社内不正のニュース情報

営業秘密侵害罪とは?-会社の機密情報の持ち出しは犯罪です

2023.10.26

質問きてた

質問

会社の機密情報の持ち出しは犯罪?

結論

営業秘密侵害罪です

この不正の具体例

他社の技術情報を得るために自社の情報を提供する
転職先からの依頼で前職の営業情報を持ち出す
転職先で評価を得るため、機密情報を不正コピーする

かんたん解説

会社の機密情報の持ち出しは、社内不正の典型例の一つです。技術情報を売却してお金を得る、転職先に営業情報を漏洩させて自分の評価を上げる、いずれの場合も営業秘密侵害罪です。

「見返りに相手会社の情報を得るつもりだった」「転職先で使うだけで、誰にも迷惑はかからないと思った」という言い訳は通用せず、逮捕・起訴されて大事件に発展するケースもあります。

有名事件3選

積水化学スマホ技術漏洩事件

積水化学工業の開発部社員が、2019年頃、スマホ液晶技術に関する情報を中国企業に漏洩させた。情報開示の対価として相手の技術を得る目的があった。社内調査により発覚し、社員は懲戒解雇。懲役2年(執行猶予4年)、罰金100万円の有罪判決を受けた。

ソフトバンク5G営業秘密流出事件

ソフトバンクの基地局業務担当社員が、2019年12月、4Gや5Gの基地局に関する技術情報を持ち出した。その後、競合の楽天モバイルへ転職。営業秘密侵害罪で逮捕された。ソフトバンクは社員に対し10億円の損害賠償請求、楽天モバイルに対し1000億円の損害賠償請求を求める訴訟を起こした。

工具設計図データ中国売却事件

切削工具メーカー「OSG」の社員が、2017年頃、自社製品の設計データを私物のHDDに複製して持ち出した。データは元同僚や中国企業に渡し、対価として約250万円を取得。社内調査で発覚し、社員は懲戒解雇され、営業秘密侵害罪で罰金50万円、懲役2年(執行猶予4年)の有罪判決を受けた。

やった人の責任

一般論として、社内不正を行った人には、刑事責任・民事責任・懲戒責任という三つの責任が生じる可能性があります。

営業秘密侵害罪
刑事責任 民事責任 懲戒責任
懲戒や罰金を受ける責任 損害賠償金を払う責任 解雇や減給の処分を受ける責任
不正競争防止法21条 民法709条 各社の就業規則

刑事責任

刑事責任は、罪を犯したときに、国に対して負う責任です。

警察に逮捕・検挙された後、検察に起訴されて、裁判所に有罪と判断されれば、懲役や罰金といった刑を受けることとなります。

被害が大きければ、懲役実刑となることもあります。

刑事責任に関する法律やルール

営業秘密侵害罪(不正競争防止法21条)

次の各号のいずれかに該当する者は、10年以下の懲役若しくは2000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1.不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、詐欺等行為(略)又は管理侵害行為(略)により、営業秘密を取得した者
2・・・(以下略)

民事責任

民事責任は、営業秘密侵害の被害者である会社に対して負う責任です。最も重要なのは、損害賠償責任です。

賠償すべき範囲は、営業秘密の侵害により発生した被害についての直接損害だけでなく、営業機会減による逸失利益、対応時間のロスや信用低下による損失などの間接損害も含まれ、想像以上に多額に渡る場合もあります。

民事責任に関する法律やルール

不法行為(民法709条)

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

懲戒責任

懲戒責任は、会社に対して負う責任です。その内容は、会社ごとの就業規則で定められています。不正行為の結果の重大性に応じて、懲戒解雇、降格、出勤停止、減給、戒告などの処分が下されます。

会社に大損をさせる不正、犯罪になる不正をはたらいたときは、最も重い解雇になるケースが多いです。

懲戒責任に関する法律やルール

懲戒の事由(厚労省モデル就業規則64条2項)

労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。
⑤ 故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき
⑥ 会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき

※会社ごと異なる

処分の実例

中国企業に技術情報を漏洩させ懲戒解雇、有罪判決
技術情報を持ち出して転職し、逮捕
設計データを第三者に売却し懲戒解雇、有罪判決

アトム法律事務所からのメッセージ

社長や法務部の方へ

営業秘密の漏洩は、社内外の信頼を大きく損ない、競合に利益が流れるなど大きな損害になりやすい類型の社内不正です。未然に防ぐために、アトム法律事務所の【コンプラチェッカー】の導入をご検討ください。

社内不正を目撃した方へ

同僚や上司の情報漏洩を目撃した方は、職場の信頼できる人に相談しましょう。アトム法律事務所の【コンプラチェッカー】導入済みの会社なら、同ツールも活用してください。

社内不正をしてしまった方へ

すぐ職場の信頼できる人や警察に打ち明けることが、職場だけでなく、あなたにとっても有益です。自首の方法などでお悩みなら、アトム法律事務所の弁護士にご相談ください。