手探しサポートしてもらえるサービスに応じて仲介手数料が高額 関連記事 M&Aの価格交渉で失敗を回避するには?M&A条件交渉のポイントは? M&A仲介の流れは? ①M&A仲介会社に相談 まずは、売り手企業や買い手企業が、M&Aを検討している旨を、仲介会社に相談します。 なお、相談料が無料とは限らないので、仲介会社に必ず確認してから、相談をおこないましょう。 ②M&A仲介会社が買い手候補を探してマッチング 仲介会社が、売り手企業と買い手企業のニーズを整理し、双方の条件に合致する相手を探します。 具体的な企業名をふせたノンネームシートを見ながら、M&Aの相手として適切かどうかを吟味していきます。 なおM&A仲介会社が、ノンネームシートを作成してくれることも多いです。 興味のある企業があればオファーし、マッチングすれば面談をセッティングしてもらえます。 ③交渉 売り手企業と買い手企業との間で、価格や条件など交渉をすすめます。 売り手側から企業価値の評価方法を用いて相場を出したり、買い手側からデューデリジェンスの結果を引き合いに出されたりして、売却価格の交渉をおこなっていきます。 そのほか会社売却にともなう条件について、詳細に交渉をおこなっていきます。 M&A仲介会社がついていれば、必要なサポートしてくれるでしょう。交渉に先んじて、企業の秘密が漏れないように「秘密保持契約」を締結することについてのサポートなども、期待できます。 ④契約締結 詳細条件の交渉が完了したら、売り手企業と買い手企業がM&A契約を締結します。 M&A仲介会社がついている場合、契約書のひな型などを準備してくれることが多いでしょう。 ⑤クロージング M&A契約に基づき、売り手企業から買い手企業への株式や事業の譲渡などをおこないます。 M&A仲介業者がついている場合、クロージングの手続きについてもアドバイスをもらえる可能性が高いでしょう。 関連記事 会社売却の流れを解説!手続きや手順の注意点は? M&Aの課題とは?会社売却側の抱える問題点を解説 M&A仲介会社を利用する場合の費用・手数料は? 相談料 相談料は、M&Aに関する相談を行う際に支払う手数料です。 無料相談の場合がほとんどですが、仲介会社によっては、数万円程度の相談料が発生する場合もあります。 着手金 着手金は、M&A仲介会社と業務委託契約を締結する時に支払う手数料です。実際にM&Aプロセスに入る前に、売り手企業の情報をまとめた資料を作ったり、企業価値の評価をしたりするために必要となります。 M&A仲介の着手金は、業者によっては無料の場合もありますが、具体的な案件により金額は変動します。 M&A仲介の着手金は50万円から500万円程度が一般的な相場です。ただし、案件が成約しなかった場合でも着手金は返金されません。 関連記事 M&Aの着手金とは?無料になる?相場や支払いの注意点まとめ 中間報酬 中間報酬は、売り手企業と買い手企業が基本合意書を締結した時点で支払われる費用です。必要ない場合もありますが、成功報酬の10%から30%前後が必要となるケースもあります。成約しない場合、中間報酬は一般的に返金されません。 月額報酬(リテイナーフィー) 月額報酬(リテイナーフィー)は、M&A仲介会社に支払う月々の固定手数料です。月額報酬を採用している仲介会社を利用する場合には、M&A成約までの期間、毎月費用を支払わなければなりません。 成功報酬 成功報酬は、M&Aの最終契約締結後に支払われる費用であり、通常は取引金額に基づいてレーマン方式を使用して算定されます。 レーマン方式とは レーマン方式は、特殊な計算方法のことで、取引価格が上昇するにつれて手数料率が減少していく方式のことです。 売却額の範囲に応じて、1~5%の間で、手数料の割合が変わります。 基準となる金額が10億円の場合、5億円までの部分の手数料は5%で2,500万円となります。 5億から10億円までの部分手数料は4%で、2,000万円となります。 この場合、それぞれの合計4,500万円がレーマン方式によって計算された手数料となります。 基準となる金額       手数料率5億円以下の部分5%5億円超10億円以下の部分4%10億円超50億円以下の部分3%50億円超100億円以下の部分2%100億円超の部分1% M&A仲介で悩んだら・・・ M&A仲介を使うべきか、FAやアドバイザリーを使うべきかは、会社の規模や業種、状況などによって変わります。 しかし、なるべく早く会社売却を成功させたいという希望があるなら、仲介会社に相談するべきでしょう。 仲介会社によって報酬体系などは全く違うので、自社に適した仲介会社を選ぶため、複数社に登録して無料相談を受けるところから始めましょう。 --- ### M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? - Published: 2024-02-07 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/10490 - Categories: 相談・仲介, 事業承継 M&A・会社売却の相談窓口は?各相談相手のメリット・デメリットは?相談前の準備とは?M&Aによる事業承継などをご検討中の方は、M&Aの専門家に相談してみてください。登録料無料のところも多いので、賢く活用していきましょう。 M&Aの相談窓口は?相談室の連絡先は? M&Aの相談できる内容は?無料相談は? M&Aの相談相手を選ぶ基準は? M&Aの相談は、M&A仲介会社のほか、公認会計士、税理士、弁護士などの専門家や、事業承継・引継ぎ支援センターという公的機関もあります。 この記事では、相談先の一覧を示したうえで、各種相談先のメリット・デメリットを整理していきます。 ぜひ最後までご覧ください。 M&Aの相談窓口一覧!無料相談できる相談室も紹介 支援機関一覧 M&Aをご検討中の場合、以下のような相談窓口を利用できます。 無料相談を実施してくれる場合もあるので、そのような機会があれば上手く活用しつつ、M&Aの準備を進めていきましょう。 支援機関具体例公的機関・事業承継・引継ぎ支援センター・よろず支援拠点・商工会議所・中小企業団体中央会士業等専門家・公認会計士・税理士・弁護士・中小企業診断士・行政書士金融機関・地方銀行・信用金庫・信用組合その他・M&A仲介会社・FA・M&Aマッチングサイト M&Aを相談できる公的機関 事業承継・引継ぎ支援センター 相談窓口の概要・メリット 事業承継・引継ぎ支援センターでは、M&Aについて無料相談ができます。 事業承継・引継ぎ支援センターは、国が47都道府県に設置している公的相談窓口です。 事業承継問題のお悩みをお持ちの中小企業の経営者の方から、第三者への会社譲渡(M&A)についての相談を受けたり、M&Aの実行支援をおこなったり、後継者のマッチング等もサポートしてくれます。 セカンドオピニオンとして、事業承継・引継ぎ支援センターを利用することも可能です。 事業承継・引継ぎセンターは、法律にもとづき、国が設置している機関なので、安心して相談ができます。 相談の注意点・デメリット M&Aの相談は可能ですが、実際のM&Aサポート業務(株価算定、条件交渉、契約書の作成、税務上のアドバイス等)の依頼には、専門家の手数料が必要になります。 また、M&Aの相手方との条件交渉についても、代行してもらうことはできず、代理人を選任した場合、その道の専門家を紹介してもらう必要があります。 相談窓口の連絡先・相談の流れ 事業承継・引継ぎ支援センターは日本全国にあります。詳しくは各センターの連絡先をご覧ください。 相談の流れは、まずは連絡を入れて、相談予約の日時をおさえ、相談に行くことになります。 商工会議所・商工会 相談窓口の概要・メリット 商工会議所とは、商工業者で構成される経済団体で、中小企業や個人事業主のサポートをおこなっている団体のことです。 地域の会社の経営者や商工会議所・商工会は、事業承継全般に関する助言、専門家の紹介、情報の提供などのほか、経営者・後継者教育に関するセミナーの実施等もおこなっています。 事業承継・引継ぎ支援センターとの連携も期待できます。 相談の注意点・デメリット 商工会議所に相談するデメリットとしては、商工会議所の会員にならなければ相談できず、会員になるには費用がかかるということです。 また、商工会議所が全面的にM&Aの支援をしてくれるわけではなく、M&Aの実行支援は各種専門家に依頼する必要があり、その場合は、そのサービス内容に応じて費用がかかるというデメリットがあります。 相談窓口の連絡先・相談の流れ 事業所がある地域の商工会議所・商工会に連絡を入れ、相談予約をとり、相談にのってもらう流れになります。 全国の商工会議所 日本商工会議所 全国の商工会・都道府県商工会連合会 全国商工会連合会 よろず支援拠点 相談窓口の概要・メリット よろず支援拠点とは、国が設置した、中小企業・小規模事業者の方のための無料の経営相談所です。 何度でも無料で相談可能というのが一番のメリットでしょう。 相談の注意点・デメリット ただし、事業承継に強い専門家などに実務を依頼する場合は、有料となるため、費用を準備する必要があるでしょう。 相談窓口の連絡先・相談の流れ よろず支援拠点は全国47都道府県に設置されており、電話、メール、FAX等で相談予約を受け付けています。詳しくはよろず支援拠点の相談受付窓口の連絡先をご覧ください。 相談予約をとり、コーディネーターによるヒヤリングを受け、解決策を提案してもらいます。その後、解決先の実施についてフォローをしてもらえます。 中小企業団体中央会 相談窓口の概要・メリット 中小企業団体中央会は、法律にもとづいて設立された、中小企業の振興発展を図るために中小企業を支援する団体です。 事業承継セミナーを開催して情報提供等をしたり、組合内の後継者不在の中小企業を支援機関に紹介するなどの役割を果たすことが期待されています。 相談の注意点・デメリット 中小企業団体中央会についても、相談をするには、まずは当該団体のへの入会が必要となり、会費がかかります。 相談窓口の連絡先・相談の流れ 中小企業団体中央会の相談の流れは、通常、ご自身の地域の拠点に連絡を入れ、相談予約をとり、来会して相談にのってもらうことになります。 相談予約は、オンラインで受け付けている拠点もあるようです。 都道府県中小企業団体中央会 全国中小企業団体中央会 M&Aを相談できる士業専門家 公認会計士 M&Aで相談できること 企業価値評価(経営の見える化・会社の価値の磨き上げ) M&A価格の試算 財務デューデリジェンスへの対応etc. 相談相手の特徴・メリット 公認会計士は、会計の専門家です。公認会計士には、企業価値評価(バリュエーション)や、M&Aにおける財務デューデリジェンスの対応等について相談ができます。 売却価格の設定について助言が欲しい場合や、より高額で売却したい場合に企業価値を高める方法について相談することができる点が、公認会計士に相談するメリットといえます。 相談の注意点・デメリット 公認会計士はあくまで会計のプロであるため、M&Aスキームや法的手続き、税金対策について詳しくない可能性があります。 オールマイティーに対応できない点が、公認会計士のデメリットといえるかもしれません。 相談窓口の連絡先・相談の流れ 公認会計士にM&Aの相談をする場合は、まずはお近くの公認会計士協会に連絡を入れることになるでしょう。 M&A仲介会社を利用している場合、公認会計士を紹介してくれることもあります。 税理士 M&Aで相談できること M&Aにかかわる税金対策 税務デューデリジェンスへの対応 M&Aのマッチングの支援etc. 相談相手の特徴・メリット 税理士は、税務の専門家です。M&Aにかかわる税金対策や、企業の税務対策について助言を受けることができます。 また税理士が無料で登録して利用できる担い手探しナビというサービスもあります。事業承継でお悩みの際はまず、顧問税理士に相談して、後継者探しからサポートしてもらうという選択肢もあるでしょう。 日本税理士会連合のホームページには、日本税理士会連合会事業承継ポータルサイトが開設されており、事業承継のお悩みを相談できる基盤が整備されています。 相談の注意点・デメリット 税理士も同様に、税金・税制については詳しくても、会計や法務についてはフォローできない可能性があります。 税理士がカバーできない専門分野については、別途、ほかの専門家との契約が必要になるでしょう。 相談窓口の連絡先・相談の流れ 担い手探しナビを利用する場合は、顧問税理に相談をおこないます。 顧問税理士に相談できない場合は、日本税理士会連合会に連絡を入れたり、相談しているM&A仲介会社に税理士を紹介してもらう流れになるでしょう。 弁護士 M&Aで相談できること M&Aのスキームの相談 法務デューデリジェンスへの対応 契約書の作成 関係者の利害関係の調整や、交渉 個人保証の解除、法人清算の手続きetc. 相談相手の特徴・メリット 弁護士は、法律・契約の専門家です。弁護士には、M&Aスキームの検討やリスクの対処法などを相談したり、M&Aの交渉や契約書の作成を依頼したりすることができます。 また、弁護士は法的問題についての交渉を得意とするので、関係者の利害調整や、M&Aの相手方との交渉の進め方についても相談できるでしょう。 そのほか、経営者の個人保証の解除や、事業譲渡後の法人清算など、M&Aの周辺のお困りごとについても相談することができます。 法的問題についてお悩みが多い場合は、弁護士に相談するメリットが大きいといえます。 相談の注意点・デメリット 弁護士相談の注意点としては、すべての弁護士が無料相談に対応しているとは限らないことです。 また、無料相談に対応している弁護士であっても、無料相談は初回のみで、その後は正式な依頼をする必要があるという流れが多いでしょう。 相談窓口の連絡先・相談の流れ 日本弁護士連合会では、「中小企業のための ひまわり ほっとダイヤル」を開設しています。お電話(受付時間は平日の10:00~12:00/13:00~16:00)またはインターネット(24時間申し込み可能)から、対面相談の予約をとります。多くの地域で初回面談30分間の相談料が無料となっています。 ただし、こちらのひまわりほっとダイヤルについては、弁護士を選ぶことはできません。自身で弁護士を吟味したい場合は、インターネットで「M&Aに強い弁護士」などと検索をかけて、弁護士を探すという方法もあるでしょう。 また、M&A仲介を利用している場合は、担当者に相談してみると、その会社に弁護士が登録していれば、紹介してくれます。 金融機関その他のM&A相談先 金融機関 相談相手の特徴・メリット M&Aの相談は、地元の金融機関に相談するという選択肢もあるでしょう。 地元の金融機関であれば、地元企業の情報に精通しており、自力で探すよりもマッチングしやすいメリットがあります。 また、地方銀行の場合、事業承継の相談料や着手金が無料であるところは多いでしょう。 相談の注意点・デメリット 融資をともなわないM&Aについては消極的な傾向があります。後継者候補とのマッチングがうまくいかないときは、他の支援機関に相談することも検討しましょう。 また、M&Aの実行については、専門家に支援を依頼する費用が掛かる可能性もあるので、すべて無料相談で終わらせるということは難しいかもしれません。 相談窓口の連絡先・相談の流れ 相談の流れとしては、取引のある銀行に相談することが一般的です。 ただ、なかには、事業承継・M&Aの相談専用の相談窓口を設置している銀行もあるようです。 事業承継・M&A相談窓口用のフリーダイヤル『結ぶ・コール』を新設しましたのでお知らせいたします。事業を営むお客様にとって重要な経営課題となっている「事業承継・M&A」について、担当部署直通のフリーダイヤルとなります。 NEWS RELEASE「事業承継・M&A相談用フリーダイヤル『結ぶ・コール』の新設について」(2024. 2. 7現在) M&A仲介会社 相談相手の特徴・メリット M&A仲介会社に相談するメリットとしては、M&Aの流れ全体のサポートを受けられることです。 WEBサイトでマッチングができる可能性もあるので、買い手探しを効率的にできるメリットがあるでしょう。 また、交渉や書類作成の補助、必要であれば専門家の紹介など手厚いフォローをうけることができます。 相談の注意点・デメリット M&A仲介会社のデメリットとしては、最低500万円~1000万円程度の手数料がかかる可能性があることです。 売り手側としては、M&Aの対価が入れば支払うことができる可能性は高いですが、予算との兼ね合いで、M&A仲介会社を選択する必要がありそうです。 相談窓口の連絡先・相談の流れ M&A仲介会社に相談するには、まずは「M&A仲介会社」などのキーワードでネット検索をおこない、M&A仲介会社を探します。 その後、サービス内容や料金などを比較して、利用しやすいM&A仲介会社に、サイト上のフォームで連絡を入れるといった流れになるでしょう。 FA(ファイナンシャルアドバイザー) 相談相手の特徴・メリット FA(ファイナンシャルアドバイザー)とは、M&Aを検討中の企業に対して、M&Aの計画立案から成約に至るまで、一貫して助言業務をおこなうM&Aの専門家のことです。 通常、FAは譲渡側あるいは譲受側のいずれか一方とアドバイザリー契約を締結します。専属アドバイザーとなるため、安心感が増すメリットがあるでしょう。 相談の注意点・デメリット ファイナンシャルアドバイザーの場合、自身の利益を第一に優先してくれる一方、柔軟な交渉が難しく、交渉がまとまりにくくなるデメリットも想定されます。 中小企業のM&Aでは、より柔軟に対処できる仲介によるケースも多いでしょう。 相談窓口の連絡先・相談の流れ FAは、大手証券会社、外資系投資銀行、大手会計事務所(4大監査法人)などに所属しています。 これらの機関にM&Aを相談した場合、FAによるM&Aのサポートが受けられる可能性があります。 M&Aよくあるお悩み相談室 Q1. M&Aの相談相手を選ぶ基準は? M&Aの相談相手を選ぶ基準は、専門性、費用、相性などです。 M&Aのスキームには様々な手法があり、M&A価格の設定も一般的な計算方法を踏まえた金額にする必要があります。そのため、M&Aは、専門性を有する相手に相談するのが良いでしょう。 一方で、専門性が高いサービスを受ければ、その分費用はかかります。また、担当者との相性も重要です。 必要なサービスがあるか、手数料はどのくらいかなどを見比べて、信頼できる相手に相談するのがよいでしょう。 Q2. M&Aの相談の際どんな資料が必要? M&Aを相談する際に必要な資料については、相談先に確認して準備します。 なお、一般的には、直近3年分の税務申告書、決算書(損益計算書・貸借対照表を含む。)、勘定科目内訳明細書の写しなどを準備することになります。 会社の概要や、会社の強みが分かる資料もあるとよいでしょう。 また、M&Aを進めるにあたって、懸念がある場合は、その情報についても相談先に共有しておくことが大切です。 相談の準備 直近3年分の税務申告書 決算書 勘定科目内訳明細書 会社の概要が分かる資料 自社の強み・弱みが分かる資料etc. Q3. M&Aの相談のタイミングは? M&Aの相談のタイミングは、できる限り早い時点がよいでしょう。 買い手探しからクロージングまでは、最低でも半年から1年はみておいたほうがよいです。 条件にあう買い手が見つかる保証はないので、早めの相談がよいでしょう。 M&Aの相談先は沢山ありますが、相談してみないことには、何も始まりません。 迷った場合はまずは無料相談を受けてみるというのは、いかがでしょうか。 --- ### 事業譲渡と株式譲渡の違いは?目的・メリット・デメリットなど解説 - Published: 2024-02-07 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/10337 - Categories: 事業譲渡, 株式譲渡 事業譲渡と株式譲渡の違いは?目的・メリット・デメリットなどを解説!この記事では、両者の違いを整理して、向いている場面・不向きな場面を解説していきます。中小企業の経営者の方等、会社売却をご検討中の方は必見です。是非さいごまでご覧ください。 事業譲渡と株式譲渡の違いは? 事業譲渡と株式譲渡の違いを踏まえると、どちらを選択すべき? 事業譲渡と株式譲渡のメリット・デメリットの違いが知りたい M&Aを成功させるには、事業譲渡と株式譲渡の目的や効果の違いに着目して、企業にとって適切なスキームを選択することが重要です。 この記事では、事業譲渡と株式譲渡の制度の違い、メリット、デメリット、それぞれの手続きが適する場面などについて解説しています。 中小企業の経営者の方など、現在、会社売却をご検討中の方は是非参考にしてみてください。 事業譲渡と株式譲渡の違いは? 事業譲渡と株式譲渡とは?定義の違いは? 事業譲渡とは、事業譲渡契約にもとづいて、譲渡企業が所有する一部もしくは全部の事業を譲渡するものです。 株式譲渡とは、株式譲渡契約にもとづいて、譲渡企業の株式を譲渡するものです。 事業譲渡と株式譲渡の4つの違い 事業譲渡と株式譲渡の違いについて整理すると、一例として以下の4点の違いをあげることができるでしょう。 すなわち、取引の内容(主体、対象)、契約の形態、目的、効果について事業譲渡と株式譲渡には違いがあります。 事業譲渡*¹株式譲渡内容企業が事業を売買すること。事業譲渡契約書を締結。株主が株式を売買すること。株式譲渡契約を締結。対価譲渡対価は企業に入る。契約から決済まである程度の期間が必要。譲渡対価は株主に入る。通常、契約と決済は同日におこなわれる。目的事業の譲渡・取得経営権の譲渡・取得効果特定承継*²包括承継*³簿外債務の承継リスクあり。 *¹ ここでいう事業譲渡は、個人事業主の事業の譲渡は含まず、会社の「事業譲渡」を指す。*² 特定承継とは、承継事業を構成する契約関係を移転させるために個々の契約当事者の同意を要する契約のこと。承継される権利義務の範囲は譲渡人(売り手企業)と譲受人(買い手企業)の契約によって、定められる。*³ 包括承継とは、上記のような同意を要しない契約のこと。 これらの違いに着目しながら、いずれのM&Aの手法を選択すべきなのかを検討する必要があります。 それでは、それぞれのスキームのメリット・デメリットなどの違いを踏まえて、事業譲渡が向いている場面、株式譲渡が向いている場面について整理していきましょう。 関連記事 M&Aスキーム (手法)を比較!メリット・デメリット・手続きの違いを解説 売り手側が事業譲渡を選択するメリットは?株式譲渡との違いとは... 事業譲渡とは? 事業譲渡とは、会社が営む事業の全部または一部を他の会社に譲渡するという取引行為をいいます。 株式譲渡とは違い、事業譲渡は会社の「事業」が、「会社の取引」として譲渡の対象となります。 事業譲渡の「事業」 土地、建物などの不動産 売掛金 在庫商品 のれん、人材、ノウハウetc. 売り手側企業(譲渡側)は、自社では収益をあげることができない事業のみを切り離し、買い手側企業(譲受側)に譲渡することができます。 このように不要な資産を処分できる点は、事業譲渡のメリットといえるでしょう。 関連記事 事業譲渡手続きの流れは?会社譲渡の方法や手順を知ってスケジュールを立てよう 事業譲渡の対価 譲渡益は会社に入る 事業譲渡は会社の取引の一種なので、事業譲渡の対価は、経営者個人の懐に入るのではなく、売り手企業に入ることになります。 そのため、事業譲渡の場合、譲渡の対価を、その後の会社の運営の資金として活用することが可能です。 譲渡益は高額になりやすい 事業譲渡の譲渡対価は、高額になりやすい傾向があります。 というのも、事業譲渡は、株式譲渡とは違い、買い手企業が簿外債務を負うリスクなどを回避できるスキームです。 買い手側企業は本当に買いたい事業のみを譲受できるので、その分、譲渡益はより高額に設定されやすくなるのです。 このように売り手企業に多額の譲渡益が入る可能性がある点も、事業譲渡のメリットといえるでしょう。 関連記事 事業譲渡の対価はどうやって決まるのか?計算方法は? 事業譲渡の目的 事業譲渡の場合は、株式譲渡とは違い、事業のみを譲渡することになり、売り手企業そのものの経営権は経営者の手元に残ります。 そのため、その後も自社の経営に携わりたい経営者にとっては、事業譲渡をおこなうメリットがあるといえるでしょう。 事業譲渡の注意点・デメリット 事業譲渡は、株式譲渡と違い、特定承継になります。 すなわち、事業に関連する契約を引き継ぐ場合には、個別に契約を締結し直す必要があるので、手続きが煩雑になるというデメリットがあるということです。 たとえば、譲渡事業に関連する従業員を移籍させるにはその従業員全員についてそれぞれ同意を取得する必要があります。 また、売り手企業の有する許認可なども、買い手企業があらためて申請をしなければなりません。 関連記事 M&Aのメリット・デメリットは?売り手にメリットがあるM&Aとは 事業譲渡が向いている場面・不向きな場面 事業譲渡が向いている場面 事業譲渡をおこなえば、不要な事業を切り離したうえで、その譲渡対価を主力事業に資金投入が可能になります。 そのため、事業譲渡は、企業の経営再建を図る場合に非常に適したスキームといえます。 事業譲渡が不向きな場面 ただし事業承継は、特定承継であるがゆえに手続きが煩雑となるデメリットもあります。 譲渡対象となる事業に関連する契約関係が多数ある場合は、事業譲渡ではなく株式譲渡などの包括承継ができるスキームの選択も検討しましょう。 事業譲渡のまとめ 経営再建に向いている 譲渡対象となる事業に関連する契約関係が多数ある場合は、手続きが煩雑になるので、不向き。事業譲渡以外の手法を検討する余地がある 事業譲渡のまとめについて一言 なお、個別の事案によって、適切なスキームに違いが生じる場合もあります。 現在、M&Aや会社売却をご検討中の方は、専門家に相談するなどして検討してみてください。 売り手側が株式譲渡を選択するメリットは?事業譲渡との違いとは... 株式譲渡とは? 株式譲渡とは、株主が保有する株式を、第三者に譲渡することをいいます。 株式譲渡は、事業譲渡と違い、会社の事業ではなく、会社そのものを譲渡することを意味します。 株主は、自身の保有する株式の数や種類に応じて、会社の所有者としての地位を有しています。そのため、会社の所有者としての地位から離れたい場合は、株式を第三者に譲渡すればよいのです。 そして、株式が流通する限り、その会社は存続できるというメリットを享受できます。 関連記事 株式譲渡の手続き・流れを徹底解説!会社の株式譲渡で必要な書類と注意点とは 株式譲渡の対価 株主には、個人株主のほか、法人株主も含まれますが、会社の取引ではないので、譲渡対価は株主が手にすることになります。 そのため、その後の生活資金の確保などのために、譲渡益を手にしたい中小企業の経営者などは、株式譲渡をするメリットがあるでしょう。 なお譲渡益を取得した場合、その利益に税金がかかります。 中小企業の経営者の場合は、事業譲渡をおこない自身に譲渡益を配当するよりも、株式譲渡をおこない譲渡益を得るほうが税金を抑えられるメリットがあるでしょう。 譲渡対価にかかる税金*¹ 株式譲渡の税率(個人株主)20. 315% 事業譲渡の税率・約34%(法人の実効税率)・課税資産は消費税*²がかかる。・このほか、経営者へ配当などをおこなう際にも、課税される。 *¹ 譲受企業は、不動産の譲渡を受けた場合、不動産取得税および登録免許税を納税する必要がある。*² 消費税は、譲渡企業が譲受企業から徴収して納付する。 関連記事 非上場株式を譲渡するには?売却価格や手続きは? 株式譲渡の目的 会社経営から離れる 株式譲渡は、事業譲渡と違い、自身が保有する株式を譲渡することで、会社の所有権を手放すことができます。 中小企業の場合、所有と経営が分離されていないことが多いがゆえに、通常であれば、株式譲渡をおこなう際、自身の取締役解任手続きをとることができるので、会社経営の重責からも解放されるでしょう。 株式譲渡は、事業譲渡と違い、経営陣の高齢化による代替わりや、早期リタイアにより悠々自適な生活を送りたいといった希望を叶えるスキームです。 会社の個人保証から解放される 会社経営から離れることができれば、会社の個人保証から解放される可能性もでてきます。 個人保証とは? 企業が金融機関から融資を受ける場合、社長やその親族などの個人が、会社の融資について負う保証のこと。 会社の個人保証は、株式譲渡により自動的にはずせるわけではありませんが、交渉次第ではずせる可能性があるので、不安をかかえて老後を過ごすような事態は回避できるのではないでしょうか。 このように、会社経営から離れることができること、個人保証から解放されることは、株式譲渡をおこなうもっとも大きなメリットの一つといえます。 関連記事 会社売却後の人生はどうなる?会社売却で経営者・社員等のその後は? 株式譲渡の注意点・デメリット 株式譲渡の場合、事業譲渡とは違い、包括承継となります。 したがって、株式譲渡をおこなえば、会社の資産のみならず、債務も引き継ぐことになります。 この点で、事業譲渡とは違い、買い手にとって株式譲渡はリスクのある取引となります。 そのため、株式譲渡によるM&A価格は、事業譲渡の譲渡価格よりも低額になりやすい傾向があります。 売り手側の対策 ご自身が中小企業の経営者であり、今後、株式譲渡をお考えの場合は、M&A価格をより高額にするために、何らかの対策をたてる必要があるでしょう。 たとえば、現状での企業価値を把握したうえで、会社の簿外債務や不採算事業の生産性の見直しを図り、会社の魅力の磨き上げをおこなうといった対策が考えられます。 デューデリジェンスの段階で簿外債務が発覚し、その後の会社売却価格の交渉が不利になってしまうケースも良くあるので、事前の準備が非常に重要です。 関連記事 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 株式譲渡が向いている場面・不向きな場面 株式譲渡が向いている場面 高齢化により退任をご検討中の方、アーリーリタイア・セミリタイアなどより、社長職から離れることをお考えの方にとっては、株式譲渡という手法は目的にかなった魅力的なスキームといえるでしょう。 会社の個人保証をはずせる可能性や、譲渡益の取得・税金対策などを考慮すれば、株式譲渡が最適な選択肢となるでしょう。 株式譲渡が不向きな場面 ただし譲渡対象会社の負債が大きい場合、赤字が数年間継続している場合などは、そもそも株式を譲渡できる相手が見つからない可能性もあります。 そういった場合は、手続きの煩雑さはありますが、事業譲渡によって採算の取れる事業のみの売却をおこない、その後は会社の清算手続きに入るといった手法をとらざるを得ないかもしれません。 事業譲渡のまとめ 株式譲渡が向いている場面・会社を残したい・会社経営から離れたい・会社の個人保証をはずしたい・譲渡益の税金をおさえたい・事業承継の面倒な手続きを回避 株式譲渡に不向きな場面・会社に大きな負債がある・数年間、赤字が続いている まとめ いかがでしたでしょうか。 中小企業の経営者の方は、今後の事業承継をどう進めるのかお悩みかもしれません。 後継者が見当たらない場合でも、第三者への株式譲渡などのM&Aによって、ここまで育ててきた会社の廃業を回避できる場合があります。 他にも、突然の相続で親御さんの会社を相続された方なども、今後の身の振り方にお悩みかもしれません。 M&Aのスキームとしては、今回ご紹介した株式譲渡や事業譲渡が代表的な手法です。 いずれにしても、譲渡側・譲受側ともに、必要な手続きなどもあるので、M&Aを進める際は専門家の助言があると安心です。 民間のM&A仲介会社や、公的機関に相談するなどして、経営理念を共有できるパートナー探しや、あなたに合ったスキームの検討をしてみてください。 --- ### 相続した非上場株式の評価額は?相続税は高い?売却できる? - Published: 2024-02-05 - Modified: 2024-03-18 - URL: https://atomfirm.com/manda/9306 - Categories: 会社売却の相場, 会社売却の税金, 会社売却の費用, 会社相続, 株式譲渡 相続した非上場株式の評価額は?税金のことも考えると生前の株式売却が良い?相続で取得した非上場株式はいくらで売れる?この記事では、相続した非上場株式の評価について解説しています。お悩みの方は是非さいごまでお読みください。 相続で取得した非上場株式の評価額は、いくら? 自分は会社運営ができないから、相続した非上場株式を売却したい 子どもに非上場株式を相続させても、多額の税金がかかるだけだから、今のうちに何とかしてあげたい このような非上場株式の相続にまつわるお悩みは、よくあるものです。 非上場株式とは、市場で流通しておらず、取引相場のない株式のことです。中小企業の場合、譲渡制限付きの非上場株式である場合がほとんどでしょう。 相続した非上場株式の評価額はいくらになるのでしょうか。 この記事では、相続した非上場株式の譲渡、評価額の算定方法などについて解説しています。 ぜひ最後までお読みください。 非上場株式の相続とは? 非上場株式とは? 非上場株式とは、証券取引所で売買されない株式のことです。 反対に、証券取引所で売買されている株式は、上場株式と呼ばれます。 非上場株式の相続で必要な手続きは? 非上場株式は多くの場合、譲渡制限がついており、この場合は原則として、会社の取締役会や株主総会において、譲渡承認決議を経なければ、第三者に株式を移転させることができません。 しかし相続の場合は例外的に、会社の譲渡承認決議がなくでも、相続人に非上場株式を移転させることが可能です。 ただし相続の場合も、非上場株式の移転が完了したら、株主名簿の書き換えをしなければなりません。 株主名簿に名前がなければ、自身が株主であることを、会社にも、その他第三者にも対抗できなくなり、株主としての権利行使に差し障りがあります。 関連記事 株式譲渡の手続き・流れを徹底解説!会社の株式譲渡で必要な書類と注意点とは 相続した非上場株式は譲渡できる? 非上場株式の多くは、譲渡制限付き株式になります。しかし、譲渡制限付き株式といっても、譲渡が完全に制限されるものではなく、会社の承認があれば譲渡可能です。 譲渡制限付きの非上場株式を譲渡するには、会社に対して、株式譲渡について承認決議をしてほしいと請求する必要があります。 また、結果として不承認決議となる場合もあるので、その場合には会社自身、あるいは会社が指定する買取人に買い取って欲しい旨も請求しておきます。 相続した非上場株式を譲渡するメリットは? 自身は家業を継ぐ予定はないのに、突然の不幸で非上場株式を相続することになるケースもよくあります。 「自身に会社経営のノウハウはないけれど、どうにか会社を存続させたい」といった場合には、第三者に非上場株式を譲渡するという選択肢にメリットを感じることができるでしょう。 また、現在ご健在の経営者の方も、非上場株式を今のうちに第三者へ譲渡しておけば、将来、自身の相続人となる方に多額の税金を負わせずに済むというメリットがあります。 譲渡先の探し方 会社の未来をつなぐには、ただ闇雲に買い手を探すのではなく、適切な評価額をもって、しかるべき買い手に株式譲渡をする必要があります。 非上場株式の買い手を見つけるには、自力で探すか、第三者の協力を得て探すか、いずれかです。 M&A仲介会社など民間のプロに協力を要請すれば、自分ひとりで探すよりも、多くの買い手候補を見つけやすいですし、非上場株式の株価算定についてもアドバイスをもらえるでしょう。 関連記事 会社売却成功への道!M&A買い手探しの目的とポイントとは 非上場株式の相続税は高額? 相続財産が多ければ多いほど、相続税は高額になります。相続税は累進課税で、最大55%課税されることになります。 非上場株式を相続した相続人が、その後、株式売却をおこなえばその売却益にも税金がかかります。 現在ご健在の経営者の方は会社の行く末や、相続人の負担を視野にいれて、今のうちに非上場株式の譲渡(M&A)に踏み切ってみても良いかもしれません。 税金まとめ 相続税最大55% 売却益の税金(所得税等)20. 315% 関連記事 M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? 非上場株式譲渡の税金とは?売却価格と税金の関係は? 相続した非上場株式の株価の評価方法は? 相続した非上場株式の評価とは? 非上場株式の評価額は、上場株とは異なる評価方法によって算出されます。 通常、相続の時点で、上場株であれば株式市場における株価が分かるので、市場の相場をもとに株式譲渡をおこなうことができます。 一方、非上場株は、上場されていないので株式市場の評価が分かりません。この場合、財産評価基本通達を参考にして、非上場株式の株価は評価されます。 同族株主の場合 財産評価基本通達で明らかにされている非上場株式の評価方法は、原則的評価方式、特例的評価方式の2つに分かれます。 同族株主の場合、基本的には原則的評価方式が適用されます。一方、非同族株主や支配権のない少数株主の場合、特例的評価方式が適用されます。 原則的評価方式とは、非上場企業の株式の価格を計算する際に、原則として用いられる評価方法のことです。 会社の態様(特定の評価会社に該当するか、規模)によって、具体的な評価方法(計算方法)に違いが生じます。 特定の評価会社にあたる場合 以下の会社は特定の評価会社にあたります。 1から6までの特定の評価会社には、おもに純資産価額方式が適用されます。 7の特定の評価会社には、清算分配見込み額により、株価が評価されます。 特定の評価会社 比準要素数1の会社 株式等保有特定会社 土地保有特定会社 開業後3年未満の会社等 開業前3年未満の会社等 開業前又は休業中の会社 清算中の会社 一般の評価会社にあたる場合 上記のような特定の評価会社ではない場合(一般の評価会社の場合)は、会社の規模により適用されるべき評価方式が変わります。 大会社の場合は、原則として、類似業種比準方式により評価されます。類似業種比準方式とは、類似業種の株価をもとに、評価する会社の一株あたりの配当金額、利益金額、純資産価額(簿価)の3項目で比準する評価方法です。 小会社の場合は、原則として、純資産価額方式によって評価されます。純資産価額方式とは、会社の総資産や負債を原則として相続税の評価に洗い替え、評価した総資産から負債や評価差額に対する法人税額等相当額を差し引き、その残りの金額により評価する方法です。 中会社の場合は、基本的には、大会社と小会社の評価方法を併用して評価することになります。 同族株主(原則的評価)のまとめ 一般の評価会社・大会社:類似業種比準方式(または純資産方式)・中会社:類似業種比準方式・純資産方式の併用(または純資産方式)・小会社:純資産価額方式(または類似業種比準方式との併用) 特定の評価会社・純資産価額方式・清算中の会社は、清算分配見込金にもとづく評価 同族株主ではない場合 非同族株主や少数株主の場合は、原則として、特例的評価方式が採用されます。 すなわち、非同族株主の株式の価値は、基本的には「配当還元方式」を用いて評価されます。 相続した非上場株式の評価 ①類似業種比準方式の計算方法 類似業種比準方式は、類似業種の株価をもとに、評価する会社の1株当たりの配当金額、利益金額、および純資産価額の3つで比準し、が評価されます。 計算式は「類似業種の株価×(A+B+C)÷3×斟酌率×(1株あたりの資本金額÷50円)」というものになります。 ※A:評価会社の1株当たりの配当金額÷類似業種の1株当たりの配当金※B:評価会社の1株当たりの利益金額÷類似業種の1株当たりの年利益金額※C:評価会社の1株当たりの純資産価額÷類似業種の1株当たりの純資産価額※斟酌率:大会社0. 7、中会社0. 6、小会社0. 5 ②純資産価額方式の計算方法 純資産価額方式は、純資産の積み上げによって株価を算出する方法になります。 計算式は以下のとおりです。 ③併用方式の計算方法 併用方式は、類似業種比準方式および純資産価額方式により算出した価額に、会社の規模に応じた割合を加味して、株価を計算する方法になります。 計算式は以下のとおりです。 ④配当還元方式の計算方法 同族株主以外の少数株主が、非上場株式を取得した場合は通常、会社の規模にかかわらず、配当還元方式という特例的評価で株価の算出がなされます。 配当還元方式とは、その株式を所有することで享受できる1年間の配当金額を、10%で還元して元本である株式の価額を評価するものです。 配当還元方式での計算方法は、以下のようなものになります。 相続した非上場株式を売却したい! 非上場株式は売却できる? 中小企業の場合、多くは経営者自身が自社の株式を保有し、譲渡制限付き株式とすることで、会社の支配権を維持するケースが多いでしょう。 譲渡制限付きの非上場株式であっても、一定の手続きを経ることで、第三者に売却することはできます。 売却価格はいくら? 非上場株式の売却価格の算定方法にも、相場があります。適切な算定方法を用いて、売却価格を設定する必要があるでしょう。 中小企業の会社売却(株式譲渡)において、よくある企業価値の計算方法としては、企業の時価純資産に営業利益の数年間分を加算するというものです。 売却価格で悩んだら、M&A仲介会社やその他の専門家に無料相談してみても良いでしょう。 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! M&Aで会社を高く売る方法とは?買い手へのアピールポイントを解説 相続した非上場株式の譲渡益にかかる税金 非上場株式の譲渡益にかかる税金は、原則的には、申告分離課税となり、税率は所得税、復興特別所得税、住民税あわせて20. 315%で課税されます。 非上場株式を発行会社に譲渡した場合 保有する株式を、その株式を発行した会社に譲渡した場合、みなし配当になるおそれがあります。 みなし配当とは、配当金などを受け取っていないものの、税制上、配当を受け取ったものとして課税されるものです。株式の売却価格が、発行会社の資本金の金額を超える場合、その超えた部分の金額がみなし配当課税の対象となります。 みなし配当課税の場合、総合課税となり、最大55%の税率で課税されることになります。 ただし、形式的にみなし配当に該当する場合でも、譲渡した株式が「相続した非上場株式」であるときは、いわゆる金庫株特例を適用できる可能性があります。 金庫株特例(相続により取得した非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の課税の特例)を適用することができれば、みなし配当課税はおこなわれません。 資本金の金額をこえる部分についても譲渡所得として課税されることになります。つまり、金庫株特例が適用できる場合、税率は所得税、復興特別所得税、住民税あわせて20. 315%にとどめることができます。 相続した非上場株式の譲渡について、金庫株特例を適用するには、一定の要件を満たす必要があります。 金庫株特例の要件* 相続により非上場株式を取得した者であること。 非上場株式を取得した人に相続税が課税されていること。 その相続の開始があった日の翌日からその相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、その相続税の課税の対象となった非上場株式をその発行会社に譲渡していること(相続開始のあった日の翌日から3年10ヶ月以内に譲渡)。 * タックスアンサー(よくある税の質問)「 No. 1477 相続により取得した非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の課税の特例」(2024. 2. 27現在)を参考に編集しました。制度の詳細、最新の情報については、必ずご自身でご確認ください。 取得費加算の特例 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例という制度により、税金を軽減できる可能性もあります。 この取得費の特例とは、相続によって取得して非上場株式を、一定期間内に譲渡した場合、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算できるという制度です。 取得費加算の特例の要件* 相続により財産を取得した者であること。 その財産を取得した人に相続税が課税されていること。 その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること(相続開始のあった日の翌日から3年10ヶ月以内に譲渡)。 * タックスアンサー(よくある税の質問)「No. 3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(2024. 2. 27現在)を参考に編集しました。制度の詳細、最新の情報については、必ずご自身でご確認ください。 取得費加算の特例が適用されると、必要経費が増えることになります。その結果、譲渡所得が減るので、譲渡所得にかかる税金も減ることになります。 関連記事 会社売却の税金は?M&Aで税金を節約するには? 相続した非上場株式の評価でお悩みなら専門家に相談を! 「非上場株式を相続により取得したが売却したい」、「相続で取得した非上場株式の評価額はいくらなのだろう」など、相続した非上場株式の評価や譲渡に関するお悩みをお持ちの方もおられるでしょう。 非上場株式の譲渡をご検討中であれば、適切な評価額で譲渡できるように準備を進めることが重要です。 また非上場株式は市場で自由に取引できる株式ではないので、売り手みずから積極的に買い手を探す必要があります。 たよりになる税理士、弁護士、M&A仲介会社などの協力を得られれば、株式の譲渡価格や買い手の選定などもスムーズにおこなえる可能性が高いでしょう。 M&A仲介会社などに相談したり、懇意にしている税理士・公認会計士・弁護士などに相談したりすることで、非上場株式の譲渡について、よきパートナーを見つけることができるかもしれません。 --- ### 企業価値の計算方法・求め方を解説!会社の価値の算定方法とは - Published: 2024-01-30 - Modified: 2024-03-29 - URL: https://atomfirm.com/manda/9092 - Categories: 企業価値 非上場企業の企業価値は、該当する市場が拡大しているのか、営業権(のれん)がどの程度評価されるのかなど、数多くの要素が複雑に組み合わさって算定されます。計算方法は複雑で、専門的な知識が必要です。 企業価値の計算・求め方は、簡単な計算式があるわけではなく、専門的な知識が求められます。 自分で企業価値を算定してみようとしてみたものの、複雑で計算できなかった方も多いのではないでしょうか。 M&Aで会社売却を行う際、自分の会社がいくらで売れるのか、オーナーや経営者なら誰しも気になることでしょう。 日本にある会社のうち、99%以上が上場していない会社です。 上場している企業であれば、株価と発行済みの株式数が一定の基準となりますが、非上場企業の場合には特殊な計算方法が必要です。 企業価値は、該当する市場が拡大しているのか、営業権(のれん)がどの程度評価されるのかなど、数多くの要素が複雑に組み合わさって算定されます。 この記事では、M&Aで会社売却を行う際、企業価値をどう求めるのか解説します。 企業価値とは? 企業価値は企業全体の価値 企業価値とは、会社全体の経済的価値を金額で示したものです。純資産や負債、将来の収益性などをもとに算出されることが一般的です。 上場企業の場合は、株式の時価総額に有利子負債を加えた金額を企業価値とするケースもありますが、非上場企業は株価が分からないため、企業価値を計算しなければならないのです。 企業価値と事業価値の違い 事業価値とは、会社全体の価値ではなく、事業によって生み出される価値を金額で示したものです。企業の「稼ぐ力」を総合的に評価したものともいわれます。 事業価値には、のれん(営業権)・商標権・特許権などの『無形資産』も含まれます。 企業価値と株式価値の違い 株式価値は企業価値のうち、株主に帰属する価値のことです。上場企業であれば、株式時価総額が株式価値となります。 非上場企業の場合は、企業価値を計算してから有利子負債を差し引くことで株式価値を求めることができます。 企業価値の計算方法については、「企業価値の計算方法の種類は?」をご覧ください。 企業価値と時価総額の違い 企業価値とは負債価値を含めた会社全体の価値を示しているのに対し、時価総額は株価の総額です。自己資本比率が100%の企業であれば、株式の時価総額が企業価値と同一になります。 関連記事 企業価値と事業価値、株式価値とは?それぞれの違いと関係性を解説! 企業価値の計算方法の種類は? 企業価値の計算方法には、「コストアプローチ」、「インカムアプローチ」、「マーケットアプローチ」の3つの種類があります。 コストアプローチ 簿価純資産法 時価純資産法 「コストアプローチ」は、主に中小企業の価値評価で用いられる手法で、評価対象会社の資産や負債に着目します。 インカムアプローチ DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法) 配当還元法 「インカムアプローチ」は、大企業や成長産業にある企業(IT企業など)の価値評価で用いられる手法で、将来の収益性に着目します。 マーケットアプローチ マルチプル法 市場株価法 「マーケットアプローチ」は、どの形態の企業であっても用いられることがあり、類似する会社や事業などに着目した手法です。 企業価値を計算する場合には、どれか1つの手法だけが使われるわけではなく、複数のアプローチが組み合わされて計算されます。 以下では、これらの方法で企業価値をどう算出するのか詳しく説明していきます。 関連記事 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 コストアプローチによる企業価値の計算 コストアプローチとは、評価対象会社の資産や負債に着目する評価方法です。「ネットアセットアプローチ」と呼ばれることもあります。 コストアプローチは、「簿価純資産法」と「時価純資産法」に大きく分類されます。 簿価純資産法の計算方法 簿価純資産法は、貸借対照表に記載された純資産に調整を加えず、企業価値を計算する方法です。 会計上の帳簿価格をもとにしているため、客観性が高く、簡単に企業価値を算出できる点がメリットです。 一方、帳簿上の簿価と実際の時価が、かけ離れてしまうデメリットもあります。 簿価純資産法の計算式 企業価値(株式価値)=会計上の資産額−負債額 例えば、資産が1億円で負債が4000万円の場合、純資産は6000万円となります(上図)。 簿価純資産法の場合、企業価値と純資産は同じになりますので、企業価値は6000万円と算出されます。 しかし、簿価純資産法では、実際の時価と簿価がかけ離れていると、企業価値を過小評価してしまう可能性があります。 そこで実務では、貸借対照表に記載されている簿価に調整を加えて、時価を反映させる時価純資産法が多くのケースで使われます。 時価純資産法の計算方法 時価純資産法は、企業の保有資産の時価総額と、負債の時価総額から企業価値を算出する手法です。 貸借対照表に記載されている簿価を時価で再評価し、修正貸借対照表を作成して計算するため、修正簿価純資産法とも呼ばれます。 土地や有価証券の含み益がある場合など、資産の時価を企業価値に反映させたい場合に時価純資産法は採用されます。 時価純資産法の計算式 企業価値=企業の時価資産−時価負債 例えば、簿価純資産法では、土地と有価証券などには帳簿作成時の価額が記載されるため、土地の5000万円と有価証券の3000万円は時価を反映できていません(上図の左側)。 そこで、貸借対照表の資産を時価で調整した結果、土地は8000万円、有価証券は7000万円と評価されたとすると、資産合計が2億5000万円となります。簿価純資産法と同じく、負債を差し引いて企業価値を求めると、時価純資産法では1億7000万円と計算されます(上図の右側)。 なお、時価純資産法で計算する場合、負債も時価に調整されることになります。 上の図では、負債は調整前後で同じ価額でしたが、調整後に負債が増えてしまうこともあるので、注意が必要です。 年買法の計算方法 年買法は主に、中小企業の評価の際に用いられる計算方法です。 時価純資産額に、数年分の営業利益を加えることで企業価値を計算します。 年買法の計算式 企業価値=時価純資産+営業利益3~5年分 時価純資産法の例だと、企業価値は1億5000万円と算出されました。 5年分の営業利益を3億円と評価した場合、年買法によって導き出される企業価値は4億5000万円となります。 年買法は、計算が簡単で直感的に理解しやすいと言われますが、営業利益の評価が主観的になってしまうという問題点があります。 そもそも営業利益を何年分で計算するのか、またそれはなぜなのかなど、交渉相手が納得するよう説明しなければならないのです。 年買法は、コストアプローチとして分類されることもありますが、将来発生する収益に関わる要素を評価しているため、コストアプローチとインカムアプローチの組み合わせと考えることができます。 インカムアプローチによる企業価値の計算 インカムアプローチとは、評価対象会社の将来の利益に着目する評価方法です。 収益獲得能力を企業価値に反映させやすく、会社特有のブランド力などを評価できるメリットがあります。 インカムアプローチは「DCF法」と「収益還元法」などに分類されます。 DCF法(ディスカウントキャッシュフロー)の計算方法 DCF法は、事業の将来の利益を現在の価値に換算して、事業価値を算定する手法です。DCF法の計算結果に対し、事業以外からの価値を加えることで企業価値や株価を導き出すことができます。 DCF法は、将来の収益獲得能力や会社固有のブランド力などを評価結果に反映させる点で優れています。 一方、評価する側の価値観によって評価が変動するおそれがあり、客観的な評価になるとは限らないデメリットもあります。 DCF法による企業価値の計算手順 3~5年の事業計画を作成し、FCFを予測する 株主資本コストを算出する 株主資本コストと負債コストを加重平均して、加重平均資本コストを計算する 継続価値(TV)を計算する FCFとTVを割引計算し、割引現在価値を算出する 非事業の資産や有利子負債を調整し、企業価値・株価を算出する DCF法は、将来の営業において発生するであろうフリー・キャッシュ・フロー(FCF)に対し、WACCという割引率をかけて現在価値に換算し、事業価値を算出します。 DCF法の計算について詳細を確認したい方は「M&AにおけるDCF法とは?株主資本コスト、加重平均資本コスト(WACC)の求め方を解説!」をご覧ください。 収益還元法の計算方法 収益還元法は、企業の将来の収益を現在価値に換算する方法で、大まかな仕組みはDCF法と同じです。 収益還元法の計算式 企業価値=予想平均収益÷資本還元率 予想平均収益は、過去の売上や利益を基に計算されます。 資本還元率は通常、自己資本利益率や国債利回りに企業の経営リスクを考慮して算出されます。 例えば、評価対象企業の予想平均収益が5000万円で、資本還元率が5%の場合、企業価値は2億5000万円となります。 収益還元法はDCF法よりも手軽に計算できるため、企業価値の試算などに広く利用されますが、年度ごとの予想利益を考慮しないため、変動に弱いという欠点があります。 したがって、業績変動が大きい企業や急成長するベンチャー企業などには不向きで、収益が安定している不動産賃貸業などに向いています。 配当還元法の計算方法 配当還元法は、株主へ支払う配当金に着目して企業価値を計算する方法です。 具体的には、将来の配当額の予測値を利率で割り、これを元本の株式で除して企業価値を算出します。 ただし、この手法は企業の配当政策に依存しており、確定的な配当額を見積もることが難しい企業には適用しづらい側面があります。 特に、多額の欠損や成長企業など、配当が見込めない場合は配当還元法は適切ではありません。 配当還元法と混同されやすい「配当還元方式」は、非上場株式を相続・贈与した際の税金計算の際に使用される方法であり、配当還元法とは異なる計算方法を採用しています。 マーケットアプローチによる企業価値の計算 マーケットアプローチは上場している同業他社や類似取引事例など、類似する会社や事業などに着目する企業価値の方法です。 同業他社と比較することで、相対的に価値を評価することができ、インカムアプローチよりも客観性があると考えられています。 マーケット・アプローチは「マルチプル法」「市場株価法」などに分類されます。 マルチプル法の計算方法 マルチプル法は「類似会社比準法」とも呼ばれます。 特定の企業を評価する際に、同様の規模や事業を有する複数の上場企業を選び出し、それらの企業の株価などを基にして評価倍率(マルチプル)を導き出します。 これによって、評価対象企業の株価を計算します。 マルチプル法の計算式 企業価値=企業の特定指標×マルチプル(倍率) マルチプルとして用いられる指標はEV/EBITDA倍率、PER、PBRなどがあります。 EBITDAとは、”Earnings Before Interests and Taxes, Depreciation, and Amortization”の頭文字をとったもので、「利息、税金、減価償却前利益」を意味します。 EBITDAは、会社の最終的な利益から、償却費と支払利息と税金を足し戻した利益のことで、会社の収益力を示す指標の一つです。 キャッシュベースに近い本業の儲けを示す指標となります。 EBITDAは、「営業利益+減価償却費」で計算できます。 EV/EBITDA倍率を用いた計算例 EV/EBITDA倍率を用いて企業価値を計算する場合の式は、次の通りです。 この計算によって求められた企業価値から有利子負債を差し引くと、株式価値(株主資本価値)を計算することができます。 EV/EBITDA倍率は類似会社の数値になるので注意してください。 モデルケース① 評価対象会社(A社、非上場)類似会社(B社、上場)営業利益5000万円70億円減価償却費1000万円6億円現預金5000万円25億円有利子負債1億円50億円株価2000円発行済み株式総数1,000万株株式時価総額200億円 ※EBITDA=営業利益+減価償却費※EV/EBITDA倍率=(株式時価総額+有利子負債)÷(営業利益+減価償却費) モデルケース①の計算結果 A社のEBITDA:6000万円 B社のEV/EBITDA倍率:3. 28倍(250÷76) A社の企業価値:1億4680万円(6000万×3. 28) A社の株式価値:4680万円(1億4680万-1億) PBRを用いた計算例 PBRは、Price Book-value Ratioの頭文字をとったもので、株価純資産倍率を意味します。 1株あたりの純資産に対して「株価がどれだけ高いか」を表す指標であり、「株式時価総額÷純資産」で計算します。 PBRをマルチプルにして企業価値を計算する場合には「評価対象会社の純資産」×「類似会社のPBR」で算出可能です。 モデルケース② 評価対象会社(A社、非上場)類似会社(B社、上場)純資産3億円120億円株価2000円発行済み株式総数1,000万株株式時価総額200億円 モデルケース②の計算結果 A社の純資産:3億円 B社のPBR:1. 66倍(200÷120) A社の企業価値:4億9800万円(3×1. 66) PERを用いた計算例 PERは、Price Earning Ratioの頭文字をとったもので、株価収益率を意味します。 1株当たりの純利益(EPS)に対して「株価が何倍になっているか」を表す指標であり、「株式の時価総額÷当期純利益」で計算されます。 PERをマルチプルにして企業価値を計算する場合には「評価対象会社の当期純利益」×「類似会社のPER」で算出可能です。 モデルケース③ 評価対象会社(A社、非上場)類似会社(B社、上場)当期純利益800万円10億円株価2000円発行済み株式総数1,000万株株式時価総額200億円 モデルケース③の計算結果 A社の当期純利益:800万円 B社のPER:20倍(200÷10) A社の企業価値:1億6000万円(800×20) 市場株価法 市場株価法は、主に上場企業の企業評価に用いられる計算方法です。 市場株価法の計算式 企業価値(理論株価) =(一定期間における終値×出来高株数)÷一定期間における出来高株数 企業価値は計算方法によって評価が変わる? 企業価値を実際に計算すると、どの方法で計算するかによって、算出結果が変わります。 例えばマルチプル法の場合、マルチプルに設定する指標次第で、企業価値に差が出ます。 上記のモデルケースの場合、次のような結果となりました。 EV/EBITDA倍率をマルチプルにする場合:1億4680万円 PBRをマルチプルにする場合:4億9800万円 PERをマルチプルにする場合:1億6000万円 これらから、モデルA社の企業価値は、マルチプル法で計算すると、1億5000万円前後~5億円前後の評価となると考えられます。 これは、計算方法によってベースとなる指標(PBRでは純資産、PERでは当期純利益)が異なるためであり、どちらが適しているのかについては、対象会社の状況によって変わります。 例えば、評価時点での財務状況を重視する場合はPBR、収益性を重視するケースではPERによる算定が適しているといえます。 どの計算手法を用いて企業価値を算出して、買い手側と交渉するかは、M&Aの専門家によって判断が異なります。 会社売却をお考えのオーナーの方は、まず無料相談などで話を聞いてみてください。 関連記事 M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる? 市場株価法では、過去1か月、3か月、6か月などのスパンで終値と出来高を整理し、該当期間における平均株価(加重平均株価)を算出します。 3か月程度の期間の終値を平均することで、株価の一時的な乱高下による影響を排除することができます。 加重平均株価は「(終値×出来高株数)÷出来高」で計算が可能です。 企業価値を向上させるためには 事業の収益性を高める 企業価値を向上させるために最もとられる方法は、事業の収益性を高めることです。 事業の収益性を高めることができれば、事業価値を高く評価することができ、結果として企業価値も向上することになります。 事業の収益性を高める方法としては、売上高を拡大したり、原価率・利益率などを見直したりする施策が一般的でしょう。 会社を売却しようとした段階から事業の収益性を高めることは困難なケースが多いため、将来的な会社売却の意向がありそうなら、新規顧客の拡大や業績改善などに予め力を入れておきましょう。 投資効率をよくする 流動資産と固定資産の見直しなどを行い、投資効率を改善することで、企業価値を向上させることができます。 リスクとなりうる流動資産は未回収の債権や在庫、固定資産は遊休不動産などの収益を生まない不動産が挙げられます。 不要な資産の処分などを通じてキャッシュフローを改善し、事業活動に再投資することで投資効率が高まり、企業価値も向上するでしょう。 財務状況を最適化する 財務状況が良好であればあるほど、企業価値は高くなる傾向があります。財務が安定していれば、将来的な事業の継続と発展が見込まれ、買収するリスクが低いと判断されるからです。 関連記事 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 企業価値を向上させるメリット 買い手から高い評価を得られる 企業価値を向上させることで、買い手から高く自社を評価してもらうことができるため、M&Aの交渉を有利に進められる可能性が高まります。 M&A会社売却には一定の相場などがないため、売却価格については、売り手と買い手の合意によって最終的に決定されます。しかし、双方が納得できる条件に調整するためには、基準となる金額が必要です。 M&Aの交渉の場では、企業価値は交渉の際の基準として利用されます。交渉の基準となる企業価値を高く評価されれば、最終的な取引価格も高くなるといえるでしょう。 複数の買い手候補が見つかる 企業価値を向上させれば、多くの買い手候補からオファーが届く可能性が高まります。 M&Aの売却価格は、買い手と売り手の合意によって定まります。買い手が提示する価格には幅がありますので、売り手企業にとっては、複数の買い手候補がいると選択肢が広がります。 企業価値をなるべく高めて、買い手候補を多く見つけられるようにしておきましょう。 まとめ 企業価値の計算には、主に3つのアプローチがあり、売却しようとしている会社の規模や業種、経営状況などによって、何を選択すべきかが変わります。 企業価値は、どれか1つの手法で計算するのではなく、複数の手法を組み合わせて算出されることが一般的です。 自分が経営している会社や相続してしまった会社の価値が気になる方は、専門家に相談してみましょう。 --- ### 会社はいくらで売れる?会社売却価格の計算方法、相場を解説 - Published: 2024-01-26 - Modified: 2024-04-03 - URL: https://atomfirm.com/manda/8682 - Categories: 会社売却の相場 会社はいくらで売れる?会社売却価格の計算方法、相場は?【会社売却をお考えの経営者必見!】企業価値の3つの評価方法、相場に影響する要素、ポイント、成功事例などを紹介! 会社売却の相場は?いくらで売れる? 会社売却の価格計算の方法が知りたい 会社売却のメリットは? 会社売却の利益を得て早期リタイアしたい、主力事業に専念するために一部の事業を売却したい、経営権をゆずる後継者がいないなど、会社売却をご検討されるきっかけは様々だと思います。 会社売却を検討する際の気になるポイントの一つとして、自分の会社がいくらで売れるのかという疑問があるでしょう。 会社売却価格は最終的には売り手と買い手の合意によりますが、企業価値の算定方法はある程度決まっています。 会社売却の価格相場としては、時価純資産に営業利益3年~5年分を加えた金額といわれることも多いものです。このほか、DCF法、EBITDAマルチプル法などの計算方法もあります。 この記事では、会社売却の相場・計算方法、会社売却のメリット・デメリットなどについて解説しています。ぜひ最後までご覧ください。 会社売却の相場とは 会社売却とは?事業譲渡とは? 会社売却とは、会社そのものの経営権を第三者に売り渡すことや、会社の事業の一部または全部の事業を第三者に売却すること(事業譲渡)などを指すことが多いでしょう。 会社を売り渡すとは? 会社を第三者に売り渡す場合、多くの中小企業では、株式譲渡をおこなうことになるでしょう。 株式会社の場合、株主がその会社の所有者です。経営者ご自身が会社の株主である場合は、保有する会社の株式を第三者に譲渡することで、会社の所有権を手放すことができ、会社売却を完了することができます。 また、経営者自身が株主の場合、社長が会社の意思決定機関である株主を兼ねていることになるので、通常、容易に自身の社長退任を決定でき、会社の株式とあわせて経営権も譲り渡すことができるでしょう。 会社の事業を譲渡するとは? 事業譲渡の場合、会社の事業・資産を選別して売却することになります。 事業譲渡では、店舗の一部を譲渡したり、ある事業のみを譲渡するということが可能です。 イトーヨーカ堂は9日、北海道と東北、信越地方から撤退することを明らかにした。全17店舗のうち5店舗は閉鎖し、11店舗は他のスーパーに事業承継する。(略)7店舗は食品スーパー「ロピア」を運営するOICグループ(川崎市)が承継。宮城県と福島県の各1店舗はセブン&アイグループのヨークベニマル(福島県郡山市)、北海道の2店舗はダイイチ(北海道帯広市)が引き継ぐ。1店舗は交渉中という。 2024. 2. 9 NHK NEWSweb「イトーヨーカ堂北海道・東北から撤退へ 石巻の店舗は事業譲渡」https://www3. nhk. or. jp/tohoku-news/20240209/6000026555. html(2024. 2. 28 現在) キリンホールディングスは1日、花王から茶カテキン飲料「ヘルシア」の事業を取得すると発表した。成長が見込まれる健康分野の強化が狙いで、8月1日に事業を譲り受ける。取得額は非公表。 2024. 2. 1 時事ドットコムニュース「キリン、「ヘルシア」を取得 茶飲料トクホ元祖、花王から」https://www. jiji. com/jc/article? k=2024020100959&g=eco(2024. 2. 28現在) そのため、事業譲渡の場合は、会社そのものは手元に残ることになります。 事業譲渡は、会社の所有権を手放すものではないので、その後、現経営者が企業の経営再建に取り組むといった活動も可能になります。 関連記事 事業譲渡と株式譲渡の違いは?目的・メリット・デメリットなど解説 会社売却の相場は?いくらで売るか決めるには 会社をいくらで誰に売るかは、基本的に、売り手側が決めることになります。しかし、相場とかけ離れた高額な売却価格では、買い手が見つからないということもあるでしょう。 会社をいくらで売るか決めるには、会社売却の相場を参考にするべきです。 会社売却の相場は、企業価値の評価によって変わります。 M&Aにおける企業価値は、資産や負債に着目して評価する方法、収益力に着目して評価する方法(DCF法 etc. )、市場相場に着目して評価する方法などがあります。 また、これら複数の計算方法を組み合わせて、会社売却の価値が算出することも多々あるでしょう。 会社売却の相場はいくら?計算方法は? 企業価値の3つの評価方法 企業価値を評価する手法としては、大きく分けて3つの評価方法があります。 それは、コストアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチの3つです。 今回はこれらの手法のうち、実務で比較的多用されている計算方法を説明していきます。 企業価値の3つの評価方法 コストアプローチ資産や負債に着目した算定手法例)純資産法、年買法 インカムアプローチ収益性に着目した算定手法 例)DCF法 マーケットアプローチ事業の類似するマーケットに着目した算定手法例)市場株価法、マルチプル法 関連記事 M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説! コストアプローチ:純資産法・年買法(年倍法) コストアプローチとは、会社の資産と負債をもとにして、会社の価値を計算する方法です。 会社売却価格の計算としては、比較的計算しやすい算定方法になります。 純資産法 会社売却価格を計算する際、コストアプロ―チの方法のひとつに、純資産法があります。純資産法には、簿価純資産法、時価純資産法(修正簿価純資産法)があります。 純資産法 簿価純資産法貸借対照表上の純資産に調整を加えずに評価する方法 時価純資産法会社の有する資産の時価から負債の時価を控除して出資持分の価値を評価する方法  簿価純資産法 簿価純資産法は、貸借対照表の純資産額から、負債額を差し引いて企業価値を計算する方法です。 簿価純資産法 簿価純資産-簿価負債 簿価純資産法の場合、帳簿の数字をそのまま評価に用いるため、客観性があり、企業価値の算出も比較的簡易にできるというメリットがあります。 ただし、帳簿上の簿価と実際の時価に差額が生じる場合もあります。簿価純資産法では、含み益や含み損を評価できないので、実際の価値とかけ離れてしまうデメリットがあります。 そのため実務上は、企業の実態を反映できる、時価純資産法のほうが多用されることが多いでしょう。 時価純資産法 時価純資産法は、別名「修正純資産法」と呼ばれます。 時価純資産法は、貸借対照表の資産と負債を時価で再評価して、企業価値を算出する方法です。 言い換えると、企業の保有資産をすべて売却し、負債を全部返済した場合に、どのくらいの価値が残るのかを評価するのが、時価純資産法といえます。 時価純資産法 企業の保有資産の時価総額-負債の時価総額 時価純資産法では、保有する土地や建物、営業債権、株式などの有価証券、棚卸資産などを時価換算していきます。 営業債権や棚卸し資産は、帳簿上では「資産」です。そのため、実際のところ、回収不能だったり、販売中止や赤字販売が見込まれる在庫についても、簿価純資産法によれば、資産になります。 一方、時価純資産法によれば、そのような営業債権や棚卸資産などは、時価を下げる要因になります。 土地や建物については、簿価純資産法では路線価や固定資産税評価額で評価されます。 一方、時価純資産法によれば、取引価額で評価できます。地価が値上がりしているのであれば、取引価額で評価できる「簿価純資産法」のほうが、売り手にとって有利です。 株式などの有価証券については、投資先の経営状況によるため、含み損益が大きくなります。そのため、簿価純資産法よりも、時価純資産法にもとづく計算のほうが、有価証券の価値について実態に近い評価ができます。 このように時価純資産法を用いて、会社売却価格を計算することで、簿価純資産法デメリットである「時価を反映できない」という点は克服できます。 ただし、時価純資産法には「のれんやブランド価値など、貸借対照表に記載できない無形資産について、企業価値に反映することは難しい」というデメリットがあります。 そのため、ほかの手法も用いながら交渉していく必要があるでしょう。 無形資産や将来性を考慮しながら、いくらで売れるか簡易的に計算する方法としては、年買法などがあります。 年買法(年倍法) 年倍法は「税引き後の営業利益の3年~5年分に、時価純資産の金額を加算する」という計算方法になります。 年倍法による計算 時価純資産 + 営業利益 の 3年~5年分 年倍法は、コストアプローチのほか、将来の収益性を意識している点で後述のインカムアプローチにも通じる計算方法といえます。 年買法(年倍法)による計算方法も、頻繁に活用されています。 会社売却の場合に簡易的に企業価値を計算するとなると、この年買法が便利です。 たとえば純資産が6億円、営業利益が5000万円の場合、6億円+5000万円×3~5年=7. 5~8. 5億円となります。 事業譲渡金額の簡易的な計算方法としては、会社全体の純資産ではなく、売却対象となる事業についての時価純資産+のれん代(年間利益に一定年数を乗じたもの)を加えるというものになるでしょう。 関連記事 事業譲渡ののれんとは?営業権譲渡の流れや売却価格の評価方法は? インカムアプローチ:DCF法(Discounted Cash Flow) DCF法とは、対象会社から将来生じるキャッシュフローを割り引くことで、現在の価値に引き直し、株式価額を求めるという計算方法です。 DCF法では、現在価値に割り引いた1年目から5年目までの事業価値と、6年目以降の事業価値を算出し、合算して事業価値を求めます。 DCF法は、会社の将来の収益性を評価する方法として、最適な計算方法といえます。 ただし、1~5年程度の事業計画をもとにFCFを計算することになりますが、事業計画はあくまで予測でしかなく、実際にそのとおりに収益をあげられるかどうかは不確定です。 とくに、中小企業の場合はとくに事業計画どおりに事業を展開できないことも多く、恣意的な数値になりやすい傾向があります。 そのため、買い手側からはリスクが大きいと判断され、DCF法による交渉が難しいケースも多々あるでしょう。 DCF法の計算方法については、おおまかにⅠ~Ⅲまでの計算過程があります。 Ⅰ CFCの算定 CFCの算定①(1~5年目)1~5年目までのフリーキャッシュフロー(FCF)について、割引現在価値を見積もるCFC=営業利益×(1-税率 )+減価償却-投資 ± 運転資金増加額 CFCの算定①(6年目以降)6年目以降のFCFについては、ターミナルバリュー(TV)の割引現在価値を見積もるTV=予測最終年度(5年目)のFCF÷(割引率-永久成長率) Ⅱ 割引率の算定 将来キャッシュフローの割引率については、WACC(Weighted Average Cost of  Capital 加重平均資本コスト)を用いる Ⅲ 1年目から5年目までの事業価値 1年目から5年目までの事業価値{1年目のFCF÷(1+割引率)}+{2年目のFCF÷(1+割引率)²}+{3年目のFCF÷(1+割引率)³}+{4年目のFCF÷(1+割引率)⁴}+{5年目のFCF÷(1+割引率)⁵} 6年目以降の事業価値ターミナルバリュー÷(1+割引率)⁵ DCF法による最終的な事業価値(1年目から5年目までの事業価値)+(6年目以降の事業価値) DCF法については「企業価値評価におけるDCF法とは?株主資本コスト、加重平均資本コスト(WACC)の求め方を徹底解説!」の記事で、くわしく解説していますので、あわせてご覧ください。 マーケットアプローチ:市場株価法・EBITDAマルチプル マーケットアプローチとは、同業他社と時価総額を比較したり、類似の買収事例を参考に企業価値を評価する方法になります。 市場株価法 上場企業の場合、売却対象会社の企業価値は株価を参考に計算することが可能です。この算定方法のことを市場株価法といいます。 ただし非上場会社の場合、株式を上場していないので株価が分からず、市場株価法で企業価値を算定することはできません。 EBITDAマルチプル 非上場会社の場合は類似会社比準法(マルチプル法)を用いることができます。 マルチプル法とは、評価対象会社と規模や事業等が類似する上場会社を複数選定して、その株価等をもとに評価倍率を算定し、その評価倍率を用いて対象会社の株価を算定するという計算方法です。 たとえばEBITDAに倍率を乗じたのが企業価値(事業価値)で、その企業価値に対象会社にある現預金を加算し、有利子負債を減産した金額を株価とする方法があります。 比較対象となる適切な上場会社が無い場合は、こちらの会社売却の計算方法を活用することが難しくなるため、他の手法を用いて企業価値を計算する必要があるでしょう。 以下は、DCF法・類似会社比較法を活用したM&Aの実例になります。 ウエルシア×一本堂 2018年3月1日、ウエルシアホールディングスは、一本堂の全株式を取得。 M&Aの目的都心部の事業基盤の強化、経営ノウハウの共有による経営効率化。 会社売却価格非公表。 企業価値の評価方法DCF法・類似会社比較法により算定した株式価値をベースに会社売却価格を決定。 ※ なお2019年3月1日付けで、一本堂は完全にウエルシア薬局株式会社に吸収合併されました。 会社売却の相場に影響する要素は? 会社売却の際に高値がつく会社というのは、企業価値の高い会社です。 企業価値の高い会社というのは、将来性があって儲かる会社という一点に尽きるでしょう。 より細かく会社売却の相場を高める要素を検討する場合、一例として会社の規模、業種、業界動向、経営状態、将来性といった5つの要素が考えられます。 会社規模 会社規模は、会社売却価格の相場に最も大きな影響を与える要素の1つです。 会社規模が大きいほど、保有する資産や人材などの価値が高く、将来の収益や成長性が期待できるため、会社売却価格の相場も高くなる傾向があります。 また、自社で新規事業を立ち上げ店舗拡大を図ればかなりのコストがかかりますが、「既にある程度の規模で展開している事業を買収すれば、低コストで事業拡大が可能になる」という、うま味が買い手にはあります。 米乃家×カナディアングループ 2023年10月1日、株式会社米乃家(よねのや)が、カナディアングループの31店舗の事業承継を実行。 株式会社米乃家東海地方を中心に、団子・たい焼き・お好み焼き販売店を155店舗を展開。 カナディアングループ東京・神奈川・千葉・大阪などに、団子・たい焼き「文左亭」、カフェ「パオ」など31店舗を展開。 M&Aの目的事業規模の拡大(東海地方、関東・関西圏)。 サントリー×JT 2015年7月31日、サントリー食品インターナショナルは、JTの自動販売機事業を買収。「ルーツ」・「桃の天然水」などのブランドも取得。 M&Aの目的サントリーは、自動販売機事業の機材調達にかかる経費削減や、販売チャンネルの強化を図るために、買収に踏み切った。 M&Aの価格約1500億円。 業種 業種も、会社売却価格の相場に影響を与える重要な要素です。 成長性の高い業種や、競争が激しい業種では、会社売却価格の相場が高くなる傾向があります。 イエローハット×溝ノ口自動車 2020年10月1日、イエローハットは、溝ノ口自動車の全株式を取得し子会社化。 イエローハットの業務カー用品等の販売(卸売・小売)。 溝ノ口自動車の業務自動車・自動車部品の販売、自動車の整備・修理、自動車保険の販売。 M&Aの目的車検・鈑金・整備技術の向上、ピットサービス収益拡大、「車検、サービス事業」の拡大のために、同業種でのM&Aが実行された。 業界動向 業界動向も、会社売却価格の相場を左右する要素です。 業界が好調な場合、会社売却価格の相場も高くなる傾向があります。 SIE×バンジー 2022年7月15日(米国西部時間)、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は米ゲーム開発会社バンジーの全株式を取得。 売却価格に与えた業界動向ゲーム業界はコロナ禍で急激に成長。大型M&Aも多数あり、SIEとバンジーのM&Aもその一つ。 M&Aの価格約5140億円。買収発表当時は約4140億円(約36ドル)と発表されたが、実際の売却価格はより高額になった。 関連記事 M&A業界の動向を解説!業界ごとのM&A傾向とは 経営状態 経営状態は、会社売却価格の相場を左右する重要な要素です。 赤字経営で繰越欠損金がある場合などは、ほかの企業にない特別な強みが無い限り、なかなか買い手が見つからないかもしれません。 一方、財務状況が健全で、経営が安定している会社は、会社売却価格の相場が高くなる傾向はあります。たとえば、年商が5億円かつ営業利益が5000万円以上であるような場合なら、経営状態は安定していると判断してもらえる可能性は高いでしょう。 ローソン×成城石井 2014年10月31日、ローソンは成城石井の議決権の100%にあたる普通株式165,000株をで取得し、連結子会社化。*¹ 成城石井の経営状態良好。2013年12月期の売上高554億円、営業利益は33億円、純利益は20億円で、5期連続で増収増益。 成城石井の強み独自の生産ラインがあり粗利率が高い。買い手側は、小商圏の製造小売業強化を図れる。 M&Aの価格336億円。*¹ *¹ 負債も含めると総額約550億円で、成城石井の全株式を取得したことになる。 将来性 将来性も、会社売却価格の相場に影響を与える要素です。将来性のある事業を展開している会社は、会社売却価格の相場が高くなる傾向があります。 いままで蓄積してきたノウハウ、スキーム、技術など企業の強みを、買収側にアピールしていくことが重要です。 また、シナジー効果で自社の売上向上に結び付くと判断してもらえた場合、企業価値を高く評価してもらえるといえます。 KCCS×Rist 2019年1月7日、京セラ子会社である、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が、人工知能(AI)関連スタートアップ企業のRistを買収。 Ristの将来性AI技術により画像を解析し、生産ラインの目視検査を自動化するノウハウがある。 M&Aの価格非公表だが、5億円強とみられている。 大正製薬×ドクタープログラム 大正製薬は、2017年4月1日、(キョーリン製薬ホールディングス株式会社の連結子会社である)ドクタープログラム株式会社の全株式を取得し、完全子会社化。 ドクタープログラムの将来性通販事業のノウハウを生かして顧客を拡大できる可能性がある。スキンケア領域の成長の可能性がある。 M&Aの価格非公表。 要素のまとめ なお、これらの会社規模、業種、業界動向、経営状態、将来性といった要素は、相互に関連し合っています。 会社規模が大きいほど、将来性や事業内容に期待できる可能性が高くなります。また、業界動向が好調であれば、業種や経営状態にも良い影響を与えるでしょう。 会社売却の相場を高めるためには、これらの要素を総合的に評価されるということについて、留意しておくことが重要です。 会社売却先を漠然と探すのではなく、企業価値を評価してくれる会社を見つけ出し、説得的に魅力を売り込んでいきましょう。 会社売却の価格を高めるポイントは? 会社売却の価格を高めるためには、以下の4つのポイントを押さえることが重要です。 会社を健全に経営する 将来性のある事業を展開する 優良な従業員を抱える 適切なタイミングで売却する 会社を健全に経営 会社売却の相場は、会社の経営状態に大きく影響されます。財務状況が健全で、経営が安定している会社は、売却先からより高い評価を受けます。 具体的には、以下ような点に注意を払うことで、会社売却の金額が高くなる傾向があるでしょう。 財務状況を健全に保つ 経営を安定させる 法令遵守を徹底する 財務状況が健全で、経営が安定している会社は、将来にわたって安定した収益がはいることが見込まれます。 また、法令遵守を徹底している会社であれば、訴訟などに発展する法的リスクを回避できるため、買い手は安心して会社売却に応じることができます。 会社の健全な経営は、売り手が会社売却の成功率を高めるための正攻法といえます。 将来性のある事業を展開 将来性のある事業を展開している会社は、会社売却後にさらなる成長が期待できるため、相場が高くなる傾向があります。 将来性のある事業というのは、具体的には、以下のような事業といえるでしょう。 成長性の高い市場で事業を展開する 競争優位性のある事業を展開する 新規事業の開発に積極的に取り組む 成長性の高い市場で事業を展開している会社や、競争優位性のある事業を展開している会社は、将来的な収益拡大が期待できます。 また、新規事業の開発に積極的に取り組んでいる会社は、さらなる成長の可能性を秘めていると評価されます。 そのため、買い手側は、売り手側企業の潜在的な価値に期待をもってくれます。 売り手側としては、将来の収益拡大、成長が絵にかいた餅ではなく、実現可能性があることを、説得的に買い手側に伝えることが必要です。 優良な従業員を抱える 優良な従業員を抱えている会社は、会社売却後も円滑な事業継続が期待できるため、会社売却の相場金額が高くなる傾向があります。 ベテラン社員がいるからこそ実現できる技術や、既存の社員のチームワークがあってこそ達成できる事業目標があるからです。 売り手側としては、会社売却を実行するまでに、以下のような点に注意することで、優良な従業員をかかえておくことができるでしょう。 優秀な技術者や営業マンなどの人材を育てる 従業員のモチベーションを高める 従業員の定着率を高める 優秀な技術者や営業マンなどの人材を育てることで、会社は、大きな成長を遂げることができます。会社売却後も、その社員を中心に、継続的な収益拡大が期待できます。 また、従業員のモチベーションを高めることで、社員が会社や自分の仕事に愛着を持つようになり、生産性や創造性の向上が期待できます。 従業員の定着率を高めることで、人材育成や離職リスクの低減につながります。 なお、会社売却の場合は、買い手側企業が売り手側企業のマンパワーや、事業を推進するためのキーマンに期待するところが大きいものです。売り手側企業の経営者としては、M&Aをきっかけに、社員が離職しないように注意を払う必要があります。 適切なタイミングで売却 適切なタイミングで売却することも、会社売却価格を高める重要なポイントです。具体的には、以下の点に注意しましょう。 業界動向や経済情勢を把握する 自社の事業状況を客観的に評価する 買い手候補のニーズを把握する 業界動向や経済情勢が好調なタイミングで売却することで、相場が高くなる傾向があります。また、自社の事業状況を客観的に評価し、買い手候補のニーズを把握することで、より高い価格で売却できる可能性が高まります。 買い手をよく見極める一方で、チャンスを逃さないように、会社売却をおこなうことが重要です。 これらのポイントを押さえることで、会社売却の相場を高め、より高い利益を得ることができるでしょう。 関連記事 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点 会社売却のメリット・デメリット・注意点 会社売却のニーズ・メリット 会社売却による利益を得たい、より良いかたちで会社の事業を発展させたい、早期リタイアをしたい、会社は残したいけれど後継者がいない、個人保証や連帯保証から解放されたいといったニーズがあるでしょう。 また社長である親御さんを相続した場合に、自分には会社経営の経験がなく、自分が会社を継ぐことはできないけれど、どうにか会社を残したいというケースもあるでしょう。... ---