いじめの損害賠償請求は認められる?示談交渉や民事訴訟の流れを解説 | 事故慰謝料解決ナビ

いじめの損害賠償請求は認められる?示談交渉や民事訴訟の流れを解説

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子どもがいじめられて怪我をしてしまったり、精神的な病を発症してしまったとき、親として損害賠償請求という法的措置を検討したいと考える人もいるでしょう。

では、いじめの損害賠償請求は誰に対して、どんな法的根拠で実行できるのでしょうか。
また損害賠償請求はどのように進めていけばいいのでしょうか。

この記事では、いじめに対する損害賠償請求相手が誰になるのか損害賠償請求の方法について解説します。

いじめ被害で損害賠償請求は認められる

いじめの被害は、加害児童、加害児童の親、そして学校側の3方向に対して損害賠償請求が認められる可能性があります。

相手に支払い能力がない場合、いくら請求したところで被害児童の損害は補てんされません。いじめについて損害賠償請求をするときは、誰にどんな根拠で損害賠償請求をするのかが重要です。

加害児童への損害賠償請求と法的根拠

加害児童本人には、民法上の不法行為を原因とした損害賠償請求が可能です。不法行為とは何か、民法709条を一部抜粋します。

不法行為

故意または過失によって、他人の権利や法律上で保護されている利益を侵害すること

ただし、加害児童が「自らの行為が不法行為にあたる」と認識できない場合、加害児童本人への損害賠償請求は難しいでしょう。具体的には、加害児童が小学生以下の場合には責任能力が認められない傾向にあります。

中学生や高校生になってくると、自分自身の行為が法律上でどんな意味を持つのかを理解できるものとして、損害賠償請求が認められる可能性があります。

ところで、加害児童本人に損害賠償請求をしても事実上支払い能力は期待できません。そのため、加害児童に責任能力があったとしても、親が監督義務を果たしていたかを論点として、損害賠償請求を進めることになります

加害児童の親への損害賠償請求と法的根拠

加害者の親には、監督義務違反があったものとして損害賠償請求可能です。監督義務違反とは何か、民法714条を一部抜粋します。

監督義務違反

責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う

民法714条では、加害児童が責任無能力者であったとき、監督義務者として親が責任を負うことと規定しています。

もっとも、いじめの加害者が中学生や高校生であり責任能力があったとしても、親の監督義務違反を原因とする親の不法行為を認めた最高裁の判決もあります。

加害児童の親に監督義務違反が問えるかどうかは個別に検討する必要があるので、学校事故を取り扱っている弁護士に見解を聞いてみることをおすすめします。

学校側への損害賠償請求と法的根拠

いじめの問題は生徒同士の問題にとどまらず、学校側にも落ち度がある場合、学校側へも損害賠償請求が可能です。具体的には不法行為債務不履行など学校側の過失を問うことになるでしょう。

そして、学校側の過失の有無を検討する際に重要なポイントが、学校に安全配慮義務違反があったのかということです。学校側に安全配慮義務違反があったとき、不法行為や債務不履行といった法的根拠にもとづく損害賠償請求が認められます。

安全配慮義務違反

安全配慮義務違反とは、学校側が負う「安全配慮義務」が果たされていないことをいいます。安全配慮義務は次のような義務をさします。

安全配慮義務

学校は、生徒が危険な目にあわずに学校生活を過ごせるように配慮すべきという義務

安全配慮義務違反が認められるかどうかは、予見可能性結果回避可能性という2つの基準で判断されます。

先生がいじめを予見でき、適切に対応していれば未然に防げたと言う場合には、安全配慮義務違反に問えるのです。そして先生に安全配慮義務違反があったときには、先生を雇用・監督する学校に対しても損害賠償請求が認められます。

国公立学校の場合は学校の設置者へ損害賠償請求

国公立学校の場合は、学校や先生個人へ直接損害賠償請求できません。学校の設置者が代わって責任を負うため、国や地方公共団体に対する損害賠償請求となるのです。

一方で私立学校の場合には、学校や先生個人への損害賠償請求となります。

損害賠償請求の時効は何年?

2020年3月31日以前のいじめについては3年、2020年4月1日以降のいじめは5年が時効となります。ただしこの時効は、民法にもとづいて相手の不法行為による人的損害を請求する場合のものです。不法行為による物的損害を請求する場合には時効が3年となる点に注意しましょう。

たとえば、不法行為によって怪我をさせられた場合の時効は5年なので、いじめの発覚から5年たつと請求できなくなる恐れがあります。

一方で後遺症が残ってしまい症状固定の診断を受けた場合には、症状固定日の翌日から5年です。
このように損害によって時効の起算日が異なる点は注意しましょう。

過去のいじめも訴えることはできる?

過去のいじめも、時効が過ぎていなければ損害賠償請求可能です。

もっとも損害賠償請求に欠かせない証拠や情報の収集は、時間の経過と共に難しくなる傾向があります。いじめの被害について損害賠償請求を検討しているなら、早めに弁護士へ相談するほうがいいでしょう。

いじめに対する損害賠償請求の流れ

いじめの損害賠償請求は、損害賠償請求額を決める、示談交渉を始める、示談が難しい場合には調停や民事訴訟へと発展する、といった流れになります。

損害賠償請求の流れと、各段階のポイントをみていきましょう。

損害賠償請求額を決める

まずは、いじめによってどんな損害が出ているのかを明らかにします。
主な損害としては下表の通り、治療費、慰謝料、逸失利益などが考えられるでしょう。

いじめの主な損害(代表例)

損害項目内容
治療費いじめによる怪我の治療費
慰謝料いじめにより受けた精神的苦痛
逸失利益生涯にわたる収入の減収や喪失※
その他の損害脅されて渡した金品、壊された物、親の付添い看護費など

※原則として後遺障害が残り就労能力が下がる場合に請求可

弁護士に損害の見積もりを依頼

いじめを受けたお子さんやご家族にとって、いじめによる損害や精神的苦痛は、本来はお金に換えることなどできないものと推察します。だからこそ、請求額の算定は難しいでしょう。

不当に低い金額で請求してしまい示談が成立した場合、後からやり直しができません。あるいは、相手が到底認めないような金額を請求しても、交渉は長引いてしまい、余計につらい想いをしてしまいます。

損害算定には一定の計算方法や相場があるので、損害算定に詳しい弁護士に依頼すると良いでしょう。いじめの慰謝料相場を知りたい方は、関連記事『いじめの慰謝料相場はいくら?賠償金の増額や減額ポイントもわかる』も参考にしてください。怪我・後遺障害・死亡などの損害別に慰謝料相場や増額・減額のポイントがわかります。

加害児童や親、学校との示談交渉

示談交渉とは、当事者同士が話し合い、お互いに譲歩をして争いをやめることをさします。裁判外での話し合いになるため煩雑な手続きはかからず、民事訴訟を起こすよりも早く解決できる点がメリットです。

ただし、お互いに譲歩できない事情があったり、そもそもいじめはなかった、いじめについて責任は負わないなどと根本部分で対立している場合には、示談交渉での解決が難しい恐れがあります。

示談交渉が進まないときの対処法

弁護士など法律の専門家にアドバイスをもらったり、示談交渉そのものを任せる方法が有効です。

弁護士が介入することで、これまでの交渉に法的根拠を持たせることができます。また、被害児童側の主張を証明するために必要な資料の集め直しや証拠の再検討など、交渉を前に進めるための活動をします。

また、相手方との主張がどうしても折り合わずに民事訴訟へと移行する場合でもスムーズに対応可能です。

あるいは、裁判所の調停委員に間に入ってもらう「調停」という方法も選択肢のひとつです。ただし、調停は互いの譲歩を促してくれる仲裁になるため、そもそも相手がいじめそのものを認めていなかったり、学校に責任はないなどと主張が真っ向から対立している場合には、調停でも解決できない可能性があります。

内容証明の送付も弁護士がやってくれる

郵便局のサービスのひとつ「内容証明郵便」を活用して、いじめの事実と損害内容を通知する方法があります。

郵便局という第三者による証明を受けているため、学校や加害児童の親に対する通知として有用ですが、内容には慎重になるべきです。高圧的な態度や脅しとも受け取られかねない内容にしてしまうと、逆効果になる恐れがあります。

内容証明郵便は誰でも送付できますが、作成・発送は弁護士に任せるほうが良いでしょう。
弁護士にいじめの損害賠償請求対応を依頼した場合には、内容証明の作成・発送も任せることができ、被害児童や親御さんの不利益を避けられます。

民事訴訟に発展することもある

民事訴訟は裁判を起こすことです。裁判官が双方の主張を聞き、損害賠償請求について何らかの判断を出すもので、損害賠償請求の最終的な解決方法となります。学校側は弁護士を立ててくると予想されるため、被害児童側も弁護士を立てて対応することをおすすめします。

もっとも弁護士への依頼は早ければ早いほど、被害児童側のメリットは大きいものです。
弁護士に介入してもらうことで、いじめの証拠収集を手伝ってもらったり、対応に迷ったときのアドバイスがもらえます。

民事訴訟を起こすために弁護士が必要なのではありません。民事訴訟までいかずとも十分な証拠をそろえて納得のいく損害賠償額を得られるように、そして、民事訴訟となっても慌てずに対応するために弁護士依頼を検討してください。

いじめの民事訴訟事例

いじめの民事訴訟として2つの事例を紹介します。

なお、ここで紹介する事例が全てに当てはまるわけではないことにご留意ください。

いじめによる自殺、学校側の安全配慮義務違反を認定

この裁判は生徒の自死がいじめによるものであり、学校側の責任を問う損害賠償が認められた判例です。

ある生徒は、同校の生徒たちによって繰り返された集団暴力行為を苦に自殺してしまいました。遺族は学校側に対して、自殺を未然に防げなかったことについて、債務不履行、不法行為、安全配慮義務違反などによる損害賠償の請求、生前の名誉回復請求権にもとづいて学校に謝罪文の掲示を求めました。

生徒は自殺の前年には無断欠席が続いたり、自殺未遂を起こして首に痣があることを両親が発見していました。両親は生徒と教諭とで面談をしましたが、生徒は、痣は遊んでいた時に引っかかってできたと説明を続けたのです。教諭は注意深く見守ることとするのみで、教諭間での十分な情報共有や生徒への聞き取りをしませんでした。

その後も、失神ゲームで失神させられたり、調理実習で火傷を負わされるなどの凄惨ないじめが続き、生徒は自殺してしまったのです。

裁判所は、いじめの兆候を発見したにもかかわらず情報提供や調査が不十分だったこと、調理実習中のトラブルへの対処の不十分さなどを指摘しました。そして、教諭たちが適切に対応していればいじめの苛烈化を防ぐことができ、生徒が自殺に追い込まれることはなかったとして、学校側の安全配慮義務違反と自殺の因果関係を認定したのです。また、学校には理事長ならびに学校長の名前で謝罪文が掲示されました。(福岡地方裁判所 平成28年(ワ)第3250号  令和3年1月22日)

いじめによる統合失調症、保護者および担任の義務違反を認定

この裁判は生徒の統合失調症発症がいじめによるものであり、加害生徒、その親、学校の責任を問う損害賠償が認められた判例です。

ある生徒は同じ学校の生徒たちから暴行を加えるなどのいじめを受け、統合失調症を発症してしまいました。両親は加害生徒やその保護者に対する不法行為に基づく損害賠償請求を行いました。また、中学校の教師たちがいじめへの適切な措置を講じて防止する義務を怠ったために多大な精神的苦痛を負ったとして、学校を設置する地方公共団体にも損害賠償を請求したのです。

裁判所は、一部の加害生徒の保護者について、教諭より加害児童の問題行動について報告・注意を受けていたにもかかわらず、深刻に受け止めず、教育・監督をせずに漫然と過ごしたものと推認し、賠償責任を負うものとしました。

学校の教諭については、加害生徒が怪我をさせたり、物を壊していたことを認識していました。また、遅刻が増えているので学校での様子を注意してみてほしい、と被害生徒の親から話を受けていたのです。これらのことより、教諭としての注意義務に違反しており、損害賠償責任を負うものとしました。

裁判所は、執拗で毎日繰り返されたいじめにより被害生徒は大きく傷つけられたとしていじめと統合失調症発症との因果関係を認める一方、いじめ以外にも発症要因があったものとして、7割の減額を相当としたのです。(広島地方裁判所 平成16年(ワ)第748号 損害賠償請求事件 平成19年5月24日)

いじめの損害賠償、まずは弁護士へ相談

いじめの損害賠償で弁護士ができること

いじめの損害賠償について、弁護士ができることがあります。

  • 弁護士は一緒に資料や証拠の収集をします
  • 弁護士は適正な損害額を見積もります
  • 弁護士は示談交渉や民事訴訟の代理人として最前線に立ちます

まずはいじめと損害の因果関係が重要です。そして、因果関係の証明には証拠や資料が欠かせません。どんな資料や証拠を提示するべきかは、学校事故の知見をもつ弁護士に相談すべきです。弁護士に依頼した場合、証拠や資料収集のサポートを受けられるので、親御さんも安心できます。

つぎに適正な損害算定と請求が必要です。不当に低い金額で示談してしまうことのないよう、弁護士に見積もりを依頼しましょう。

最終的には損害賠償額がいくらになるのかは交渉や裁判所の判断で決まります。加害児童側や学校側が「家庭にも問題がある」や「いじめていない、遊びだ」などと心無い言葉を発することもあり、被害児童やその親御さんの精神的負担は増大する一方です。弁護士は示談交渉や民事訴訟の代理人になれるので、相手方との直接接触の機会をできるだけ減らすことができます。

年中無休で相談予約を受け付けています

我が子がいじめによって怪我をした、後遺症が残るほどの重傷を負わされた、自殺に追いやられてしまった、こういった損害賠償請求でお困りの方はアトム法律事務所の無料相談を利用してみませんか。

あくまで無料相談で、正式契約ではありません。実際に法律相談だけで終わる方もいらっしゃいますので、気兼ねなくご利用ください。

弁護士の時間を確保するためにも、法律相談は予約制となっています。法律相談の予約は年中無休で受け付けていますので、下記のフォームより電話またはLINEにていつでもご連絡ください。

岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点