社内不正のニュース情報

ITリテラシー問題とは?-業務データを隠れて持ち出すのは違法です。

2023.10.26

質問きてた

質問

業務データを隠れて持ち出すのは違法?

結論

不法行為です

この不正の具体例

会社パソコンで迷惑メールを不用意に開く
顧客情報を入れた私用パソコンを紛失する
個人情報を入れたUSBメモリーを紛失する

かんたん解説

業務データを隠れて持ち出したり、不注意により会社パソコンを紛失したりするのは、ITリテラシー問題で社内不正の典型例の一つです。持ち出し禁止の会社パソコンを持ち出して紛失する、患者情報を入れておいた私用パソコンを紛失する、いずれもITリテラシー問題で不法行為になる場合があります。

「確認不足だった」という言い訳は通用せず、損害賠償を請求されて大事件に発展するケースもあります。

有名事件3選

三菱重工在宅勤務時ウイルス感染事件

三菱重工業の従業員が、2020年4月、在宅勤務時に会社パソコンで社内ネットワークを経由せずSNSに接続した。第三者からのファイルをダウンロードしウイルスに感染。同じサーバを利用した従業員の個人情報などが流出した。外部への不正通信を検知し調査で発覚。会社はHPで謝罪コメントを発表。

順天堂医師パソコン紛失事件

順天堂医院の医師が、2022年1月頃、外部持ち出し禁止の患者情報ファイルを私用パソコンに保存していた。医師がパソコンを電車に置き忘れて紛失したため発覚。ファイルには55名の患者の氏名や疾患名などの個人情報が含まれていた。病院は医師に厳重注意を行った。

大教大附属小フィッシング被害情報漏洩事件

大阪教育大学附属小学校の教員が、2018~2021年頃、児童や校内の画像や学級名簿などを規定に違反してiCloud上に保存していた。教員がフィッシング攻撃の被害に遭い、アカウントを第三者に乗っ取られて発覚。300人以上の個人情報が漏洩した恐れがあり、教員は戒告の懲戒処分を受けた。

やった人の責任

一般論として、社内不正を行った人には、刑事責任・民事責任・懲戒責任という三つの責任が生じる可能性があります。

ITリテラシー問題
刑事責任 民事責任 懲戒責任
懲戒や罰金を受ける責任 損害賠償金を払う責任 解雇や減給の処分を受ける責任
個人情報保護法174条など 民法709条 各社の就業規則

刑事責任

刑事責任は、罪を犯したときに、国に対して負う責任です。

警察に逮捕・検挙された後、検察に起訴されて、裁判所に有罪と判断されれば、懲役や罰金といった刑を受けることとなります。

被害が大きければ、懲役実刑となることもあります。

刑事責任に関する法律やルール

個人情報保護法(174条)

個人情報取扱事業者…である場合にあっては、その役員、代表者又は管理人若しくはその従業者又はこれらであった者が、その業務に関して取り扱った個人情報データベース等…を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

民事責任

民事責任は、被害者である会社または個人に対して負う責任です。最も重要なのは損害賠償責任です。

賠償すべき範囲はITリテラシー不足による情報漏洩などで発生した金銭的被害についての直接損害だけでなく、対応時間のロスや信用低下による損失などの間接損害も含まれ、想像以上に多額に渡る場合もあります。

民事責任に関する法律やルール

不法行為(民法709条)

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

懲戒責任

懲戒責任は、会社に対して負う責任です。その内容は、会社ごとの就業規則で定められています。不正行為の結果の重大性に応じて、懲戒解雇、降格、出勤停止、減給、戒告などの処分が下されます。

会社に大損をさせる不正、犯罪になる不正をはたらいたときは、最も重い解雇になるケースが多いです。

懲戒責任に関する法律やルール

懲戒の事由(厚労省モデル就業規則64条2項)

労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。
⑤ 故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき
⑥ 会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき

※会社ごと異なる

処分の実例

会社パソコンでSNSに接続しウイルス感染、会社が謝罪
電車内に会社パソコン置き忘れで情報漏洩、厳重注意
職場の個人情報を私用スマホに保存、戒告処分

アトム法律事務所からのメッセージ

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