目次
質問きてた
質問
業務で得た個人情報の無断提供は犯罪?
結論
個人情報保護法違反です
この不正の具体例
私腹を肥やすため個人情報を第三者に提供する
業者に顧客名簿を販売する
顧客情報を提供し、知人からご飯を奢ってもらう
かんたん解説
業務で得た個人情報や顧客リストを無断で提供することは、社内不正の典型例の一つです。利益目的で個人情報を漏洩させる、顧客リストを販売する、いずれの場合も個人情報保護法違反です。
「名前と電話番号だけだったから大丈夫だと思った」「業者への売却は問題ないと思った」という言い訳は通用せず、逮捕・起訴されて大事件に発展するケースもあります。
有名事件3選
三菱UFJ証券顧客情報売却事件
三菱UFJ証券の社員が、2009年1月、借金返済目的で顧客情報約148万人分を不正に取得し、約5万人分を売却した。顧客情報は98社に転売され、顧客からの問合せで発覚。会社の損失は合計約70億円。社員は懲戒処分となり、不正アクセス禁止法違反と窃盗罪で懲役2年の実刑判決を受けた。
トレンドマイクロ個人情報売却事件
トレンドマイクロの社員が、2019年8月頃、同社内の顧客サポートのデータベースにアクセスし、最大12万ユーザーの氏名やメールアドレスなどの個人情報を第三者に提供した。流出した情報は同社のサポートになりすました詐欺電話に悪用された。被害者からの相談で発覚し、社員は解雇された。
郵便局顧客データ政治活動流用事件
日本郵便の郵便局長計104人が、2018年以降、全国郵便局長会が自民党公認で擁立する参院選候補者の得票につなげる目的で、計1318人分の顧客情報を政治活動に流用させた。西日本新聞の報道で発覚。郵便局長全員が注意の懲戒処分を受け、常務執行役員2人は監督責任を問い報酬減額となった。
やった人の責任
一般論として、社内不正を行った人には、刑事責任・民事責任・懲戒責任という三つの責任が生じる可能性があります。
個人情報提供 | ||
---|---|---|
刑事責任 | 民事責任 | 懲戒責任 |
懲戒や罰金を受ける責任 | 損害賠償金を払う責任 | 解雇や減給の処分を受ける責任 |
個人情報保護法174条 | 民法709条 | 各社の就業規則 |
刑事責任
刑事責任は、罪を犯したときに、国に対して負う責任です。
警察に逮捕・検挙された後、検察に起訴されて、裁判所に有罪と判断されれば、懲役や罰金といった刑を受けることとなります。
被害が大きければ、懲役実刑となることもあります。
刑事責任に関する法律やルール
個人情報保護法(174条)など
個人情報保護法(174条)
個人情報取扱事業者(その者が法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。第百七十九条第一項において同じ。)である場合にあっては、その役員、代表者又は管理人)若しくはその従業者又はこれらであった者が、その業務に関して取り扱った個人情報データベース等(その全部又は一部を複製し、又は加工したものを含む。)を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
民事責任
民事責任は、被害者である会社に対して負う責任です。最も重要なのは、損害賠償責任です。
賠償すべき範囲は個人情報提供行為により発生した金銭的被害についての直接損害だけでなく、営業機会減による逸失利益、対応時間のロスや信用低下による損失などの間接損害も含まれ、想像以上に多額に渡る場合もあります。
民事責任に関する法律やルール
不法行為(民法709条)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
懲戒責任
懲戒責任は、会社に対して負う責任です。その内容は、会社ごとの就業規則で定められています。不正行為の結果の重大性に応じて、懲戒解雇、降格、出勤停止、減給、戒告などの処分が下されます。
会社に大損をさせる不正、犯罪になる不正をはたらいたときは、最も重い解雇になるケースが多いです。
懲戒責任に関する法律やルール
懲戒の事由(厚労省モデル就業規則64条2項)
労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。
⑤ 故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき
⑥ 会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき
※会社ごと異なる
処分の実例
顧客情報を不正に持ち出して売却し、実刑判決
個人情報を第三者に提供し解雇
顧客情報を政治活動に流用し、懲戒処分
アトム法律事務所からのメッセージ
社長や法務部の方へ
個人情報提供は、社内外の信頼を大きく損ない、被害総額も大きくなりやすい類型の社内不正です。未然に防ぐために、アトム法律事務所の【コンプラチェッカー】の導入をご検討ください。
社内不正を目撃した方へ
同僚や上司の個人情報提供行為を目撃した方は、職場の信頼できる人に相談しましょう。アトム法律事務所の【コンプラチェッカー】導入済みの会社なら、同ツールも活用してください。
社内不正をしてしまった方へ
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