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文書偽造とは?-他人の印鑑や名義を使って文書を偽造するのは犯罪です。

2023.10.26

質問きてた

質問

他人の印鑑や名義を使って文書を偽造するのは犯罪?

結論

公文書偽造罪もしくは私文書偽造罪です

この不正の具体例

他人の印鑑や通帳を使って請求書を偽造する
業務のミスを隠すために決裁文書を偽造する
融資のために収入証明書などを偽造する

かんたん解説

他人の名義や印鑑を使った文書の偽造は、社内不正の典型例の一つです。金銭の詐取目的で請求書を偽造する、不正融資のために収入証明書を偽造する、いずれの場合も公文書偽造罪もしくは私文書偽造罪です。

「取引先が黙っていれば問題ないと思った」「借金を返済したら返すつもりだった」という言い訳は通用せず、逮捕・起訴されて大事件に発展するケースもあります。

有名事件3選

私立小学校36万円分の請求書偽造事件

佐賀大附属小の教諭が、2021~2022年に、同僚が管理する通帳や印鑑を使って払戻請求書を偽造し、約9万円を騙し取ろうとした。同僚が通帳の紛失に気付いて発覚。教諭は同様の手口で過去に27万円を着服しており、有印私文書偽造・同行使、詐欺などの容疑で逮捕。その後懲戒解雇処分を受けた。

医療センター契約ミス隠し文書偽造事件

淡路医療センター経理課長らが、2022年1月、入札が必要な契約を課員のミスで入札せずに契約しており、入札を装うために文書を偽造。ネットメディアが問題を取り上げて発覚。メディアに開示を求められた決裁文書も経理課長の主導で偽造した。関係者4人が停職や減給などの懲戒処分を受けた。

地銀で偽造書類251億円不正融資事件

関西みらい銀行の行員が、2005~2019年の間、特定の住宅販売会社に対し約251億円の不正融資を行っていた。行員は、販売会社による売買契約書の二重作成やローン利用者の収入証明書などの偽造を黙認。融資実績を増やす目的があった。利用者の相談で発覚し、行員は懲戒解雇処分を受けた。

やった人の責任

一般論として、社内不正を行った人には、刑事責任・民事責任・懲戒責任という三つの責任が生じる可能性があります。

文書偽造
刑事責任 民事責任 懲戒責任
懲戒や罰金を受ける責任 損害賠償金を払う責任 解雇や減給の処分を受ける責任
刑法155条など 民法709条 各社の就業規則

刑事責任

刑事責任は、国に対して負う刑事責任です。

警察に逮捕・検挙された後、検察に起訴されて、裁判所に有罪と判断されれば、懲役や罰金といった刑を受けることとなります。

被害が大きければ、懲役実刑となることもあります。

刑事責任に関する法律やルール

公文書偽造罪(刑法155条1項)など

公文書偽造罪(刑法155条1項)
行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。

私文書偽造罪(刑法159条1項)
行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

民事責任

民事責任は、被害者である会社に対して負う責任です。最も重要なのは、損害賠償責任です。

賠償すべき範囲は文書偽造により発生した金銭的被害についての直接損害だけでなく、営業機会減による逸失利益、対応時間のロスや信用低下による損失などの間接損害も含まれ、想像以上に多額に渡る場合もあります。

民事責任に関する法律やルール

不法行為(民法709条)

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

懲戒責任

懲戒責任は、会社に対して負う責任です。その内容は、会社ごとの就業規則で定められています。不正行為の結果の重大性に応じて、懲戒解雇、降格、出勤停止、減給、戒告などの処分が下されます。

会社に大損をさせる不正、犯罪になる不正をはたらいたときは、最も重い解雇になるケースが多いです。

懲戒責任に関する法律やルール

懲戒の事由(厚労省モデル就業規則64条2項)

労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。
⑤ 故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき
⑥ 会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき

※会社ごと異なる

処分の実例

同僚の管理する印鑑で文書を偽造し懲戒解雇、逮捕
業務ミスを隠すため公文書を偽造し懲戒処分
融資先の文書偽造を黙認し懲戒解雇

アトム法律事務所からのメッセージ

社長や法務部の方へ

文書偽造は、社内外の信頼を大きく損ない、不正な着服につながりやすい類型の社内不正です。未然に防ぐために、アトム法律事務所の【コンプラチェッカー】の導入をご検討ください。

社内不正を目撃した方へ

同僚や上司の文書偽造を目撃した方は、職場の信頼できる人に相談しましょう。アトム法律事務所の【コンプラチェッカー】導入済みの会社なら、同ツールも活用してください。

社内不正をしてしまった方へ

すぐ職場の信頼できる人や警察に打ち明けることが、職場だけでなく、あなたにとっても有益です。自首の方法などでお悩みなら、アトム法律事務所の弁護士にご相談ください。