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パワハラとは?-部下に対する過度の暴力・暴言は犯罪・違法です

2023.10.26

質問きてた

質問

指導のために部下にきつく言ったり、身体でわからせたりするのは違法?

結論

不法行為です

この不正の具体例

指導と称して部下を殴ったり蹴ったりする
部下にタバコを近づけたり煙を吹きかけたりする
部下に死や退職を求める発言をする

かんたん解説

職場で立場が上の人が、業務の範囲を超えて、部下に苦痛を与える行為をする、いわゆるパワハラは、社内不正の典型例の一つです。度が過ぎて心身を傷つければ不法行為、暴行罪となる場合があります。

「指導の一環」という言い訳は通用せず、損害賠償を請求されて大事件に発展するケースもあります。

有名事件3選

ヤマト運輸下請け社員暴行パワハラ事件

ヤマト運輸下請け企業の社員が、2018年9月、後輩に暴行などのパワハラを行った。上司に告げ口をされたと勘違いした社員が「ボコボコにしてやる」などと暴言を吐き暴行。後輩は全治2週間の怪我を負い、被害届を提出して事件が発覚。社員は暴行罪で起訴され罰金刑、会社の処分は反省文の提出のみ。

ハシモトホーム侮辱賞状パワハラ事件

ハシモトホームの社員が、2018年2月、暴言などのパワハラを行い、部下が自殺した。社員は「お前はバカか?」などのメッセージを複数回送信しており、成績を表彰する「賞状」を「症状」にもじり侮辱的に部下を表彰していた。会社の処分は未定。遺族は会社に対して損害賠償請求訴訟を起こした。

ラジオ局酒強要、火炎放射パワハラ事件

FMラジオNACK5の営業部長が、2018年頃、男性部下に飲酒を強要したり、女性用下着を穿くよう指示したりした。部長はさらに翌年、制汗スプレーを噴射しながら火を近づけ、男性に対し「火炎放射」を行った。男性が退職時に会社に説明して発覚。部長は出勤停止2日間の懲戒処分を受けた。

やった人の責任

一般論として、社内不正を行った人には、刑事責任・民事責任・懲戒責任という三つの責任が生じる可能性があります。

パワハラ
刑事責任 民事責任 懲戒責任
懲戒や罰金を受ける責任 損害賠償金を払う責任 解雇や減給の処分を受ける責任
刑法208条(暴行罪)など 民法709条 各社の就業規則

刑事責任

刑事責任は、国に対して負う刑事責任です。

警察に逮捕・検挙された後、検察に起訴されて、裁判所に有罪と判断されれば、懲役や罰金といった刑を受けることとなります。

被害が大きければ、懲役となることもあります。

刑事責任に関する法律やルール

暴行罪(刑法208条)など

暴行罪(刑法208条)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

傷害罪(刑法204条)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

侮辱罪(刑法231条)
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留又は科料に処する。

民事責任

民事責任は、被害者である会社・または個人に対して負う責任です。最も重要なのは損害賠償責任です。

賠償すべき範囲は信用毀損により発生した金銭的被害についての直接損害だけでなく、対応時間のロスや信用低下による損失などの間接損害も含まれ、想像以上に多額に渡る場合もあります。

民事責任に関する法律やルール

不法行為(民法709条)

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

懲戒責任

懲戒責任は、会社に対して負う責任です。その内容は、会社ごとの就業規則で定められています。不正行為の結果の重大性に応じて、懲戒解雇、降格、出勤停止、減給、戒告などの処分が下されます。

会社に大損をさせる不正、犯罪になる不正をはたらいたときは、最も重い解雇になるケースが多いです。

懲戒責任に関する法律やルール

懲戒の事由(厚労省モデル就業規則64条2項)

労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。
⑤ 故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき
⑥ 会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき

※会社ごと異なる

処分の実例

後輩に暴行などのパワハラで有罪判決(罰金刑)
飲み会で飲酒強要や暴行などのパワハラで懲戒停職
パワハラで社員が自殺、遺族が損害賠償請求(係争中)

アトム法律事務所からのメッセージ

社長や法務部の方へ

職場内や社内でのパワハラの横行は、社内外の信頼を大きく損ないます。未然に防ぐために、アトム法律事務所の【コンプラチェッカー】の導入をご検討ください。

社内不正を目撃した方へ

上司のパワハラを目撃した方は、職場の信頼できる人に相談しましょう。アトム法律事務所の【コンプラチェッカー】導入済みの会社なら、同ツールも活用してください。

社内不正をしてしまった方へ

すぐ職場の信頼できる人や警察に打ち明けることが、職場だけでなく、あなたにとっても有益です。自首の方法などでお悩みなら、アトム法律事務所の弁護士にご相談ください。