目次
質問きてた
質問
産地やデータを偽って不当に利益を得ることは違法?
結論
偽装です
この不正の具体例
食品の産地表示を偽る
外国産の食材を国産と偽って販売する
納期を守るため不当にデータを改ざんする
かんたん解説
産地やデータを偽って不当に利益を得ることは、社内不正の典型例の一つです。商品の産地を偽って販売する、品質データを改ざんする、いずれも違法行為です。
「昔からの通例だった」「納期を守るため仕方なくやった」という言い訳は通用せず、損害賠償を請求されて大事件に発展するケースもあります。
有名事件3選
アサリ産地偽装事件
熊本県のアサリ販売会社が数十年以上にわたり、輸入書類の「原産地での育成期間」を実際の期間よりも短く改ざんしていた。その後、記載期間より長く国内で育てて、特定の県や特定水域産と表示をして販売。TBSテレビの報道で世間に実態が発覚し、食品表示法に基づき農林水産省が行政指導を実施した。
冷凍マグロ2万匹超産地偽装事件
東京都の水産加工会社が、2018~2021年、中国産のマグロを台湾産と表示するなどの偽装を行い、2万匹以上のマグロを販売した。豊洲市場のせりに参加し関東地方などの仲卸133社に販売。情報提供を受けた農政局による立ち入り検査で発覚。食品表示法に基づき農林水産省が是正措置。
日野自動車排出ガスデータ改ざん事件
日野自動車の社員が、2016年以降、納期・数値目標達成のためトラックなどのエンジン排出ガスなどのデータを改ざんし、不正なデータを国に提出した。約11万台超のエンジンが不正な数値だった。アメリカに輸出する際のチェックで発覚。リコール(回収・無償修理)に伴う費用が400億円発生した。
やった人の責任
一般論として、社内不正を行った人には、刑事責任・民事責任・懲戒責任という三つの責任が生じる可能性があります。
偽装 | ||
---|---|---|
刑事責任 | 民事責任 | 懲戒責任 |
懲戒や罰金を受ける責任 | 損害賠償金を払う責任 | 解雇や減給の処分を受ける責任 |
食品表示法19条 | 民法709条 | 各社の就業規則 |
刑事責任
刑事責任は、罪を犯したときに、国に対して負う責任です。
警察に逮捕・検挙された後、検察に起訴されて、裁判所に有罪と判断されれば、懲役や罰金といった刑を受けることとなります。
被害が大きければ、懲役実刑となることもあります。
刑事責任に関する法律やルール
産地偽装の罪(食品表示法19条)
産地偽装の罪(食品表示法19条)
食品表示基準において表示されるべきこととされている原産地(原材料の原産地を含む。)について虚偽の表示がされた食品の販売をした者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
民事責任
民事責任は、被害者である会社に対して負う責任です。最も重要なのは損害賠償責任です。
賠償すべき範囲は偽装により発生した金銭的被害についての直接損害だけでなく、対応時間のロスや信用低下による損失などの間接損害も含まれ、想像以上に多額に渡る場合もあります。
民事責任に関する法律やルール
不法行為(民法709条)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
懲戒責任
懲戒責任は、会社に対して負う責任です。その内容は、会社ごとの就業規則で定められています。不正行為の結果の重大性に応じて、懲戒解雇、降格、出勤停止、減給、戒告などの処分が下されます。
会社に大損をさせる不正、犯罪になる不正をはたらいたときは、最も重い解雇になるケースが多いです。
懲戒責任に関する法律やルール
懲戒の事由(厚労省モデル就業規則64条2項)
労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。
⑤ 故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき
⑥ 会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき
※会社ごと異なる
処分の実例
外国産アサリを国産と偽り農林水産省から行政指導
産地偽装した魚を販売し農林水産省から是正措置
車の排出ガスのデータを改ざんし一時生産停止
アトム法律事務所からのメッセージ
社長や法務部の方へ
偽装は、社内外の信頼を大きく損ない、被害総額も大きくなりやすい類型の社内不正です。未然に防ぐために、アトム法律事務所の【コンプラチェッカー】の導入をご検討ください。
社内不正を目撃した方へ
同僚や上司の偽装を目撃した方は、職場の信頼できる人に相談しましょう。アトム法律事務所の【コンプラチェッカー】導入済みの会社なら、同ツールも活用してください。
社内不正をしてしまった方へ
すぐ職場の信頼できる人や警察に打ち明けることが、職場だけでなく、あなたにとっても有益です。自首の方法などでお悩みなら、アトム法律事務所の弁護士にご相談ください。